学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第二試合② 試合開始

 

 

 そうして、投入室にアナウンスが流れた。

 

『投入1分前です。投入室はロックされます。各生徒は投入に備えてください』

 

 そのアナウンスとともに部屋全体の照明が暗い青色に変化する。雲川は僅かに震えながら鷹一の袖に手を触れた。金崎は大きくなる自身の心臓の音を抑えるのに集中した。

 天野チームの三人は集中するように目を瞑り、吉川チームの面々は仲間内でチーム戦に関して意味のない感想を言い合い、杉山チームはリーダーが選手に向かって無理難題を押し付けていた。

 そして、鷹一は淡々とした目で部屋内にいる10人の生徒を見回して、自身の考えていた初期戦術の修正を図った。

 

(天野と進藤、この二人が同時に攻撃してくるケースだけは警戒しよう。おそらく唯一ダウンする可能性がある組み合わせだ。投入のランダム性を考えるとそこまで『ありうる』展開ではないが……)

 

 そこまで考えた鷹一は一度軽く目を瞑った。

 

(……いや、試合展開が間延びして、俺が干渉できないラインで二人が生存し合流する可能性は十分あるな。つまりは運か。まあ、いい。どのようなケースになっても、各試合で最善を尽くせばDランクは確実だ。金崎が加入した以上、個室を確保できるBランクを目指したいが……いや、これは今考えることではないな)

 

 鷹一は自身の驕りに気付き、僅かに苦笑した。

 

『5、4、3、2、1、――投入』

 

 そして、投入室にいた11人の姿は仮想空間に転送された。

 新規入学一年生の四月の第二試合、日曜日午後の部最後となる試合がスタートした。

 

 

 

 

 試合開始と同時に鷹一は自身の位置を素早く確認した。同時に『大出力レーダー』を起動し、表示された光点を確認、さらには『通信子機』もON状態にする。

 

 

【挿絵表示】

 

 

『つ、通信、できてる?』

 

『問題ない。二人とも逆認識は大丈夫か?』

 

『だ、大丈夫……!』『大丈夫だ! 反応なし。誰にも見られてない』

 

 二人の答えを聞き、鷹一は盤上への認識を深める。表示された光点は6つであり、2つが表示されていない。鷹一のレーダーの射程外にいるか、それとも隠蔽性能の関係で近くにいるが見えないのか。だが、同時に雲川・金崎の両名は敵のレーダーにも映っていない。これは『二人の近くにレーダー使いが隠れているということがない』ということでもある。鷹一は即座に作戦を決めた。

 

『よし、紫苑は――』

 

 全て指示を出す前に鷹一は『ハンドガン』を顕現させ素早く三発発砲した。

 それらは吸い込まれるように進藤の脳天、心臓、右足に命中した。進藤は何も分からないままダウンした。

 開幕、鷹一から見て北西の位置に投入された進藤は、アクティブ装備である『アクセル』を起動し、鷹一の方に向かって尋常ではない速度で接近していたのだ。常人であれば、虚を突かれる無理やりなアクセル速度。しかし、鷹一はレーダーで接近に気付き、冷静に対処した。あまりにも速すぎるアクセルにより、進藤は自身の速度を制御できず、方向転換に難があった。鷹一はそれを一瞬で見抜き、進藤が方向転換の際に止まった瞬間を狙い、淡々とハンドガンを撃ち込んだ。

 

 進藤が鷹一に撃破されたのは試合開始僅か8秒後のことだった。これは、今年度の一年生で最速の退場速度だった。

 

(北西のユニットは進藤だったか。そしてやはりアクセル使い。使い方は少し驚いたが、進藤を始末できたのは良かった。それに、こっちに寄ってくれたおかげでタイムロスもない。結果は最高だ。おそらくかなり投入運が良い)

 

 鷹一は大通りを東に向かって走りながら内心で僅かに笑みを浮かべた。進藤を撃破した瞬間から鷹一は既に走り出していたのだ。

 

『鷲島、そっちに凄い速度で――! あれ、消えたぞ!』

 

 遅れて気付いた金崎が警戒を発した。レーダー情報は仲間同士で共有されていたため、彼もまたレーダー上で鷹一に急接近する光点に気付いたのだ。

 

『問題ない。俺の北西にいた敵は進藤だった。今、撃破した。これでとりあえず1点だ。それと作戦を伝える。紫苑、そのまま通信を維持しつつレーダーを起動。指定したビルの屋上まで昇って周囲を確認してくれ。もしかしたらレーダーに表示されていない二人を視認できるかもしれない。あと、最南東のアンノウンが北上している。高い所からなら姿が見えるかもしれない。その時は、ライフルに付けたスコープを上手く使って、誰か確認してくれ。ただ、発砲はしないでくれ。そこからだと狙うのは難しいし、紫苑の位置が露見する』

 

 鷹一はマップのマーカー機能を使い、雲川に目標としたビルを示しながら、彼女に指示を出した。

 

『こ、このビルを……う、うん』

 

『金崎、大通りを東に向かって警戒しながら進んでくれ。ただし逆認識が反応したら俺に教えてくれ。俺が戦闘中で返答できない場合は、逆認識が切れるまで元の道に戻って、その後ビルの中に入って隠れてくれ。俺も東側に向かって撃破点を狙う』

 

『了解!』

 

 指示を出している間も鷹一は走り続け、そして、それにより新たに二つの光点がレーダーに現れた。

 

『金崎、全員の位置が割れた。北側には敵はいない。レーダー上の光点の射線に入らないように、全力で東に走れ』

 

『了解!』

 

 金崎の返事を聞きながらも、鷹一は走りながらもハンドガンを二発発砲した。それは丁字路から顔を出した土橋の脳天と心臓を貫いた。土橋もまた、何も分からないままダウンした。

 

「え?!」

 

 少し大きな驚きを含んだ声を、鷹一の耳が拾った。声の方向は丁字路の先からであり、鷹一からは見えない方向だった。だが、その声は投入室で会った吉川のものだということを鷹一は理解していた。

 鷹一は速度を落とさないまま走り続け。丁字路を通る時に二発、吉川に向けて発砲した。目の前で土橋がダウンするのを見た吉川は反射的にシールドを展開していた。

 しかし、吉川の魔力と魔力操作技能で反射的に出せるシールドの質は低く、体全体を守ることはできなかった。縦には、鼻から腹、横では肩幅より短い距離の薄いシールドを展開した。鷹一の放った魔力弾は吉川の脳天と心臓に命中した。脳天には直接、心臓は体の斜め横からシールドを迂回するように打ち込んだ弾により貫通した。吉川は『サブマシンガンを出して通り過ぎる敵を攻撃する』と考えながらダウンした。サブマシンガンを出す時間はなかった。

 

 そして丁字路を通過する際、鷹一はダウンする吉川の奥に人影を捉えた。チームメイトである金崎だった。金崎は消えゆく吉川を見て瞬時にアサルトライフルを出すが、吉川のダウンを確認しすぐにしまった。鷹一は金崎の確かな成長に、極僅かに頬を緩め、そしてすぐに南に向かって走り出した。

 

『土橋と吉川を撃破した。金崎、良い動きだ、このまま東に進んでくれ。走る速さは普通でいい。逆認識の反応に気を付けながら進むんだ。俺は南側のユニットを狙う。紫苑、屋上についたか?』

 

『ま、まだ……も、もうちょっと』

 

『南東にいたユニットが北に上がってきている。屋上についたらすぐに東側をスコープで確認するんだ。発砲はするなよ』

 

『わ、分かった……!』

 

 南に向かって走りながら鷹一は思考を巡らせた。

 

(初期の東にいたユニットが一つ消えた。誰かがダウンさせた。最南東のユニットは移動速度から見て、『普段は多少走れるが重装備のせいで機動力が落ちている、重装備の特性を知らない、または知っていても練習をしなかった人間の動き方』だ、歩法的にも杉山だと考えられる。新しく現れた二つのユニットのうち遠い方は移動速度が速いがアクセルは使ってない速さだ。それでいて周囲の状況から察するに判断力があり単騎でも強い駒――天野だな。警察署に陣取る駒は天野とは別チームだ、よって成田か坂場。そしておそらく天野が東にいたユニットを落とした。ダウンしたユニットは成田か坂場だな。消去法的に俺の南にいるユニットは浜口か。こいつは、かなり接近しないと気付けなかった。間違いなく隠蔽装備をつけている。隠蔽レーダー戦は時間を浪費する。ここで必ず撃破しておきたい)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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