学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
【飛山龍華】
飛山チームのリーダー。零とは学園に来る前からの親友であり、現在同盟中。親友とともに鷲島を勧誘したが失敗した。好奇心がまあまあ強め。機動戦術でチームバトルを無双中だったが、匂坂チームには敗れた。第三試合終了時の順位は暫定2位。
【道合杏奈】
飛山チームの狙撃手。通信担当も兼任。一生懸命な努力家。リーダーの飛山を尊敬している。本質的には明るくよく喋るタイプだが、情報の流出やチームの足を引っ張ることを警戒し、あまり喋らないようにしている。
【種村可恋】
梶田チームの対シールド要員。梶田チーム高魔力三人組の一人。ほのぼのとした気質の持ち主だが、梶田チーム内での複雑な人間関係により、実質的なチームのまとめ役になりつつある。変に素直なため、余計な事を言ってしまうこともしばしば。
第四試合日曜日の部。
零・麻倉・雲川のチーム戦が始まる少し前の時間。
観戦会場には、この試合を見ようと多くの生徒が集まっていた。
この試合がAランク帯の試合ということも、観戦する生徒が集まった理由の一つでもあるが、それ以上に、本日の試合は全て注目度が高かった。なぜなら、全ての新入生の来月からの待遇に関わるからだ。
既に土曜日の部の決着はついている。今日の試合が終わることで全チームのチームポイントが確定し、それにより順位も確定するのだ。土曜日組の生徒の多くは、五月以降の待遇の決定をいち早く知る為にも、日曜日の試合に集まっていた。
そんな中で、暫定2位の飛山チームのリーダー飛山龍華は、チームメイトの一人である道合を連れて、試合会場へと訪れていた。
Aランク帯の試合である『零・麻倉・雲川のチーム戦』の会場の座席は、ほぼほぼ満員であり、飛山と道合は、何列か空いている席がないか見て回り、数分程探したところ、ようやく空いている席を見つけた。
五人席の端っこに一人の少女が腰かけているのを見て、飛山は明るく声をかけた。
「種村さん、隣いいかな?」
「うん? おお、これはこれは……暫定2位のリーダーさんだね。うん、いいよ。一人で見るのも退屈だしね」
どこかまったりとした様子で、暫定5位の梶田チームのメンバーの一人である、種村可恋が答えた。飛山は笑顔を携え種村の隣に座り、道合は小さく種村にお辞儀をしてから飛山の隣の席に着いた。
「……昨日の試合は惜しかったね」
友好的な雰囲気の二人を見て、種村がなんとなしに声をかけた。土曜日の飛山チームの試合『匂坂・飛山・舞島のチーム戦』の件であった。
「うーん、頑張ったけど、負けちゃった。やっぱり匂坂さんのチームは強いね。あ、梶田さんのチームは昨日は大勝利だったね。おめでとう。正直、うらやましいな~」
前半は正直に、後半はどこかふざけたように飛山が答えた。
「私は途中で落ちちゃったけどね」
少し寂しそうに種村が呟いた。
種村は土曜日のチーム戦では水渕チームの山辺に討ち取られていた。その事を少しネガティブに考えていたのだ。
「でも、あの状況で、東君を打ち取ったのは凄いよ。東君と山辺君の二人同時に相手するって状況なら、殆どの人が何もできずに落ちちゃうと思うよ」
飛山は励ますような言葉を口にした。それを聞いた種村は、僅かに目を見張った。
「およよ……試合見てたの?」
「午後の試合だったからね。私のチームは午前だったし」
当然と言った風に飛山が答えた。
一方で、そんな飛山を見て、種村は少しだけあわあわとし始めた。
「困ったな……実を言うと、反町のやつに結果だけ教えてもらったんだ。飛山さんのチームの獲得点数は知ってるけど、どんな感じに飛山さんが戦ったのか実は知らなくて……ごめん」
自身の不勉強さと飛山の勤勉さが明らかになり、種村は少しだけ悔やんだ。そして、内心で、チームメイトの反町からもっと情報を聞いておいた方が良かったかもしれないと、僅かに、本当に僅かに後悔した。
梶田チームに所属している反町は、自身の試合終了後すぐに、『匂坂・飛山・舞島のチーム戦』の試合ログを購入し、分析していたのだ。そしてその分析結果を、土曜日のうちにチーム内で説明していた。しかし、種村はその説明を適当に流していたのだ。
「反町さんに結果だけ教えてもらったの? 反町さんって試合の流れとか全部覚えてそうだし、種村さんにも教えそうな感じがするけど」
(……なんで分かるの……?)
飛山の言葉を聞いて、種村は内心で困った。
「……よく分かったね。反町のやつ、凄い語り出したんだけど、めんどくさくなって切っちゃった……いや、その、ごめん。許して……許して……」
ぼんやりと困ったような顔をしながら、種村は、『飛山チームの試合を見ていないこと』を小さく謝罪した。
「いやいや、別に責めてないよ。ええっと、そうだね……今日は一人なの? 仲良しの梶田さんは?」
困ったような種村を見て、助け船を出すように飛山は話題を変えた。
「仲良くないよ。梶田とは腐れ縁だよ」
梶田チームの梶田と種村は学園に入る前からの知り合いであった。
「そうなの? じゃあ仲良しの反町さんは?」
続く飛山の問いかけに、種村は少し嫌そうな顔をした。
「仲良くないよ。反町とは本当に仲良くないよ。この学園で初めて会って一緒のチームになったけど、アイツはナチュラルに、チームメイトに暴力振るうし、最悪だよ。ド屑だよ。梶田もあいつにぶたれて泣いてたよ」
種村の答えを聞いて、飛山は少しだけ意外そうな顔をした。
「ありゃりゃ、反町さんってそういうキャラなんだ。大人しそうに見えたし、ちょっと意外かも……? ああ、でもちょっと納得感あるかも? 梶田さんと反町さんって雰囲気真逆だしね」
飛山が二人の姿を思い浮かべた。強気で傲慢な梶田と、知的で穏やかそうな反町の姿だった。
「どっちも他人をイラつかせるって意味じゃ、同じタイプだけどね」
一方で、種村は辛辣に二人を評した。
「やっぱり仲良さそうだね」
「仲良くないよ」
面白そうに種村を見る飛山に対して、素早く種村が答える。
「そっか。そうすると、今は一人? 反町さんは試合とか熱心に見るタイプに思えたけど、ログを買うから関係ないのかな?」
「反町は梶田相手にDV欲求を満たしてるよ。私もDVされそうになって、観戦会場に逃げて来たんだよ」
「逃げて来たって、どこから? 三人は一時寮が別々だよね? 訓練室? ということは、さっきまで三人で仲良く訓練してたのかな?」
種村の言葉尻を飛山が拾い上げた。そして、それは種村としては聞かれたくないことであった。少しの無言の後、種村は困ったように飛山を見た。
「…………もしかして、これって腹の探り合い始まってる? 私、そういうの得意じゃないから、困るよ」
Aランク上位を争う二チーム。直接の対決は今までは無かった。けれど、今後マッチングする可能性は十分にあるチームであった。種村は、内心で『こういう時のための反町なのに、アイツはいつも肝心な時にいないな』と毒吐いた。
「いやー、ごめんごめん。大事な第四試合の結果より大切なことでもあるのかな? って思ってね。梶田さんのチームは皆優秀だから、そのチームが大切にしていることって、結構重要だと思ったんだよね。私は思いつかないけど、反町さんや一之瀬さんは、何かに気付いたのかなって思って。気になっちゃった」
飛山の笑顔が種村に突き刺さった。
(この人、ちょっと怖いんだよな……笑顔は明るい感じだけど、ちょっと底知れなさがあるっていうか……というか、すごい読まれてる……どうしよう……)
種村は目の前の飛山に対して少しの恐怖と警戒心を抱きつつ、できるだけ冷静に、それでいてほのぼのとした感じを出しつつ、口を開いた。
「考えすぎだよ……ただの反町のDV欲求だよ……アイツ本当にドSで鬼畜だから。もし会っても話したりしない方がいいよ」
「そうかなー? 反町さんって見た目は穏やかそうに見えるけど……本当にDVとかするの……? というか、この試合見に来ないっていうのは私の考える反町さんのイメージに反するんだよね。反町さん、もしかして、何か大事なことやってるの? 梶田チームの根幹に関わることとか?」
どこか確信を持ったような飛山の問いかけは、種村を大きく困らせた。
「情報戦、やめて……やめて……」
「気になるなー」
「本当に、本当に、ただのチームDVだよ。それより飛山さんのチームも二人しかいないけど、残りの二人は? どこで、どんな悪い事してるの……?」
種村は必死に追及をかわしつつ、反撃の言葉を放った。梶田チームで観戦会場に来ているのは、種村ただ一人であったが、飛山チームもチームメイトの針谷と伊舎堂を欠いていた。
「悪い事はしていないよー。針谷さんは訓練してるよ。試合を見るより、訓練する方が合ってるみたい」
飛山チームの針谷は、高速の近接戦闘を得意としており、麻倉チームの佐々木を討ち取ったほどの優れた生徒であった。一方で、頭脳労働は好まず、情報収集や解析などには参加はしていなかった。
ちなみに、今、飛山とともにいる道合も、頭脳労働は得意ではなかったが、道合は針谷とは違い、自分に苦手なことでも積極的に向き合うタイプであり、また何より、リーダーの飛山をとても尊敬しており、彼女と行動を共にしたかったために、観戦会場に来ていたのだ。自己評価が低く、飛山の邪魔をしたくないという理由から、道合は、ずっと無言で飛山と種村の会話を見守っていた。その姿は、雲川チームの金崎と少しだけ似ているものだった。
「うちの石井と一緒か……ちなみに、もう一人は……?」
そして、これらの特徴は梶田チームの石井にも当てはまることでだった。
「伊舎堂さんは小テストだね。伊舎堂さんは、真面目で勉強も頑張るタイプだから、明日の小テストに向けて頑張り中かな」
飛山チームの最後の一人、伊舎堂は、鷹一や淡路チームの木村と一緒で勉学も大事にするタイプであった。そして間の悪い事に、この第四試合の日曜日の翌日の月曜日に、小テストが予定されていた。半分以上の生徒が小テストの対策などできるはずもなかったが、伊舎堂は違った。少なくとも、この場に伊舎堂がいない表向きの理由にできる程度には、伊舎堂は真面目に小テストの対策をしていた。
「一之瀬さんと同じか……どうしよう……思ったより、普通の理由だった……悪い事してないのか……」
梶田チームの一之瀬も真面目な人柄であり、土曜の試合が終わるや否や、小テスト対策に取り組んでいた。
悪い事――この言葉の定義は難しい。もしこの言葉を『学園のルールに抵触する』とするならば、飛山チームも梶田チームも『悪い事はしていなかった』。
しかし、悪い事というのが、『他のチームにはできない秘匿の計画を進めているか』という意味であれば、両チームとも、それぞれの『悪い事』を進めていた。梶田チームは反町と梶田が、飛山チームは伊舎堂が、それぞれ、チームのために裏で暗躍していたのだ。
「悪い事はあんまりしてないかな」
「あんまり、なの……? ちょっとはしてるの?」
「この学園でAランクにいるって、ちょっと悪い事じゃない?」
飛山は小さく苦笑した。
「――だとすると、Aランク一位のチームは極悪人になってしまいますね」
突然、飛山と種村の会話に、第三者が割り込んだ。
第三者――銀髪の美少女、匂坂キッカはどこか嬉しそうな笑みを浮かべながら、種村・飛山・道合の三人を順番に見た。匂坂の中で、今日のごはんが決まった瞬間であった。