学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第三試合⑪ 匂坂はゾンビが好きじゃない

 

『それでは、最後雲川チームなんですが…………いや、もうここ何と言うか……鷲島選手という怪物が全てを破壊するチームみたいになってますね。ええっとちょっと長くなるので他の生徒から言及したいと思います』

 

『雲川リーダーは最序盤に姫乃選手からの射撃で落ちましたが、まあ、これは仕方ないと思います。マップ南側のエリアは変に射線が通っていますし、姫乃選手の投入位置も良かったです。なので仕方がない面が大きいのですが……解説として言うと、ちょっと雲川リーダーは前回の試合も今回の試合も殆ど戦っていないのでコメントしにくいです。鷲島選手のような超大型選手を有するチームのリーダーなので、何かあるとは思うのですが、試合にはそれが出ていないので、その辺りは少し不気味ですね』

 

『一方、金崎選手ですが、なんか前回の試合よりも射撃と移動が上手くなっている気がします。努力家なんでしょうか? 移動のまごつきが少なくなってますし、岡野選手の攻撃を耐えたのは見事でした。また淡路選手との相打ちも正直予想外でしたので、高い成長を感じられる選手だと思います。そして鷲島選手ですが……』

 

 そこで解説担当は一度言葉を区切り、頭の中で必死に考えを整理した。どのように説明すべきか、またどこまで説明すべきなのか、というかそもそもこの選手を説明するのが自分にできるのか。そんなことを考えたからだ。

 

『ええっと、鷲島選手ですが、まず今回の試合の破壊者、掃除人でした。彼が通った後は皆死んでます。試合開始時はマップ北部のエリアにいましたが、岡野選手を撃破後に南下してマップ南側エリアに入りここで星川リーダーを撃破。その後は中央部に入り黒井選手を打ち取り、最後は西山選手との一騎打ちを行いました。撃破点4点、任務点1点の計5点を確保していて、一人で雲川チームの得点の大半を取っていますし、言い方を変えると一人で星川チーム全体の得点と同じ点を取っています。

 また今回は試合展開が早く、駒が次々落ちる中、唯一最後まで生き残り任務点を確保しました。生存能力が高い駒は任務点を取りやすいです。そして、鷲島選手は前回の試合も今回の試合も一度もダメージを負っていないという稀有な選手です。

 というか、私の記憶では交戦経験が多いのに一度もダメージを負っていない生徒というのは新入生では匂坂リーダーと鷲島選手くらいです。この二人は生存能力が高すぎます。匂坂リーダーは高魔力なので分からなくもないのですが、鷲島選手は不気味です。彼は一度もシールドを使わず回避だけでノーダメージを貫いています。一試合だけならマグレで済ませられそうですが、二試合も続くと恐怖が上回ります。

 素の機動力も大変高く、また今回アクセルが使えることも判明したので、総合的な機動力一位はたぶん鷲島選手で決まりです。勿論、回避力は一位確定です。そして攻撃力も非常に優れる選手です。ハンドガン暗殺も脅威ですが、それ以上にブレード関係の扱いが非常に上手く、彼のブレード投擲とブレード突撃は脅威度が尋常でない程に高いです。二年生でも鷲島選手と戦ったら負ける選手の方が多いと思います。自分はたぶん普通に負けます』

 

 試合中の数度にわたる驚愕からか、解説役は饒舌になりながらも、鷹一の超人性を語った。

 

『鷲島選手、めちゃくちゃ怖いですね! 私も鷲島選手とあたったら勝てる気がしないです! そんな鷲島選手に何か弱点のようなものはあったりするのでしょうか!?』

 

『シールドを全然使わないので、魔力が極端に低い生徒の可能性はあります。実際使ってる装備も、ブレード・ハンドガン・アクセルと全体的に低魔力向きですからね。ただ、これだけ機動力があるとシールドは……弾幕に弱い選手だと思っていたんですが、星川リーダーの拡張弾倉射撃を乗り越えたので、普通の弾幕だと歯が立たないですね。

 頭数を増やしてさらに射撃密度を上げるか、十字砲火に持ち込むか、対策はないでもないですが、鷲島選手がさらに対抗してくる可能性もありますし、また対策はどれも複数人での対処になりそうなので、投入ランダムルールがある以上難しいですね。

 というか、一人の選手の対策に複数人で当たることが案がすぐに出てしまう選手というのは、よくある『強すぎる生徒』の典型ですね。匂坂リーダーやマスタング選手もそうですが、超人級の選手にありがちです。つまり1対1だとどうにもならないタイプです』

 

『その二人と同格ですか!? 鷲島選手本当にやばいですね! 個人的には鷲島選手はやばいけれど、その二人と同格まではいかない気がしますが……!?』

 

『その辺りは人によって判断基準が変わると思います。匂坂リーダーは無敵要塞すぎるので解説したくないですが、マスタング選手に関しては高い殲滅力があるものの当たり方次第では倒せるということを零チームや舞島チームが証明しました。一方で鷲島選手は未だに倒し方の解がないですし、自分が考える方法でも倒せるか分からないので、個人的には鷲島選手の方が厄介です。生存性が高いエースというのは毎試合最後まで生き残るので、味方チームにも敵チームにも影響を与えやすいですから……』

 

「え、えっと、む、無敵要塞だって……! やっぱり匂坂さんは凄いね……!」

 

 なんとなく気まずい空気を感じた山見が解説の二年生の匂坂を賞賛する言葉を拾い上げた。

 

「それほどでもありませんよ? ある程度魔力があれば似たようなことはできます。佐々木君や五条さんもその気になれば私と似たようなことができると思いますよ。五条さん、どうですか? 私と同じ戦闘スタイルをやってみませんか?」

 

 匂坂は何も懲りていないのか、今度は怜悧で知的な雰囲気がする女子生徒――零チームの五条に狙いを定めた。匂坂はお話するのが好きなのだ。

 

「……? 『私と同じ戦闘スタイル』? …………? そもそもあなたはどんな戦闘スタイルなんですか? それが分からなければ答えようがありませんね。まあ、私の重シールドを突破できるスタイルだとは思えませんし、私が防御特化戦術を変えるつもりはありませんが」

 

 五条は当然の真理を告げるように答えた。五条の顔は凛としたもので、彼女自身からは真面目で何よりも賢そうな雰囲気を出している。

 

――昨日、零チームは匂坂チームに敗北した。その戦闘では、五条の鉄壁とも呼ばれる防御を匂坂の圧倒的な攻撃力で打ち破っていた。当然そのことを皆が知っていた。しかし、五条本人はその記憶がおぼろげだった。

 

 零チームと匂坂・山見の間で沈黙が流れた。唯一、上村だけが必死に笑いをこらえていた。

 

(やばい……! 五条さん、やっぱり最強すぎる。この見た目でこの発言はやばい……! というか、五条さんは匂坂さんのこと覚えてないのか……!? 駄目だ……笑うな……今笑ったら大変なことになる……! 笑うな……!)

 

 そうしてしばらくの沈黙を気まずくなった根崎が破った。この空間では根崎は一番気を遣う人物であった。

 

「あ、あの、五条さん……この人は匂坂さんって人で、匂坂チームのリーダーで、ほら、昨日戦った相手だよ。ええっと、その五条さんのシールドを初めて破壊できた人だよ?」

 

「…………? …………、…………、ああ、……そういえば、いたような気がしますね。なるほど、あなたが昨日の対戦相手でしたか。見事な攻撃でした。私の防御を破るとは中々ですね。ですが、勝負は時の運、一度私の防御を破ったからといって二度も破れるとは思わぬことです」

 

 五条は凛とした顔つきのまま、しばらく沈黙したあと、ようやく何かを思い出したかのような顔になり、そして匂坂に真剣な表情のまま言葉を紡いだ。上村は必死に笑いをこらえた。真面目な零と秀川は『さすがに五条がアホすぎる問題をそろそろ解決しないとな』と真剣に悩んでいた。根崎はただただ気まずかった。

 

「……私はあまりゾンビ映画は好きではありません。ゾンビを殺す妄想に浸っても楽しくなさそうだからです。現実にゾンビなど有り得ないと思っていたのですが……五条さん、あなたはゾンビのように賢く頑丈ですね」

 

 匂坂の独特な言い回しに対して、山見は『あ、これ、匂坂さん、けっこう怒ってるパターンだ……』と思い、自身の影を極限まで薄くした。同じチームメイトとはいえ、怖い怖いリーダーに目を付けられたくなかったからだ。

 

「私の重シールドの強度はゾンビごときとは比較にならないのですが……まあいいでしょう。賞賛は受け取っておきましょう。これも強者の義務です」

 

 五条は匂坂の言葉を純粋に賛辞と受け取った。そして、凛とした表情のまま言葉を返した。まるでそれが自分の使命だと言わんばかりの表情であった。

 

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