学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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はじめての勧誘

 

 鷹一は、中央食堂で金崎と食事を済ませた。なお、食費は支度金として用意されたZPを使用することになったため、金崎は350ZPほどの安価な食事を選び、一方で鷹一は平均よりも少し高い600ZP食事を選んだ。

 

(ZPは主に食事・衣類・生活消耗品などに使われるが、特に食費の比重が大きそうだ。そういう意味ではZPの確保は重要だが……次のZP支給は5月。配布額は所属するチームのランクによって決まる。そしてZP以外の面でも住環境や衛生面なども高ランクほど待遇が良い。単純にチーム戦が強いチームに入るメリットは大きい。しかし、一方で、リーダーとの関係性も重要だ。配布されたZPの配分を決めるのはリーダー次第なのだから。やはり、ある程度上位に入りそうなチームかつ真っ当なリーダーのチームに入りたいが……)

 

 昼飯を食べ、金崎と少し言葉を交わしながらも、鷹一は頭の中でそのようなことを考えた。

 食事後、午前の授業でいっぱいいっぱいになっていた金崎は鷹一とは分かれて一時寮へと向かった。

 そして、鷹一は、宣言通り講義室へと向かい。午後の授業を全て受けきった。初日であったため授業を受ける人数は多かったが、鷹一と同じように全ての授業を受けたものは僅かであった。この学園では授業は自主的な参加であり必須ではない。また、参加方法も端末から見る事や、過去の授業をアーカイブで遡ることもできるため、講義室で全ての授業を受けるというのは酔狂の部類なのだ。

 鷹一は、興味深い学問に満足しながら、気分良く講義室の外へと出た。そこには、呆れる赤髪の美少女と微笑む金髪の美少女――(かずなし)と飛山が待ち構えていた。

 

「本当に全部授業受けるとか、アンタ、やっぱりアホでしょ」

 

 そして呆れ顔のまま、(かずなし)が鷹一に話しかけた。

 

「逆に聞きたいんだが、せっかく無償で受けれるのに、お前は何で受けないんだ?」

 

「別に必要ないでしょ。この学園は魔力戦闘を重視してるんだから。仮に必要になったらアーカイブを見ればいいし、いちいち全部の授業に顔出す方がアホでしょ」

 

「まあまあ、アリシア。鷲島君には鷲島君の考えがあるんだから。それよりも、移動しようよ。ここだと、できない話も多いからさ」

 

「どこに移動するんだ?」

 

「個室対応の喫茶店。ちょっとした内緒話にはちょうどいいかと思って調べておいたんだ。あ、お代は私が出すから安心して」

 

「いいのか?」

 

 飛山の提案に鷹一は聞き返した。貴重なZP――それを自身のような人物のために消費することに僅かばかりに疑問を感じたからだ。

 

「うん、リーダーは試合結果によっては稼げるからね。気にしないで」

 

 そうして三人は、飛山が調べた喫茶店へと移動した。

 ゆったりとした個室に入り、各々が飲み物を注文した後、すぐに(かずなし)が口を開いた。

 

「で、早速だけど。鷲島、アンタ、私のチームに入んなさい」

 

 言葉とともに(かずなし)は鋭く鷹一を睨んだ。睨まれた鷹一は、小さく息を吐いた。

 

「……俺とお前は相性が悪いように見えるが、本当に俺を勧誘するのか?」

 

「正直、話してみて、ムカつくし、意味わかんないし、アホだし、ちょっとヤダけど……でも、アンタ尋常じゃなく優秀みたいだから、チームに入れてやってもいいわ」

 

「そうか……分かった。ただ、そうだな……念のため聞いておきたいが、(かずなし)と飛山は互いに別のチームを率いるリーダーという認識でいいんだよな」

 

「そうよ」

「あってるよー」

 

 鷹一の質問に対してすぐに(かずなし)と飛山が答えた。

 

「そして、二人は同盟を組んでいて、情報を共有している。この認識で間違いないか?」

 

「……」

「あってるよー」

 

 今度の質問には飛山だけが答えた。

 

「ちょ、龍華っ!」

 

「いや、これは推測されちゃうでしょ。というか、そういう前提は共有しないと私たち三人とも話しにくいよ」

 

「分かった。その前提でいいなら、これから俺がする質問も問題がないと思う……では、(かずなし)に質問なんだが、お前の考えるチームのコンセプトを教えてほしい。可能ならば、現在の達成状況も聞きたい」

 

「…………? は?」

 

 鷹一からの質問を受け、(かずなし)は固まった。予想外の質問だったからだ。

 

「コンセプトだ。つまり、お前はリーダーとしてどのようにチームを運用するのかが聞きたい。もっと具体的に言うと、チーム戦のルールから想像される試合展開や、チームの基本とする戦術、その中での各自、特に俺の役割をどのように考えているのかを聞きたい。別に言い方をすると、なぜ俺を採用しようとしたのかを聞きたい」

 

「は? そんなこと聞いてどうすんの。てか、リーダーは私なんだし、質問するのは私の方でしょ」

 

 理解不能とそれに伴う不快感と反発心から(かずなし)は口を鋭くした。

 

「なぜそう思う? お前のチームが何を求めているかがはっきりしなければ、俺はお前のチームで何をするのかも分からない。お前のチームの戦術に本当に俺が必要なのか?」

 

「いや、ルール配られただけで試合展開とか、戦術とか読みようがないでしょ。やってみなきゃ分からないじゃない」

 

「それは、今の所、チームのコンセプトは不明であり、選手を採用して、チーム戦を実際にやってみてからコンセプトが決まる、という回答でいいか?」

 

「回答でいいかって――チーム戦は魔力を使った戦闘でしょ。そんなに複雑な事はできないし、単純に魔力をぶつけ合うだけなんだから、純粋に魔力が多い生徒か戦闘が強い生徒が有利にきまってるでしょ。というか、アンタみたいな面倒くさくて意味不明な奴を、私や龍華が、こんなにしてまで誘ってる理由分かってるでしょ。アンタが入学時の戦闘適性順位が1位だから、誘ってんのよ」

 

 零は憤りつつも、勧誘活動の本音――鷲島鷹一の戦闘適性順位について触れた。鷹一の視線が僅かに鋭くなった。零は怯えを心の奥底に隠し、鷹一を睨み返した。

 

「戦闘適性順位1位であることは、お前のチームの戦術において必需の存在であることを意味しないと俺は思うが、お前はそう思うのか?」

 

「当たり前でしょ。私だって……分かってるわよ龍華、言わないって。でも私だって結構、魔力量も操作も自信あるし、戦闘適性試験は本気でやった。正直一位は取れると思ってた。でも、私じゃアンタと比べ物にならないほど差があった。一応言っておくけど、アンタの詳細成績は見たから。どの評価も化物みたいな数値ばっかで笑ったわ」

 

 詳細成績の開示――リーダーが四度まで行える特権を零は口にした。

 鷹一はチラリと視線を飛山の方へと向けた。

 

「そうか。俺の詳細成績の開示を申請したのは飛山の方か?」

 

「せいかーい。アリシアには同盟のルールを使って、情報共有したよ。流石、鷲島君、筆記試験も7位なだけあるね。頭の回転も早い早い」

 

「私は筆記の方はどうでもいいけど、戦闘適性順位1位は欲しい。私含めて、強い駒で固めれば、チーム戦はまず負けない。戦術とか必要ないのよ。とにかく、強い駒で圧殺する。だからアンタを誘った。これでいい?」

 

 飛山が少しふざけた口調で答える一方で、零は憤りつつも真剣さを持った言葉で鷹一に応じた。

 

「うーん、アリシアのそれはそれで戦術のような気もするけど、鷲島君の判定はいかに?」

 

 零の睨むような視線と飛山の興味深そうな視線が、鷹一を捉える。

 

「戦術というよりは戦略の一つのように思える。とりあえず(かずなし)のチームコンセプトは理解できた。達成度はどのくらいだ? チームの上限は五人だ。お前の戦略を考えると上限一杯まで強い駒で固めるべきだろう。お前と俺と、あと三人はどうする? どこまで固まっている?」

 

「…………いいわ。教えてあげる。候補は結構いるわ。その中でも特に採用したいのが三人、アンタと、戦闘適性順位一桁代のやつと、二桁代のやつよ。片方はアンタと並行して交渉してるわ。アンタよりはまともそうだから、そっちは採用できそう。他の候補もアンタが私のチームに入れば、簡単に靡くはずよ」

 

「そうか。初日にしては中々の進度だ」

 

 少しばかり感心したような態度を鷹一は見せた。

 

「上から目線で腹立つっ! 本当にコイツ何なの?」

 

「まあまあアリシア、それも含めて鷲島君の個性だよ」

 

「龍華っ! こんなふざけてるのが個性のわけないでしょっ! 絶対私たちのこと舐めてるわよっ」

 

「うーん、それは違うと思うけど……それに、仮にそうだとしても鷲島君の成績だと、チームは選び放題だから、舐められても仕方ない気もするよね」

 

「――っ! とにかく! 鷲島、私のチームの情報は話したわ。これで満足? 満足したなら、入りなさい。アンタはムカつくけど、実力はあるでしょ。一緒にチームランク一位取るわよ!」

 

 飛山の『舐められても仕方ない』という言葉を聞き、零は一瞬頭に血が上りかけるが、それを抑え、精一杯の勧誘の言葉を鷹一に投げつけた。

 

「……そうか。すまないが、もう一つ質問をさせてくれ」

 

「まだあるの!?」

 

「ああ、少し気になってな。お前は俺の事を高く評価しているんだよな? もし、そうであるならば、俺がチームの加入に条件を課すと言ったら、お前はどこまで譲歩できる?」

 

「――は? …………っ! アンタ、足元見る気? 何が目的? ZPの配分? 少しなら、他のメンバーよりも色を付けてもいいわよ」

 

 零は、鷹一の傲慢な申し出に言葉に詰まった。しかしすぐに、零は、学園における重要な要素――通貨ともいえるZPの優遇を申し出た。チーム戦の結果によって決定されるランクによってリーダーは多額のZPを得ることができる。選手が直接ZPを貰えるわけではなく、リーダーが多額のZPを貰い、それを選手に分配する以上、『等分』ではない分配も可能なのだ。零はそれを示した。

 

「それは魅力的な提案だが……そうだな、さっき俺と一緒にいた男、金崎と言うんだが、もし『金崎をお前のチームに入れてくれたら、俺も入る』と言ったら、お前は金崎をチームに入れるか?」

 

「金崎……ちょっと待って」

 

 そういうと、零は自身の端末を操作し始めた。十数秒ほどして顔を真っ赤にして鷹一を睨んだ。

 

「アンタ、私の話を聞いてなかったの? 強い駒で固めるって言ったでしょ!」

 

「今、お前は金崎の順位だけ見て判断したな」

 

「それ以外で私が判断できるわけないでしょ!」

 

「確かにそれはそうかもしれないが、先程お前の話だとまだギリギリ枠に余裕があるようにも感じる。俺の能力が二位以下とどれほど差があるかは分からないが、お前の態度から推測するに、金崎一人で枠を埋めても余裕があるように感じられるが、どう思う?」

 

「ぐ……それは……」

 

 そう言って、零は押し黙った。そして数秒ほどして、ごくりと喉を鳴らした。

 

「龍華っ! もう一回、コイツの詳細成績見せてっ!」

 

「ほいほーい」

 

 飛山は長い金髪を揺らしながら、鷹一の成績詳細が表示された端末を零に渡した。零は自身の端末と飛山の端末を何度も見比べる。零自身と鷹一の成績詳細、それを食い入るように見た。

 

「…………、……っ! 待って、金崎をチームに入れればいいの?」

 

「念のため言っておくが、五月以降の脱退ルールを使用する場合は、俺も便乗することになるのが自然だろう」

 

「くっ――なら…………ぐ、いや、やっぱり無理よ。金崎は入れられない。アンタを入れても使える駒数が減る。『もしも』を考えると、使えない駒で枠は埋められない。その条件なら無理よ。アンタは諦める」

 

 零は悩み苦しむが、しかしあまり時間をかけずに決断をした。初志貫徹。弱い駒は入れない。それが零の決断であった。

 意志の強い零の視線が鷹一を貫いた。

 

「分かった。色々と答えてくれてありがとう。参考になった。勧誘の回答だが、少し待ってもらっていいか。よく検討してから決断したい」

 

「え? アンタ、断るんじゃないの? 金崎は入れられないわよ」

 

「お前の出した条件は理解した。俺は確認しただけだ。断るとは言っていない。だから今は検討中だ」

 

「……アンタやっぱり、意味わかんない」

 

「一般的に、俺がそのように評価されているということは、俺も理解している」

 

 鷹一の言葉を聞くと、零はがっくりと力を抜き、背もたれに小柄な体を預けた。零の話が一段落したのを確認してから、金髪の少女――飛山が口を開く。

 

「それじゃあ、次は私のターンでいいかな?」

 

「構わないが、お前も勧誘か?」

 

「せいかーい、さすがは筆記試験7位」

 

 煽るような飛山の言葉に対して、鷹一は無言で視線の圧を強くした。飛山は動じることなく微笑み返した。

 

「それなら、お前のチームのコンセプトも聞きたい。できれば、達成率もだ」

 

 零にしたものと同じ質問を受けた飛山は、僅かに口元を緩めた。

 

「コンセプトかー、一応あるけど、ちょっとぼんやりしてるから……先に鷲島君をゲットしたい理由を話していいかな? というか、私のチームコンセプトって鷲島君の採用に結構影響されるんだよね。だから、鷲島君がお祈り姿勢で来るなら、コンセプトも考え直さなきゃいけないし」

 

「それは、つまり、俺をチームの主軸として運用しようとしているということか? まだチームに入れていない相手を主軸に置くのか?」

 

「うーん、ちょっとそれは半分正解で半分不正解って感じかなー。ええっと、とりあえず、鷲島君を狙ってる理由を話すね。まあ、理由って言ってもアリシアと殆ど同じなんだけどね。強い人が欲しいってところだね。ただ、それ以上に『強い駒が敵にならない』ってことが重要かな。強い敵は凄く厄介だからね。だから、私としては最悪、アリシアのチームに入ってくれても全然いいかなって思ってるよ。同盟とはチーム戦でマッチングしないし。勿論、私のチームに入ってくれるのが一番だけどね」

 

「先程の零の言動を踏まえると、お前はチームランキングの首位は零に渡しても構わない、と考えているのか?」

 

「アリシアほどの熱意は無いかな。取れたら取ろうと思ってるけど、私の考えてる戦術とか戦略が通用するか分からないし、チームの流動性もあんまり無さそうだから、四月中にゲットできたメンバー次第になりそうだね。あ、あと、アリシアとは幼馴染なんだ。というか、元々学園で一緒に頑張っていこうって約束してたから。それだったのに、お互いリーダーになっちゃったからね。まあすぐ同盟組んだんだけど……だから、アリシアが私よりも上に行っても、そこそこ祝福できる自信があるよ」

 

「そこそこ、なのか……」

 

 飛山の曖昧な言葉に、鷹一は少し悩まし気な声を上げた。鷹一の珍しい表情を見て、飛山は少しだけ興味深いと感じた。

 

「いやー、折角なら一位目指したいって思うじゃん。アリシアと殴り合う気はないけど、狙えたら狙うよ。でもアリシアほど私は真面目じゃないから、ほどほどかなーって感じ」

 

 鷹一は飛山の言葉を聞きながらも、じっと彼女の目線や仕草を確認した。そして、鷹一は『飛山の今の言葉に嘘はない』と判断した。

 

「……なるほど、お前という人間が少しだけ分かった気がする。それで、チームのコンセプトを聞いてもいいか?」

 

「いいよー。これはチーム戦のルールを見た時に漠然と閃いて、それで鷲島君の詳細成績を見た時決めたんだけど、機動力を重視したチームを作りたいって思ったんだよねー。ほら、鷲島君って、物凄く優秀だよね。走攻防揃ってて、座学でも上位、試験官コメントもすっごく良くてさ、間違いなくナンバー1の選手だよね」

 

 飛山はそこで言葉を一旦切ると意味深な表情で鷹一を見た。鷹一は淡々とした表情で飛山を見た。飛山は思ったような反応が得られず、内心で少し残念に思いながらも再び口を開いた。

 

「それでナンバー1がチームにいるって最高だけどさ、それを運用するって考えると意外と難しいのかなって思ったんだよね。たとえばさ、五人くらいでリンチしたら大体の人はボコボコにできるじゃん。いや、鷲島君クラスだと、もしかしたら、『返り討ちっ!』ってできるかもだけど、普通はそうはいかないじゃん。チーム戦は遠距離戦が結構ウエイト占める気がするし、展開的にも『挟み撃ちっ!』とか起こりそうなんだよね。孤立した鷲島君がボコボコにされるってケースもありそうで、でもこれって逆に言うと、相手の強い駒でも囲めばボコボコにできそうじゃない。それで仲間を孤立させず、それでいて孤立した相手をリンチするには、どうすればいいのかなーって思ったんだ。で! まあ結論を言うと、それってチーム全体を足が速い人ばっかりにすればいいかなーって思ったんだよね。足が速ければ、素早く逃げれるし、素早く集まれる。しかも皆が欲しい戦闘適性一位様は~、何と機動力も凄く高いっ! 私も結構足には自信があるから、『おっ! いけるじゃーん』って思ったの。どうかな? このコンセプト、鷲島君的には何点くらい?」

 

 にっこりと笑みを浮かべながら飛山が鷹一に問いかけた。

 

「……興味深いな」

 

「何点くらい?」

 

 再度、飛山は笑みを浮かべたまま問いかけた。

 

「俺は採点をする立場にない。お前より情報量が少ない以上、チーム戦に関する理解度は劣るだろう。その俺がお前を採点しても、それは的確なものには成りえない」

 

「的確じゃなくても、採点して欲しいな。外れても怒らないからさー」

 

「そうか、分かった。なら――――90点だ」

 

「おお! 高得点だー。ん? 一応聞いておくけど、100点満点の90点だよね? 1000点満点だったら落ち込むんだけど」

 

「100点満点での90点だ」

 

「やったー。鷲島君のお墨付きも貰った事だし、安心して機動力チーム作っちゃおうかな。というわけで、鷲島君、どうかな? 一緒に試合会場走り回らない?」

 

「チームコンセプトの達成率はどのくらいだ?」

 

 微笑みながら勧誘する飛山に対して、鷹一は淡々と達成率について問いかけた。

 

「うーん、ガードが固いなー。達成率は、まだまだかな。というか鷲島君が入るか入らないかでチームのステータスがガクッと変わるから、鷲島君が決まらないと他の選手の採用が難しいんだよね。一応、鷲島君を含めて七人くらい足が速そうな選手を見つけたかな。ちなみに七人中、鷲島君以外にも一人には成績開示権限使って裏取りもしたよ」

 

「そうか。初日とは思えないほどの進度だな。ちなみに金崎をチームに入れて欲しいと言ったらお前はどうする?」

 

「うーん、仲良いね~。でも金崎君かー。ちょっとお祈りしたい感じかな」

 

 飛山は零とは違い端末を確認することもなく、鷹一の仮定に答えた。

 

「今、金崎の順位を調べもせずに答えを出したな。順位を覚えているのか?」

 

「いや。金崎君の順位は覚えてないよ。そうじゃなくて、金崎君はさっき見た感じ、機動力がいまいちって感じなんだよね。平均くらいな感じ。それだと私のコンセプトに合わない、でしょ?」

 

「さっきも疑問に感じたんだが、なぜ、お前は成績の開示を行っていない選手の機動力が分かる?」

 

 鷹一は故意に『疑問を感じているような』表情を作った。

 

「んー、おや、これは試されてるのかな? たぶん鷲島君も意識してると思うんだけど、外見と歩き方で凡その足の速さは分かるでしょ。一応、成績開示を行っていない候補の五人には追加の質問をして、だいたいの機動力の目安は出してるよ。金崎君には質問してないから、予想精度は落ちるけど……それでも、金崎君の速さは平均くらいだと思うよ」

 

「そうだな」

 

 飛山の言葉に対して鷹一も同意の言葉を口にした。鷹一もまた、飛山と同じように金崎の機動力に関してあたりをつけていたからだ。

 

「ん。なので、金崎君は残念ながら縁が無かったということなんだけど、それだと鷲島君に対してアピールが足らなそうだから…………さっき、鷲島君はアリシアからZPに分配優遇に惹かれてたよね?」

 

「多少は惹かれるものはある。飯代に困らなくなるのは歓迎だ」

 

 これは鷹一の本音であった。ZPはこの学園における通貨だ。莫大な富を得る必要がないが、それでも学園内で生活するならば、ある程度は必要だと鷹一は考えていたのだ。

 

「ほうほう。それなら、私から鷲島君に対してできるアピールポイントとしては、ZPの分配優遇かな。具体的にはチームに振り込まれたZPの1/(N-1)を鷲島君に献上します……! あ、N=チーム人数ね。三人チームなら二分の一、四人チームなら三分の一を鷲島君の取り分にします。もし、何かの手違いで、私と鷲島君だけのチームになっちゃったら全額渡します……! これ、どうかな? 結構頑張ってるんじゃない、私?」

 

「多いな。俺一人にそこまで譲歩してしまって大丈夫か? 他のメンバーと揉めないか?」

 

「うーん、一番強い人を確保するためなら問題ないかな。あと正直な話をすると、君を取れれば、残りは『機動力が高いけど上位でない選手』を狙っていこうと思ってるから、報酬分配では揉めないと思うよ。選手が自分自身の順位を知れるのも、この試練の鍵だよね」

 

「そうだな。中位以下の選手であれば、無理に自分の価値を吊り上げようとするのは少数派だろう」

 

「こんな感じかな? ZP分配の優遇、あと鷲島君の方で何か要求があればできるだけ飲むつもりだよ。何かある?」

 

「……いや、飛山相手にならないな。質問に答えてくれてありがとう」

 

「ほーう、それなら、この条件で、どうでしょうっ? 鷲島君、一緒に試合会場を走り回りませんかっ?」

 

「かなり興味を惹かれるが……すまない。少し待ってもらっていいか。自惚れだが、他にも誘いはあるだろう。可能ならば、色々と検討したいと思っている」

 

 鷹一の答えを聞くや否や、飛山はがっくりとした表情になった。

 

「ぐわぁぁ。さっき言ったことが跳ね返って来ちゃったね。一位の選手は自分が一位であることを知ってるからねー。もてもて確定だもんね……うん、まあ、流石にアリシアの誘いも断ってたし、一発で通るとは思ってなかったよ。ただ、できれば回答期限を設けてもいいかな? 鷲島君が決まらないと他を決められないからね」

 

「当然だ。いつまでに回答すればいい?」

 

「うーん、本当なら明日までって言いたいけど……鷲島君の価値を考えると三日後まで、かな。最初のチーム戦には出たいからね」

 

 高等部新入生の第一回チーム戦――その参加申請の期限は四日後であった。つまりこれは、飛山から鷹一への最大限の譲歩であった。

 

「分かった。それまでには結論を出す。聞き忘れていたが、零の回答期限は何時だ? 飛山と同じでもいいのか?」

 

「さすがに私は、龍華ほど待てないわ。チーム戦までに駒を揃えないといけないし、明日までには回答しなさい」

 

「了解した。明日までには返す」

 

 それから三人は少しだけ話をしてから、喫茶店をあとにした。

 

 

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