学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合④ 超人、超人、強者、強者、常人、弱者

 

 雲川のダウンと同時に一瞬、雲川チームの通信網が停止した。

 しかし、すぐに、雲川のダウンを察した金崎は、自身の通信母機を起動し、通信網を復旧させた。

 

『鷲島、雲川さんがやられたみたいだ。あと雲川さんがやられる直前までいた光点が消えてる。それと、上村が少し移動してる。中央側に寄ってる……! あと、零が引き返してる……! さっきまでそっちに行ってたのに……!?』

 

 

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(紫苑がダウンする間際に現れた新しいアンノウン。麻倉・双葉・黒沢の誰かだが……今までの情報的に一番可能性が高いのは麻倉か……?)

 

 鷹一は一瞬だけ、まだ見ぬアンノウンについて考察するが、すぐに目下の脅威である零チームに関して思考を定めた。

 

『恐らく五条・上村・零の三人で中央部に立てこもる気だな。俺は逃げる零を追う。お前はそのままマップ南部を観測してくれ』

 

 金崎に返信しながらも、鷹一は既に走りながら、零との距離を詰めていた。

 

『わ、分かった……! あ、撃った方がいいか? 零は速いが、上村ならここから狙えそうだ……!』

 

『今はやめておこう。上村はシールドも上手い。それに、金崎の居場所がまだ露見していないことは、俺たちにとって大きなアドバンテージだ。今は堪えよう。ただ、この後、試合展開次第では撃ってもらうかもしれない。心の準備は、しておいてくれ』

 

 その指示とともに、零の後ろ姿を捉えた鷹一は、ハンドガンを顕現させ、彼女に向かって魔力弾を数発放った。

 零は、まるで後ろに目が付いているかのように、ステップを刻み回避に専念した。そして、ある瞬間、ステップを踏みながらアクセルを起動。瞬間的な超加速を得た零は、一気に鷹一から距離を離した。

 それを見た鷹一もまたアクセルを起動した。零よりも少し強い加速を得た鷹一が、距離を詰めた。

 

 先にアクセルが終了したのは零だった。停止の隙を極限まで少なくした芸術的なアクセルを終えた零は、振り向きながらアサルトライフルを顕現した。

 アサルトライフルから発射された魔力弾が次々と鷹一に殺到した。

 鷹一は、独特な歩法で魔力弾を避けながらもハンドガンを発射。零は、瞬間的に顕現した球形シールドでそれをガードした。そして、お返しとばかりにアサルトライフルを連射。鷹一のアクセル終了の隙を狙った見事な一撃であったが、鷹一は、まるでアクセルの隙など無いとばかりに、硬直せずに特殊な歩法で零に接近しながら、またしてもハンドガンを発砲した。

 

(独自の歩法で隙を殺したっ……!? いや、加速と発動時間を弄って隙のタイミングを視覚的にずらした? やっぱりコイツ、尋常じゃないわね……)

 

 零は驚愕しつつも、球形シールドとステップで鷹一の攻撃を防ぎ、さらに曲芸的なバック走で鷹一との距離を少しでも稼ぎつつ、隙を狙ってアサルトライフルによる射撃を繰り返した。それに対して、鷹一もまた独自の歩法とハンドガン射撃で距離を詰めつつ零への攻撃を繰り返した。

 

 二人は一定の距離を保ちつつも、マップを東へ東へ移動していた。

 射撃戦の距離であれば、武器の質で零が勝り、ブレード戦の距離であれば両者ともに強みがあり、そしてその間の距離であれば、驚異的なブレード投擲とブレード突撃を持つ鷹一が有利であった。

 零はできるだけ射撃戦の距離を保つ必要があり、それは現段階では達成されていた。しかし、少しずつ少しずつ両者の距離は縮まっていた。鷹一のブレード投擲の距離まで持ち込まれれば、零は不利になる。しかし、零にも考えがあった。

 

(もう少し引き込む……! そうすれば、ブレード投擲の距離でも零チーム(私たち)が有利……!)

 

 零の考えた勝利への策、それは――

 

『鷲島! 五条と上村が射撃の構えを取ってる……! そっちを狙ってるはずだ……! 位置的に上村はたぶんもう鷲島を狙えるはずだ……! 五条はもう少しで鷲島を狙える……!』

 

――金崎の観測によって既に鷹一に伝わっていた。

 

『分かった。こっちでも上村の位置はだいたい掴んだ。大丈夫だ。対処法はある。ただ秀川が来ると少し厳しい。秀川がそろそろ北側の戦場から合流する。もし見つけたら教えてくれ』

 

 淡々と金崎に通信を返した鷹一は、球形シールド・ステップ・バック走・アサルトライフル射撃、これらを織り交ぜながら必死に距離を保とうとする零に対して、少しずつ距離を詰めた。そしてその時がやってきた。

 

 ブレード投擲の射程距離に入ったのだ。同時に、五条の射撃範囲に鷹一が収まった。

 

 まず、最初に行動を起こしたのは鷹一だった。ハンドガンの射撃の後、即座にブレードを投擲した。零はハンドガンを球形シールドで防いだ後、小柄を活かした回避力で投擲ブレードを避けた。即座に上村の精密射撃が東から、五条の乱射がマップ中央から鷹一に降り注いだ。少し遅れて、零もアサルトライフルを使い、鷹一を狙い撃ちにした。零チーム三人からなる完璧な十字砲火だった。

 先程、零を追いかけるために使った鷹一のアクセルは、クールダウン中であり使えない。そのことは零もまた把握していた。

 

 

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(確実に入った……!)

 

 確かな手応えを感じた零は内心で歓喜するが、それでも気を緩めずに、鷹一に向けて警戒しながら射撃を続けた。

 弾幕の中を、鷹一は、ただただ走って零に向かって接近した。連続射撃で足を止めた零との距離が大きく縮んだ。しかし、鷹一は当然その代償として、大ダメージを――

 

(……は? なに、これ……?)

 

 零は驚きのあまり思考が一瞬停止した。

 あり得ぬことが起こっていたのだ。

 

 鷹一は一切ダメージを受けていなかったのだ。

 

 再度、零は射撃を行った。上村や五条も、零に近づく鷹一へ、次々と射撃を続けている。しかし、それらは一発も鷹一に当たらなかった。射撃の精度が悪いのではない。鷹一は、多くの弾丸を意味不明な動きで、躱してはいるが、それでもいくつかの弾丸は間違いなく鷹一に直撃するコースだった。

 ただ、どの弾丸も当たらないのだ。鷹一に当たる直前、弾丸は全て止まってしまうのだ。鷹一のすぐ近くまで行くと弾丸が、まるで手品のように急停止するのだ。

 

(え……? もしかして、シールド……? は……? え……? でも……? 何で見えないの? シールドってもっと目に見えるでしょ……?)

 

 驚愕しつつも、零は必死に射撃と防御を繰り返した。混乱した状況下でも、射撃精度を一切低下させずに、鷹一に向けて回避不能の弾丸を放てるのは、零が一流のセンスの持ち主である証拠であった。しかし、それらの弾は虚しくも、鷹一のシールドに弾かれた。

 

 鷹一のシールドは、極端に面積の小さいシールドであった。直径僅か2cm。あまりにも小さく、弾丸にぴったり当てなければ効果を発揮できないシールドであった。

 しかし、シールドは面積が小さいほど、厚くできる。それ故、鷹一のシールドは重装備の選手の魔力弾でさえも防ぐことが可能であった。この超極小シールドを鷹一は次々と展開し、自身に飛来する回避困難な魔力弾をピンポイントで防いでいたのだ。

 また、副次的効果として、あまりにも小さいシールドゆえに、視覚上シールドを展開しているようには見えないという点もあった。これが零を困惑させていた。

 

 既に鷹一と零の距離は数メートルを切っていた。鷹一・零の両者が得意なブレード戦の距離である。

 鷹一は、ブレード投擲の距離で戦うこともできた。しかし、『秀川が来る前に零を撃破したい』と『ブレード投擲の距離で十字砲火を受けながら戦うよりは、零を盾にして敵の十字砲火を防ぎたい』という二つの考えから、ブレード戦を選択したのだ。

 

 鷹一と零は、ほぼ同時にブレードを顕現させた。

 

 一合、両者のブレードが衝突し、甲高い音を立てた。そして、続けるように二合、三合と剣戟が続く。

 

(零……やはり想定通り、かなりの腕前だ。新入生の中では恐らく最高クラスの技量だろう)

 

(舐めてたわけじゃないけど、コイツ、やっぱりブレード戦上手すぎるわね……このままだと押し切られる……!)

 

 三合目から徐々に零が押され始めるが、五合目で僅かに零が押し返した。

 理由は、鷹一が再びシールドを展開したからだ。

 高速でブレードを振るう鷹一と零の戦闘。本来であれば、横合いから攻撃すれば、どちらに当たるか分からない。そんな状況では金崎も五条も射撃ができなかった。

 しかし、上村は違った。彼の持つ高度な射撃技量は、零に誤射することなく精密に鷹一だけを狙い撃ったのだ。

 

(上村の射撃精度は予想以上だな。侮っていたわけではないが……やはり雲川チームに入って欲しかったな……)

 

 精密射撃を超極小シールドで防御しながらも、鷹一は斬りかかって来る零にブレードで対抗した。そして、再び上村の精密射撃による援護が入った。僅かに鷹一優位だったブレード戦だったが、上村の精密射撃により、再び拮抗し始めた。

 

(援護があっても、拮抗させるのが限界っ……! 上村がいなきゃ負けてたわね……いや、今はとにかく秀川を待つ……! 秀川っ! 早く来なさい……!)

 

 拮抗した剣戟に、五条と金崎の役目は無く、ただ見守るしかできなかった。両者ともに何か動くべきかと考えたが、両者とも仲間から指示を受け、ひたすら、その場で待ち続けた。二人にはそれぞれチームの中で役割があったのだ。

 

 そうして僅かな間、舞うようなブレード戦と定期的に響く上村の射撃の音が試合会場を支配した。

 

 けれどもその支配は長くは続かなかった。

 アサルトライフルの連射が、鷹一と零・上村の戦いの拮抗を打ち破った。

 最初に気付いたのは鷹一であり、その直後に上村が、そして上村から警告を受けた零が、最後に金崎が気付いた。

 鷹一は中央東部から自身と零に向けられた魔力弾を超極小シールドで防いだ。零もまたシールドを展開し、自身の体を守った。

 

『鷲島! すまん! 中央東! ちょうど、上村の北に麻倉がいる! 気付かなかった! 今そっちを撃ちまくってる! 麻倉ならここから狙える! 撃つか!?』

 

 

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『大丈夫だ。金崎。まだ撃つな。それより秀川だ。恐らく状況的に、五条か秀川が、麻倉を狙うはずだ。気付いたら教えてくれ』

 

 鷹一は返信しながらも、麻倉からの射撃で攻め手が緩んだ零に斬りかかった。同時に超極小シールドを展開し、零の隙を補うように放たれた上村の精密射撃も防いだ。

 零は一瞬悩みながらも、シールドで麻倉からの攻撃を防ぎつつ、鷹一の攻撃をブレードで受けた。再びブレードとブレードがぶつかり合う音が響いた。

 

(麻倉が邪魔すぎるっ! 一度距離をっ――いやっ! 駄目だ。コイツにブレード突撃を使わせるわけには……!)

 

(秀川が来る前に零を倒せなければ、厳しい展開になる……こちらから距離を取ってブレード突撃で隙を突くという手もあるが、後方の上村に撃ち抜かれそうだな)

 

 ブレード戦を繰り広げながらも、零と鷹一は互いに状況の打開策を練る。

 

 零にとって上村の援護があって何とか拮抗している状態。それが、麻倉の攻撃により狂ったのだ。シールドへの展開へ魔力や注意力を割かなければいけない。

 それは、鷹一という超人的なブレード使いを相手にするには、零にとって厳しい負担だった。いっそのこと、距離を取って、再び射撃戦を展開するという手もあった。シールドを展開しながらブレード戦をするよりも、シールドを展開しながら射撃をする方が簡単であったし、何より、上手くいけば、鷹一に対して麻倉の攻撃を含めた十字砲火ができる可能性があったからだ。

 しかし一方で、距離を取れば、鷹一の必殺の一撃――第三試合で西山を倒した【超高速ブレード突撃】が来る可能性があった。零はそれを強く警戒していたのだ。

 

 一方で、鷹一もまた状況を厳しく考えていた。鷹一がシールドを初めて見せてから、零チームは防御の構えを取っており、これは重射撃役である秀川の合流を待っていることは明らかであった。

 そして、五条・上村・零の十字砲火をシールドで防いだ鷹一であっても、秀川の重厚な弾幕が加われば、対抗できる自信が無かった。

 それ故、できる限り素早く零を倒し、可能であれば、秀川が来る前に、後方の上村まで撃破しておきたかったのだ。

 しかし、状況を一瞬で変えられる【超高速ブレード突撃】を使うことを鷹一は躊躇った。

 理由としては、鷹一の必殺の【超高速ブレード突撃】は旋回性にやや難があり、『射撃能力が秀でているユニットが万全の体勢を取っている場合においては、迎撃される可能性が高い』と鷹一は考えていたからだ。現状の零と、その後方に控える上村相手に使えば、零を討ち取れても、鷹一自身が落ちる可能性があった。それ故に、必殺のカードを切れなかった。

 

 ただ、それでも、麻倉の乱入により、状況は拮抗状態からやや零不利へと傾いていた。つまりは、零がブレード戦で押し切られる前に秀川が来れるかどうかが、この勝負の大きなカギであり、この試合の勝敗の左右するところであった。

 

『五条が移動した! 東に向かってる! 秀川はまだ見えない!』

 

 金崎の通信を聞きながら、鷹一は機会を窺った。零とブレード戦を重ね、上村からの精密射撃を防ぎ、零のブレードを防ぎ、麻倉からの射撃を防ぎ、零へブレードで斬りかかり、麻倉の射撃を防ぐ零を見て……そして、チャンスが訪れた。

 

――麻倉の射撃のタイミングと、零のブレードとシールドの同時使用時の僅かなタイムラグ、上村のリロードのタイミング、全てが重なった僅かな隙を突いて鷹一はアクセルを起動した。

 

 接近距離による無理やりなアクセルの使用。本来であれば、零と鷹一の体が衝突してしまうが、鷹一はアクセルの加速度を調整し、さらに独自の歩法を用いることで、十全な旋回性を保ちつつ、零のすぐ横をまるですり抜けるように通過した。通り抜ける際、ブレードで零の体を切り裂き、彼女に致命傷を与えた。

 

 零という一流の生徒――脅威の動体視力と反射神経、そしてブレード戦技量を持つ、戦闘適性順位7位の英傑を打ち破った鷹一であったが、無傷での勝利とはならなかった。すれ違いざまに、零は切り裂かれながらも、ブレードで鷹一の利き手を切り落としたのだ。第四試合にして、初めて鷹一は戦闘中に傷を負った。

 

(片手と交換か。少し厳しいが、零相手ということを考えるならば、十分な戦果だな)

 

 鷹一はブレードを利き手ごと落としながらも、そのまま上村の方へと突き進んだ。残ったアクセルの効果時間を使った前進であった。

 しかし、その制御能力は大きく落ちていた。それは重量変化のせいだった。非常に繊細なアクセル制御によって成り立つ鷹一の超人的な技は、僅かな重量変化に対応できないのだ。利き手一つ分の重量変化は致命的であった。そして、その致命的な弱点を、上村は狙い撃った。

 リーダーを失いながらも上村の射撃精度は落ちることなく、鷹一の右肩を撃ち抜いた。胴体を狙った攻撃であったが、鷹一が瞬時に回避行動を取ったため、右肩に命中したのだ。

 

『鷲島! 麻倉が倒れた! 秀川だ! 麻倉を倒して、秀川が麻倉の位置に入った! 射撃体勢だ! あと、秀川は左腕がない! 凄いダメージを受けてる!』

 

 金崎の報告を聞き、鷹一は内心で、僅かに安堵した。

 

 

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『よし……わかった。金崎、お前も射撃の準備をしておいてくれ』

 

『あ、ああっ! わかった!』

 

 金崎と通信を交わしつつ、鷹一は驚異的な魔力制御能力を用いて、アクセルの制御を取り戻した。それと同時に、秀川の暴力的な弾幕が、鷹一に降りかかった。合わせるように、五条の乱射、上村の精密射撃が鷹一へと襲い掛かる。

 既に、秀川の存在を知っていた鷹一は、残ったアクセルの効果時間を使い、人外の動きで弾幕を掻い潜りながらも上村へと接近した。しかし、上村に接近しきるよりも前にアクセルの効果時間は終了した。致命的なアクセル終了時の隙が露わになり、そこを零チームの三人が集中攻撃した。

 鷹一は瞬時に超極小シールドを次々と展開し、自身に命中するであろう魔力弾を防いでいく。

 射程が短い鷹一は、反撃することができない。また零チームの弾幕が強く、被弾のリスクを冒さずに、これ以上接近することも困難であった。それゆえ、鷹一は静止して、その場で一方的に零チームの弾幕に襲われ続けた。

 

(やはり秀川が入ると弾幕が重いが……まだ拡張弾倉を使っていないな。恐らく俺の防御の仕組みを予想していて、その対策だろう。防御の突破方法を見出したら拡張弾倉を起動するはずだ……それまで耐えきれば……)

 

 零チームの弾幕を完全に防ぎつつも鷹一は、勝利を目指して思考を研ぎ澄ませた。

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