学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
匂坂が零チーム相手のトークに夢中になっている一方で、二年生の実況役と解説役もそれぞれの役割を必死にこなしていた。
『リスクのある選択肢も恐れずにやる必要があるんですね! いや! 近接役は大変ですね! そして、今さりげなく流しそうでしたが、鷲島選手は最初の西山選手のブレード突撃をすらりと回避した点はどう思いますか? これスロー再生なんで、なんか普通に見えますけど、実際、こんな自然に避けれるものなんでしょうか!?』
『ああ、普通は無理ですね。西山選手のブレード突撃は普通に二年生相手でも効果があるレベルなので、これはノーコストで避けてるのは単純に鷲島選手が化物だからです。もうそれ以上の説明はないです。スローにしてもトリックとか全然見つけられないので、これは鷲島選手が化物だからという結論しか導き出せないです』
『怪物決定ですか!? それでは怪物の鷲島選手はダブルアクセルで逃れた西山選手への追撃として距離を詰めてブレード戦に持ち込みましたが、これはどういう理屈なんでしょうか? これまでの鷲島選手の戦い方からするとハンドガンとブレード投擲で仕留めそうな場面に見えますが!?』
『そうですね……色々理由はありそうですが……とりあえず、この状況だとあまりにも西山選手のアクセル制御が荒ぶっているので、ハンドガン射撃&ブレード投擲よりも確実性が高そうなブレード戦に持ち込みたかったのかもしれません。あとはずっと射撃だったので緩急をつけたかったという面もありそうです。実際、西山選手は吹っ飛びながらも球形シールドで身を守っているので、ハンドガンを撃っても効果は低かったかと。仕切り直しになるよりも接近した方が良いと鷲島選手は判断したのだと思われます。実際、この急接近のすぐあとに勝利してますしね』
解説役は少し悩みつつも、自論を述べた。
『なるほど! そういうことでしたか! そして、鷲島選手の急接近後は両者ブレードでの戦いになりました! これに関しては何かありますか?』
『双方、高い技量を感じさせますね。何度も言いますが、新入生の戦いのレベルじゃないですね。西山選手も突然の接近に対して上手く対処しています。ただ、力量は鷲島選手の方が上で、おそらくそれを悟った西山選手が鷲島選手の斬撃に合わせて後方へ離脱。この判断は読まれていたのか、即座に鷲島選手は持っていたブレードを投擲、これは西山選手に回避されますが、さらに鷲島選手のハンドガン追撃により、西山選手は足を負傷します。そしてここからがホラー映像です。皆さん心を強く持って下さい。スロー再生でも速すぎて理解できない動きをするので、ここからは超スローモードで再生します』
そこで解説担当は一度言葉を切り、映像を超スローモードに変更した。映像では鷲島が少しずつ動き、そして、映像の中でアクセルを起動した瞬間、スローとは思えない速度で西山に向かって急接近したのだった。
『鷲島選手が急激に加速して、西山選手のすぐ隣を通り過ぎます。なんと片手にブレードを持っています。おそらく、ハンドガン射撃の直後くらいに再顕現させたのでしょう。西山選手の横を通り過ぎながら、彼女の首を切り落とします。つまりブレード突撃です。しかもこの速さは尋常じゃないです。アクセルの性質上、発動時間を短くすれば、その分加速力は大きくなりますが……いや、本当に、これ一瞬なんですよね。ええっとたぶん0.05秒くらいですね。0.05秒でブレード顕現、急接近、すれ違いざまに攻撃しています。普通、人間の体ってそんなに早く反応できないし、動かせないんですけどね……どうなってるんでしょうか……?』
『まさかの解説大困惑です! 鷲島選手、尋常じゃないです! これは早くも二年生による一年生暫定順位が更新されそうです! いや、本当に今年の一年生は化物ばっかりだっ! 一年早く生まれてきて本当に良かった!』
実況担当の二年生の言葉に解説担当は苦笑いを浮かべた。
『多くの二年生がそう思っているかと思います。ええっと、では試合結果の方に入りたいと思います。星川・雲川・近藤・淡路チーム戦は5-6-2-3で、雲川チームの勝利となりました。詳細得点は手元の端末で確認してください』
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試合結果:雲川チームの勝利
獲得得点
星川チーム:撃破点5点+任務点0点=5点
雲川チーム:撃破点5点+任務点1点=6点
近藤チーム:撃破点2点+任務点0点=2点
淡路チーム:撃破点3点+任務点0点=3点
詳細得点
星川里菜:撃破点1点+任務点0点=1点
黒井友香:撃破点0点+任務点0点=0点
西山瑠香:撃破点3点+任務点0点=3点
姫乃恋 :撃破点1点+任務点0点=1点
雲川紫苑:撃破点0点+任務点0点=0点
鷲島鷹一:撃破点4点+任務点1点=5点
金崎飛燕:撃破点1点+任務点0点=1点
近藤千和:撃破点0点+任務点0点=0点
伊藤蘭子:撃破点0点+任務点0点=0点
田中夢果:撃破点0点+任務点0点=0点
網倉智代:撃破点2点+任務点0点=2点
岡野眞知:撃破点0点+任務点0点=0点
淡路高広:撃破点2点+任務点0点=2点
木村真 :撃破点0点+任務点0点=0点
宮田良太:撃破点0点+任務点0点=0点
長山翼 :撃破点1点+任務点0点=1点
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『各チームについて短評としましては、まず今回の四チームはそれぞれ高い能力を示したと思います。新入生とは思えない生徒も多く、正直な話Bランク帯の試合とは思えない程でした。Aランク帯の試合に近いです。特に星川チームや鷲島選手はAランク帯に居座ってもおかしくはない技量を感じました。
今回低得点になってしまった近藤チーム・淡路チームもそれぞれに苦難があった中でも仲間と連携を試みた点、そして、その一部を成功させたという面では、良い試合だったと思います。『連携』という本来であれば時間がかかる項目を短期間で伸ばしていったのは好感度高いと思います。特にこういう点を評価するVIPの方もいらっしゃるので長期的には有利になるポイントだと思います』
そこで解説担当の二年生は言葉を一度区切り、少し悩んでから次の言葉を口にした。
『細かいところを挙げると、淡路リーダーが相打ちになったのは少し惜しかったと思いますし、宮田選手が横撃で落ちてしまったのも淡路チームの得点が伸び悩む原因と言えなくもないですが……ただこれ、恐らく木村選手が通信担当なので、最序盤に星川リーダーと木村選手がかちあったのが運の尽きのような気もするので、しょうがない面も多いでしょう。たぶんですが、淡路チームは序盤で通信が死んでました。そのため連携などが困難になったんだと思います。
一方で、近藤チームは正直かなり運が悪かったです。全員がばらばらかつ連携が難しい位置での投入になりましたし、何より岡野選手・伊藤選手の両エースが早期に化物ユニットたちに食われてしまったのが大きな損失でした。本当に当たりが悪かったと思います。ワンチャン伊藤選手と岡野選手の位置が逆の方が良かったまであります。
ただ、田中選手や近藤選手の援護射撃は、結果には繋がらなかったものの連携という意味では良かったと思います。こういうのは後々成長していく可能性が高いからです。あと網倉選手がしっかり落とせる駒を落としていったのも良かったですね』
解説担当の二年生は、淡路チーム・近藤チームそれぞれの問題点についての言及しつつも、試合形式上難しかったという面もしっかりと触れたのだ。解説担当の二年生には自分が一年前に彼らほど動けていたとは思っていないからだ。
『そして星川チームは、正直、新入生とは思えない力量を見せつけました。投入位置が良かったというのもありますが、そこからそれぞれの選手が盤上のユニットの撃破に動きました。とにかく質が良いチームで、個人芸のレベルが高いです。西山選手のブレード突撃は二年生レベルですし、さらに今回の試合で撃破点を3点も稼いでいます。
星川リーダーのノールック拡張弾倉や、対鷲島選手との高速戦闘、ショットガンにより切り替え射撃、毎試合装備構成を変える拡張性や柔軟性などなど、優れた点ばかりの生徒です。
黒井選手の極小集中シールドも凄かったです。あれはブレードの貫通力を無効化する数少ない方法です。球形シールドの逆で、シールド投影面積を限りなく小さくして、代わりに、シールドを厚くすることで、防御力を上昇させるものです。ただし、シールドの面積は限りなく小さいので、投擲されたブレードに上手く当てる必要がありました。これを見事に成功させた黒井選手はかなり高い技量を持っています。
姫乃選手も序盤で雲川リーダーを狙撃して得点を確保したのは良かったです。最序盤は皆混乱してますし、最序盤に打ち取ることが全体の試合結果を変えることもありますので。ただ、一方で、最序盤の行動は注目を浴びますし、実際これが原因となって網倉選手に打ち取られてしまいました。『射撃できる場所は射撃される場所である』という認識が大事です』
『星川チームは本当に凄かったですね! 選手の質も凄く高くて、二年生、下手したら三年生の試合運びみたいでした!』
『実際、技量だけではなく、作戦も良かったと思います。戦略面・戦術面の両方で鷲島選手をかなり警戒しているようで、たとえば、星川チーム全体がやっていた球形シールドに関してですが、アレは完全に鷲島選手用ですね。鷲島選手の暗殺ハンドガンを防ぐ方法をしっかり考え、実行していました。
そして、戦術面でも鷲島選手と遭遇した星川リーダーが時間稼ぎをして、その間に西山選手が撃破点を稼いでいました。星川リーダーが打ち取られると今度は黒井選手が足止めを担当し、その間に西山選手が長山選手を排除、最後は西山選手と鷲島選手の一騎打ちの環境を整えました。
正直、鷲島選手への対策をし過ぎのように見えますが、結果的に鷲島選手が星川チームの三人を撃破しているので、全然対策し過ぎじゃなかったですね。こういった戦略眼・戦術眼を持っている点でも星川リーダーはかなり優秀と言えるでしょう。もし二年生の間で一年生のAランク当て賭博があったらは自分は星川チームに賭けたいと思います』
『賭博ですか! それなら私は匂坂チームに賭けたいですね!』
『匂坂チームはオッズが1.0になりそうなので、賭けが成立しないかと……』
「零さんのチームのオッズはどのくらいになるのでしょうか?」
匂坂が笑みを浮かべながら零に話しかけた。
「いい加減、話しかけてくるのやめてほしいんだけど」
「Aランクに入る自信がありませんか?」
「アンタさ、友達いないでしょ。距離感バグりすぎ」
「……………………、いえ、そんなことはありませんよ? 谷崎さんに石河さん、山見さんとは友達ですし、根崎さんや雲川さん、あと鷲島君ともお友達ですよ」
名前の挙がった山見は一瞬だがびくりと体を震わせた。零はそれを見逃さなかった。
「勝手に根崎を入れないでよ。てか、残りのメンバーも意味不明。アンタのところのチームのメンバーって別にアンタの友達じゃないでしょ。どう考えても、そこにいる山見とか明らかにアンタにビビってるだけだから。友達同士っていうか、主人と奴隷の関係でしょ」
「そんなことはありませんよ? 山見さんもそう思いますよね?」
「う、うん…………その、私は、匂坂さんとは、その……お友達、だよ……?」
「完全に言わされてるでしょ……まあいいや、てか他の友達候補も謎。雲川って鷲島のチームのリーダーの無能でしょ。あと鷲島って……なんでアイツが候補にいるわけ?」
「興味を持ってもらえましたか?」
匂坂が期待したように零を見た。零は嫌な気分になってきた。
「やっぱ答えなくていいや。別に興味ないから」
「フフッ、残念です」