学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合① 投入室にて

 

 各チームが、それぞれ第四試合に向けて準備を進めている間にも時間は進み、ついには週末が訪れた。

 五月からのランクを決定する最後のチーム戦ということもあり、各チームが激しい戦いを繰り広げた。土曜日の試合に決着がつき、それにより、凡そ半分のチームのチームポイントが確定した。

 そして、注目を浴びる日曜日の試合――そのうちの一つである零・麻倉・雲川チームの試合の開始時間が刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

 試合開始直前、雲川チームの金崎は、雲川・鷹一と共に投入室へ向かっていた。金崎は現在、かなり緊張していた。理由は三つある。

 

 一つは単純に今日の試合は今まで以上に重要な試合だということだ。今日の試合で雲川チームのランクは確定する。この学園ではランクは待遇に大きく直結する。自分のミスで雲川チームのランクを損なうようなことはあってはならない。チームに対する献身の強さ故であった。勿論、金崎も以前鷹一が言っていた言葉を理解している。よほどのことさえなければ目標のBランクは固い。しかし、それでも、金崎は不安だった。

 二つ目の理由は前回の試合経験だ。金崎は第三試合で淡路と相打ちになった。初めての被撃破、少しの失態。鷹一には気にしないように言われたが、それでも金崎は自身の失態を悔やんだ。同じ失態を侵さないように、この一週間努力に励んだ。その努力は金崎を確実に強くした。しかし、それでも、金崎は不安だった。

 そして三つ目の理由は対戦相手の強さだ。今までも対戦相手の多くは、実力不足の金崎よりも格上であった。そういう意味では誰が相手であろうとも、格上と言える。しかし、今回の相手は暫定Aランクチームであった。チーム戦を生き残り、上位に残り続ける怪物チーム。得点を他のチームと奪い合う悪鬼たち。どの相手も金崎からすれば十分に恐ろしく、強敵であった。

 

 投入室に入りながら、金崎は最後に、脳内で対戦相手の復習をした。鷹一が纏めた資料を、金崎はしっかりと脳内に記録しており、それを読み返す形だ。

 既に投入室の中には零チーム、麻倉チームの全員が揃っていた。

 対戦相手の生徒たちを見ながら、金崎は脳内で鷹一の資料と言葉を読み返した。

 堂々と、『我らこそが最強のチームだ』と言わんばかりのオーラを纏っているのが零チームだ。見た目も強そうで、気の弱い金崎には刺激が強い相手だ。

 

――零チームは全員が他のチームのエース級に強い。特に零・根崎の強さは尋常ではない。他の三人も強く、星川・西山クラスに近い実力者だ。基本的に五人とも、金崎では勝てない相手だ。紫苑と連携したとしても恐らく勝てないだろう。正面から戦うのは不可能に近く、奇計を用いても撃破は難しいだろう。

 

 赤い髪の小柄な美少女、リーダーの零だ。金崎の目が合うと強い視線で睨んできた。金崎は慌てて視線を逸らした。入学当初、鷹一とともに零・飛山とは少し揉めた経験もあり、金崎は零が少し苦手であった。

 

――零は対人戦闘能力が極めて高い。近距離・中距離の両方で非常に高い戦闘センスを発揮する。ブレード戦の名手であり、その能力は淡路・西山よりも上だ。

 

 金崎が視線を逸らした先には、零以上に強いオーラを発する女子生徒、根崎がいた。

 零よりも背が高く、発育が良い体、明るい髪色に少し崩した制服。健全な男子生徒である金崎は、根崎の大きく特徴的な部位に目を向けそうになるが、それは自然と防がれた。根崎の持つ強い雰囲気ゆえだった。

 その雰囲気は、威圧的でまるで女王のようにこの空間に君臨していた。チーム名を知らなければ、この根崎が零チームのリーダーなのではないかと誤解してしまうほどだ。

 金崎は何となく『きっと根崎は中学校ではクラスに君臨してたんだろうな』と思った。今だって根崎から強いオーラが発され、もし試合でなければ、このオーラに当てられ跪いてしまったかもしれないと金崎は思った。そして、オーラだけではない。根崎はこの学園でも最強クラスの実力者であることを、金崎は鷹一に教わっていた。

 

――根崎は超人だ。非常に高い魔力に、重装備でも曇り一つない機動力、抜群の体幹、膂力、そしてそれらを合わせて淀みなく使える理外の戦闘センス。1対1の対人能力では零に後れを取るが、単純な攻撃力・防御力では根崎は圧倒的だ。特に軽機関銃と拡張弾倉を起動したときの殲滅能力は異常と言ってもいい。

 

 今もなお、根崎を見る金崎に対して、彼女は返す視線一つ寄越さなかった。虫けらなど気にしないとばかりの王者の風格であった。

 なお、実は、これらは全て金崎の勘違いであり、根崎本人は、『鷲島君に佐々木君……強い選手がいっぱいだ……うぅ……』と金崎に負けず劣らず緊張していたし、金崎に視線にも気付いていたが、『金崎君が見てる……? 私、何か悪い事しちゃったかな……どうしよう……? でも聞いたりしたら感じ悪いかな……? ええっと……』と困惑していた。

 気の小さい根崎は言い出せないだけであった。金崎と根崎は、性格的に似ている面があった。

 

 金崎が次に視線を向けた五条は怜悧で冷たい印象を与える女子生徒だ。やはり他の零チームの面々と同じで強気なオーラを隠しておらず、冷たい視線で他の生徒を見ていた。冷たく見下すような瞳が金崎を捉えた。金崎は蛇に睨まれた蛙のようになりつつも、鷹一の言葉を思い出した。

 

――五条は零チーム随一の魔力の持ち主だ。根崎以上の魔力の持ち主であり、一年生の中では最高クラスの魔力の持ち主だ。恐らく零チームのレーダー通信担当を担っている。最高クラスの魔力をシールドにつぎ込んでいるため、防御能力が極めて高い。今までの試合でも基本的に他のチームメイトと組んで行動しており、組まれるとかなり厄介だ。特に根崎と組んだ時は最強の矛と最強の盾が揃うという最悪の状況になる。反面、攻撃技能は少し乏しく、秀川・上村の方が脅威と言える。ただ、それでも高魔力から放たれるアサルトライフルの威力は十分危険であり、金崎のシールドならば一撃で粉砕できる。

 

 冷たい目で金崎を見る五条の脳内は、既に試合終了後のことを考えていた。脳内で穏やかで恵まれたAランクの生活を思い浮かべていたのだ。金崎のことなど見ていなかった。ただただ、幸せな妄想をしながら虚空を見つめていた視線がたまたま金崎とあっただけであった。五条の頭は基本空であった。

 

「おい、さっきから何見てんだ」

 

 金崎がチームメイトを物色していることに気付いた秀川が声を上げた。金崎は慌てて視線を逸らした。同時に、鷹一が金崎の前に立った。秀川と鷹一の視線が交錯した。秀川が機嫌悪く舌打ちした。

 

「やめなさい。試合前よ」

 

 零の注意を受けて、秀川は仕方がないとばかり口を噤んだ。秀川が鷹一から視線を逸らすと、それに合わせて上村が鷹一と金崎に向かって小さく頭を下げた。秀川と上村、この二人もまた強者であった。

 

――秀川も魔力がかなり高い。根崎には劣るが、それでも秀川の魔力は、雲川チーム全員の魔力の合計よりも高いくらいある。そしてその魔力の高さを活かした重装備を使いこなしている。高威力のアサルトライフルと大出力シールド、攻撃・防御共に優秀であり、零チームの矛にも盾にもなれる存在だ。また普段の一時寮で見せる印象とは違い、チーム戦では味方を支え、単身での突撃や支援射撃、囮役までこなすチームに献身的な生徒だ。

 

――上村は唯一、零チームでは一般的な魔力の持ち主だ。ただし一般的といっても平均よりは高めであり、金崎や紫苑よりも大きな魔力量を持っている。そして、魔力量以上に高い戦闘センスの持ち主だ。アサルトライフル・シールドの両方を巧みに使う。出力では秀川に劣るが技量では上村が勝る。零チームの中では、あまり得点を稼いではいないが、要所での活躍が目立ち、チーム貢献度が高い人物だ。

 

 金崎が鷹一の資料を思い返している間に、少しばかり事態が動いた。麻倉チームのリーダーである麻倉がゆっくりと雲川に近づいたのだ。鷹一は僅かに警戒するが、一方で雲川は無警戒に麻倉の方に近寄った。

 

「あ、麻倉さん……」

 

「う、うん。雲川さん……えっと、朝にも言ったけど……今日はよろしくね……」

 

 そう言うと、麻倉は手を出した。雲川がその手を握った。握手であった。

 

――麻倉は平均以上の戦闘力を持つ人物だ。アサルトライフルとブレードを両方使い、どちらも平均以上に使いこなす。零チームに比べればかなり弱く、恐らく零チーム全員に負ける程度の戦闘力だが、それでも金崎が1対1だと勝つのは厳しい相手だ。たとえとして適切かどうか分からないが、『ブレード突撃が無い代わりに射撃・援護・連携が上手い淡路』のようなユニットだ。おそらく戦闘適性順位は淡路より上だ。

 

 握手を終えた麻倉が彼女のチームメイトの下へ戻ると、双葉と七宮が心配そうに麻倉を見た。

 

――双葉は、上手く戦えば金崎でも勝てる可能性がある相手だ。地形条件や紫苑の援護射撃などを駆使すれば勝てる可能性はかなり上がるだろう。ただし、向こうは佐々木の援護砲撃があり、それがある場合は勝つのは難しいだろう。実際、飛山チームのエースとも言える道合は佐々木の援護が入った双葉に討ち取られた。双葉は、単純な戦闘力では評価しにくい駒だ。だが、それでも条件次第で勝てる可能性があるということは覚えておいてくれ。

 

――七宮は、麻倉チームの二人目のエースだ。アサルトライフル・ブレード両方で高い技量を持っている。しかし零チームの秀川・上村・五条には僅かに劣る印象がある。金崎が最善の状況で戦い、紫苑の援護射撃を得られた上で、七宮が孤立して佐々木の援護を受けられないといったような状況であっても、おそらく金崎は討ち取られるだろう。それだけの実力差が七宮と金崎の間にはある。

 

 金崎は視線を僅かにずらし、所在なさげにしている黒沢を見た。

 

――黒沢は双葉より弱い。戦闘センスも魔力も秀でた点はない。麻倉チームの中では一番落としやすい駒だ。しかし、潜伏が上手く、隠れられると厄介だ。特に潜伏している黒沢が観測する形で佐々木の砲撃が来るというパターンがあるので注意が必要だ。

 

 そして最後に、金崎は佐々木を見た。麻倉チームは全体的に穏やかそうな見た目の人物が多く、金崎から見ても話ができそうと思える人ばかりであった。佐々木も同じだった。穏やかで優しそうな男子生徒といった感じであった。しかし、鷹一の評価は最も厳しいものだった。

 

――佐々木は超危険人物だ。麻倉チームの要であり、全ての基点だ。この男さえ撃破すれば麻倉チームの戦闘力の半分以上は崩壊する。逆に言うと、この男は一人で四人分以上の働きをする男だ。極めて強力な曲射砲の砲撃を得意としており、多くの生徒をこれで撃破に追い込んだ。攻撃力が非常に高い上に攻撃射程・範囲が広い。攻撃速度も速く、もし麻倉チームの誰かに捕捉されれば佐々木の砲撃が飛んでくるだろう。そして佐々木は魔力も高く、おそらく砲撃に少しでも掠れば紫苑も金崎も一撃でダウンする。単純な1対1の戦闘も強い点が非常に厄介だ。唯一の弱点として高速近接にやや弱いところが挙げられる。実際、飛山チームの針谷にそこを突かれて落ちた。今回の試合でこれを倒せるのは、零と根崎くらいだろう。

 

 ふと佐々木が視線に気づき金崎を見た。金崎は固まった。鷹一の言葉を思い出したからだ。あの鷹一がそこまで危険視する佐々木、それと目が合ったからだ。佐々木は、少し不思議そうに金崎を見た後。小さくお辞儀をして目を逸らした。

 始終穏やかで、金崎に見られても不快にせず、ぼんやりとした顔でお辞儀した。金崎は『本当に佐々木って危険なのか』と思ってしまった。それほどまでに、佐々木は穏やかな人物だったのだ。

 

 そして、そんなことを金崎が考えている間に、試合開始時刻が訪れた。

 投入室がロックされ、アナウンスのカウントダウンののち、13人の生徒は一斉に第四試合のマップである『農業エリア』に投入された。

 





★おまけ

第四試合土曜日試合組の暫定ABランク帯の戦闘結果
Aランク帯
匂坂・飛山・舞島のチーム戦:8-5-0で匂坂チームの勝利。
梶田・中・水渕のチーム戦:10-1-4で梶田チームの勝利。

Bランク帯
柚木・星川・清沢・劉のチーム戦:2-10-2-6で星川チームの勝利。


日曜日試合組のマッチング
Aランク帯
零・麻倉・雲川のチーム戦
蓮・高光・滝本のチーム戦

Bランク帯
安重・有坂・木下のチーム戦
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