学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
そうして、またしても訓練の日々が始まった。雲川・金崎の両名は夕方までは授業・訓練・自由時間の三種類をそれぞれの配分で行い、鷹一は夕方までは授業に出て午後には雲川・金崎に必要な知識や技能を教えていった。
そして、週の後半になると、各チームの対戦相手と試合日時が判明した。再び日曜日の試合となり、鷹一はぐっと拳を握りしめた。しかし一方で、対戦相手を見た時は僅かに眉を寄せた。対戦相手に警戒するべき生徒がいたからだ。
鷹一は、半日を使い、対戦相手となる、星川チーム、近藤チーム、淡路チームの研究を行った。どのチームもはっきりとした長所があるチームだ。初戦で戦った吉川チームや杉山チームとは、レベルが違い過ぎた。
三チームの長所・短所、考えられる試合展開などを鷹一は考察した。そして、対戦相手発表の翌日の夕方、鷹一はいつものように非公開設定にした訓練室で雲川チームの作戦会議を開いた。
「昨日発表された相手チームについて話したい」
「ちょ、ちょっと待って……」
鷹一の言葉に対して、雲川が慌てるように口を挟んだ。
「紫苑、どうした?」
「あ、あのね……えっと鷹一くん。その、前言ってた……えっと、その……友達ができたんだ……」
「…………? …………ああ、雲川チームに勧誘する候補を見つけた、ということか?」
鷹一は、雲川の言葉の意図が読めず、最初は困惑するが、すぐに、あたりをつけて問いかけた。
「う、うん。そう。あ、でも、ちょっと悩んでて……」
「そうか。候補がいるなら勧誘するのは早い方がいいだろう。現状、選手の取り合いは激しい。優秀な――いや、良いと思った選手は早めに勧誘するべきだ」
「それはそうなんだけど……その灯さんって人と仲良くなったんだけど……えっと、桜花さんとも仲良くなって……三人で友達になれたんだ。桜花さんは良いって言ってくれたんだけど……」
「……? すまない。紫苑、話がよく見えない。その『灯』という選手を勧誘したいという話でいいか?」
またしても意図が読めない言葉を聞き、鷹一は疑問を感じつつも、雲川に結論を促す。
「う、うん、それは、そうなんだけど……でも、それだと桜花さんが困ると思って……」
「……? ……ああ、その『桜花』というのは選手ではなくリーダーか? それで、その桜花は現状選手を一人も確保していない。故に、紫苑と桜花は互いに『灯』を譲り合っている、ということか?」
「! そ、そう! それ……!」
必死の雲川はようやく自分の言葉の意味が鷹一に伝わり、僅かばかりの安堵の表情を浮かべた。
「そうか。譲ってもらえるなら、貰う一択だと思うが……だが、紫苑、恐らく、お前の中で、桜花が今後選手を確保できるイメージがない、又は、確保できるかどうかは分からないが、保険のためにも『灯』は桜花のチームに入るべきだと思っている、ということか?」
「そ、そんな感じ……」
「分かった。このチームは紫苑のチームだ。無理に入れたくないなら、それでいいだろう。ただ、話を聞くと、桜花は性格上『灯』を受け入れない可能性がある。もしそうなったら、『灯』をチームに入れるということでいいか?」
「……うん、その、そうなったら、灯さんも入るチームがないと困ると思うから……」
雲川の言葉を聞き、鷹一は内心で苦笑しつつも、それを表には出さなかった。
「分かった。そこは紫苑と状況に任せよう。それで、他には何かあるか?」
「ううん、ないよ」
「分かった。報告してくれてありがとう。次の試合の対策について話そう。次、戦う星川チーム、近藤チーム、淡路チームだが……ちなみに二人はこのチームはどこまで知ってる? 三チームとも第一試合と第二試合の両方に参加しているチームだが、どこまで知ってる?」
「え、えっと……淡路チームは、見たことがあったかも……?」
雲川がおっかなびっくりと発言した。
「そうだ。紫苑。よく覚えていたな。二人で、いや、匂坂と三人で見た『零・有坂・水渕・淡路チームの戦い』にいたチームだ。他のチームの試合は見たか?」
「み、見てない……」
「そうか。金崎はどこまで知ってる?」
「え、あ、えっと、ごめん、俺も第一試合はそんなに見てない。ただ、一応、第二試合分は鷲島が購入してくれたバトルアーカイブを少し見てみた」
金崎はそう言うと、過去の記憶を思い出しながら少しずつ話し始めた。
「……えっと淡路チームは確か、舞島・三宮と戦ってたと思う。リーダーの淡路がブレード突撃で二人も倒してた。あと長山ってやつがかなり凄かった。アサルトライフルと一緒に使う……ええっと、……拡張弾倉! 拡張弾倉を使って凄い弾幕で一人倒してた。あと拡張弾倉無しでも一人倒してた気がする……淡路チームの他のメンバーはちょっと覚えてない」
朧気な記憶を辿りつつも、金崎は少しずつ言葉を紡ぐ。
「……あと、星川チームは西山もブレード突撃が使えて、それで一人倒してた。ただ星川チームの試合はなんか匂坂チームが強すぎてそっちの方が印象強くて……えっと、最後の近藤チームは……ええっと飛山チームに負けたチームだったと思う。あんまり活躍してる感じはしなかったけど、あーでも、確か一人飛山チームと相打ちになった人がいたはず。岡……なんとか、って生徒」
金崎は、必死に記憶を掘り起こした。
「アーカイブを確認してくれてたか……それに要点は覚えてるな。淡路チームはリーダーの淡路がブレード突撃が上手く、これまで三人も倒している。ただ、アクセルの構造上の欠点を突かれて毎回ダウンしている。長山は拡張弾倉を使った制圧を得意としている。拡張弾倉起動時はシールドを展開できないためか、仲間のシールドに隠れることが多い。これまでの戦いだと、第一試合は宮田、第二試合は木村のシールドに隠れて拡張弾倉を使っていた。宮田は遊撃手的なポジションだ。一般的な中出力シールドとアサルトライフルを使う。チームのために必要なことをするタイプで、第一試合では長山の盾となりダウンし、第二試合では淡路の元へ向かおうとする敵を妨害しダウンした。木村は今までの動きを見るに隠蔽装備の情報担当だ。立ち回りは紫苑に近い。ただ、木村は状況に応じて前線に出るタイプだ。実際第二試合では長山の盾となってダウンした。総じて、淡路チームは仲間同士の連携が強いチームだ。戦うならば個別に、特に単独だと力が落ちる長山や木村は孤立しているところを襲いたい相手だ」
そこで、鷹一は一旦言葉を切って、二人の様子を見た。雲川は説明に何とかついてきており、金崎は十分ついてきていた。鷹一は説明を続けることにした。
「次に、星川チームだが、このチームは危険なチームだ。特に、リーダーの星川が、かなり優秀な生徒だ。星川は、試合ごとに装備を変えていて、それは状況に合わせているものだ。相手の弱点を突く装備や、その試合の展開を予想してチームの必要となる装備を用意し、それを十全に使いこなすことができる人物だ。戦略・戦術に長け、そしてそれを活かせる戦闘力を持っている。かなりの強敵だ。また、星川チームの他の面々も強い。特に西山はブレード突撃が淡路以上に上手く、装備もおそらく隠蔽装備で固めている。淡路と違い射撃はしない故に、今回もマップでは脅威度合は落ちるが、それでも純粋な近接戦闘能力では最も強い人物だ。星川・西山の両名は今回の試合相手の中で突出して強い。おそらく二人とも戦闘順位30位以内に入っているだろう。そして、脇を固める黒井・姫乃も、平均以上に戦闘をこなせるタイプだ。純粋な戦力としては星川チームがトップだ。おそらく、雲川・星川・近藤・淡路チームが何も考えずに戦えば星川チームが勝つだろう。欠点は西山が射撃戦に参加できない所、黒井の射程がやや短く援護能力に欠ける点、姫乃がやや短慮なところだ。射撃戦が重要になるであろう次の試合で、射程が長く冷静なユニットは星川一人だけだ。そこが星川チームの数少ない弱点だ」
鷹一は再び言葉を切って二人を見た。雲川は説明についてこれなくなっていた。金崎はまだ何とかなりそうだった。鷹一は少し悩んだが、説明を続けることにした。
「最後に、近藤チームだ。このチームは任務点を意識しているチームだ。第一試合では全員が任務点の確保に成功しており、さらに言うと第二試合でも任務点を確保するために序盤は交戦を控えてチームの合流を意識した。まあ、金崎が言ったように、第二試合では任務発行までの間に伊藤が欠けて、残る四人も飛山チームの立体攻撃で全滅したが……ただ、岡野は見事だった。飛山チームの多段的な攻撃の中、一人でも道連れにすべく行動し、実際に飛山チームの伊舎堂を打ち取った。あの状況で一人と相打ちに持っていけるのは、優秀な選手と言える。伊藤も戦闘能力が高く注目に値する選手だ。反面、近藤・田中・網倉はそこまで脅威ではない。相手が一人で、こちらが冷静に対処すれば十分に撃破可能な相手だ。ただ、近藤チームは合流を意識するチームだ。故に、近藤チームと戦う時はレーダーや視界に他の近藤チームがいないかどうかをよく調べる必要がある」
鷹一は雲川を見た。雲川はビクリと肩を震わせた。雲川は内心で、『ちゃんと聞いていない事がバレたかもしれない』と慌てた。鷹一は『今日はこの辺りが限界か』と悟った。
「第三試合で戦うチームはこんな感じだ。ああ、それと、少し面白い視点になるが、星川チームと近藤チームは第一試合でも対戦している。つまりこれが二回目の戦いになる。おそらく両チームとも互いの対策をしているだろう……各選手の詳細情報と注意点については纏めて共有フォルダに入れておく。適時確認しておいてくれ。とりあえずはこんな感じだ。残りは訓練にしよう」
「分かった。鷲島、色々教えてくれてありがとう。凄い勉強になった。作ってくれた資料も見ておくよ」
「……わ、私も、がんばる……」
金崎が真っ先に答え、雲川は少し遅れてから鷹一に言葉を返した。
「そうだな。チーム戦では誰と戦うことになるかは、始まるまで分からない。だから準備だけはできる限りしておこう。ああ、それと俺が研究に使った各試合バトルアーカイブは共有フォルダに入れておく、注釈を少し入れておいたから、もし余裕があったら見てくれ。本番で戦う選手の予習になるし、もしかしたら、俺が気付けていない点に気付けるかもしれない」
鷹一はそこで一度言葉を切るが、すぐに付け加えるべき言葉を思い出した。
「それと、知っているとは思うが、自チームが参加した戦闘ログは無料で見直すことができる。つまり、前回の試合は無料で見れる。天野の立ち回りは、射撃戦の参考になるから、二人とも良かったら見ておいてくれ。すぐに天野の動きを真似するのは難しいと思うが、将来的にできるようになるといい」
「天野だな、分かった……!」
「え、え……そのいっぱいあって、全部は難しいかも……」
金崎はしっかりと頷き、一方で雲川は言葉を濁した。
「次の試合までの優先順位は、各選手の対策資料を読むのが一番大事だ。そして余裕があったら、アーカイブを見てくれ。天野の動きはまだ見なくてもいい」
「そ、それなら……」
「いや、待て……念のため言っておくが、紫苑、次戦う選手が順位表で何位かどうかは分かっているか?」
「え……?」
リーダーの特権である選手の入学時の順位表――それを指摘された雲川は意味が分からず惚けた声を上げた。
「紫苑。お前は順位表を持っている。この情報には俺や金崎はアクセスできないが、それでも紫苑は個人的にはアクセスできる。戦闘適性順位は絶対ではないが、ある程度強い選手は意識しておくといい。とりあえず40位以内の選手は非常に危険、80位以内の選手は戦闘が得意な選手と覚えよう。次の試合も俺の作った資料よりも、まずは順位表を確認してくれ」
「わ、分かった……あ、でも、鷹一くん。これ、ちょっとおかしいよ……」
「おかしい? 何がだ……?」
「あのね。順位表なんだけど、欠けがあるの。2位と7位、8位、あと12位もいないみたい。他にも書かれてない順位がいて――」
「――紫苑、待て。それは共有禁止の情報だ」
雲川が全て言い切る前に鷹一が静止の言葉を口にした。
「え? あ、うん……?」
「順位表の情報は四月の終わりまで共有禁止のルールがある。気を付けよう」
「え、あ、でも、この順位表、壊れてるよ……?」
「順位表で分かるのは選手の順位だ。リーダーの順位は分からない。紫苑、この話は一旦止めよう」
話を止めない雲川を止めるように鷹一が再度の言葉を放った。
「う、うん。じゃあ、2位と7位の人は――」
「――紫苑、この話はやめよう。それよりも大事な話がある。最近の練習の件だが……」
鷹一の言葉を聞き、雲川は顔を逸らした。狙撃の練習がまったく上手くいっていなかったからだ。
「え、えっとね。その、ちゃんとやってるんだよ……でも……当たらなくて……」
「そうか。実戦では良かったが、訓練だとできないか……少し珍しいが、そういうこともあるか。恐らく、紫苑は実戦の方が強いタイプなんだろう。たぶんだが、次の試合で戦う淡路と同じタイプだな。あの男も、恐らく訓練よりも実戦の方が強いタイプだ」
「う、うん……」
「ただ、それでも訓練は続けよう。狙撃練習をしておいた方が、実戦で引き出せる力が上がるかもしれない。少しずつ、確実にやっていこう」
「わ、分かった……」
雲川は鷹一の真剣な瞳に、気圧された。
「金崎はいつも通り、射撃とシールドだが、今回は俺が相手になろう。俺が、近藤・田中・網倉・伊藤・岡野・黒井・姫乃・淡路・宮田あたりの射撃を真似るから、それを上手く防御してくれ。星川と長山は諦めよう。星川はあまりにも実力がありすぎるし、長山が拡張弾倉を起動した場合は助からない」
「分かったけど、鷲島、そんなに真似できるのか……?」
「試合で見た感じの各選手の魔力量と射撃の癖は覚えた。完璧には再現できないが、そこそこ似た形で射撃はできるだろう」
「そ、そうか……」
金崎はちょっと引いた。
「あと、余裕ができたらブレード突撃の対処法を教えよう。今回は淡路と西山が使ってくる。ブレード突撃の対応は難しいが、もしかしたら、試合で役に立つかもしれない」
「わ、分かった……」
金崎は、段々とスパルタになっていく鷹一に対して、少しばかりの恐怖を抱くのだった。