学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
学園内、某喫茶店にて。
本日は、第三試合の勝利を祝うという意味もあり、鷹一の完全奢りであった。最初は、鷹一の残ZPを気にした二人であったが、すぐに鷹一は二人が第三試合やそのための準備で頑張ったことを口に出し、その慰労の意味もあるということを示すと、二人はそれを受け入れた。
なお、鷹一が好きな物を頼んで欲しいというと、金崎は普段頼んでいた小ドリンクを小から中へとグレードアップさせただけであったが、雲川はドリンクの他に大きなピースケーキを二つ頼んだ。金崎は恐れ知らずのリーダーに対して僅かだけ尊敬の念を持った。
「さて、まず、昨日の第三試合だったが、とりあえず、試合までにできることはできていたと思う。紫苑は序盤にダウンしたのは残念だったが、あの位置関係では姫乃の射撃を乗り越えても西山あたりに打ち取られただろう。だから、そこはあまり気にしなくてもいい。ただ序盤のまごつきは問題があった。その辺りは来週の試合までに直せる範囲で直そう」
鷹一の言葉の途中で名前の挙がった雲川は一瞬びくりと震え、ケーキの切り取った部分をフォークで刺したまま固まるが、続く鷹一の言葉を聞いて安心したようにケーキを口に含めた。相応の値段がしたケーキの味は大変美味しく、雲川紫苑は嬉しそうに微笑んだ。
(雲川さん、ケーキに夢中で聞いてないかも……)
金崎が不安気に見守る中、鷹一はさらに言葉を続ける。
「金崎、第三試合は見事だった。岡野相手に上手く持ちこたえた上に、マップ北側の偵察も上手くこなしてくれた。そして淡路を打ち取れたのはかなりの手柄だ。本当によくやってくれた。おかげで俺も、岡野の撃破と対西山戦に集中することができた。ありがとう」
「あ、いや、俺のおかげというか……むしろ、俺としてはずっと鷲島におんぶにだっこになっちゃってて申し訳ないというか、前回の試合も結局鷲島が教えてくれた通りには動けなかった。なんとか相打ちには持ち込めたけど、淡路のブレード突撃は避けれなかったし、というか、それ以前に淡路に気付かれたのは俺の失態だったと思う。アレなかったら、たぶん淡路を鷲島が打ち取って、俺の任務点も入って、もう1点稼げたよな……?」
金崎が悩まし気に言葉を口にした。
鷹一は、じっと金崎を無言で見た。
金崎は、やっぱり鷲島は見た目が怖いなと思った。
「…………、……そういった可能性もあったな。だが、淡路の点を西山に取られて、西山が金崎を打ち取るという可能性もあった。そうなれば前回の試合は星川チームの勝利だっただろう。俺は、第三試合での金崎の動きは十分なものだったと思っている」
「そ、そうか。そう言ってくれるなら助かるけど……あー、えっと、それで、どうしよう。第四試合については、まだ対戦相手が決まってないから分からないよな……それまでの間はどうすればいい? また射撃練習とシールド練習をやっていけばいいか……?」
「基本的にはそうなるが……とりあえず、訓練のメニューの話の前に、次の第四試合について俺の考えを話しておこうと思う。まず、第四試合のマッチング相手だが、現在俺たち雲川チームの暫定順位は12位で、暫定Bランクだ。これまでのマッチング法則を考えると、もう一度Bランク帯のチームと当たる可能性もあるし、Aランク帯と当たる可能性もある。Aランク帯は正直な話、現状ではかなり格上で戦うのは厳しい。ただ、次回の試合に関してはそこまで深刻に考えなくてもいいかもしれない。なぜかと言うと、仮にAランク帯との試合になったとしても、5月のランク決定で俺たちのBランク入りは、ほぼほぼ堅そうだからだ」
「そうなのか……? 結構順位の変動とか激しいような気がするけど……」
金崎は少し不思議に思った。これは金崎が各チームの暫定ランクを何度も確認していたからだ。実際、金崎の言葉通り、各チームの順位は目まぐるしく入れ替わっていた。一位から三位まではずっと匂坂、飛山、零と続くが、他のチームは変動が激しくAランク帯からBランク帯へ、Cランク帯からBランク帯へなど、ランクを跨いだ移動も激しかった。
「俺の予想だが、おそらくAランクのボーダーラインである10位が23点から25点だ。そしてBランクのボーダラインである20位が17点から19点だと思われる。現状、俺たちのチームの得点は16点だ。最悪20位でよいと考えるならば、次の試合は3点取ればBランク帯に残れると思う」
一方で鷹一は、各ランク帯の点数のボーダー自体はあまり変動していないことに着目していた。概ね、一試合につき6点を取ればAランク帯に、4点を取ればBランク帯に収まると考えたのだ。実際、第三試合終了時、10位の滝本チームは19点であり、20位の氷橋チームは12点であった。
「――勿論、7月以降の順位も考えると、もう少し得点は欲しいが、とりあえず5月のBランク入りという面だけ見るならば3点で十分なはずだ。一試合3点ならば確実に取れる」
鷹一の付け加える言葉を聞き、金崎はまたしても疑問を感じた。
「3点確実……? それは、何でだ……?」
「俺が二人撃破して任務をこなせば3点だからだ」
鷹一は当然といった風に答えた。そこには驕りや慢心はなく、ただただ事実を告げるかのような響きだけがあった。金崎は一瞬、鷹一の雰囲気に圧倒されるが、必死に言葉を作り口を動かした。
「そ、そうか……なんか、流石だな……」
金崎が内心で自己嫌悪を少しばかり抱いた。鷹一はそれを見て、ふと表情を崩した。
「……ただ、そうだな。安全圏を考えるなら5点くらいほしい。紫苑と金崎が1点ずつ取れば確実にBランクだな」
「頑張ります……!」
「…………え? あ、うん……」
少し穏やかな表情の鷹一を見て、金崎は真剣に、そして雲川は数秒ほど遅れてからぼんやりと答えた。雲川の口元にはケーキのクリームがついていたが、誰もそこには触れなかった。
その後は、第四試合のマッチング決定までの間の訓練メニューの話となった。雲川は第三試合での混乱と狙撃によるダウンの反省から、マップの学び直しと投入直後の緊急避難場所の確認と退避を重点に行いつつも、少しずつだがシールドの練習も行った。一方で、金崎はブレード突撃対策の復習と基礎であるシールドと射撃の反復練習に努めた。
そうして、木曜日になると第四試合のマッチングが決定し、各チームはそれぞれのマッチングを見て楽観・悲観の両方の声で埋め尽くされた。