学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合⑥ 鉄壁の守り

 

 上村を撃破した後、鷹一は試合会場を一気に北上した。零チームの生き残りである五条を倒すためだ。

 

 走りながらも、鷹一は自身の残魔力量を確認し、大出力レーダーを起動した。魔力消費が激しいアクティブ装備であったが、二つの理由から鷹一はレーダーを起動した。一つは、五条の位置を確実に知るため。もう一つは、麻倉チームの生き残りがいれば、その位置の手がかりを掴むためだった。

 レーダーに映った光点は一つのみだった。

(距離的に、ほぼ確実に重装備の五条だろう。麻倉チームの生き残りは潜んでいるのか……それとも既に撃破されているのか……)

 

 表示された光点の位置はマップ北部の低密度区域であった。北西へと移動する五条の動きから、鷹一は、五条が任務点を狙っている、または、麻倉チームの生き残りの撃破点を狙っていると予想した。

 

(どちらにしろ、できるだけ早く五条を倒したい。もし麻倉チームの生き残りがいるならば、上手く横取りしたいが……)

 

 鷹一は中央部を超えてマップ北部に入り、五条を視認した。レーダーを切り、五条の方へ向かって全力で駆けた。先程と同じく、確実性を重視し、アクセルは使用しなかった。

 

 五条は鷹一に気付くと、手に持つアサルトライフルを発砲した。上村よりも劣悪な射撃精度のそれは、鷹一を捉えることができなかった。鷹一は殆ど回避行動することなく、五条へと接近した。偶に、流れ弾が直撃しそうになるが、鷹一はそれを危なげも無く回避した。明らかに射手の技量が低かった。

 

 そうして、鷹一のハンドガンの射程に、五条が収まった。素早く発砲する鷹一に対して五条は球形シールドを展開した。鷹一は、自身の攻撃が防がれるのを気にせず、そのまま走りながらハンドガンを牽制的に撃ち、そして、ブレードを投擲した。

 五条は回避しなかった。ただ、自身の纏う球形シールドの出力を限界まで上昇させた。鷹一の必殺のブレード投擲がシールドに防がれた。鷹一は半分驚きつつも、もう半分は納得した。

 

(やはりか……尋常でない魔力量だ。全身を厚いシールドで覆うとは……五条の魔力量ならば理論上可能ではあるが……)

 

 五条の魔力量は、零チームで最強であった。そして、五条は、その尋常でない魔力量を用いて、『ブレードを防げるほどに厚いシールド』を球形に展開し、体全体を覆うことが可能であった。

 本来であれば、ブレードを防ぐにはシールドを厚くする必要があり、普通の生徒であれば、その分シールド面積は極端に小さくなる。実際に、第三試合で、鷹一のブレードを防いだ黒井は、非常に小さなシールドしか展開できなかった。それ故、鷹一はシールドを展開していない部分をハンドガンで撃ち抜くという、二重の必殺技で多くの選手を葬ってきた。

 

 しかし、ここに来てそれが瓦解した。五条のシールドは鷹一の攻撃を全て防ぎ、そして、全面を完全に防御しているため、隙を突いて五条の体を傷つけることはできなかった。

 

 一方で、五条から鷹一への攻撃は可能であった。五条はアサルトライフルを乱射した。鷹一はそれを苦も無く回避しつつ、五条にさらに接近した。ブレード戦の距離であった。鷹一は内心、意味が無いだろうと思いつつも、ブレードで五条に斬りかかった。

 五条の厚い球形シールドが、ブレードを防いだ。五条が至近距離からアサルトライフルを発砲した。鷹一は再び、それを何の苦も無く回避して、僅かに距離を取りながら、ハンドガンを数発発砲した。それも当然、五条の球形シールドの前では無意味だった。再度五条がアサルトライフルを乱射する。鷹一は回避した。そうして、互いに無駄な攻撃を繰り返した。圧倒的な防御力、理外の回避力。五条も鷹一も互いに攻撃を通すことができなかった。

 

 さらに何度か、互いに無駄な攻撃を繰り返した。様々な角度から攻撃を加えることで、鷹一はいくつか分かったことがあった。

 

(……球形のシールド故、癖は少ないが、それでもシールドの補強時に少し弱点があるな。それに射撃時の問題点……やはり五条には明確な弱点がある。いや、これはむしろ、射撃武器とシールドを併用する殆ど全ての生徒の弱点だが……今それを突くのは少しもったいないな……今後のことを考えると……)

 

 戦闘中に気付いた五条の二つの弱点。しかし、鷹一はそこを突くのを躊躇った。

 一つ目の弱点を突けば、今後の試合で『鷹一の特殊技能』が警戒されてしまう。『偶々、五条の弱点に攻撃が刺さった』といった風な演出をしたいが、それも現在の状況では困難であった。

 二つ目の弱点はより致命的な弱点であり、また多くの生徒にとって共通する弱点であった。しかし、この弱点は五条相手には一度しか使えない方法であり、またこの方法を使うと、多くの生徒が自身の弱点に気付き改善してしまう。鷹一は、この弱点には気付かせず、もっと生徒たちが今の弱点を維持したまま成長することを期待したのだ。この弱点は早いうちならば改善しやすいが、成長した後だと改善はしにくいものだと鷹一は考えていた。

 

(麻倉チームの生き残り……麻倉チームのチームポイント……任務点…………消極的だが、ここは持久戦でいこう。それに、持久戦なら、上手く行けば、他のチームの今後の戦い方を制限できるかもしれない)

 

 悩みつつも、鷹一は決断した。『麻倉チームの生き残りが任務点を確保する可能性があること』を許容する代わりに、『自身の特殊技能を秘匿し』『五条や他の選手の明確な弱点の改善を防ぎ』『さらには持久戦の難しさをあえて他のチームに叩き込むことで、今後の他チームの戦い方を制限する』ことを選んだ。

 

 決断後、鷹一はハンドガンを主軸に戦った。五条からのアサルトライフルの攻撃を全て回避し、ひたすらハンドガンを発射。時折、ブレードによる投擲を行い、また突然接近し、ブレードで斬りかかったりと、五条の集中力を削りつつ、全力の球形シールドを維持させ続けることで、彼女の魔力を無駄に浪費させることを強要した。

 

 五条は絶大な魔力の持ち主である。そのため、『常に全力の球形シールドを維持することで、鷹一の攻撃を完全に無力化する』という考え方は間違いではなかった。勿論、それをできるのは五条のような最上位の魔力の持ち主に限られるが、可能であった。

 

 だが、しかし、全力の球形シールドの維持は大きく魔力を消耗させた。

 

 これは一種の籠城戦であった。魔力という五条の兵糧が尽きるまで続く籠城戦。しかし、援軍は無い。五条は単独では鷹一を撃破することはできない。打って出ることができないのならば、味方が来るまで耐えるか、敵が諦めるかするのを待つのが籠城戦だ。味方は既に全滅した。そして、鷹一は諦めないし、鷹一の魔力消費は時折発射される魔力弾とブレードの生成コストしかない。魔力総量は五条が大きくても、魔力の節約は圧倒的に鷹一が勝っていた。

 

 5分以上にも及ぶ攻防で、五条の残り魔力は数パーセントを切っていた。一方で鷹一はまだ魔力を残していた。無傷の五条と満身創痍の鷹一。しかし、実情は見た目とは裏腹であった。

 

――そして、その時がやってきた。

 

 五条の魔力が尽き球形シールドが解除された。それを確認した鷹一は淡々とハンドガンを発砲。五条の脳と心臓を撃ち抜き、彼女をダウンさせた。戦闘中に魔力が尽きた選手は攻撃も防御もできない。ただただ、やられるだけの的になるのだ。

 鷹一にとって、今までで最も長い戦闘時間であったが、決着はあまりにもあっけないものであった。

 

(……今更だが、あまりにも絵にならない持久戦だったな……VIPを喜ばすことを考えるならば、もう少し配慮すべきだったか? いや、VIPがチームに影響力を持つのは五月からだ。それに、今後の試合を考えるならば、これで正解だっただろう。上手くいけば、他のチームが今後の戦闘で、魔力の節約を考えるかもしれない。そうなれば、瞬間的な攻撃力や防御力を落とせる可能性がある。捕らぬ狸の皮算用となるかもしれないが、悪くも無い考えだろう)

 

 鷹一は淡々と思案しつつも、南へと走った。自身の任務点を確保するためだ。

 五条とのあまりにも長い戦闘で、残り時間はそう多くはなかった。

 

 麻倉チームの生き残りに警戒しつつ、鷹一は任務点を確保した。そして、それと同時に第四試合は終了した。一つのチームのみが生き残り、生き残り選手が全て任務点を確保したことによる早期決着であった。

 

(杞憂だったか……)

 

 麻倉チームが全滅していたことに気付いた鷹一は、やはり隠蔽装備の相手は少し苦手だと思った。

 

 

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