学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
時間は少し遡る。
日曜日の午後の部の観戦会場の観客の人数は少なかった。これには幾つかの理由がある。
まず第一試合を観戦した生徒が、必ずしも第二試合を見るとは限らないという点だ。
生徒の中には熱心な生徒もいればそうでない生徒もいる。また会場で見る生徒もいれば、必要な試合だけアーカイブで見れば良いという生徒もいる。『何となく第一試合は見たが、第二試合は見なくても良いだろう』『第一試合を見て十分な気持ちになったので第二試合はもういいや』という生徒もいた。
そして熱心に見る生徒の多くは試合の研究、潜在的な敵チームの調査という意味で試合を見ている。そして、そういった生徒たちは常に忙しく全ての試合に時間を割けないだ。つまり、見る試合と見ない試合を分けていると言える。
また、マッチング的にも問題があった。午後の部最初の試合であった『劉・麻倉・鈴木・高光のチーム戦』は暫定11位から19位の次期Bランク候補たちの戦いであり、注目を集めたが、次戦である『白銀・有坂・清水のチーム戦』は暫定23位から26位の試合であり、観客たちの注目度が下がっていた。
そして最後の試合である『雲川・天野・杉山・吉川のチーム戦』に関して言えば、参加するチームが全て、第二試合から初めて参加するチームであった。チーム戦は数をこなす方が圧倒的に優位だ。一試合分の得点獲得の差が大きいからだ。故に、第一試合に出れなかったリーダーは脅威に値しないと考えていたからだ。ゆえにこの試合の観客は少なかった。
そして、それは実況に選ばれた二年生も同じ気持ちだった。高橋と言う名前の二年生の生徒は、『ノーデータだし、何とも言えないけど、第一試合に出てない時点で、優秀な駒は残って無いだろうから、大した試合にはならないな』と考えていた。二年生ゆえにマッチングの仕組みも多少理解しており、伝統的にこの時間帯が下位陣のハズレ試合という知識を持っていたこともあり、高橋の実況意欲は低かった。
『ええっと、それでは試合開始です。各チーム投入されました。結構偏った投入になりましたね。北側が誰もいないというのは――は? ちょ、アクセル速い! 進藤選手、凄まじい速度で鷲島選手に、――って、ええ!? 進藤選手ダウンです。えっと、これは転んだ……? あ! 違う! 撃破です。得点は鷲島選手。ええっとどうも、発砲していたみたいです。何時撃った……? って、ええええ! 速い、速いです、鷲島選手、尋常でない速さで大通りを東に進みます! これはアクセルでしょうか?』
高橋は混乱しつつも一度、解説の二年生に話を振った。
『アクセルにしては移動速度が遅いので……でも、普通に走ってるとは思えない程の速さです。信じがたいことですが、これは慣性アクセルですね。高等技術なので、一年生が初陣で使うようなものじゃないんですが……でもそうとしか考えられないですね。慣性アクセルはアクセルを使った応用技です。凄いざっくりと説明するとアクセルの加速力を落とす代わりに持続時間を伸ばす技です。魔力操作に長ける生徒だと使えたりします。主な使い方は直接的な戦闘ではなく、移動で使う形です。移動方法としては通常のアクセルよりも制御しやすいので好まれます。本来のアクセルは加速が大きく、そのため瞬時に敵に近づくことができますが、これは逆に言うと旋回性が低いということです。実際の例としては、先程ダウンした進藤選手が分かりやすいです。凄まじい速度で接近しましたが、旋回性の無さが仇となり鷲島選手に打ち取られました』
『解説ありがとうございます! そして何と話している間に鷲島選手がさらに二得点です!! 土橋選手・吉川リーダーを射殺しました!! ハンドガンを使うのは珍しいですが、これは、走り撃ちのためでしょうか!?』
『いや、ちょっと何とも……アクセル中に射撃するのはかなり高等技術なんですが、慣性アクセルならできなくもないか。なので恐らく走り撃ちのために取り回しの利きやすいハンドガンを選んでますね。ただ凄まじい射撃精度です。進藤選手に対する射撃も凄かったですが、土橋選手・吉川リーダーに対しては走りながらで正確に弱点部位に命中させてます。これはちょっと尋常じゃないです。最初はマグレかと思いましたが、三連続なので、マグレではないですね。射撃の鬼です』
『鷲島選手、凄まじい射撃精度です! そして、ここで南へ方向転換。慣性アクセルが切れたっぽいです、って! え! また慣性アクセル! え、これ、え、ダブルアクセルですよね? いや、ダブル慣性アクセル!? そんなこと可能なんですか!?』
『え、いや、ちょっと……それは流石に……』
解説役の二年生も思わず口を噤んだ。【アクセル】には重大な欠点が二つあった。
一つはクールタイムだ。一度使い終わったアクセルは再使用まで時間がかかった。しかし、これには対策があった、アクセルをアクティブ装備枠に二つ装備し、片方がクールタイム中にもう片方のアクセルを使用するという方法だ。この方法はダブルアクセルと呼ばれていた。ただし、これには乗り越えなければいけない障壁があり、それが二つ目の欠点とリンクしていた。
アクセルの二つ目の欠点――それはアクセルがクールタイム中の時に他のアクセルを使用する場合、制御能力が極めて難しくなるという性質だった。そのため、ダブルアクセルを実用レベルで使える生徒は極端に少なく、二年生でも両手の指で数えられる程度しかいなかった。つまり、一年生の初試合でダブルアクセルを使用するなど、有り得ないことだった。
だが、これは誤解だった。鷹一はダブルアクセルはおろか、アクセル自体、使用していなかったのだ。その誤解が解かれるのはもう少し先の事だった。