学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
★登場人物
【星川里菜】
星川チームのリーダー。戦闘順位上位。高い万能性の持ち主。戦術・戦略も得意。真面目だが統率力は少し低く自由奔放なチームメイトに苦戦する。容姿がとても可愛い。
【黒井友香】
星川チームの通信担当だが戦闘もできる。容姿がとても可愛い。顔で採用された。ぼんやりしていて掴みどころがない。対応力に長ける。
【西山瑠香】
星川チームの近接担当。非常に高い戦闘能力を持つ。容姿がとても可愛い。顔で採用された。自他共に認めるドS。
【姫乃恋】
星川チームの射撃担当。平均的な戦闘能力。容姿がとても可愛い。顔で採用されて第二試合から参戦する。目立ちたがり屋で褒められたい。
★星川チームのこれまでの戦歴
第一試合:秩父・星川・舞島・近藤のチーム戦
⇒近藤チームと引き分け。星川・西山がそれぞれ撃破点2点取り、全員(星川・黒井・西山)が任務点を確保する。合計7得点。
第二試合:匂坂・安重・梶田・星川のチーム戦
⇒匂坂チームに敗北する。西山・姫乃がそれぞれ撃破点を1点確保する。黒井が任務点を確保する。合計3得点。
そして、全てのチームに警戒されている星川チームはというと……彼女たちは作戦会議をしていなかった。いや、正確には、リーダーの星川が作戦会議の名目で招集したが、メンバーの我が強く、作戦会議として機能していなかった。
「というわけで! 皆さん! 次の試合は中央の確保、射線管理が極めて重要です! 初期位置によっては上手くいかないこともありますが、それぞれが――」
「はーい! 皆さーん、次に戦いたい相手は誰かいますかー? 私は金崎くん狙ってまーす!」
「はいはいはい! 私、もっと目立ちたい! 前回の試合あんまり目立たなかった気がする! もっとチームポイント稼いで、実況の先輩たちにチヤホヤ褒められたい!」
「うーん? 今、里菜ちゃんが何か言ってなかった?」
リーダーである星川里菜の言葉を無視して、西山瑠香・姫乃恋が好き勝手に喋り、そして視線を天井へと向けている黒井友香がワンテンポ遅れて言葉を口にした。
星川は、大きなため息が出るのを必死で抑えた。そして内心で、『こいつら、フリーダムすぎる』と毒吐いた。
「えっと……皆さん。とりあえず、私の話を――」
「反対意見が無いようなので~、金崎くんは私の獲物ってことでいいかな? あと長山君あたりも狙いたいかなー、次点で近藤さんと雲川さんも良さそー」
星川が懸命に話しかけようとするが、西山がそれを無視して話を続けた。
「獲物とかどうでもいいから、私が目立つ作戦がいい!」
そして、姫乃もまた自分勝手な意見を口にした。
「えっと、その、まず、西山さん、投入運の影響が大きいので、誰と戦うかは基本的には選べません。撃破点を稼ぐのはいいんですけど、状況に応じて戦う相手を変える可能性はあるので。あと、姫乃さんが目立つ作戦は考えますが、やっぱりこっちも投入運次第です。それと、姫乃さんはもう少し安定した射撃をしてほしいです。次は射撃戦が凄く重要なマップなので、油断しないで下さい」
「えー、次のマップは作戦とか意味無いと思いますよ~」
「別に油断してないよ? てか、油断うんぬん関係なくない? 前の試合で点取ってないの油断してない里菜ちゃんだけじゃん」
西山と姫乃の指摘――特に姫乃の指摘が星川をイラつかせた。星川は内心で『前の試合の私は6位と11位に挟まれたんだぞ』と怒声を上げつつも、それを表には出さなかった。
「ええっと、前回は不甲斐ないところをお見せしました。ただ、それは今回の作戦会議とは関係ないので、とりあえず、作戦会議っ! しますよっ! ここのお代だって私が払ってるんですから」
現在、星川チームが会議に使用している喫茶店は飛山チームや雲川チームが使うものと同じ秘匿性が高いところであった。そして、その使用料金として星川が貴重なZPを捻出していた。
「いや、会議もなにもなくない? 投入運次第なんだし、その場その場で戦うしかないでしょ。実際うちらの中で一番強い里菜ちゃんだって、前回は即落ちだったんだし」
しかし、姫乃がばっさりと星川の提案を切り裂いた。そして、ついでとばかりに前回の試合の星川の脱落を指摘した。姫乃には悪意は無かった。ただ、姫乃は他人への配慮に欠ける人物であった。
「確かに淡路チームと雲川チームは下位チームですし、同じ上位落ちの近藤チームとは一度やってますしねー。固まられなければ私が全員狩りますよ~」
一方で西山は余裕を持った笑みと共に、弾むような声を上げた。これはほぼ事実であった。1対1という状況下において、今回戦う生徒の中で西山に敵う生徒はいなかった。もちろん、たった一人例外はいるが。
「投入運次第なところはありますが、それでも作戦は立てるべきです。試合には、最善を尽くして挑むべきだからです。それと西山さんの対人能力は信頼してますし、次の試合でも頼りますけど、それはそうと全体の動きは決めておかないとダメですっ!」
一直線な星川の言葉を聞いて、西山は内心で『真面目ですね~』と苦笑し、姫乃は『めんどくさいなー』と悪態を吐いた。
「はい。ちょっと喋っていいかな? 里菜ちゃんは会議がしたい、瑠香ちゃんと姫乃ちゃんはしたくない、それなら、間を取って、マップ中央関係の会議だけするのはどう? 二人の言う通り投入運は確かに大事だけど、中央を取れる取れないは大きいでしょ。中央を取れたケースと取れないケースの作戦くらいは立てようよ」
状況が進まない中、黒井が手を挙げて意見を述べた。星川は『よし! やっぱり黒井さんは結構ちゃんとしてる! ちょっとお惚けだけど……』と内心でガッツポーズをした。
「まあ、私もどうしても作戦会議したくないわけじゃないですし、いいですよ~」
「うお? 反対派、私一人……? まあ、じゃあ、友香ちゃんも言ってるし、作戦会議してもいいよ」
西山に梯子を外された姫乃は、仕方がないとばかりに意見を翻した。
「なんで、黒井さんが良ければいいんですか?」
少し疑問を感じた星川が姫乃に問いかけた。
「いやー、だって友香ちゃんは前回落ちたの最後だし、それにあのヤバい匂坂から逃げ切ったし、さすがに言う事きくでしょ」
姫乃の言葉を聞き、星川は内心で『いや、リーダーの私の言葉をまず聞けよ』と思ったが態度には出さなかった。
「お? 褒められちゃった、ありがとう姫乃ちゃん」
星川の内心を知ってか知らずか、黒井は作ったような笑顔で姫乃に感謝を述べた。
「あ、うん……どうでもいいけど、何でいつも私だけ苗字呼びなの?」
「え~、何となくかな?」
姫乃の問いかけに対して黒井は笑って答えた。ただし、その目は虚無色に染まっていた。
※
そうして、何とか星川は作戦会議を始めることができた。
とはいっても、その内容は他のチームと大きく変わることはなかった。中央を取れれば確保するが、絶対ではない。中央を取られてしまった場合は無理に奪還を目指さずに、状況に応じて撃破点を稼ぐという作戦になった。駒質が他のチームよりも高いことが星川チームの大きな利点だったからだ。特に星川・西山の両名は突出して駒質が高く、この二人を軸に作戦は立てられた。
序盤に運よく中央に投入された場合の行動も決まった。星川・姫乃の射撃組ならば中央からの支援を中心に、西山の場合は近くにいる他のチームのユニットを狩り射撃組が来るまで中央を確保することになった。また黒井は通信担当だが、比較的戦える通信担当のため、場合によっては中央での戦闘を行うことになった。
そして、星川は上手く話題を誘導し、どさくさにまぎれて、対戦相手の対策の話に議題を持っていた。
「私は、タイマンなら誰にも負けませんよ~。というか、1対2でも、だいたいイケそうです。あ、でも基本はタイマンがいいですっ! 絶望させたいですし、特に金崎くんっ!」
「そういえば、何で、金崎くんに拘るの? なんかあるの?」
西山の言葉に対して、姫乃が問いかけた。
「そ、れ、は~、一番泣かしたいなーって思ったからですっ! なんか弱そうで、ちょっと可愛がったら泣いちゃいそうな感じがイイなーって思いましたっ! あと、近藤さんと雲川さんもいい感じにメンタル弱そうなので、狙っていきたいです。あと、木村くんも狙い目かな……? あ、でもでも、メンタル弱いのだけ狙ってるわけではありませーん、長山くんとか、田中さんとかも狙ってます。なんか調子乗ってそうな感じがしますし、どっちが上か分からせてあげたいですっ! 淡路くんとか岡野さんもイイかな~。澄ました感じの顔ぐちゃぐちゃにしたいっ。それで、最後は鷲島くん。メインディッシュですねっ。他のデザートを食べてから……でも味が強すぎて食べられないかもしれないですね。なんか、食べたら胃もたれしそうな感じがします」
自身の性癖に関して語り出す西山を見て、順位表を完璧に覚えている星川は内心で『鋭いな』と感じたが、それは顔には出さなかった。
星川は、鷲島鷹一の圧倒的な戦闘適性の情報は秘密にすることにしたのだ。言えば間違いなく西山は鷲島に食いつく。そうすれば取れる点が取れなくなると星川は感じたのだ。
西山には鷲島以外の駒とぶつかって欲しいと星川は考えていた。順位的に考えても、実戦での振る舞いを見ても、西山は鷲島以外の駒を確実に屠れるのだから。
「はい! 皆さん、そういう過激な発言は禁止です! 忘れてると思いますけど、このチームのテーマはアイドルチームですからね! アイドルは清楚な感じじゃないとダメですよ!」
内心はおくびにも出さず、星川は表向きの注意の言葉を発した。なお、これは嘘ではなかった。星川はある理由からアイドルチームを目指していた。
「いやー無理っしょ。瑠香ちゃんはドSだし、里菜ちゃんは真面目過ぎるからアイドル向いてないっしょ」
姫乃が再び星川の言葉を一刀両断した。星川は内心で『私は可愛いから、真面目とか関係なく向いてんだよ。てか顔採用じゃなきゃ姫乃(おまえ)は採用してねーからな』と怒声を上げるが、表には出さなかった。
「ドS系アイドルでーす!」
「駄目ですっ!」
妙にノリノリな西山の言葉を星川が即座に遮った。
「え~、案外イケると思いますけど。駄目ですか~?」
「駄目なものは駄目ですっ! アイドルたるもの清楚でなければっ! それとっ! 西山さんと姫乃さんは訓練するときは、必ず秘匿モードでやって下さい。ログに残っちゃうので、他の人に戦い方がバレちゃいますからっ!」
「星川さん、細かいですよ~、そんなの誰も見ないですって~」
星川の注意に対して、西山が少しめんどくさそうに答えた。
「秘匿モードって何?」
一方で姫乃は、そもそも星川が何を言っているのか分からなかった。
「練習場でログを外部に公開しない設定だよ。前に里菜ちゃんが言ってたよ」
姫乃の疑問に対して黒井が答えた。姫乃は『そういえば、言ったかも?』とぼんやりと思い返した。
「分かったけど、そんなのわざわざ見てる人いるの? 普通に試合で手の内明かしちゃってるんだし、わざわざ自主練まで覗く人なんているの?」
姫乃の疑問に対して、星川は『お前みたいに考え無しばっかじゃないんだよ。射撃やシールドの癖は見抜かれるとヤバいんだよ。特にお前は癖だらけだから弱点を突かれやすいんだ』と内心で怒気を上げるが、顔には出さず、
「気にしてる選手もいますからっ! 実際、雲川さんのチームは秘匿モードで自主練やってますよっ。これはかなり意識が高いチームです。ということは逆に雲川さんのチームは対戦相手の自主練のログも漁ってる可能性がありますっ!」
と必死に説明した。これで能天気な姫乃にも少しは危機感を伝えようと思ったのだ。しかし、姫乃は別のことが気になった。
「なんで雲川チームが自主練で秘匿モードって分かったの?」
「? いえ、普通に、練習場に通ってるのにログがないからですけど」
星川の言葉を聞いて、姫乃は露骨に引いた。星川は突然の姫乃の態度の意味が分からず困惑するが、それは次の西山の言葉で理解した。
「星川さん、ストーカーじゃないですか。ストーカーアイドルだ~。私なんかよりよりずっとヤバイじゃないですか~」
にやにやとした顔の西山の顔面を見て、星川は拳を振るいたくなったが、鋼の意志で堪えた。
「情報収集です! 戦うチームについて知り万事を尽くすのは当然のことです……!」
「でも前回0点だったじゃん」
鋼の意志で堪えた星川の言葉に対して、姫乃がまたしても余計な一言を加えた。
星川は溢れんばかりの苛立ちを抑えながらも、作戦会議を続けることにした。
結果として、今回の戦いの注意点――鷲島の早撃ちへの対策、姫乃は慌てず勝手に飛び出さずに支援射撃に徹すること、黒井は基本的に序盤は生き残りを重視するが場合によっては仲間の支援のため前線に出る可能性があることなどを話すことはできた。また鷲島・淡路・岡野・伊藤の四つの駒と1対1で戦わないことを姫乃と黒井には厳命した。
星川の忍耐の勝利であった。