学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
【零アリシア】
零チームのリーダー。非常に高い戦闘センスの持ち主。親友である飛山とともに鷲島を勧誘したが失敗した。第一試合・第二試合ともに勝利するが、第三試合では匂坂チームに苦い敗北を喫した。今回はついに戦闘適性順位一位の鷲島と戦うことになるので、少し不安。
【根崎彩】
零チームの大エース。高魔力かつ非常に高い戦闘能力の持ち主。戦闘適性順位9位の猛者。タイマン能力なら零が上だが、火力や防御力は根崎が勝る。気が強そうな見た目をしているが、本当は気が弱い。
【五条愛】
零チームの通信・レーダー・シールド担当。零チーム随一の魔力の持ち主。怜悧で知的な雰囲気に反して、頭は空。
【上村聖】
零チームの遊撃担当。何でもできる万能の人物。第一試合開始前に鷲島に勧誘されたが、既に零チームに所属していたため、丁寧に断った。魔力は平均以上はあるものの、高魔力が集う零チームでは最も魔力が低い。用心深くチームメイトを補佐する。
【秀川明】
零チームの火力担当。鷲島・金崎・渡辺と同じ一時寮に所属している。傲慢な面があるが、仲間には意外な一面も見せる。最近、想像以上に鷲島が強いので困惑しつつも警戒中。
★零チームのこれまでの戦歴
第一試合:零・有坂・水渕・淡路のチーム戦
⇒各戦場で零チームの面々が大暴れし圧勝する。撃破点は根崎5点、零2点、上村・秀川がそれぞれ1点。零と五条が任務点を確保。合計11得点。
第二試合:零・滝本・清沢のチーム戦
⇒試合序盤の乱戦で根崎・上村が落ちるものの、零の高速戦闘と秀川&五条の重射撃により勝利する。撃破点は零5点、秀川3点。零・五条・秀川が任務点を確保。合計11点。
第三試合:匂坂・零・木下のチーム戦
⇒匂坂チームに敗北する。北戦場では匂坂チーム相手に秀川が時間を稼ぎ根崎の撃破点をサポートし、南戦場では上村・五条が匂坂を引き付けている間に零が撃破点を稼いだ。撃破点は根崎2点、零1点。合計3点。
第四試合に向けて、各チームが努力を続ける中、暫定3位の零チームは次の試合に向けて作戦会議を開いていた。
六人の人間――零、根崎、五条、上村、秀川、そして零の同盟相手である飛山がテーブルを囲んでいる。
「それじゃあ、次の試合だけど、なんか言いたい事あるやつはいる?」
開幕早々、リーダーである零が周囲を見た。すぐに秀川が口を開いた。
「なんかっていうか、そもそも何で、コイツがここにいるんだ? 今日はうちのチームの作戦会議だろ」
「ん? なんだい、秀川君や。私がいると不満かね?」
「いや、作戦会議に他のチームのやつが入るべきじゃない。というか、それ以前にお前、自分のチームは大丈夫か? 次、匂坂と当たるんだろ?」
秀川は不審半分、呆れ半分といった風に飛山に答えた。
「いやいや、アリシアに頼まれたんだよー、次の試合は麻倉さんのチームと雲川さんのチームと戦うんでしょー。ほら、私って、第三試合で、麻倉さんのチームと戦ってるし、佐々木君ともドンパチしたからね。なんかアドバイスちょうだーいってアリシアに言われてね。せっかくだから、作戦会議に混ぜてーって言ったんだ~。ついでに匂坂さんと戦った経験も聞きたいからねー」
「秀川、龍華はふざけて見えるけど、実力も頭も折り紙つきよ。それはアンタも認めてるでしょ」
「それは分かってる、リーダー。飛山はアホだが、実力は俺も認めてる。頭の方もギリギリな。だが、飛山は個性的すぎる。この女のアドバイスを俺らのチームに活かせるかっていうのはまた別の話だろう。変に佐々木あたりを警戒しすぎて、勝てる試合で負けるような展開になったらどうする?」
「佐々木君は普通に警戒でよくない? 秀川君だって砲撃が直撃したらわりと即死だと思うよ?」
飄々としつつも、どこか真剣さを感じさせるような態度で飛山は秀川を見た。
「ほら、これだ。飛山は佐々木を警戒し過ぎだ。あの砲撃はいくらでも対策はある。見た目は派手だが、中身はそれほどじゃない」
一方で、秀川は呆れを少し滲ませながら飛山に応えた。
「ふぅむ、秀川君や、具体的に対策とやらを教えてくれんかね?」
「普通に、砲弾を撃ち落とせばいい。俺や根崎なら簡単に落とせるし、射撃精度から考えて、リーダーも上村もできるだろう。五条もある程度、佐々木の砲撃の癖を見極めればできるはずだ」
当然と言った風に秀川が飛山の問いかけに答える。
「んー、確かに、アリシアのチームの皆ならできそうだけど……佐々木君はたぶんそっちの対策もしてそうな気がするんだよね~。今までとは違った砲撃をしてくるかも?」
「なぜ、そんなことが言える? 曲射砲は癖のある武器だ。俺も試しで何度か触ったが、そう簡単に撃ち方を変えられる武器じゃない。仮にできたとしても、それは今までの佐々木が試合で見せたものよりも練度が下がる砲撃だ。ますます脅威じゃないだろ」
「うむむ……鋭いご指摘。というか、曲射砲の勉強までしてたんだ。流石は秀川君だね。勉強熱心、感心、感心」
「流石に最低限触れるくらいはする。飛山、佐々木脅威論はこれで終わりか?」
「うーん、私としては不十分かなー。佐々木君の砲撃精度は異常だし、それに実際に戦ってみて思ったけど、佐々木君はまだまだ余裕がありそうだったよ。奥の手がいくつあってもおかしくないよ」
「っは、それはおかしな分析だな。佐々木の砲撃精度は言うほど高くはないし、余裕もないだろ。仮に余裕があったとしたら、なぜお前は佐々木に勝てたんだ、飛山? 佐々木は余裕ぶって戦ってお前に負けたのか?」
第三試合、飛山・麻倉・清沢の試合は10-6-0で飛山チームの勝利であった。そして、試合中盤で佐々木は飛山チームの針谷に討ち取られていたのだ。秀川はそのことを指摘した。
(うーん、困ったなぁ。秀川君が言うことは、まあまあ合ってると思うけど……私は佐々木君の詳細成績持っているから、それ前提で考えちゃうんだよなー。たぶん佐々木君は拡張弾倉の仕様を上手く利用して、対戦相手ごとに戦い方を変えてるんだと思うんだけど……根拠がなぁ。あんまり言っちゃうと、伝達禁止ルールに触れちゃうからなー。それに言っても秀川君は信じてくれなさそうだし……しょうがない。あとでアリシアにこっそり伝えるだけにしよう)
飛山は内心を悟られないように、飄々とした笑顔を作った。
「佐々木君が余裕人間かはさておき、それでもあの砲撃は凄いし警戒した方がいいと思うけどな。実際砲撃精度が凄いでしょ。寸分違わずって感じで撃ってるよね」
「あれは運が良いだけだ。飛山、お前は佐々木を警戒し過ぎだ。佐々木の砲撃はそんなに当たらない。どっちかというと佐々木の無理やりな砲撃の中でも活動できる七宮の方が警戒に値する」
「七宮さんは確かに優秀だと思うけど、佐々木君ありきじゃないかな。あれはたぶん佐々木君の技量の方が凄いよ」
「いや、それはない。佐々木に一定以上の技量があることは俺も認めるが、それほどではない。言っておくが、曲射砲はそこまで凄い武器じゃない。俺も曲射砲を訓練室で使ったから分かる。アレは精密な射撃はできない。いくら佐々木が曲射砲が上手いとはいえ、不可能だ。仲間が近くにいる中で撃つはずがない。やつの今までの記録は運の面が大きい。
実際、いくつかのシーンでは仲間に掠っていた。運が悪ければ、直撃していた。誤射をしていないのはたまたまだ。もし運でなく、味方ギリギリに何度も撃ち込んでいるのなら、奴はこの学園一の化物だ」
これは秀川が半ば優秀だったからこその言葉だった。
秀川は佐々木の試合を見て、佐々木の動き――味方のいる戦場に曲射砲を撃ち込むという、仲間を大事にする秀川からすると狂った行動をしていた。
その行動を見て、秀川は実際に自分も曲射砲を訓練室で使って、佐々木の精密砲撃が実現可能かどうか試した。そして、結論を出した。不可能だと。秀川は佐々木の曲射砲の技量を自身の10倍程度と考えた。ただ、それでも、不可能だと結論を出した。秀川にとって曲射砲による精密砲撃など、誰にもできない夢物語であり、佐々木への評価は『他の生徒よりは遥かに曲射砲を撃つのが上手いが、味方もろとも敵に曲射砲を打ち込む運任せの愚か者』であった。
一方で、飛山は悩んだ。
(佐々木君のアレはマグレじゃなくて本当の技量なんだけど、これは信じてもらえないかな? 詳細成績持ってる私でもちょっと引いたし……佐々木君も意味不明さでは鷲島君と良い勝負だよね)
「まあ、それでも、佐々木君はある程度は危険だよ。砲弾撃ち落としでもいいけど、そっちに気を取られている間に、七宮さんや鷲島君あたりに乱戦に持ち込まれる心配があるからね」
「それに関してなら、ある程度は俺も同意できる。七宮と鷲島の対策は必要だ。佐々木に関しても意識し過ぎない程度には対策が必要だとは思ってる。飛山のは意識しすぎだがな」
しぶしぶと言った風に秀川は同意の言葉を発した。しかし、飛山の中ではまだ不満があった。
「ん~、でもさー」
そして、飛山が言葉を発しようとしたとき、赤毛の少女――零が声を上げた。
「――はい、そこまで。二人とも、ちょっと話が逸れてるし、のめり込みすぎ。他の奴が喋れないし、一旦止まって。上村、根崎、五条、なんかここまでで意見ある? 主に佐々木についてと、七宮・鷲島対策関係だけど、他の意見でもいいわよ? なんかある?」
零がこれまで黙っていた三人を見回した。上村は穏やかな表情で、根崎は少し緊張したように、五条は冷静な表情で零を見た。
「自分としては、鷲島君と七宮さんの対策の話をこのままやってくれると嬉しいです。あの二人はタイマンだとかなり強そうな上に、ポジション的に戦うことになりそうなので。
正直、試合で当たったら勝てるか分からないので、勝率を上げるためにも、ここで皆さんの知恵をお借りしたいですね。佐々木君は、ちょっと自分には重すぎるので、秀川君や根崎さん、零さんにお任せしたいと思います」
上村が、すらりと自分の意見を口にする。あまりにもすんなりと言葉を放つので、隣にいた根崎はあわあわと慌てて言葉を作る。
「あー、ええっと、その~、まあ、ええっと、その私、あんまり頭は良くないので……ええっと皆さんが考えた作戦に従えればと思っています……あはは」
根崎が媚びるような愛想笑いを浮かべた。圧倒的強者の根崎の緩い表情に対して、内心で秀川は怒りそうになるが、それを必死で抑えた。
「私からも特にはありません。試合では必要とされることをするだけです」
凛とした五条は、怜悧に答えた。上村は内心で笑っていたが、顔には出さなかった。
三人の答えを聞いて、零は僅かに悩んだ。
(上村はいいけど、根崎と五条は主体性と頭がちょっと不満ね……根崎は試合では結構ガンガン行くのに、作戦会議だといつもだんまり……まあアホなこと言う五条よりはマシか)
そこまで考えて零は五条を見た。相変わらず凛とした顔をしていた。そのことに零は呆れつつも考えを続ける。
(とりあえず、龍華もいるし、作戦は私と秀川と龍華の三人がメインで、所々、上村が意見を言う形、つまり今の形だけど、これが現状の理想形ではある。悪くは無いけど……うちは戦闘で強い分、少し作戦が弱い。思ったより作戦は重要な気がするから……筆記試験順位を軽視し過ぎたかもしんないわね)
内心で、過去の自分を悔い、そしてなんとなく鷲島の顔を思い出した零は、仲間に気付かれないように小さく舌打ちした。
根崎がびくりと震えた。小さな音であったが、根崎だけが聞き分けたのだ。根崎は自分の態度が悪かったのかと思い、慌てて、媚びの笑みを濃くした。近くにいた秀川が苛立った。
「皆の意見は分かった。なら、とりあえず、鷲島と七宮対策についてもう少し詰めたいけど、どっちからする?」
「――まずは七宮からだろ、リーダー」
零の問いかけに対して、すぐに秀川が答えた。他の面々も反対はしなかった。
「じゃあ、まず七宮ね。って言っても、七宮は何とかなるでしょ。さっき龍華と秀川が言った佐々木の砲撃からの乱戦が危険だけど、タイマンならそこまで怖くない。秀川・根崎、アンタらなら七宮は余裕よね?」
「佐々木の援護なしなら、苦戦はしない」
「だ、大丈夫です……!」
秀川は当然の事実を告げるように答え、根崎は慌ただしく秀川に続いた。
「五条も倒せなくとも、七宮相手に倒されることはないわよね。というか、アンタなら佐々木の援護ありの七宮相手でもだいぶ時間を稼げるでしょ?」
「当然です。その七宮という人物や佐々木という人物がどれほどの者かは分かりませんが、私の防御を突破するのは不可能でしょう。入学以来、一度として破られなかった私の重シールドは無敵です」
凛とした五条の宣言に、全員が言葉に詰まった。
(やっぱ五条さん無敵すぎる。七宮さんや佐々木君のことを1ミリも覚える気が無いのは、もう驚かないけど、重シールドを突破した匂坂さんまで記憶の彼方に追いやったのは無敵すぎる。やばい、笑い声が出そう……)
上村は必死で堪えた。
「…………まあ、いいわ。とりあえず、アンタのシールドを突破できる相手は今回いないから、とにかく守りを固めて通信とレーダーに専念しなさい」
「今回? 今までも、そして今後も一人としていないでしょう。零リーダー、言葉は正しく使うべきです」
五条の鋭い指摘が零に突き刺さった。
「はぁ……気を付けるわ。で、上村、アンタも流石にタイマンなら七宮には勝てるでしょ?」
零は溜息を吐いた後、笑いをこらえていた上村に矛先を向けた。
「あー、どうでしょう? 七宮さんは普通に優秀っぽいですし、ちょっと厳しいかもしれないです。絶対負けるとは言いませんが、絶対勝てるとは言えませんね」
「前から言ってるけど、アンタちょっと用心深すぎる。普通にやったら負けないわよ。射撃もシールド技量もアンタが上。魔力は七宮の方が上かもしれないけど、普通にやってればアンタが勝つわよ」
「お褒めいただき光栄ですが、ブレード戦に持ち込まれるとマズいかもです。七宮さんのブレード戦の技量が高いですし」
「七宮はブレード突撃できないからタイマンなら心配しなくていいでしょ。射撃戦からブレード戦に持ち込むのはブレード突撃なしだと無理よ。てか、アンタ負けた時に備えて言い訳しすぎなのよ。龍華、前に試合で七宮倒したわよね。どうだった? うちの上村でもやれそう?」
零は言葉の途中で、話を親友である飛山に向けた。
「うーん、どうだろうねー? 私のときは結構混戦状況だったからなぁ。個人的な意見としては、七宮さんと上村君は結構技量的には近そうな感じ。でもやっぱり、普通に考えると佐々木君援護なしなら、射撃戦が主体だろうし、それなら上村君が勝つんじゃないかな?
というか七宮さんの怖いところは、佐々木君の砲撃と同時に突っ込んで、射撃とブレードを織り交ぜるところなんだよね。そっちの議論した方がよくない?」
「おっと、飛山さんからも高評価貰っちゃいましたが……すんません、言い訳難しそうなので、頑張ってタイマンなら七宮さんに勝てるようにトレーニングします」
飛山の言葉を受けた上村は、お手上げとばかりに受け入れた。偉大なリーダー二人に言われてしまえば、断れないのが上村であった。
「アンタのことだから大丈夫だと思うけど、負けんじゃないわよ」
リーダーの激励が上村に投げつけられた。
「努力します。で、すみません、飛山さんも言ってましたけど、佐々木君の援護があったらどうします? 流石にこれは厳しいと思います。ああ、でも、これは七宮さん対策というより、佐々木君対策の話になりますかね?」
「佐々木枠だと思うけど……まあいいわ。とりあえずそのパターンになったら、五条、アンタなら耐えられるわよね。根崎、アンタはその状況でも七宮を粉砕しなさい。アンタなら佐々木が撃ってきても七宮を倒せるわ」
零は五条・根崎の二人に話を向けた。
「当然です」
「え!? ええっと……どうでしょう~」
五条は淡々と頷き、一方で根崎は困惑した。
「倒しなさいよ」
「は、はい……」
リーダーの厳しい言葉に根崎は頷いた。
「秀川はさっき言ってたみたいに砲撃を撃ち落とすか、シールドを全力で張って防御に専念しなさい。七宮相手なら、それでいけるでしょ」
「生き残るだけなら十分だ。正面からなら佐々木の援護込みでも大丈夫だ。ただ、乱戦になったら保証できない。七宮は乱戦に強い。佐々木の曲射砲の腕……いや、運次第だがな」
佐々木の腕前を疑っている秀川は余計な言葉を加えた。
「アンタも結構運良い方だから大丈夫よ。ヤバそうならすぐヘルプ打ちなさい。うちはアンタと五条以外は足が速い方だから、誰か助けに来るわよ」
「それも運次第だがな……まあ期待はしておく。上村、呼んだらちゃんと来いよ」
秀川はじっと上村を睨んだ。
「いや~、秀川君が苦戦する状況だと、僕が来ても役に立てるかどうか」
「この野郎、嫌味言ってるのか。お前、戦闘適性順位、俺より上だろうが」
上村の言葉に秀川は僅かに苛立った。上村もまた秀川が認める強者であった。
「いえいえ、順位は二つ差ですから、そんなに変わらないと思いますよ。というか、魔力量考えるとたぶん実戦レベルだと僕より秀川君の方が普通に強いと思いますよ。たぶんですけど、戦闘適性順位はちょっと配点が偏ってると思います。射撃精度と機動力の配点が重いんじゃないかな?」
「上村、言っとくけど、アンタにも普通に期待してるから、佐々木の砲撃込みの七宮相手でも、生き残りなさいよ。てか、チャンスがあったらその状況でも七宮倒しなさい」
秀川と上村の言い合いに、リーダーである零が口を挟んだ。そして、それは上村にとっては厳しい指摘だった。
「え? あの~、秀川君相手には生き残るなのに、僕相手の指示だと倒すまで行くんですか? 僕、秀川君と戦闘適性順位同じくらいなんで、せめて生き残るを課題にして欲しいんですけど……」
「アンタは秀川と違って回避力があるでしょ。佐々木の砲撃でも切り抜けられるわ。そんで、隙突いて、七宮殺しなさい」
「いやー、それはちょっと……回避力はあるかもしれませんが、零さんほどはないですし、それに肝心の防御力がないです。僕、自慢じゃないですけど、魔力量なら零チーム最弱ですよ。佐々木君の砲撃当たったらシールド張ってても一撃ダウンですよ」
「キリキリ避けなさい。それでもダメならヘルプ飛ばしなさい。私か根崎が行けたら行くわ」
零の真顔を見て、上村は僅かに慄いた。
「え……本気ですか?」
「本気に決まってるでしょ」
真剣な眼差しが上村に注がれた。
「……わかりました。精一杯努力はしましょう。……大エース根崎様。ピンチになったら、すぐヘルプ飛ばすんで、どうかこの哀れな低魔力をお救い下さい」
上村は、少しの間思い悩んだ後、真剣な表情で零に答えた。そしてその直後、少しふざけた口調で根崎の方に頭を下げて拝んだ。
「え、えっと、その頑張ります……!」
根崎は必死に受け取った。それを見た秀川が一応と言った風に口を開いた。
「リーダー、お前はどうする?」
「状況によるけど、基本パターンは、射撃かブレードで七宮を瞬殺して、その後、アクセルで離脱する。佐々木の距離が近ければそのままブレード突撃で佐々木も殺す」
「流石だな。リーダーならそれで十分だろう」
当然と言った風の零の態度に、秀川も自然な形で頷いた。
「よし。とりあえず、七宮と佐々木は良いわね。基本は七宮は抹殺。佐々木が撃ってきたら味方を待ちつつ生存優先、チャンスがあったら佐々木が撃とうが七宮を殺す。佐々木の砲撃は撃ち落とすのが基本。撃ち落としに失敗したら、重装備組はシールドで耐える。私と上村は回避に専念する。
他の麻倉チームは小駒ばっかりだから、そんなに気にしなくていい。今までの基本戦術通り、弱い駒は遭遇したら落とす。今回は佐々木の援護があるかもしれないけど、基本は対七宮で考えればいい。あと、佐々木は基本的に私が落とす。龍華、対佐々木は高速戦闘でいいのよね?」
「たぶんね~。というかタイマンでの佐々木君討伐経験者って針谷さんしかいないから、今の所ただ一つの成功例を追うなら、近接役の高速戦闘で倒す形になると思うよ。
曲射砲は普通のアサルトライフル以上に近接戦は弱いからね。ブレード突撃もアリじゃないかな? まあ、佐々木君は射程長いから、アクセルは距離を詰めるのに使う形になってブレードの間合いに入る前に効果が切れちゃうと思うけど……アリシアならうちの針谷さんよりも上手くできると思うから、佐々木君はたぶん倒せると思う。あ、分かってると思うけど、佐々木君の『自爆』には気を付けてね。針谷さんの実質的な死因だったし」
『自爆』――これもまた佐々木が行う厄介な技であった。曲射砲を地面に向けて発射し、自分ごと周囲を吹き飛ばす大技である。第三試合で飛山チームの針谷に心臓を突かれた佐々木は、死ぬ間際にこれを行い針谷を瀕死状態に追い込んだのだ。
「まあ、流石に曲射砲でブレード戦に対抗はできないでしょ。自爆は厄介だけど、近づければ佐々木は怖くない。私なら十分殺れるし、自爆からの脱出手段もある」
「それなら良いと思うよ。あ、でもアリシアが死んじゃってるとき、誰が佐々木君を倒すのかも一応考えたほうがいいじゃない?」
「その状況なら根崎が……ううん、その状況じゃなくても、根崎、アンタ、佐々木の射線が通ったらバトルライフルで吹き飛ばしなさい。アンタなら佐々木相手でも十分叩けるわ。砲撃を撃ち落としつつ、そのまま射撃で佐々木本体を叩いてもいいし、砲撃はシールドで防いで、射撃で佐々木を倒してもいい。なんなら、砲撃を避けながら佐々木を撃ってもいい。より取り見取りよ」
零は最も信頼する――もちろん、戦闘に関してのみだが、最も信頼する根崎に自分亡きあとの戦いを託すことにした。
「え、ええっと……その~、佐々木君は――」
「――やりなさい」
根崎が何かを言う前に、零の厳しい言葉が根崎に放たれた。
「は、はい……」
リーダーの厳しい言葉に根崎は頷いた。
「それじゃあ、次、というか、コイツの対策が一番重要なんだけど、鷲島はどうする?」
零の言葉に根崎と秀川が反応した。根崎は困り顔になり、秀川は苦々しい顔を浮かべた。
「……一番の対策はやつの射程距離に入らないことだ。奴は魔力が少ない。アサルトライフルを使えない以上、ハンドガンかブレード投擲でしか遠隔攻撃手段を持たない。ブレード突撃だってせいぜい数十メートルが限界だ。距離を取って弾幕で倒す。俺たちは全員鷲島よりも射程で勝ってる。あいつを近づけさせなければ、どうとでもなる」
苦々しい表情のまま、秀川が対策を口にした。『どうとでもなる』という言葉に反して、秀川の表情は苦しそうであった。
「無理やり距離を詰められたらどうする? 星川は十分距離があったけど、詰められて殺られたわよ」
「あいつは魔力がカスレベルだ。シールドは使えないはず。二人以上で連携して、星川超えの弾幕で倒す。近づいてきたら、それはそれでこちらも高密度弾幕になる。空間を弾幕で完全に満たせば物理的に避けられないだろ」
秀川の言葉に零は悩んだ。
(鷲島は魔力も平均以上だけど……これ龍華から詳細成績貰ってるから知ってるだけなのよね。実際、私の魔力探査でも引っかからなかったし、龍華も探知できないって言ってた。秀川が読み間違えるのも仕方がない。
でも、あの詳細成績通りの魔力なら、アサルトライフルもシールドも普通に使えるはず。特にシールドは絶対使える。鷲島の得点で一番高い評価は技術力と機動力だけど、その次が防御力なのよね……でもこれは流石に言えない。ていうか、龍華が黙ってる以上、言ったら共有禁止のルールに触れるってことよね。それに現状、鷲島の手札やその切り方がわかんないし、見えてる札の対策で手一杯ね……)
『鷲島の順位や情報を公開できない』という、もどかしさを零は感じた
「…………、どうやって合流する? タイマン状態だったら、結局、星川みたいにやられるわよ。それに初期の投入位置次第じゃ、鷲島の射程距離内で投入される可能性もあるわ」
「鷲島の射程内の投入って状況は極端すぎる。そういう状況まで想定するのはキリがないだろ。単独で鷲島と遭遇したら、とにかく撃ちながら後退で味方と合流優先だ。鷲島はタイマンじゃ強いというのは俺も認めよう。だが奴はタイマン特化だ。今まで奴は多対一では戦っていない。全て一対一での勝利だ。というより、各個撃破を優先していて、一対一の状況を意識して作り出している節がある。
逆に言うと、奴自身も複数で攻撃されることを警戒してるってことだ。そして、俺たちは五条以外なら、逃げながら鷲島とある程度は戦えるし、誰かしらと合流できるくらいまでは持つはずだ。五条は足が遅いが、その分防御は硬い。他の味方が駆けつけるまで鷲島相手でも粘れる。要は、いかに鷲島の位置を把握して、二対一以上に持ち込めるか、だ」
「うーん、そう上手く行くかな~?」
秀川の考えに、飛山が口を挟んだ。秀川は飛山を睨み、先を促した。
「鷲島君は、個人レベルでも戦術レベルでも、防御が薄いところを一瞬で突くのが凄く上手いんだよね。盤上の弱い駒や連携が切れた駒、微妙に孤立している駒とかに急接近して、奇襲で倒すってパターンがわりと多い気がする。仮に倒せない場合は、上手く隙を作って、その隙に必殺の攻撃を瞬間的に叩き込むって感じ。
アリシアのチームの皆は防御と連携が上手いし『弱い駒』ではないから、たぶん鷲島君としては隙を無理やり作ろうとするんじゃないかな。試合中に発生する不確定な要素が元になってできる小さな隙とか、ほんのちょっとの意識の変わり目とか、情報伝達の僅かなミスとか、そういうのを見せた瞬間、グサッ……! って刺されるんじゃないかな?
そう簡単に『味方が駆けつけて鷲島君をボコボコにできる』とは思えないんだよね。というか、鷲島君って素の速度速い上に、アクセル持ちだから、仮に多対一でこっちが優位な状況になったら、即座に撤退するんじゃないかな? それで、体勢を立て直して、こっちが隙を見せた瞬間、かぶりっ……! どう? これありそうじゃない?」
「さすがにそれは悲観し過ぎ、というか、俺らを舐めすぎだ。俺らのチームはBランク程度とは違う、鷲島に突かれる隙は極力減らす。それにさっきも言ったが、鷲島には射程っていう大きな弱点がある。アクセルも接近できる距離には限りがある。とにかく距離を取るんだ。そうすれば、そもそも隙があっても突かれない。1対1で鷲島と出会って、味方と合流するまでに鷲島に追いつかれる危険性はあるが、そこに関してはある程度案はある。
あと、鷲島のやつが逃げたら背中から撃つ。鷲島が撤退する状況ならこっちが二人以上いる時だ。それなら、さっき言った通り、複数人で行う物理的に空間を全て埋める弾幕で奴を倒す。恐らく討ち取れるし、そうでなくても、重傷は間違いないだろう」
「うーん、そう言われるとそんな気もするけど……ちなみに秀川君が考える、対鷲島君タイマン案ってどんな感じなのかね?」
飛山は秀川が言及した『ある程度案はある』という言葉に反応した。
「完全にタイマンで勝てるわけじゃないが……ブレード投擲とブレード突撃、あとあのカスみたいなハンドガンに対する対抗策はある。というか飛山、お前も俺と同じようなアイディアがあるはずだろ?」
秀川の試すような視線が飛山に注がれた。
「何となくあるけど、まだまだ不十分で、鷲島君相手だと自信は無いかな。秀川君案を見せてくれー」
飛山はふざけたような声を出した。
「どうせお前と大差ないだろうが……まあ、いいだろう。まず鷲島が持ってる技の中で危険なのはブレード戦の技量、投擲技能、アクセル技能だ。ハンドガンはそこまで脅威じゃない。ただ、ハンドガンに意識を向けさせて、その隙にブレードで倒すっていうのが鷲島の戦い方だ。ハンドガンに意識を向けたらあいつの思う壺だ」
少し苦々しそうに秀川が対策案を説明し始めた。
「それはそうだけど、ブレード意識し過ぎたら、ハンドガンで倒されるんじゃないかな? あの攻撃は貫通力はないけど、鷲島君の射撃速度は速すぎるよ。ある程度意識しないと、すぐ撃ち殺されるんじゃない?」
「癪だが、シールドを張り続けるしかないだろう。星川チームがやったのと同じアイディアで行く」
「それだと、星川さんのチームみたくブレード投擲かブレード突撃でやられちゃうんじゃないかな?」
「投擲はシールドを集中させて防ぐ。黒井がやった方法と同じ方法だな。試合までの残りの数日である程度訓練すればできるはずだ」
黒井が土壇場で行った防御法。時間があり、かつ実力者揃いの零チームならば、完璧な形で投擲を防げると秀川は考えた。
「あの方法だとハンドガンでやられちゃうんじゃない? 黒井さんみたいに」
「俺たちの方が黒井より魔力がある。集中させてもある程度防御面は残る。何なら、シールドを二枚展開してもいい。一枚は球形シールドでハンドガンを、一枚は集中シールドでブレード投擲を防ぐ。攻撃はできなくなるが、そもそもこれは味方と合流するまでの時間稼ぎの鷲島対策論だ。根本的にはこれで十分だろう」
「ブレード投擲とハンドガンは分かったよ。でも一番肝心のブレード突撃はどうする? あれ普通の方法だと、多分新入生は誰も防げないよね?」
飛山のその問いかけに、秀川は少し詰まった。そして数秒程、逡巡した後、口を開いた。
「……そうだな。未完成だが、三つ、案がある。
一つは射線に入らないことだ。ブレード突撃は『直線的な攻撃』だ。極力やつの間合いや射線に入らない。あとは障害物を利用するのも手だ。ブレード突撃は『人がブレードを持って突撃してくる技』だ。間にある物体を貫通することはできない。遮蔽物の陰に隠れるだけでも、ブレード突撃の成功率は大きく下げられる。あとこれは五条と根崎じゃないと厳しいが……
二つ目の案としては、障害物を作る方法だ。シールドは人間を通さない。薄いシールドなら人間に当たって砕けることがあるが、五条や根崎なら厚く大きなシールドを展開できる。これで無理やりアクセルの前進できるスペースを無くす方法だ。ブレードがシールドを貫通できても鷲島自体はシールドを突破できない。これはブレード突撃の欠点の一つだ。まあ戦闘中にそんな大きなシールドを展開するなら、根崎クラスの魔力が必要だがな。
最後の案だが、まあこれは案というより、ただの反撃策だが、単純に相打ち狙いだ。アクセルは速ければ速いほど旋回性に難がある。俺たちが対応できない程の速さのブレード突撃なら、確実に旋回性は終わってる。そこを突く。金崎が淡路にやった方法だな」
「鷲島君はアクセル使ってるときでも結構旋回性が高くない? 星川さんの弾幕を抜けたのもアクセル使ってたけど旋回性高かったよね?」
最初の二つについて飛山は反論せず、最後の対策に関して疑問を投げかけた。
「それは『加速を緩めた時のアクセル』だ。あれなら星川もある程度対応できていたし、俺たちも対応できる。西山を殺した時のブレード突撃のように、『俺たちが対応できない速度のアクセル』なら旋回性が低いはずだ」
「対応できない速さで攻められたら、対応できずに終わらない?」
「言葉遊びをするな。対応できないっていうのは言葉の綾だ。相打ち狙いくらいしか対応できないって意味だ。つまり防御・回避は間に合わないが、手に持った武器を撃つくらいはできるって状況だ。まあ、限定的な状況ってことは認める」
秀川は少し苛立ちつつも、飛山の疑問に全て答えた。そして、そんな秀川に対して、飛山は茶目っ気を出した。
「うーむ、さすがは秀川君。中々の軍師っぷりだね。よっ、軍師秀川っ!」
「煽るな。俺は軍師じゃない」
「そうかな? 実際、秀川君がアリシアのチームの作戦担当じゃない? 筆記試験の成績も一番上だし。なっちゃえ、なっちゃえ、軍師になっちゃえっ……!」
つかみどころがなく、それでいてふざけたような口調であったが、飛山は内心では、そこそこ本気の言葉であった。
「煽るな。筆記試験の成績程度で、軍師を気取るつもりはない。というか、軍師なんていうのはチーム戦には不要だ。チーム戦は、戦闘力が全てだ。小賢しく立ち回っても、圧倒的な火力や防御力の前には無力だからな。実況の二年たちが色々理屈をこねくり回しているが、俺から言わせればアレは殆ど後知恵だ。実況席にいれば何とでも言えるだろ」
「お~、クールだね~。まー、軍師秀川君の対鷲島君計画としては、基本は数的有利を取って弾幕で撃破。数的有利がとれるように防御と合流を重視する感じで、もし合流中に鷲島君が仕掛けてきたら、色々と頑張ると。ふむふむ、どうですか? アリシア隊長! 軍師秀川君の必勝の策っ! いけそうですか!?」
ふざけたように飛山が零に問いかけた。零は少し呆れたような顔をした。
「……まあ、悪くは無いわね。正直まだ少し物足りないけど、私もそんなに代案があるわけじゃないし、基本は秀川案で良いと思う。でも、ブレード戦に持ち込まれたらどうする? ブレード突撃じゃなくて、純粋に投擲とハンドガンで固めながら距離を詰められたら、アウトなんじゃないの?」
「そうだな。悪いが、ブレード戦に関しては対抗策はない。その距離まで近づかれたら流石に鷲島の距離だ。リーダーならブレード戦に持ち込めるだろうが、残りのメンツだと厳しいな。対応できる可能性があるのは、せいぜい根崎ぐらいだろう」
零の問いかけに対して、秀川は少し悔しそうにしながらも、真剣に答えた。それを見て、この場にいる殆ど――五条を除く全員が僅かに驚いた。
「――意外ね。アンタ、もっと鷲島のこと舐めてると思ってたわ」
「……第二試合まではな。第三試合を見た後だと、流石に評価を改めざるを得ない。ブレード戦に関してはあいつの技量はリーダーと同レベルだろう」
「そうね……」
零は内心で戸惑った。しかし、それは顔には出さず、次の言葉を発した。
「鷲島対策に関してはだいたい……いや、一応、念のためだけど、シールドについて考えておきたいわね」
チームメイトを見ながらも、零はついでとばかりに【シールド】について口にした。
「シールドって言うと、鷲島君のシールドですか?」
上村が疑問を浮かべながら質問した。
「そうよ。アイツがシールドを使えたらかなり脅威でしょ」
零は不確定な言い方をしつつも、内心ではかなり憂慮している事項であった。鷲島の詳細成績では防御技能が非常に高いのだ。しかし、鷲島は今までの試合で一度もシールドを使っていなかった。この使っていない技をどうにか対策したいと零は考えていたのだ。
「リーダー、さっきも言ったが、どうせあいつはシールドを使わない。というか使えないだろ。心配のし過ぎだ。飛山みたいだぞ」
「おうおう、軍師秀川君や、私の悪口かえ?」
素早く飛山が反応した。
「別に龍華の真似をしてるわけじゃないわ。一応、もしそうなった時の対策を考えたいのよ。上村、アンタならどうする?」
飛山の反応を流しつつ、零は上村に話を向けた。現実主義者な秀川よりも用心深い上村ならば何か案を出せるのではないかと思ったからだ。
「それは、どうでしょう? 鷲島君は確か魔力が低そうなので、あんまりシールドを使わないと思いますが……まあ低出力の小型シールドを隠し持ってる可能性はゼロではないですね。
でも、そこまで警戒しなくていいのでは? 仮にそういったシールドを持っていたとしても、魔力的にそこまで厚いシールドは展開できないでしょうし、それだとこちらの攻撃は防げないと思います。僕以外は高魔力ですしね。やはり重装備組で攻める前提なら気にしなくてもいいのでは?」
上村は用心しつつも常識的な解釈を口にした。上村からも、鷲島の魔力は低く見えた。ただし、秀川と違い上村は、鷲島の技量や魔力管理能力を非常に高く見積もった。そして、その見積から低魔力でも使える小型シールドならば展開できると考えたのだ。
しかし、一方で、小型のシールドは防御力に難があり、高魔力ゆえに高威力の銃が使える零・根崎・五条・秀川の射撃に耐えられないと考えたのだ。つまり、仮に鷲島がシールドを使えたとしても、それは零チームに対して無意味なものだと思ったのだ。
零は上村の言葉に一定の理解を感じた。
(確かに、上村の言葉は一理ある。鷲島は上村が想像する以上に魔力はあるけど、それでも私よりは低い。魔力操作じゃ負けるけど、魔力量ならそこまで大したことはない……でも鷲島は平均よりは高い魔力を持ってる。なんで魔力感知に引っかからないのか謎だけど……それは今はいいか。
とにかく中型シールドくらいなら装備できるはず。それを使われたら……いや、でも鷲島と実際戦うパターンは重射撃組の弾幕でひき潰すことになるから、結局、中型シールドなら意味ないか。重装備組の弾幕はさすがに防げないはず……)
「そうね。確かに、少し心配し過ぎだったかもしれないわね……龍華はなんかある?」
零は、伝達禁止のルールもある以上あまり深掘りするべきでもないかと考えつつも、一応とばかりに飛山に声をかけた。親友の頭脳なら自分とは違う答えを見つけられるかもしれないという淡い期待もあった。
「う~ん? どうだろうね~? 正直、鷲島君は、速い、強い、ヤバい、と三拍子揃ってるからね。出してもいないシールドまで考えるとキリがないって言うか、頭が爆発するかも。
仮にシールドを使えたとしても、どんな風に使うかもわからないしね。鷲島君って意味わからない動き方すること多いし、シールドも意味わからない使い方するかもしれないし、仮に使えたとしても実際の運用を見ないと対策のしようがないかな?」
「そう……分かったわ。それなら、とりあえず鷲島関係はいいわね。じゃあ、最後にまとめね。佐々木・鷲島は対策通りに戦う。麻倉チームの駒は対七宮戦術で考える。基本的に佐々木・鷲島・七宮以外は雑魚だから、遭遇したら倒す。近くに誰もいない場合は合流優先。特に重装備組は合流意識を強く持ちなさい。以上よ」
この後、飛山が、匂坂チームの情報を直接戦った零チームの面々から聞き込みをした後、零チームの会議は終了となった。