学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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※第三試合の対戦相手である淡路チーム視点です。

★登場人物
【淡路高広】
 淡路チームのリーダー。新入生ながら高等テクニックである『ブレード突撃』を使いこなす。高い判断力・度胸・戦闘センスを持つが、やる気に欠ける。

【木村真】
 淡路チームの通信担当。座学は得意だが、戦闘は苦手。真面目で仲間想い。

【宮田良太】
 淡路チームの遊撃手。淡路チームでは最強の戦闘順位の持ち主。冷静で連携能力がある。

【長山翼】
 淡路チームの火力担当。淡路チームの随一の魔力の持ち主で、拡張弾倉を使った高火力攻撃を得意とする。強気で楽観的。

★淡路チームのこれまでの戦歴
第一試合:零・有坂・水渕・淡路のチーム戦
⇒零チームに敗北するが、淡路が単独で撃破点1点と任務点1点を確保して合計2得点。

第二試合:舞島・三宮・淡路のチーム戦
⇒舞島チームに敗北するが、淡路・長山がそれぞれ撃破点を2点稼ぎ、淡路・木村・長山の三人が任務点を確保。合計7得点。


淡路チームの作戦会議

 

 雲川チームが作戦会議をするように、他のチームもまた第三試合に向けて準備を進めていた。

 

 淡路チームもその一つだ。淡路チームは一時寮でたまたま一緒になった四人がそこそこ気が合い、何となくの流れから結成されたチームだ。ゆえに、第三試合への対策会議もまた一時寮で行われていた。

 

「まあ次も余裕でしょ。前回と同じで、俺と淡路で点を取る、上手く行けば任務点も取って、6点くらいは固いだろ」

 

 狭い寮室の中で、長山が声を上げた。第一試合では零チーム相手に惨敗した淡路チームであったが、第二試合では7点を確保していた。そのためか、長山はかなり楽観的になっていた。

 チームメイトの宮田もまた楽観的に構えていた。

 しかしリーダーの淡路は違った。この男は、常に悲観も楽観もしなかった。寡黙に淡々と次の試合に備えていた。だが、その備えは完璧なものではなかった。『ほどほど』の備えだった。

 なぜなら、淡路には大きな欠点があった。それは熱意が欠けるところだった。ある程度調べれば満足した。実戦でのセンスは抜群で、試合での度胸と判断力もある。しかし、熱意や戦略的な視点には欠けていた。ゆえに、第一試合で根崎に敗れたのと同じように第二試合でもブレード突撃の隙を舞島に撃ち抜かれたのだ。

 

 ただ、救いがあるとすれば、このチームには熱意に溢れる人物がいたことだ。

 通信レーダー担当の木村は、淡路とは逆の人物だった。戦闘センスもなければ、度胸もないし、決断に時間がかかった上に誤った判断をすることもある。しかし、彼は自身の間違いやミスと向き合う懸命な人物であり、何より、チーム戦に対する熱意と、この気のいい奴らのチームに対する忠誠心を持ち合わせていた。

 

「長山、油断するな。今回は前回より俺たちの順位は上がってる。マッチングの仕組みから考えて、同格が当たりやすい――つまり、前回よりも強いチームと当たる可能性が高いんだ。実際、星川チームはかなり強いぞ。俺たちで太刀打ちできるかどうか……」

 

 木村が長山を制するように言葉を紡いだ。

 

「戦う前から、びびるなって、ムラちゃん! 俺と拡張弾倉、あと淡路のブレード突撃を信じろって」

 

「そこは信じてはいる。だが、魔力量に秀でた相手が大出力のシールドを展開したら、長山の射撃は無力化する。実際、五条相手の時は手も足も出なかっただろう」

 

「それはそうだけど。さすがに、アレは例外でしょ。五条は硬すぎるよ。あんなのがゴロゴロいるとは思えないって。てか、実際、ムラちゃんの調査だと、次戦う相手は、そんなに魔力は高くないんだろう? だったらそんな苦戦はしないだろ」

 

 長山が得意げに言葉を作った。一方で、木村は渋い顔をした。

 

「確かに、俺が調べた限りはそうだ。試合を見た感じ、シールド強度はそこまで高くない。拡張弾倉を使えさえできれば殆ど倒せるだろう……ただ、いくつか懸念がある。まず拡張弾倉使用中は長山はシールドが使えないだろう。次のマップは射線が通るところが多い。確実に使えるタイミングは長山が誰かと合流した後だ。それは投入運が関わる。長山だけ孤立して投入されて、近くに星川や西山、あと岡野や鷲島あたりがいると不味いだろ」

 

「流石に悲観しすぎじゃない? そういう状況なら、そいつらにも射線が通りまくるだろうし、誰かしら援護できる位置には投入されてるだろ。俺だって、そういう状況ならシールドで固めて宮田が淡路が来るまで耐えるから」

 

「……そういう考えなら、確かに何とかなりそうだが……淡路、お前はどう思う? リーダーとしての意見を聞かせて欲しい」

 

 木村がリーダーである淡路へと話を振った。

 

「……そうだな。木村の言う通り、投入運にかなり左右されるとは思う。俺も見た感じ、星川・西山・岡野・鷲島あたりは警戒すべきだと思う。ただ、そうだな、長山との相性という意味なら、西山・岡野・鷲島は危険度が高いと思う。拡張弾倉を使ったとしても相打ちか、最悪、長山だけ落とされる可能性はある」

 

「マジか? 拡張弾倉使えるってことは、2体1の状況だよな。それで俺だけ落ちるのか? ……まあ、西山はブレード突撃だよな。あれは確かに隙を突かれたら落とされるかもしれないけど……でも、流石に射程で勝てるだろ。拡張弾倉を使えば西山が突撃してくる前に蜂の巣にできるんじゃない?」

 

「西山のブレード突撃は俺より上手い。加速力があり接近速度がかなり違うはずだ。それに、西山には『崩し』がある。間合いが通常のブレードよりも広いし虚を突かれやすい」

 

「そっか。分かった。西山相手には気を付ける。てか、状況的に気を付けても駄目か。西山対策はどうする? 俺と宮田と淡路でタコ殴りにするとかか?」

 

 リーダーである淡路の言葉を聞き、長山は少しだけ己惚れている自身を戒め、強敵である西山対策に関して問いかけた。

 

「それも一つの手だ。一定間隔を空けて相互に援護できる距離を保てば、西山のブレード突撃で一人落とされても、残った方が西山を落とせる。俺が言うと説得力があると思うが、アクセルは軌道が読みやすく、特に終了時は隙が大きい。そこを狙えば倒せるだろう。もっと良い方法としては、西山が近藤チームや雲川チームと戦ってるときに横から襲う手だ。こっちの方が安全だし、上手く行けば漁夫の利を得れる。星川・岡野あたりの強い駒もこれで落としたい」

 

 淡路は冷めた表情で自身の失態――過去の二試合でブレード突撃の隙を突かれたことを口にした。淡路なりにミスを自覚しているということを示す言葉でもあった。

 

「あー、それの方が良さそうだな。上手い感じに食い合わせるのか。分かった。その辺、次の試合は意識するわ。あ、あと、聞きたいんだけど、西山は分かったんだけど、何で岡野と鷲島も危険なんだ? 岡野は確かに強いけど、シールド的にもそこまで脅威じゃないだろ。鷲島は……確か下位から上がって来たチームのやつだよな。下位から来たってことはそんなに脅威じゃないだろ」

 

「岡野は相打ち性能が高い。具体的に言うと、投擲ブレードの精度と射程が尋常じゃない。岡野は死にかけの状態で、あの飛山チームから、ブレード投げで一人打ち取ってる。岡野は倒せても、近くにいる駒をかならず一人道連れにする駒だ。単純なスペックも近藤チームの中では頭一つ高い気がする。星川・西山ほどではないと思うが、危険な駒だ。鷲島に関しては、俺も詳しくは見ていないが、機動力がかなり高い選手だと二年生の実況が言っていた」

 

「岡野は分かったけど、鷲島情報はぼんやりしすぎだろ。ちゃんと試合チェックしてない俺が言うことじゃないけど、なんか鷲島の情報は無いのか?」

 

 問いかける長山に対して、淡路ではなく木村が手を挙げた。

 

「一応、その試合は観戦会場で見ていた。鷲島はその試合で6点取ってる。撃破数だけなら、俺たちを全滅させた根崎越えだ」

 

「え? 雲川チームって10点取ったって聞いてたけど、6点鷲島なの!? え、何そいつ。化物? それとも運が良いヤツ?」

 

「何とも言えない。一応、二年生の先輩方が言うには、20~30位前後の選手の選手らしい。ただシールドは持ってないって話だし、アクセルも付けてないから……拡張弾倉を起動できる状態なら長山が勝つとは思う。ただ……」

 

「シールド無し? 機動力があって、アクセルはない……? いや、ごめん、全然分かんない。どんな選手だ?」

 

 長山は訳が分からないとばかりに木村を見た。

 

「ああ、説明は難しいんだが、とにかく足が速いんだ。たぶんだが、アクセル無しなら全生徒で一番早いレベルだと思う。それでいてハンドガンの走り撃ちが尋常無いほど上手い。撃った弾が基本全部当たる。これで6人倒してる」

 

「ハンドガン……? アサルトライフルじゃなくて……? いや、ますます分からん。ハンドガンって貫通性かなり低いよな。どうやってシールド突破するんだ? 状況が分かんない」

 

 淡路チームの中でも拡張弾倉を使った重射撃を行う長山にとって、シールドを貫通できないハンドガンとはゴミ同然の装備であった。間違って装備するアホな生徒はいるかもしれないが、それで撃破点を獲得する――それも6点も獲得するなど、長山にとって、あり得ぬ話だったのだ。

 

「いや、本当に説明が難しいんだが、奇襲みたいな感じで、出会い頭にハンドガンを早撃ちしている。あまりにも早すぎる早撃ちで、対戦相手はシールドを張る前にバタバタ倒されてた」

 

「あー、なんとなく分かった。凄い状況だな……そうか、それで機動力か……いや、でも、それって強いのか……? ハンドガンだけでシールド無しってことは、たぶん鷲島ってやつは魔力が殆どない生徒なんだよな。あんまり強い感じはしないし、とても戦闘順位20~30位に思えないんだけど」

 

「それは……俺も少し思った。凄い活躍なんだが、地味と言うか……ちゃんとシールド張れば怖くないし、奇襲に警戒すれば十分じゃないか、とは思った。ただ、二年生の先輩方は俺たちよりも遥かにチーム戦に詳しいはずだし、その先輩方が20位~30位っていうなら警戒すべきだと思う。俺たちの中で最強なのが宮田の84位だ。まあ、あの化物みたいな根崎が先輩方が言うには3位って話だし、20位~30位クラスの鷲島は警戒すべきだと思う」

 

「そっか。まあ、ムラちゃんが、そこまで言うなら気を付けるか。というか、星川・西山・岡野って何位くらいなんだ? ムラちゃんの予想聞きたいんだけど」

 

「予想か。外れるかもしれないが、いいか?」

 

「そこはモチロン。てか、淡路以外は分かんないし、しゃーない。何なら、淡路の顔見ながら予想聞いとくから、ワンチャン予想精度上げられるかも」

 

 そう言うと長山は淡路をじっと見た。

 

「悪いが、俺は順位表をそんなにちゃんと覚えてない。俺の顔の変化を見ても無駄だぞ」

 

 淡路が無表情に言い放った。

 

「マジか。あれ、じゃあ、淡路が順位表見ながら、その状態でムラちゃんが予想言えばいいんじゃね?」

 

「それはルールに抵触しそうだから、俺はやらない」

 

 長山の提案を、淡路は無表情のまま拒絶した。

 

「相変わらずノリ悪いな。分かった。淡路抜きでやろう。ムラちゃん! 予想!」

 

「分かった。間違っても怒るなよ。先輩方が言うには、鷲島が20位~30位だから……星川と西山は10~20位に入ると思う。岡野は……30~50位くらいか? ただ、俺の中での鷲島の評価は高く見積もっても……50位くらいなんだ。だから、全然分からない。岡野は鷲島より強く見えて、星川・西山は明らかに飛び抜けてる。ただトップ10位には入ってないと思う。あと岡野は30位くらいが限界だと思う。どちらにしろ、俺たちよりは1対1なら強い駒だ」

 

 促された木村は慎重に自分の考えを口にした。

 

「結構上だな。あー、そういえば、星川対策はどうする? というか、ムラちゃんと淡路の予想的に、対策しても意味無いんだっけ?」

 

「ああ。俺と淡路の予想だと、星川は毎回装備や戦術をがらりと変える。試行錯誤中なのか、よく分からないが、そういうタイプだ。そしてどの装備でもある程度強い……まあ第二試合は匂坂チームの山見にやられてたが、あの試合は化物が多すぎるからノーカウントでいいと思う」

 

「匂坂チームは本当におっかないよな。アレって俺たち四人がかりでも勝てると思う?」

 

「匂坂は不可能だ。というか、今まで誰一人として匂坂に傷一つ付けられない。アレは無敵だ。あと谷崎・石河も無理だ。量産型根崎みたいなやつらだぞ。山見はもしかしたら状況次第では取れそうだが……普通に強そうだからな」

 

「話が逸れてないか?」

 

 長山と木村の会話が第三試合対策から逸れていることに気付いた宮田が口を挟んだ。

 

「そうだな。話を戻すか。とりあえず、俺たちは射撃戦ならそれなりにこなせる。次のマップはチャンスだと思う。色々と状況パターンを考えて作戦を練ろう――」

 

 木村が話を戻し、熱心に調べた情報をもとに淡路チームの作戦について語っていく。それを長山がメインとして聞き、ところどころ宮田が口を挟む。

 そして、淡路は一人、冷めた瞳で状況を見守っていた。

 

 淡路は順位表を完璧に覚えているわけではない。なぜなら、淡路には熱意が欠けているからだ。

 ただ、それでもはっきりと覚えていることがあった。淡路チームを苦しめた化物――根崎の戦闘順位が9位だということ。そして、次に戦う、鷲島鷹一の順位が1位だということだ。

 あの根崎でさえ9位なのだ。世界は、いや、この学園は広すぎる。そして、次は化物の中の化物である1位との戦いだ。1位がいる以上勝つのは難しい。

 しかし、淡路はそのことをチームメイトには伝えなかった。順位表の伝達禁止ルールもあるが、それ以上に、もし伝えれば『勢い』が無くなると淡路は感じたからだ。恐らく、悲観論では木村は緊張するし、長山もパフォーマンスが落ちる。それを淡路は肌感覚で理解していた。

 そして何より、鷲島鷹一という怪物の対策をするほどの熱意を淡路は持ち合わせていなかった。なるようになり、それで数点確保すればよい、と考えていた。

 

 味方を欺き、死地を悟らせないのが、ある意味で、淡路の選んだ作戦だった。

 

 

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