学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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★登場人物おさらい

【零アリシア】
 零チームのリーダー。非常に高い戦闘センスの持ち主。親友である飛山とともに鷲島を勧誘したが失敗した。自信満々に鷲島に第一試合を観戦するように強要し、実際凄まじい戦果を挙げた。鷲島に力を見せつけれて少し嬉しい。

【根崎彩】
 零チームの大エース。高魔力かつ非常に高い戦闘能力の持ち主。戦闘適性順位9位の猛者。タイマン能力なら零が上だが、火力や防御力は根崎が勝る。

【五条愛】
 零チームの通信・レーダー・シールド担当。零チーム随一の魔力の持ち主。

【上村聖】
 零チームの遊撃担当。何でもできる万能の人物。第一試合開始前に鷲島に勧誘されたが、既に零チームに所属していたため、丁寧に断った。魔力は平均以上はあるものの、高魔力が集う零チームでは最も魔力が低い。

【秀川明】
 零チームの火力担当。鷲島・金崎・渡辺と同じ一時寮に所属している。傲慢な面があるが、仲間には意外な一面も見せる。


第三試合⑤ 観戦会場にて、試合前評価

 

 

 時は第三試合――星川・雲川・近藤・淡路チームの試合開始少し前に遡る。

 

 観戦会場には多くの生徒により賑わっていた。その理由は二つある。

 まず純粋に、情報収集のためだ。現在、新一年生の試合観戦では、二年生が実況と解説をしている。彼らの分析や戦術予想の価値は大きく、少しでも試合に勝ちたい生徒たちの多くは、二年生の実況や解説を求めて観戦会場に来ていた。

 また、もう一つの理由としては、今回のマッチングだ。将来的なBランクになりうるチームによる戦いであり、近いランク帯にいる生徒は、将来戦う可能性を考えて観戦しに来ていた。また、そうでない生徒――現状ではBランク帯など夢の夢になる生徒であっても、上位陣の戦いを見るために来ていた。

 

 実況・解説を担当する二年生たちも、義務だけではなく、好奇心や警戒心から、今回の試合を待ち望んでいた。今年の新一年生の上位層は非常に優れているという話が、二年生の間では既に有名だからだ。

 それもあり、実況・解説を担当する二年生は特別に自分が担当する試合に出場するチームの過去の対戦データを見ることができるのだが、今日の試合の実況・解説は、関係する全ての試合――『零・有坂・水渕・淡路戦』、『秩父・星川・舞島・近藤戦』、『匂坂・安重・梶田・星川戦』、『飛山・氷橋・近藤・中戦』、『舞島・三宮・淡路戦』、『雲川・天野・杉山・吉川戦』に目を通していた。

 

『はい! それでは時間も近づいてきましたので、本日の試合の概要についてご説明したいと思います。ルールは基本的には今までと同じですが、マップは今回からは、第二試合までとは違い、【農業エリア】となります! ここ凄い射線が通るんですよね! たぶん昨日の試合でもう嫌というほど体験している一年生の皆さんも多いと思いますが、本当に凄いですよね。もう、何と言うか、中央を取ったチーム勝ちみたいな感じになっちゃいますよね! 大丈夫です! 二年生も似たような感じです! まあ、射撃連携が問われるマップですね!』

 

 実況の二年生が一度言葉を区切り、息継ぎをして、さらに口を開く。

 

『ではでは、そんな感じで、今回の参加チームに関しまして……ですが、順位の上から順に発表したいと思います。現在、暫定順位14位の星川チーム、同じく暫定順位16位雲川チーム、18位近藤チーム、19位淡路チームとなっております!

 11位から20位の暫定Bランク帯になりますね……! 個室が確実にゲットできるラインで、かつZPの配布にも期待でき、その他の待遇もかなり良いBランク。正直、Aランクとかだいたいどこの学年も超人地獄なので、コスパ的にはBランクが最強だと思います!

 みんななりたいBランク。特に今回は第三試合という、ランク決定が行われる第四試合の一個前という重要な局面です。今回勝ったチームは、恐らく、五月のランク決定でほぼほぼBランク以上が確定すると思われますので、各チーム気合が入っていると思いますが……さて、ぶっちゃけ、どこのチームが勝ちそうですかね?』

 

 そう言うと実況の二年生が、解説の生徒に話を向けた。

 

『そうですね。結論から言うと星川チームが優勢だと思います。なぜかと言うと、ちょっと長くなりますが、まず、各チームにこれまでの経歴について説明したいと思います。

 それでは、星川チームですが、エースの西山選手はブレード突撃が非常に上手い選手です。自分が見た中で一番上手なブレード突撃する一年生が零リーダーですが、彼女を除くと次点で上手いのが西山選手ですね。さらに星川リーダーも射撃能力がとても高くて良い感じです。姫乃選手も新一年生にしては射撃が上手く、黒井選手はあの匂坂リーダーから逃げ切ったところが凄いです。兎に角、このチームは駒質に優れるチームですね』

 

 解説役は一度言葉を区切り、次のチームの説明に移る。

 

『続いて、雲川チームなんですが……このチームはちょっと情報が少ないんですよね。まず第二試合から参加したというチームでありながら、初試合で10得点を達成し、一気に暫定Bランクに入ったチームです。エースの鷲島選手が非常に高機動のユニットで、特殊な暗殺能力を持っています。

 ただ、他の二人がちょっと実力が見えなくて……一応、雲川リーダーは狙撃担当にように見えます。ただちょっと動きが鈍いかな……? 金崎選手の方もよく分からないんですが、こっちも動きがちょっと鈍い感じはしました。ただ、アサルトライフルの射撃は安定していたので、射撃練習を重視していると思われますので、今回の開けたマップでは活躍するかもしれません』

 

『そして近藤チームですが、このチームは合流重視の連携チームです。岡野選手・伊藤選手が戦闘力が高く、他三人がそれを補う感じですね。射撃連携能力があるので、今回のマップとは相性が良さそうな感じがしますが、ただ、全体的に少しまごつくことが多く、第二試合ではそこを飛山チームに突かれて全滅した感じです。嵌れば強そうなチームではあると思います』

 

『最後に淡路チームですが、ここは淡路リーダーのブレード突撃による点制圧と長山選手の拡張弾倉射撃による面制圧の二つの矛を持つチームです。木村選手・宮田選手は両矛をサポートする形になっています。チーム戦術という意味では、このチームが一番確立しているかもしれません』

 

『それで、この四チームにおける試合展開ですが……投入位置にもよりますが、星川チームが駒の質という面でかなり優位です。近藤チームは駒数が多いので、上手く囲めば優位に立ちやすいかと思われます。逆に雲川チームは駒数が不足しているので立ち回りが難しそうです。ただ鷲島選手の機動力はかなり高く、近距離に限り射撃能力が極めて高いという面白い駒なので、状況によっては大量得点を得ることもありえるかもしれません。淡路チームは戦術は確立しつつありますので、個人的には星川チームの次点で強そうな感じがします。総合的には今回の試合を優位な順に並べると、星川、淡路、近藤、雲川といった感じです』

 

 解説担当が四チームについて全て語り終えると、一息ついた。

 

『なるほど! ありがとうございます! 説明を聞いた感じ、駒質が一番大事で、次に連携と戦術が大事、駒数はあまり大事ではないといった感じですか?』

 

『今回の試合はそんな感じです。必ずしも全ての試合でそうなるわけではありません。ただ、今回の試合は質で星川リーダー・西山選手が突出していますね。次点で岡野選手・鷲島選手・淡路リーダーが続く感じでしょうか』

 

『拡張弾倉を持ってる長山選手の方が爆発力はありそうですが、その辺りはどうでしょうか?』

 

『個人的にブレード突撃を高く評価しているので、それができる西山選手と淡路リーダーは評価高いです。ブレード突撃を一年生のこんな時期にできるのは凄すぎですし、ブレード突撃は対策は難しいので、この時期の新入生が躱せるとは思えません。ブレード突撃が発動すれば、ほぼ確で1人持ってけますので、激強いです』

 

 今回の解説役は二年生の中でも【ブレード突撃】という技術を高く評価していた。また、【ブレード突撃】を早期に会得した西山・淡路への期待と尊敬もあった。

 

『なるほど! でも、そうしますと、淡路リーダーのブレード突撃で星川チームの主要メンバーが早期脱落からの星川チーム劣勢という流れもアリでしょうか?』

 

『駒の当たり方にもよりますが、どう当たったとしても、早期に星川リーダー・西山選手の大駒二つが崩れるとは思えませんし、残り駒だとこの二つの大駒の対処が難しいので、やはり星川チームを倒すのは困難です』

 

 解説役は厳しい評価を下すが、すぐに、少し偏った評価かもしれないと思い直し、意見を付け加えることにした。

 

『一応、長山選手を含めた淡路チームの二人以上が中央を確保し、淡路リーダーが上手く星川リーダーをブレード突撃で撃破すれば、勝利の天秤は大きく淡路チームに偏るかと思います。ただ、こういった偏った配置について言い出すと他のチームでも勝ちの目はあって……相互に援護できる距離に数が多く連携できる近藤チームが集中投入されれば、囲まれた駒は大駒であっても窮地に立たされるでしょうし、鷲島選手のハンドガン暗殺術は射程距離が短いものの非常に危険な攻撃です。そういう意味では、どのチームにも勝ち目はあるでしょう』

 

「――と、二年生の先輩方は言ってますけど、零さんは、この試合、どう見ますか?」

 

 一通り二年生のチーム解説が終わったのを見計らい、観戦会場にいた一人の男子生徒――零チームに所属している上村は、隣に座っている小柄な赤髪少女に話しかけた。

 

「単純にぶつかり合ったら星川チームが勝つでしょ。淡路チームは、二年生が言うほど強くないし、近藤チームも弱い駒が多い」

 

 赤髪の少女――零は、少し苛立ちながらもチームメイトの質問に答えた。

 

「雲川さんのチームの鷲島君はどうですか? なんか彼、凄く優秀な感じがしますよね」

 

 上村は愛想笑いを浮かべながら、刺激しないようにリーダーである零に話しかけた。零は苦虫を嚙み潰したよう顔をした。上村は少し後悔しつつも、零の言葉を待った。しかし、その言葉よりも早く、別の所から声が上がった。

 

「アホの鷲島にそんな力量はねーよ。上村、お前、あのアホに誘ってもらったからって、ぬるいこと言ってんじゃねーよ」

 

 声を上げた男子生徒――秀川は上村の方を鋭く睨んだ。

 

「あはは、すんません。やっぱ誘ってもらえると嬉しくて、ちょっと贔屓しちゃうんですね。でも、完全に贔屓ってわけじゃないと思いますよ。鷲島君、一つ前の試合での機動力、アクセル無しとは思えないほどでしたよね? それにあの走り撃ちに射撃精度、Aランク帯でも十分通用すると思うんですけどね~。てか、僕、正面から撃ち合ったら、負けるんじゃないかな?」

 

 上村は愛想笑いを浮かべつつ秀川に応じた。上村は以前、鷲島に雲川チームへの勧誘をされた生徒であった。つまりそれは、攻撃力・機動力の両方で鷲島から一定以上の評価をされた生徒であるということであった。

 

「馬鹿が、一発芸見たくらいで弱気になるな上村。お前なら、あのアホ相手でも負けねぇよ」

 

「いやー、どうでしょう? てか、秀川君は鷲島君相手に……あー、そっか、鷲島君ハンドガンだから、秀川君の防御を突破できないかぁ。でも、実はアサルトライフル使えるってことないですか? あの機動力と射撃能力でアサルトライフル持ったら脅威ですよね?」

 

「それは無い。あいつは魔力が低い。どう考えてもシールドで防ぐ場面で回避を選んだ。それにあの武器選択、間違いなく魔力に至ってはカスレベルだ。実際、俺の魔力探知にも引っかからなかったからな。俺とあのアホの勝負なら、俺が一方的にアホに撃つだけだ。まあ、多少は回避されるかもしれねーが、俺の弾幕の前には無意味だ。上村、言っとくが油断するなよ。万が一、雲川チームと当たることになっても、ビビッてヘマするんじゃねーぞ」

 

「おお……怖い怖い。まあ、失敗はしないように頑張ります。でも僕、秀川君ほど魔力無いんで、鷲島君相手にするのは避けたいですね~。この辺りは魔力高い秀川君か、あとは根崎さんにお願いしたいですね。っと、せっかくなんで聞きたいんですけど、根崎さん的には鷲島君どうですか? うちの大エース根崎様のお力なら、やっぱり鷲島君クラスでも瞬殺ですか!?」

 

 上村は、近くにいた気が強そうに見える女子生徒――零チームの主力である根崎に、急に話を振った。根崎はびくりと体を震わせた。

 

「え!? ど、どうでしょう~? なんか、鷲島君って強いみたいですからー。瞬殺はちょっと難しいですし……」

 

 根崎は、どこかびくびくと周囲のチームメイトである零、五条、秀川の顔色を見ながら慎重に言葉を選んだ。気が強そうで反抗的な見た目に反して、根崎はとても気が弱かった。

 五条は根崎の態度を見て頭に疑問符を浮かべ、秀川と零は苛立った表情になった。

 

「あっ、あ! でもっ! そのっ! 戦うからには頑張りますっ! 頑張って倒しますっ! う、うん、倒せる、と思う、たぶん……」

 

 苛立った二人を見た根崎は慌てて、言葉を続けた。しかし、後半になると段々と強い言葉はかき消え、不安そうな顔をした。零チームで最大クラスの火力を持ち、数々の敵を屠ってきた根崎であったが、彼女は少し引っ込み事案であり、メンバーの中では一番弱気で柔和な人物であった。

 

「ったく……根崎、お前は普通に強いんだからもっと堂々としろ。あんまり言いたくねぇが、お前は、俺より強いから心配するな。万が一にもアホの鷲島に遅れは取らねぇよ。前の試合だってお前が2点を捥ぎ取った。もっと自信持て」

 

 秀川は呆れたように根崎に言葉を送った。秀川なりに、弱気な大エースを気遣ったのだ。もし秀川と同室の金崎・渡辺がここにいたら、『あの傲慢な秀川が』と驚いただろう。

 

「え、えっと、ありがとうございます……あ、でも、その秀川君も、強いですよ……?」

 

 気遣いに気付いた根崎が、感謝を述べた後、秀川に言葉を送った。そして、にへらと曖昧で気迫の無い愛想笑いを浮かべた。秀川は、強者であるはずの根崎の媚びるような笑みに怒りそうになったが、なんとか自分を抑えた。根崎は強いが変な女だから気にするな、と何度も自身に言い聞かせたのだ。

 

「いやー! うちの高魔力二人はめちゃ強いですから、余裕ですね! ついで、高魔力繋がりで五条さんからもお言葉を頂きたいんですけど、なんかありますか?」

 

 秀川と根崎のやり取りを見ていて、気まずくなった上村が慌てたように、話題を逸らし、零チームの最後の一人、ずっと無言で腕を組んでいた女子生徒――零チームの最大の盾である五条に話しかけた。

 

「なんか、とは?」

 

 端的に鋭く、どこか冷たい印象を与える五条の声が上村へと向けられた。五条は弱弱しい根崎とは逆に、真面目で怜悧な印象を相手に与えるタイプだった。

 

「いやー、鷲島君を倒せるかー、みたいな質問です。適当に答えてもらっていいですよ!」

 

「適当、ですか……そうですね、鷲島君というのが誰かよく分かりませんが、私の防御を突破することは不可能でしょう。そうすれば私の勝ちは確定です。話になりません」

 

「……? 防御だけしてて勝てるんですか? あと鷲島君って、今から始まる試合で戦う生徒なんですけど、てか、今までの二年生の話とか、僕らの話とか、五条さんちゃんと聞いてました?」

 

「無論です。Aランクになれば、個室が貰えて、温泉にも入れて、美味しいご飯食べ放題ですよね。覚えてますよ?」

 

「あー、……えっと、すんませんでした。五条さんは防御と通信とレーダーだけ集中してもらって大丈夫です」

 

(五条さんって、見た目、賢そうなのに、なんでこんなにアホなんだろう)

 

 上村は心の中で溜息を吐きつつも、五条に愛想笑いで応えた。

 

 

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