学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
鷹一・金崎・雲川の三人は個室式の喫茶店で顔を合わせることになった。
「というわけで、金崎をチームに入れたいと思う。紫苑はどう思う?」
僅かな背景事情――金崎とは一時寮で同室だったこと、気の良い人物であること、特に協調性を感じたこと、戦闘・筆記試験結果はそこまで高くないこと、などを伝えた鷹一は、そのまま雲川に問いかけた。
「え……あ、うん……」
「それは了承ということでいいか?」
「えっと……金崎君……?」
鷹一の言葉を聞いた雲川は困ったように視線を逸らし、それから金崎を見た。
「はい! 金崎です!」
金崎は一生懸命に答えた。
「う、うん……」
雲川は金崎から視線を逸らした。
「紫苑、何か気になることがあるなら今のうちに金崎に聞いた方がいい。チームは一度組むと後から変えるのは難しい。金崎とは合わないということならそれでいい。ただ、合うか合わないかの検証はすべきだと思う」
「うん……えっと、金崎くんは…………何で、私のチームに入りたいの……?」
「はい! その……! えっと、実は……すみません! 実は、俺、全然、チームに誘ってもらえなくて……! このままだと学園追放だと思って! そんな中、鷲島に誘われました! 嬉しくて、是非、チームに入れてもらいたい思いました!」
「…………そ、そっか……入るチームが無くて……そういう人もいるんだね……えっと、それなら……その、変な質問かもしれないけど……もし、他に入れてくれるチームがあったら、私のチームには入らない……?」
「……! そ、それは……えっと、正直、俺を入れてくれるチームは無いと思いますけど……! でも、もしそんなチームがあったら……! えっと、その、ちょっと悩んじゃうかもしれないです! あ! でも! それでも、やっぱり雲川さんのチームに入りたいと思います! その、理由って言っていいか分かんないんだけど……! その、鷲島は凄くいいやつで、元から一緒に組みたかったんです! あと、その、雲川さんも鷲島と一緒で良い人そうで……! なので、もし許してもらえるなら、入れて欲しいです……! その、俺にできることなら、何でも頑張るんで……! お願いします!」
そう言って、金崎は雲川に深く頭を下げた。
「う、うん…………えっと、鷹一くんは、どう思うの……?」
「俺も金崎を……いや、違うな。そうだな。金崎は良い人間だと思う。俺の主観的な意見になるが、道徳心が高く、そういった点は紫苑に似ている。協調性もあるし、努力しようと頑張っているような気がする。紫苑のチームメイトとしては、良いと思う」
「そ、そっか…………うん…………えっと、じゃあ、その、金崎くん、えっと、一緒に、が、頑張ろう……?」
雲川はおっかなびっくり金崎に片手を差し出した。金崎は頭を上げて、その手をしっかりと握った。
「はい! よろしくお願いいたします! 雲川さん!」
「う、うん……よ、よろしく……」
「よし。これで金崎も雲川チームの一人だ。皆で力を合わせてBランクを目指そう。そこで、紫苑、聞いておきたいことがある」
「え……なに……?」
恐る恐る雲川は鷹一を見た。
「勧誘活動の進捗を聞きたい。候補は何人くらいいる?」
「え、ええっと……………………まだ、見つけてない」
「そうか。俺と金崎のように一時寮の繋がりを利用するのはどうだ? 目ぼしい生徒はいないか?」
鷹一は内心で、『もう最低限、頭数だけ用意できればいいだろう』と考えていた。
「一時寮の……」
「話しやすい、とかでも十分良いと思う。候補はいないか?」
「話しやすい……一時寮だと麻倉さんが話しやすかった。でも麻倉さんはリーダーだから……他は、水無月さんは厳しいし、青井さんは笑ってるのに目が笑ってなくて怖い……」
「麻倉……! 曲射砲のチームか。そうか麻倉か……確か、水無月は高光のチームの通信担当だったか……? 青井は知らないな。第一試合には出てない選手か?」
「わ、分かんない……」
「第一試合で曲射砲で暴れていた佐々木という選手がいただろう。その佐々木が所属しているチームが麻倉チームだ。高光チームはメンバー全員の平均魔力が高いチームで、水無月はそこの通信担当だ」
鷹一にとって、第一試合でも特に印象深い試合に参加していた選手たちだ。佐々木は鷹一が危険視している生徒の一人であり、そして高光チームは第一試合で飛山チームに敗北したチームだった。
「し、知らない……」
雲川は目を伏せた。鷹一は雲川を見た後に金崎を見た。金崎もまた目を伏せた。
「ご、ごめん、俺もちゃんと覚えてない……」
「そうか……いや、いいんだ。そうだな。話を戻すが、もっと選手が欲しい。質も重要だが、数も重要だ。あと一人いると、試合中にできることが増えるし、何より任務点の獲得機会が増える。できれば、もう一人増やしたいと思っているが、紫苑と金崎はどう思う?」
「え? 俺……? えっと、どうだろう。たぶん鷲島が言うんだから正しいと思うけど……」
そう言って金崎は困ったように鷹一と雲川を交互に見た。
「…………えっと、その私は、その、もういいかなって……」
「もういい、とは?」
「その……えっと……金崎くんも入ってくれたし、無理に増やさなくても…………怖い人も多いし……誘っても入ってくれるか分からないし……」
雲川は目を伏せながら、おっかなびっくりと言葉を口にしていく。それを聞き、鷹一は『これ以上は無理そうだな』と思い、そして、内心で苦笑した。
「そうか。分かった。それなら最初のチーム戦――四月の第二試合はこの三人で出場しよう」
「う、うん……! それがいいと思う」
雲川は即座に頷いた。
「金崎もそれでいいか?」
「あ、ああ、二人がいいなら、全然、大丈夫だ……!」
「分かった。それなら試合までの間にするべきことをしよう。具体的には攻撃と防御の練習だ。二人とも、まずは、ある程度撃ち合いができるようになろう。そのために必要なのは射撃技術とシールド技術だ。これを今日から練習しよう」
「きょ、今日……? もう、結構遅いよね……?」
雲川が恐る恐る言葉を舌に乗せた。雲川は、もうそろそろ帰りたかった。
「今日は少しだけだ。二人がどれくらいの技量を持っているのかを調べるだけだから、心配するな。三十分くらいだ。その三十分で二人の技術や魔力量の正確な値を調べる。そして訓練メニューを作るから、明日から二人はそれをやってくれ。二人とも授業には出てないよな?」
「そ、そうだけど……」
「それなら、午前か午後、好きな時間に訓練をするんだ。あと、訓練するときは、必ず非公開設定の訓練室を使って欲しい。ZPを余分に消費するが、情報流出を防ぐためだ。午後の授業が終わったら俺も合流する。二人の上達具合に応じて夕方から夜のメニューを決める。とりあえずはこれでいいか?」
この学園において、金とも言える貴重なZPを余分に消費する指示。鷹一はZPよりも、チームの情報の秘匿を優先した。
「え……え……?」
次々と計画を決めていく鷹一に対して、雲川は情報で頭がパンクしそうになりながらも、金崎の方を見た。
「あ……あ……えっと、その、やってみる……!」
金崎もまた、あわあわとしていたが、雲川よりも早く復帰し、鷹一に強く頷いた。金崎の方がモチベーションの面では、雲川を遥かに凌駕していた。金崎に裏切られた雲川は沈んだ顔になった。
「う、うん……私も、頑張る……できるだけ……」
小声で雲川も鷹一に言葉を返した。
「ありがとう。二人とも。それなら、これから訓練室に行こう。そこで、二人の技能を確認して、訓練メニューを決めよう」