学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
第二試合終了後の翌日の月曜日から、『雲川チーム強化トレーニング』は再開となった。現状の確認と今後の目標を話すためにも、鷹一は雲川・金崎の両名と話す時間を作った。
「まず、次の第三試合までの訓練に関してだが……とりあえず、対戦相手が判明するまでは、紫苑は得意を伸ばし、金崎は基礎能力を伸ばしたいと思っている。これは、将来的には紫苑は特化型になって欲しいからだ。金崎は特化型にするかもしれないし、万能型にするかもしれない。理由は魔力だ。紫苑は魔力が低い。あと現状撃ち合いが金崎以上に苦手だ。基礎を全部延ばす時間がない。だから特化型にする。金崎は紫苑より魔力があるし、飲み込みが早い。今後のチーム戦次第だが、とりあえず、一通り能力を伸ばしておきたいと思っている。二人とも、ここまではいいか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「う、うん……特化型って……?」
疑問を挟む雲川に対して、鷹一は制するように手を伸ばした。
「よし。それで対戦相手が分かった後は、恐らく対戦相手の研究と対策になると思う。前回の試合相手はどのチームも雲川チームと同じで初試合だったため情報がなかったが、次の相手はマッチング的に考えて、既に一戦以上したチームだ。ゆえに対策が可能だ――Aという選手を攻撃する時どのように攻めるか、Bという選手から身を守る時どのように守るか、そういった対策だ。そして、紫苑、特化型に関してだが……紫苑には狙撃を専門にして欲しいと思っている。これには二つ理由がある。まず分かりやすく長期的な理由としては、前回の第二試合での戦い、試合の最中、遠距離から杉山を狙ってもらったのを覚えているか?」
「……うん、覚えてるよ。でもあれ、当たらなかったよ……?」
「そうだ、命中はしなかった。だが近くには当たった。紫苑と杉山の間には800メートル以上の距離があった。本来なら近くに当てるのも難しい距離だ。今まで狙撃の訓練は殆どしていないにも関わらず、紫苑は杉山の至近に当てることができた。だから紫苑には長距離射撃のセンスがあると思ったんだ。それに、紫苑はシールドがかなり苦手だ。近距離や中距離の撃ち合いよりも遠距離から一方的に狙撃できる状況の方が戦力として活きるだろう。これが長期的に紫苑に狙撃を専門にして欲しい理由だ」
「う……うん、えっと、もう一つは……?」
雲川が不安そうに先を促した。
「もう一つは直近の理由だ。次の第三試合ではマップが変わる。第二試合で戦った『第三外縁部』から『農業エリア』に変わる。『第三外縁部』は高密度の建物が乱立していたが、『農業エリア』は建物が全体に低密度だ。つまり、至る所で射線が通る。射撃戦、特に狙撃や砲撃の有用性が大きく上がる。紫苑は狙撃で俺と金崎を援護して欲しい」
「そ、そうなんだ……! わ、分かった……」
まるで初めてマップが変わる情報を得たとばかりのリーダーを見て、鷹一は何とも言えない気分になった。
「……あとで、『農業エリア』のマップの勉強もしよう」
「う、うん……」
勉強と聞き雲川はどんよりとした気持ちになった。
「あ、その鷲島、聞いてもいいか……?」
「ああ、何だ? 金崎」
「あ、いや、その、鷲島の考えにケチをつける訳じゃないんだけど……その、次のマップは実は俺もちょっとだけ見てて……次のマップってたぶん中央が有利なんだよな……? あ、いや、俺の勝手な思い込みかもしれないんだけど……」
言い淀む金崎に対して鷹一は目を見開いた。
「そうだ……! 金崎……! 『農業エリア』では中央の東西に伸びる建物群の背が高く、マップを南北に分割している。北側と南側を、射線でも移動でも分断していると言っていい。そして、中央はどちらの戦場にも介入できる上に射撃の優位性を持てる……! よく気付いたな……!」
目を見開き、次々と言葉を刻む鷹一に、金崎は僅かに怯える。何か怖かったのだ。一方で、鷹一はやる気がある金崎の態度に感動していた。
「あ、ああ……その、マップ発表があって、俺も確認してて……いや、鷲島と考えが同じなら良かった。あ、いや、でもそれで聞きたいことあって……その鷲島の考えに文句があるわけじゃないんだが、それなら、俺もそっちの訓練をした方がいいんじゃないか……? 狙撃か、あとは、素早く中央に入れるように、機動力の……アクセルの練習とかの方がいいと思ったりしたんだが……」
予防線を張りながら、金崎は進言した。金崎にとって鷹一は戦闘でも座学でも雲の上の存在だ。故に、口を挟むことに対して抵抗があった。けれど、『疑問を感じたら言って欲しい』と以前から鷹一に言われていた金崎は勇気を出して、質問したのだ。
「そうか。それは確かに悪くは無い考え方だ。金崎は現状の装備だと隠蔽性能も高い、故に狙撃役として考えても悪くは無いが……そうだな、俺は基本的に金崎には生き残って欲しいと思っている。つまり任務点を取って欲しい。任務点は重要な得点源だ。だが、次のマップは任務点を取りにくい。特に、紫苑は装備的に任務発行まで生き残れない可能性が高い。だが、金崎、お前ならば、シールド技術をもっと上昇させれば、生き残れる可能性がある」
そこで鷹一は一度言葉を切り、金崎を見た。金崎は僅かに揺らいだ。それを見て、鷹一は再び口を開いた。
「まあ、この辺りは、マッチングの対戦相手次第だが、次の試合までにシールド技術を磨いた金崎の生存率は、40%程度はあると思っている。それと、シールド技術だけではなく、アサルトライフルの射撃練習もする。それだけでも十分に射撃能力は上がる。狙撃専用の装備でなくとも『農業エリア』の中央からは南北戦場に介入は十分に可能だ。あと、さらに言うと、中央を確保できるかは運だ。中央を確保できる前提の装備にはしない方がいいだろう」
「あ、なるほど……分かった、あれ、でも……あ、いや、何でもない。ごめん、鷲島の言う通りだ」
金崎は内心で『じゃあなんで雲川さんは狙撃装備なんだ』と思ったが、すぐに察して黙った。
「疑問を解決できたなら良かった……金崎、良い着眼点だった。今後も気になることがあったら言ってくれ」
「あ、ああ……!」
「あと、言い忘れていたが、アクセルについては、今はまだ止めておこう。将来金崎にも装備してもらうかもしれないが、アクセルは単純に扱いが難しく一週間で覚えられない。それにアクセルは重量変化に繊細だ。装備の総重量が変わる毎に、アクセルの感覚を覚え直さないといけない。だから、金崎の装備が完全に決まってから――金崎のチームでの役割が決まってからアクセルを装備してもらいたい」
「分かった。すまん、アクセルの勉強は全然できてなくて、今、その性質は初めて知った」
「大丈夫だ。全部をすぐに覚える必要はない。必要なところから少しずつ覚えていこう……それじゃあ、二人とも、今日からまた訓練メニューをこなしていこう。紫苑は狙撃の練習、隠蔽の意識、マップの射線を重視していこう。金崎は今まで通り、射撃とシールドの練習を重視しよう。俺の手が空いている時は、週の初めはマップ覚え、後半は対戦相手を意識した戦い方を教えよう。それと第一試合と第二試合の気になった試合のアーカイブを購入しておいた。チーム内での共有は許されるようだから、もし良かったら確認してくれ」
バトルアーカイブは自チームが参加しているものは無料で配布され、参加していない試合はZPで購入可能だ。鷹一は、貴重なZPを使い、重要度が高い試合のアーカイブを購入していた。それだけ各選手の情報は重要だと鷹一は感じていたのだ。