学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

32 / 134
第三試合② 序盤戦

 

 試合会場に投入されるや否や、鷹一は自身の位置と周囲の様子を確認し『大出力レーダー』を起動し、表示された光点を確認する。

 

『逆認識は反応してない。近くには誰もいないよ』

 

 以前の試合よりも少しだけ慣れた様子の雲川の声が、通信機を通して鷹一に響いた。

 

『岡野がいる! 逆認識は発動してないけど、向こうも気付いてる! こっちに近づきながら撃ってきた! シールドで耐えたけど、割れそう! どうすれば!?』

 

『金崎、俺もすぐ近くにいる。今向かっているから、少し耐えてくれ。紫苑、そこは射線がかなり通る。周囲に警戒しながら建物の中に入るんだ』

 

 通信をしながらも、鷹一は岡野のいる方へ向かい、そして途中、南東から銃撃を受けた。しかし、それを当然のように避け、チラリと発射元を確認する。近藤チームの田中が、中央の建造物の4階から射撃をしたのだ。

 

(初期位置は近藤チームの田中が中央、岡野が西寄りで、俺と金崎で挟んでいる。岡野は倒せるが、金崎も倒されそうだな……金崎が耐えてくれることを祈るか。マップ北部に淡路チームの淡路・長山・宮田が纏まってる。さっきの田中の俺への射撃で淡路達も気付いたはず。二チームで撃ち合いになるな)

 

 鷹一は走りながらも現状を分析する。

 

(南側は紫苑とアンノウンが2枚。他の位置は不明。南の戦況がまったく読めない。紫苑が生き残ってくれれば多少は読めそうだが……それにしても星川チームの位置を全く特定できないのが痛い――南東の駒が消えたか。消える直前に高速移動をした。おそらく撃破されたのではなくアクセルを起動して俺のレーダー範囲外に移動した。機動力と隠蔽力から考えて星川チームの西山の可能性が高いな)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 建物群を縫うように進む、鷹一は岡野の下へと加速する。

 

『鷲島、不味い、かなり距離を詰められた。シールドが――』

『――え?』

 

 次の瞬間、雲川チームの通信が途切れた。それと同時に鷹一は岡野の背後を取りハンドガンを三発発射した。鋭い銃撃が岡野の下へ殺到する。しかし、それらは全て岡野が反射的に展開したシールドによって弾かれた。田中が岡野に対して、鷹一の急接近を警告していたからだ。

 独特の歩法で接近しながらハンドガンを撃つ鷹一に向けて岡野はアサルトライフルで反撃する。しかし鷹一は向かってくる魔力弾を全て回避し、逆にハンドガンによる射撃を岡野の両手足に命中させていく。心臓や頭部の致命的部位を岡野はシールドでガードしながらも必死にアサルトライフルで反撃するが、それらは全て鷹一に回避される。

 

――そして、次の瞬間、金崎が放ったアサルトライフルの魔力弾が岡野に殺到した。

 

 数発が岡野の胴体に命中する。岡野は咄嗟にシールドを金崎側にも向けるが、その分鷹一に対するシールド面積が減ってしまう。そしてその隙を突くように鷹一の放った魔力弾が岡野の心臓を貫通した。岡野は散り際にアサルトライフルの顕現を解除し、ブレードを顕現、並み外れた膂力で、ブレードを金崎めがけて投擲した。

 同時に鷹一もブレードを顕現させ、投擲されたブレードに向けてブレードを投げつけた。金崎へと向かっていた岡野のブレードは外部からのエネルギーを受け、軌道を大きく金崎から外した。

 

 鷹一が岡野に向けてハンドガンを発砲してから、僅か数秒の攻防であった。

 

『…………あ、悪い、鷲島、気づかなかった。これで通信できてるか? ああ、いや、それよりありがとう。助かった』

 

 金崎は自身が所有する通信母機が呼び出し中となっていたことに気づき、慌てて通信をONにして、鷹一に応答した。

 

『いや……よくやった金崎。良い援護射撃だった。一瞬、撃破されたかと思ったが……どうやら、南側で紫苑が落ちたようだ。俺は南の戦場に介入する。金崎は今から俺が送る座標に移動して、そこから北側の戦場を見てくれ。北側はレーダーに映っているのが長山で、ほかに映っていないが、淡路と宮田が近くにいる。レーダーに映っている中央のユニットは田中だ』

 

 先程の金崎と鷹一との間での通信途絶は、金崎がダウンしたからではなく、雲川がダウンしたことによる通信システムの麻痺だった。現在は金崎が通信を代替している。鷹一の予想が半ば当たった形になった。

 

『あ、ああ、分かった。偵察してくる。鷲島も気を付けて……!』

 

『ああ、北側は頼む。南側を片づけたら戻って来る』

 

 話しながらも鷹一は既にマップの南側を目指していた。西側から南下して、中央の建造物を避ける構えだ。岡野を撃破した直後、南東に残っていたアンノウンも消滅した。

 

(アンノウンが落ちたか。状況的に西山に落とされたな。ただ、俺のレーダーに映っていたことを考えると隠蔽装備を身に着けていない人物かつ星川チームと敵対的なチーム。淡路チームの三人は北側にいる。落ちたのは近藤チームの伊藤か。不味いな……。これは星川チームが勝ちそうな流れだ。西山を仕留めたいが……そう上手くはいかないか)

 

 思考しながらもマップ南側に到着した鷹一を出迎えたのは、圧倒的な量の弾幕であった。

 

 鷹一は特殊な歩法で弾幕を回避しながらも建造物に身を潜める。普段の射撃回避歩法による接近は行わなかった――いや、行えなかった。理由は弾幕量と射手との距離だった。鷹一を狙った射手――星川との距離は遠かった。そしてその弾幕量は通常のアサルトライフルとは段違いに多かった。拡張弾倉を使用した制圧射撃であった。距離が遠く、弾幕が濃く、そして何より射手が優れていた。拡張弾倉を使った攻撃はどうしても魔力弾が散り集約性に問題が出る。しかし、星川の安定した射撃は鷹一とその周囲のみに濃い弾幕を張っていた。

 

 星川のアサルトライフルを使った拡張弾倉は、淡路チームの長山のそれよりも遥かに凶悪なモノだった。もしこれを長山が知れば、彼は自身との差に驚愕するだろう。

 そして近藤チームの面々が知れば『星川、やっぱり射撃型で来やがった! てか重射撃すぎるだろ! お前、そんなことまでできたのかよ!』と怒りに包まれるだろう。

 突撃力の西山、万能の星川、この二人による圧倒的な『個の力』が星川チームの真の脅威であった。

 

 なお、当の星川は、今回の試合で、自身の装備に拡張弾倉を入れた理由は、マップ的に射撃能力を強化したいからという単純なモノもあったが、しかしそれ以上に、ブレード突撃の淡路と、怪物である鷹一の機動力を警戒したからであった。機動力には弾幕で倒す。奇しくも星川の発想は秀川と同じであった。

 しかし、星川はまだ鷲島鷹一という怪物の力の一割も知らなかった。

 

(回避だけだと近づけないな。集約性なら根崎以上、いや拡張弾倉使いの中ではおそらくトップクラス。やはり星川は何をやっても一流だな。四月中にあまりカードは切りたくなかったが、仕方がない……)

 

 状況の膠着化を避けたかったのと、そして何より北側を任せた金崎の下へ早く行くべきだという考えから、鷹一は建物の影から飛び出した。それと同時に星川も再び弾幕を展開した。

 最初の数秒間、鷹一は独自の歩法だけで射撃を回避し、そして歩法による回避が限界に迎える瞬間、アクセルを起動した。

 尋常でない加速力に身を委ねながら鷹一は星川に急接近した。星川の圧倒的な弾幕の僅かな隙を縫うように進み、星川に接近していく。一年生のどの生徒よりも優れた圧倒的な高速機動。星川は淡路のブレード突撃の対策のために、西山と訓練をしていた。西山のアクセルは淡路のそれよりも質が高い。故に対淡路という面では十分な訓練であった。しかし、対鷹一には足りなかった。

 

 そして、ついに鷹一のハンドガンの射程圏内に星川を捉えた。

 鷹一は素早く6発速射――頭部と心臓、両手足を狙ったソレは、一発も星川に命中しなかった。星川は拡張弾倉だけ解除し、薄いシールドを展開したのだ。局所を守るのではなく、体全体を覆う薄い球形シールド。アサルトライフルによる撃ち合いが主流となりつつある現在の環境では、シールドの厚さが足りず一瞬で壊れてしまうシールド。

 本来であれば、まったく無意味なシールドである。しかし、対鷹一という面では非常に効果的なシールドであった。鷹一のハンドガンによる精密射撃の欠点はシールド貫通力が極めて低い点であった。星川はそれを踏まえた対策をしたのだ。そして、それだけでは終わらなかった。星川はアサルトライフルの顕現を解除し、代わりとばかりにショットガンを顕現させた。

 

(流石だ。星川。やはり俺の対策もしていたか……!)

 

 鷹一は、発射されるショットガンを回避しながらもさらにアクセルを利用した機動で距離を詰める。その間もハンドガンによる牽制的な射撃を撃つが、それは全て星川の球形シールドに阻まれた。星川はシールドを維持しつつショットガンで動き回る鷹一を狙うが、一発も当てることができなかった。そして、いよいよ両者の距離が20メートルを切った時、事態が急変した。

 

 一瞬であった。

 星川のショットガンを鷹一が回避した次の瞬間。星川の心臓にブレードが突き刺さったのだ。星川は『アクセルとブレード投擲警戒』と、仲間に最後の通信をしてダウンした。

 

 ブレード投擲。岡野が得意としていたソレは鷹一にとっても得意技であった。

 ブレードは元々シールド貫通力が高い。投擲用のブレードは少々貫通力は落ちるものの、それでもアサルトライフルよりもシールド貫通力が高かった。薄いシールドでは防ぐことはできない。

 鷹一にとって、ハンドガンによる速射は必殺の一撃であったが、同時に相手に『薄いシールド』を強いる一手でもあったのだ。シールドは面積を広げれば広げる程薄くなる。反対にシールドを硬くするには展開面積を狭める必要がある。投擲ブレードを防ぐには、魔力量にもよるが、かなりのシールド密度が必要だ。

 鷹一のハンドガンを警戒するとシールドを広く展開しなくてはならず、そして、そうすれば投擲ブレードによる貫通力で相手を屠れる。また一方で投擲ブレードを警戒すれば、ハンドガンの速射を防げない。二者択一、どちらを取っても相手に致命傷を与えられる。これが怪物、鷲島鷹一の攻撃方法だった。

 

『星川を撃破した。それと南側は戦闘がもう終わっているみたいだ。残党は中央に向かったようだから俺もそっちを追う。金崎、北側はどうなってる?』

 

 通信をしながらも鷹一は既にマップ中央の建造物群へと向かっていた。

 

『あ、ああ、なんか長山が負傷してる。その長山が田中と銃撃戦をしてる。宮田はいない。淡路はさっきより北側にいる。それに、なんか長山の方に寄って……あれ? 今、こっち見た……? あ、あ、淡路が撃ってきた、こっちに近寄ってくる……!』

 

『宮田がいないんだな、分かった。俺も中央へ向かう。金崎………、淡路はアクセル持ちだ。逃げ切るのは難しい。戦うんだ。俺も中央を片づけたら向かう。大丈夫だ。訓練を思い出せばできる』

 

 鷹一は一瞬悩むが、様々な要素を踏まえた結果、金崎への交戦指示を出した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そして、自身は中央の建造物群へと突入した。

――同時に黒井のサブマシンガンによる攻撃が鷹一を出迎えた。鷹一は独特な歩法でそれを避けながら、得意のハンドガンの走り撃ちで反撃する。しかし、またしてもそれは球形シールドにより防がれた。

 

(また球形シールドか。星川がチームメイト全員に指導したか……それに今の射撃、タイミングがベストだった。黒井はアーカイブで見た時から移動タイミングがかなり良いと思っていたが……想像以上だな。だが、魔力量的にも黒井ではブレード投擲を防げないだろう)

 

 思考を回しつつも黒井と距離を詰めながらハンドガンによる射撃を続ける。一方で黒井もサブマシンガンによる攻撃をするも全て鷹一の独自の歩法により躱される。黒井の射撃精度は平均以上のものであったが、星川に比べると精度も弾幕密度も甘かった。アクセルを使うことすらせずに鷹一は黒井と距離を詰め必殺の二撃目であるブレードを投擲する。

 

――しかし、ここで鷹一にとっても予想外のことが起こった。

 

 ブレードが弾かれたのだ。鷹一が投擲したブレードは黒井に直撃する寸前に僅かに弾かれ、脳天直撃コースから逸れたのだ。さらに黒井がそれに合わせて体を大きく捻ることで、鷹一の投擲ブレードを完全に回避することに成功した。必殺の二撃目が躱されたのだ。

 

 『すぐに体勢を立て直してサブマシンガンで反撃を――』と黒井が考えた時には、既に勝敗は決した。黒井の心臓と脳天を鷹一が放った魔力弾が貫いたからだ。

 

 星川から通信を受けていた黒井は咄嗟の機転で投擲ブレード対策を試みたのだ。しかし代償として、球体シールドを解除せざるを得なかったのだ。そして球体シールドがなければ鷹一の高精度射撃を防ぐことはできない。

 

(シールドを極一点に集中させてブレードを弾くとは……驚くべき技量と対応力だ。黒井がシールドを二枚持っていれば、撃破にもっと手こずっただろうな)

 

 内心で驚愕しつつも鷹一は周囲とレーダーを確認する。既にレーダー上では淡路が尋常でない速さで金崎に迫っていた。アクセルによる加速であることは間違いなかった。鷹一は内心で金崎に謝罪しつつも、レーダー上に残る駒である長山の方へと向かおうとするが、すぐにその反応は消えた。

 

(撃破されたか。今の黒井の行動を考えると、長山を撃破したのは恐らく西山。既に残ってるのは淡路と西山だけか……? 近藤と網倉のどちらかが生き残っている可能性は……いや、どちらにしろ今は西山と淡路の撃破を最優先――)

 

 そこまで考えたところで、本日最大の驚愕が鷹一を襲った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。