学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
鷹一が一時寮に戻ると、ちょうど渡辺もまた一時寮に帰って来たところであった。
「鷲島、それに金崎……二人一緒ってことは、第四試合の作戦会議のあとか?」
「ああ、そうだ。渡辺もこの時間に戻って来たと言うことは、劉のチームの作戦会議の後か?」
「一応な。次の試合、Bランクに残れるかどうかが掛かってる。マッチングの決定もあって、劉がすぐに対策会議を開いて……まあ、とりあえず、お前たちのチームと当たらなくて良かった。いつかは当たるかもしれないが、一時寮が同じ状態で当たるのは少し気まずいしな」
「そうだな。一時寮で同じだと…………」
そこで鷹一は一旦言葉を詰まらせた。第四試合の対戦相手である麻倉チームのリーダーである麻倉は、雲川紫苑と同じ一時寮だということを思い出したのだ。
「どうした……あ、いや、そうか、悪い、次、秀川のチームと当たるんだったな。零チームは実際強いが……俺は正直、鷲島と金崎に勝ってほしい。お前たち二人は良い奴だし、縁があるからな。まあ秀川が嫌いっていうのもあるがな」
「そうか。ありがとう。俺も劉のチームが勝てればと思っているが……」
少し悩まし気な鷹一を見て、渡辺が察した。
「やっぱり、星川のチームは強いか?」
「そうだな。正直、難しいと思う。星川チームも強いが、清沢チーム・柚木チームも強い。この三チーム相手に立ち回るというのは劉チームとしては厳しいものになるんじゃないかと思っている」
「相変わらず、ずばずば言うな、鷲島は。いや、まあそれでこそお前らしいな。実際、劉も難しい試合になりそうだって言っててな……勿論、俺もチームメイトもBランク維持のために全力は尽くすつもりだ。鷲島たちは、正直どうなんだ? Bランク維持で満足か? それとも、最後の最後でAランク昇格を狙っているのか? 実際、無理ではないと俺は思ってるが」
「難しいな。こう言うと傲慢に聞こえるかもしれないが、Bランクは維持できると思う。ただ、Aランク昇格は難しい。零チームも佐々木……いや麻倉チームも強敵だ。勝つのは難しいだろう」
鷹一は正直な言葉を告げた。最も警戒しているユニットである佐々木に、弱点が少ない零チーム、どちらも鷹一としても厄介な相手であった。
「そうか…………そうだな……参考になるかは分からないが……麻倉チームの対策について言ってもいいか? 俺も第二試合ではあのチーム相手に苦戦した。大したことは言えないが、それでも直接戦闘した経験は伝えられると思う」
悩みながらも渡辺が提案した。半分は善意と好意からであり、半分は見返りを求めての提案であった。
「ぜひ聞きたい。麻倉チームは脅威だ。特に直接佐々木とぶつかった渡辺の意見は貴重だ。良ければ教えてほしい」
「ああ、分かった。といっても、俺も、このまえ、秀川に言われた通り、佐々木相手にボロ負けだったんだが……とにかく佐々木はどこからでも撃って来る。
判断も精度も的確だ。麻倉チームの誰かと戦えば、そこに佐々木の曲射砲が飛んでくる。そして、その精度と攻撃力は異常だ。俺のチームの夏井も七宮と戦ってるときに曲射砲を食らって動けなくなって七宮に倒された。
あと俺自身も佐々木と正面から戦って負けた。俺が弱かったっていうのもあるが、それでも曲射砲を瞬時に直射できるのは佐々木が凄すぎるっていうのは間違いなくあると思う。佐々木は本当に狙ってから撃つまでがかなり早いぞ。曲射砲使ってるとは思えないほどだ。
その上、連携も凄く上手い。夏井から聞いた話だが、乱戦状態でも誤射はせず、ピンポイントで敵だけに攻撃を当ててくるみたいだ。乱戦なら大丈夫とか、麻倉チームも近くにいるから大丈夫とは思わない方がいい。佐々木は構わず撃って来るし、麻倉チームのやつらは佐々木の砲撃に合わせて仕掛けてくるぞ」
渡辺の助言を受けて、鷹一は自身が持っていた情報との差異は少ないと感じた。しかし一方で、やはり佐々木や麻倉チームと対面した渡辺・夏井の言葉は重いとも感じた。
「分かった。教えてくれてありがとう。渡辺。やはり実際に対面した人間の言葉は大きいな。かなり参考になった。礼というわけではないが、星川の射撃と西山のアクセルについて話しておこうと思うが、話をしていいか?」
「どちらもお前が打ち破った相手だな。……実を言うと、できれば鷲島から星川チームのことを聞いて欲しいと劉から頼まれてたんだ。教えてくれるなら助かる」
鷹一の言葉に、渡辺はありがたいと思った。期待していた見返りを得られたからだ。
「それなら話そう。とはいっても、恐らく劉も認識していることだと思うが……星川チームは戦略的にも戦術的にも対応力が高いチームだ。恐らく、劉チームの戦い方や、エースの荒川や夏井に関しては対策がされていると考えていいだろう。
一方で、星川チームも星川以外は装備や戦い方はある程度固定化されている。劉のチームならばそこを突くことはできると思う。ただ、リーダーの星川は拡張性が高いタイプだ。今まで使っていない装備を使ってくる可能性はある。星川には『読み』が通じにくいというのはあると思う。
一応、メタ読みになるが、星川は試合展開から逆算して装備を決めていると思われる。他のマッチング相手についても考えることで、星川の装備を予想できるかもしれない。マップ的に射撃戦優位であることを考えると、重射撃的な装備を入れそうではある。
実際、星川の拡張弾倉を使った攻撃はかなり圧があった。魔力では他の拡張弾倉使いに劣るが、拡張弾倉システムの扱い方という意味ではかなりの腕前だ。他の能力も高く、自由にすると一番厄介な駒だな。
それと西山に関してだが、やはりブレード突撃が脅威だ。一年生の中ではかなり上手い。西山がアクセルを発動したら、一瞬で接近されると思ってくれ……あとは、ちょっと余計な話だが、西山はかなり装備が軽く隠蔽性が高い。つまり、一定距離まで近づかないとレーダーには映らない。西山は機動力があり近接が強いというイメージはあるが、他にも隠密能力があるから、そこは警戒した方がいいだろう」
「……星川の装備と射撃圧、西山の加速力か。鷲島ほどの強者が言うならば、かなりなんだろうな。ありがとう。こっちも参考になった。劉にもお前から教えてもらったと報告しておく」
渡辺と情報交流をしつつも、鷹一はなんとなく、一時寮に設置されている二段ベッドを見た。最近は秀川を殆ど見なくなってしまったからだ。一時寮にいることは少なく、いたとしても、他の三人とは一切口を利かない。せいぜい舌打ちする程度だ。そのことに、鷹一は極僅かに寂しさを覚えたものの、口には出さなかった。