学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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★登場人物

【匂坂キッカ】
 匂坂チームのリーダー。優し気な面影の美少女。鷲島・雲川と一緒に第一試合を観戦した。その縁により、雲川とは友達関係になった。現在、チーム戦暫定一位。

【山見舞希】
 匂坂チームの暗殺者。影が薄い。少し臆病で少し悲観的。優しそうに見える匂坂に釣られてチームに入ったが、想像とは違ったチームで困惑中。


第三試合⑥ 零チームと匂坂チーム

 

 そうして、少しの間、零チームの会話が途切れる。

 試合開始までの間、何か場を持たせた方がいいかと思った上村であったが、彼が気の利いた言葉をチームメイトへ向ける前に、重たい魔力の波が零チームに覆いかぶさった。上村は嫌な予感がした。そして、同時に零チームの全員が魔力の放出元――銀髪の美少女、匂坂キッカの方を見た。

 

「零チームの皆さん、おはようございます。昨日は楽しかったですね」

 

 匂坂は、ねっとりと粘性のある視線を零チームの確認へと向けた。

 零・秀川・五条の三人はそれぞれ自身に強く魔力を纏わせて、敵意を込めた視線を匂坂に向けた。

 上村は魔力を少しだけ自分に纏わせて、すぐに動けるように準備し、根崎は一度恐怖で体を震わせるが、すぐに勇気を出して席から立ち上がり、強い魔力を纏わせて匂坂の方を見た。

 その根崎の動きに合わせてか、匂坂の斜め後ろに影のように隠れていた少女――山見もまた一歩前に出て根崎と向き合った。

 

「何の用?」

 

 リーダーである零が、敵意を込めた視線のまま、端的に匂坂に問いかけた。

 

「用がないといけませんか?」

 

「いけない」

 

「フフッ、そうですか。それでは、今日は大事な観戦日ですから、私も見に来たのです。それで、零チームの皆さんを見かけたので、ついでに挨拶に来たのです」

 

 にこやかだがどこか威圧感を出す匂坂を、零は鋭く睨んだ。

 

「そう、ご苦労様。挨拶が済んだなら、別のとこ行ってくんない? アンタのことあんまり好きじゃないんだけど」

 

「生憎、席が埋まっていますので」

 

「立ち見するならどこでも一緒でしょ。別のとこ行ってよ」

 

「いえいえ、そこに席が空いているではないですか」

 

 匂坂は根崎の隣の席を指差した。ちょうど二席分空いていたのだ。

 

「そこは、根崎が寝ながら見るから埋まってる、他の所行って」

 

「え!?」

 

 零の回答に対して、根崎が素早く疑問の声を上げた。そんな予定は根崎には無かったからだ。

 

「意地悪はいけませんよ、零さん。そんなことをされたら困ってしまいます」

 

 そう言うと匂坂は歩き出し根崎の隣の席へと向かった。しかし、それを秀川が妨害した。秀川は席に座ったまま足を延ばし、匂坂の行く手を阻んだのだ。

 

「勝手に座るな。そこは根崎が寝るスペースだ」

 

「え!?」

 

 続く秀川の言葉にも根崎は困惑の表情を浮かべた。

 

(わ、私、そんなに試合観戦中に寝る子だって皆に思われてるのかな……?)

 

 心の中で困惑する根崎をよそに秀川と匂坂の会話はヒートアップしていく。

 

「フフッ、秀川君、そんな風に邪魔をされてしまうと…………足を踏み砕いてしまいますよ?」

 

「やってみろ」

 

 それに対して、秀川もまた挑発的な表情で応えた。

 匂坂は一度笑みを濃くした後、足を一歩踏み出し――

 

――それよりも、早く根崎が動き、無理やり、秀川の足を引っ込めた。

 

「おい、根崎、何やってんだよ」

 

 秀川の苛立った声が根崎に突き刺さる。同時に、既に立ち上がり匂坂の背後に近づいていた零もまた根崎を睨んだ。

 

「あっ!? いやっ、その~、これはっ! ええっと! 私、寝ながら見たりしませんからっ! その、まあっ! 席も埋まってますし、いいんじゃないですか!? 匂坂さんたちがいても! 私は匂坂さんが隣でも大丈夫ですっ!」

 

 根崎は二人の厳しい視線に一瞬怯えるも、勇気を出してチームメイトの二人を説得し始めた。根崎は、零チームの中でも上位の実力者であり、優れた戦士であったが、それでも弱気で柔和な面があり、排他的な零チームのメンバーにしては、他者に寛大であった。

 ゆえに、根崎としては、匂坂たちが隣に座ることに問題は無かったのだ。たとえ、昨日の試合で零チームが匂坂チームに敗北を喫したという事実があったとしても。いや、むしろ、それよりも、匂坂と秀川が今殴り合いになる方が根崎にとって怖かった。根崎は試合以外で暴力沙汰などまっぴら御免であったし、それに、優れた戦士である根崎には分かっていた。

 

――秀川程度では、いや、たとえ五人全員で殴りかかったとしても、匂坂キッカという怪物には敵わないだろうということが。

 

「フフッ、やはり根崎さん、あなたは別格ですね。昨日の試合も、もしあなたが万全の状態であれば、もっと楽しかったでしょうね。それでは、隣、失礼しますね」

 

 何か含むような笑みを秀川に向けた後、匂坂は当然とばかりに根崎の隣に腰かけた。秀川は怒りに震え、舐められる原因となった根崎のことを睨んだ。しかし、根崎の申し訳なさそうな弱気な顔を見ると、秀川は大きく溜息を吐いて、怒りを鎮め、匂坂たちには関わらないようにした。

 一連の流れを見た零は、一度不快そうに眉をひそめたが、しょうがないとばかりに席に着いた。なお、この間、匂坂チームの山見はこっそりと匂坂の隣に着席した。誰にも気づかれないのは彼女の影の薄さがなせる技であった。

 

『さて、それでは試合開始です――』

 

 そして匂坂チームと零チームの不穏な空気を切り裂くかのように日曜日午前の第三試合が始まった。

 

 

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