学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第三試合⑨ お話タイム

 

 一方で、試合を観戦していた、零チームと匂坂・山見の計7人はそれぞれの表情を浮かべた。

 

「鷲島君一人で4人撃破。任務点も含めると5点獲得ですね。秀川君、先程は随分自信があったようですが、何か感想はありますか?」

 

 匂坂がにこやかな表情で秀川を見た。

 

「ッチ、煽りカスが……」

 

「感想はありますか?」

 

「ねぇよ」

 

「そうですか。ピエロならもう少し踊っていただきたいのですが……まあ、その悔しそうな顔を見れたので良しとしましょう。根崎さんはどうですか? 今の一連の動きを見て、鷲島君やその他の生徒に関して、何か感想はありますか?」

 

 秀川とお話をしてそこそこ満足した匂坂は、続きとばかりに今度は根崎に狙いを定めた。

 

「ええっと、その~、凄く速いなぁって思いました……」

 

 話を振られた根崎は困惑しながらも、必死に答えた。秀川が舌打ちをした。根崎は縮こまった。

 

「それだけですか?」

 

「ええっと、……」

 

「ねぇ、アンタ、人の話聞く気ある? 根崎、困ってるでしょ」

 

 困っている根崎を思いやってか、リーダーである零が口を挟んだ。

 

「そうでしょうか?」

 

「そうよ。というか、アンタ、根崎に嫌われてるから話しかけない方がいいわよ」

 

「フフッ、それは根崎さんから直接聞かないことには……そうですね。折角ですから、根崎さん、良ければ連絡先を交換しませんか? 同じ一年生仲間として、あなたとは特に交換したいと思っています。どうでしょうか?」

 

「ええっと~、そのー」

 

 根崎は周囲を窺った。秀川は苛立ち気味に、そして零も不満げな顔で根崎を睨んでいた。

 

「ダメでしょうか?」

 

 そんな根崎に対して、匂坂が再び催促の言葉を送った。

 

「だ、だめって訳じゃないんですけどー、ああ、でもちょっと、今はその~」

 

「フフッ……」

 

 匂坂が根崎を困らせている一方で、試合会場では鷹一が任務点を確保した。

 

『さて、鷲島選手が無事任務点を確保したため、試合は早期決着となりました。それではお待ちかねのスロー再生タイムです。今回の試合、スローが必要な場面が多すぎですね!』

 

『鷲島選手のスピードが速すぎるので、彼が活躍するところだと、ほぼスロー必須になってますね。ええっと、それでは、最後の西山選手と鷲島選手の対決を振り返っていきたいと思います』

 

『はい! ええっとまず、最初の鷲島選手によるハンドガン固め。これは分かりやすいですね! 鷲島選手が射撃して、西山選手が球形シールドで防ぐ形でした! で、この状況を打破するために西山選手がアクセルを起動して鷲島選手に急接近しました。かなりの速度でしたが、鷲島選手はすらりと回避。そして反撃とばかりにブレード投擲を行って……普通ならここで詰みそうですが、西山選手が謎の動きで回避しました! というかこれ動きというより吹っ飛ばされたみたいでしたが、これは何でしょうか? スローで見ても吹っ飛んでる感じが強いですが……!』

 

 実況役は疑問符を浮かべながらも、内心では、もしやという予想があった。

 

『これは二個目のアクセルを使ってましたね。ダブルアクセルというテクニックです。アクセルのクールタイム中に別のアクセルを使うという、言葉にすると簡単なのですが、実際にやるのは凄く難しい技です。

 まず大前提としてアクセルは制御が難しい装備で、簡単には使えません。その上、アクセルは構造上の欠点が多いです。特に重さに対して非常に敏感なところが欠点一つです。これは何を意味するかというと、アクセルを使用する感覚は使用者の重量によって大きく変わります。

 なので、アクセル使いは装備を選びます。基本的には軽い方がいいです。重い装備だとアクセルの制御がかなり繊細になります。そして、重さが少し違うだけでも使用感がだいぶ違うので、アクセル使いはあんまり総重量を変えるような装備変更はできません。アクセルの制御がしにくくなってしまいます。これはアクセル使いの弱点の一つですね。

 そして、さらに明確な弱点としては、アクセルはクールタイム中に重さが少し変化します。そのため、アクセルのクールタイム中に別のアクセルを使おうとすると、総重量が変わっているので制御感がかなり変わってしまうんです。これがダブルアクセルの難しさです。二年生の中には極僅かに、二種類の重量の両方で繊細なアクセル操作ができるという生徒もいるのですが、それは例外です。そしてそういった例外以外はダブルアクセルはできません。制御不能で吹っ飛んでしまいます』

 

『なるほど! 西山選手はこのことを把握していなかったということでしょうか!? ただ、そうだとしても結果的に鷲島選手の投擲ブレードから逃れられたことにはなりますが……』

 

『いえ、恐らく西山選手は仕様をある程度把握していたと思います。その上で、ダブルアクセルの練習をしていて、実戦レベルでも最低限の制御はできる状態にしていたのだと思います。吹っ飛び方にある程度の方向性があります。それに、吹っ飛びながらも球形シールドは展開しているので、恐らく吹っ飛ぶ前提でダブルアクセルを使ったんだと思います。使わなければ投擲ブレードで死んでたと思いますので、結果的には正しい一手だったと思います。こういった一瞬の戦闘で制御が難しい選択肢も躊躇わず実行できるのは西山選手の強みですね。近接重視の選手は咄嗟の判断力が問われるケースが多いので、西山選手は性格的にも近接向きですね』

 

「性格的……フフッ、言い得てますね。ブレード突撃をする生徒は強気な生徒が多いですから。零さんも強気なのはブレード突撃が得意だからですか?」

 

 匂坂は今度は零に照準を合わせた。

 

「アンタにあんまり話しかけてほしくないんだけど?」

 

「強気だからブレード突撃が得意なのかもしれませんね。とすると、根崎さんや山見さんには難しいのかもしれませんね」

 

 根崎にブレード突撃が難しい。匂坂のその言葉を聞いて、零は脳内で嫌な予感がした。

 

「秀川も言ってたけど、アンタやっぱり頭スカスカでしょ。根崎の重装備だとアクセル使えないから。魔力鍛えるんじゃなくて頭鍛えた方がいいんじゃない?」

 

「根崎さんならアクセル程度、使いこなせると思いますが、まあいいでしょう」

 

「アンタ自身重装備のせいでアクセル使えないでしょ。自分でできるようになってから言いなさいよ」

 

「私はアクセルがあまり得意ではありませんし……それに、今のスタイルが好きなんです。少しずつ相手を押し潰していくのが……だから昨日は楽しかったですよ。上村君に五条さんに零さんに根崎さん、順々にひき潰していくのは独特の面白さがありました。敢えて言うならば秀川君を石河さんに取られてしまったのと、根崎さんが万全の状態ではなかったのが悔いですね」

 

 匂坂は昨日の試合結果を振り返った。匂坂・零・木下チームの試合は9対3対1の結果であり、零チームの全員は匂坂チーム相手に全滅したのであった。それも秀川を除く四人は匂坂の手により抹殺されていた。

 秀川は忌々し気な表情をした。根崎と上村はそんな二人を気にするように見た。そして零は最初は秀川たちと同じように険しい表情をしたが、すぐに匂坂相手に鋭く口先を向けた。

 

「アンタ、リーダーでしょ。秀川と根崎を、石河とそこにいる山見で襲わせてたけど、何? アンタの指示じゃないの? それならもっと手綱を締めた方がいいわよ。チームメイトも纏められない魔力で暴れるだけのゴリラじゃ、この先、一位の維持は難しいんじゃない?」

 

「ご心配には及びません。ちゃんと趣味と実利は分けて考えています。私が対戦相手をひき潰すのは趣味であってすべてに優先しているわけではありません。得点が取れるなら谷崎さんや石河さん、山見さんにも率先して活躍してもらっていますから。ただ……昨日は、石河さんと山見さんが秀川君を嬲り殺しにできて大変嬉しそうでしたので、少し羨ましくなったのです。私も秀川君を嬲り殺しにしたかったな、と思ったのです」

 

 秀川は苛立ちつつも、感情を抑えた。一方で名前に挙がった山見はおどおどと口を開いた。

 

「えっと、匂坂さん……私は、そんなに秀川君を倒せても嬉しく……嬉しくしてなかったと、思うよ……? 石河さんは分からないけど……」

 

 そう言って山見は苛立つ秀川に向けて、愛想笑いを向けた。山見としては、『さすがに匂坂さんがアクセルを踏み過ぎているから、場を収めないと』という善意の行動であった。しかし秀川はそうは思わなかった。山見の愛想笑いは秀川を嘲笑するかのように思えたのだ。

 昨日の試合、秀川は石河と山見により執拗に攻撃を加えられた。少しずつ少しずつ秀川の手足を一本ずつもぎ取るような攻撃であり、端から見ると正しく嬲り殺しであった。しかし、これには少し誤解があった。嬲り殺しの原因は秀川にもあったのだ。

 なぜ秀川が時間をかけてじっくりと殺されたかと言うと、それは、秀川の防御技術が高く、実力者である石河・山見相手に必死に立ち回ったからであった。もし、秀川ほどの防御技術がなければ――つまり殆どの選手にとって、石河・山見の両名に挟まれるのは即死に繋がるのだから。実際、第二試合で万能の星川を打ち取ったのは山見であった。

 

「そうですか。分かりました。良かったですね。秀川君。山見さんは嬲り殺しにしたかったわけではなかったそうです。石河さんは分かりませんが、しかしご安心ください。今度零チームの皆さんと当たる時、事前に石河さんや谷崎さんにも秀川君を相手するときは甚振らずに一思いに殺してあげるように伝えておきます。ですから、あまりショックを受けないで下さいね?」

 

「ッチ、脳筋ゴリラが。調子に乗るなよ。石河も、そこにいる山見も、1対1なら負けねぇよ」

 

 微笑む匂坂を、秀川は鋭く睨んだ。

 

「1対1とは限りませんよ。嬲り殺しにしないと言っただけで1対1で戦うとは言っていません。あと谷崎さんの名前がなかったのは何でですか? 谷崎さんには1対1でも勝てないのでしょうか?」

「――っ! 煽りカスがっ! 文脈も読めないのか? 今は石河と山見の話をしてただろ。やっぱりゴリラは所詮ゴリラだな。人の言葉は難しいようだ」

 

「谷崎さんには1対1では勝てないということでいいですか?」

 

「馬鹿の一つ覚えだな。ゴリラ女」

 

「フフッ、次の試合が楽しみですね」

 

「秀川、そのくらいにしときなさい。そのゴリラ、無限に話を続ける気よ。聞いててもいいことないから、そのくらいにしときなさい」

 

 零が秀川を諫めるように言うと、秀川は一度小さく舌打ちした。

 

「分かったよ。リーダー」

 

 それからも何度か匂坂は懲りずに秀川に話しかけるが、その全てを秀川は無視した。

 

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