学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『さて、始まりました第四試合『零・麻倉・雲川のチーム戦』、まず初期配置は……! おおっと! これは偏りました! 重量級は全員北戦場、また鷲島選手と麻倉チームの殆どが北側です! かなり駒が偏りましたね。南戦場は、零リーダー、上村選手、七宮選手、金崎選手です。中央に雲川リーダーが入っています!』
『北側やばいな。零チームの重量級全員が相互に援護できる。麻倉チームは全員建物の中からスタートだけど、捕捉されればほぼ壊滅まったなしだ。南側も駒数・質で零チームが圧倒してる。あー、これはもう勝負ついたな』
『各生徒動き出しました! 南戦場では零リーダーが猛ダッシュで北上! さらに上村選手・七宮選手が銃撃戦に入りました!
北戦場では根崎選手が軽機関銃を使って、双葉選手が隠れる建物を攻撃中! 凄い威力で身を隠す双葉選手もろとも建物を破壊しそうな勢いです。
中央付近では、雲川リーダーは東へ移動し、五条選手がそれを追いかけるように東へ!
北西部の鷲島選手は高所に登っていて……! おっと! ここで佐々木選手の砲撃です! って、うぇええ!! なんだこれ!? 砲撃が分裂して、根崎選手に降り注ぎます! 根崎選手、双葉選手への攻撃を停止し、迎撃に! 秀川選手も砲弾を迎撃しています!』
試合会場では、根崎がシールドを展開しつつ、軽機関銃を使い佐々木の砲撃を次々と撃ち落としていた。しかし、手数が足らず、いくつかの榴弾が次々と根崎の周囲で爆ぜた。爆炎が北戦場の一部を包み、建物を廃墟へと化していった。しかし、その威力では、根崎のシールドを傷つけることはできなかった。
『クラスター弾だな。威力は低いが、攻撃範囲は広い曲射砲の砲弾の一種だ。ただこれ、佐々木は馬鹿か? こんな距離で撃ったら双葉に当たるだろ。ていうか、佐々木の魔力持たないだろ』
『凄まじい攻撃で、根崎選手は迎撃に必死ですが……!? これは、双葉選手を助けるために砲撃をしたのでしょうか……!?』
『だとしたら佐々木はアホ確定だろ。これじゃあ双葉も巻き込む。他の理由がありそうだが……』
『あ! 爆炎に紛れて麻倉リーダーが徐々に南下しています……!』
『麻倉と黒沢を逃がすための一手か、それなら……いや、待て……なんで、双葉に当たらない?』
試合会場で、佐々木によって次々と撃ち込まれるクラスター弾であったが、その殆どが根崎とその周囲、および根崎の南側に集中していた。双葉のいる建物にも流れ弾が数発当たることがあったが、その数は少なかった。
『砲撃精度が良いのでしょうか……!?』
『クラスター弾に精度も何もないだろ。いや、それはいいか。どちらにしろ、この砲撃だと根崎のシールドは貫けない。佐々木の位置も砲撃で割れた。近くの鷲島と協力できなきゃ、重装備組に押し潰される……いや、それよりも早く魔力が尽きるだろ』
『確かに、これだけの攻撃、魔力が持つとは――ん? 今なんか、一瞬――えっ!? 根崎選手ダウンです! 得点は佐々木選手! 何があった!?』
麻倉チームの作戦会議で披露した、佐々木の高速徹甲弾による攻撃が根崎をシールドごと貫いたのだ。
実況は砲弾の軌道を何とか認識できたが、しかし、何が起こったのかを理解はできなかった。
『…………は?』
そして、二年生Aランクの選手である四宮も同じだった。四宮にとって曲射砲など『運任せの欠陥兵器』であった。故に、佐々木の評価は低く、これまでの佐々木の成績は運によるものだと間違って判断していた。
しかし、それは無理のないことであった。戦闘中に、曲射砲で精密砲撃など常識的に考えれば不可能なのだ。なんのアシストもなく、勘と弾道学と観測のみで、初撃を、しかも移動する個人単位に、命中させられる佐々木が、あまりにも超人すぎるのだ。
佐々木の超人的技量により、言葉を失う四宮を見て、客席にいる匂坂は嬉しそうに微笑んだ。
「フフッ、大層な予想が外れてしまって、心ここにあらずといったところでしょうか?」
言葉を紡ぐ匂坂を、種村が呆れるように見た。
(
「まあ、これはちょっとしょうがないかもね。佐々木君の技量は超人的だし、実際に戦わないと分かりにくいと思うよ。それに、二年生の人たちはそれまでの常識があるから、私たちとは曲射砲に対する感覚が違うのかもしれないしね」
飛山は僅かに実況解説役を庇うような言葉を口にした。
「それはそうだと思う。実際、私もさっき冗談で言ったけど、根崎さんが最初に落ちるとは思わなかった……最初のクラスター弾も、ちょっと
種村は想定以上の魔力を佐々木が持っていることに言及した。
「それだけ佐々木君の技量と作戦が優れていたのでしょう。初見殺しの一種ですが、それでもクラスター弾と強化徹甲弾の組み合わせは見事でした。これは佐々木君にしかできない芸当でしょう。彼の技量を理解できないことは、ある意味、幸せかもしれませんね」
匂坂の言葉は暗に四宮を批判したものだった。そのことに飛山は少し苦笑しながらも、思案した。
(強化徹甲弾かぁ……うーん、ちょっと予想できなかったな。それに匂坂さんが気付くのも早い。佐々木君がクラスター弾使ってた時も驚いてなさそうだったし、動じない性格っていうのもあるだろうけど、何だかんだで佐々木君の研究とかだいぶやってるのかな? それとも今、即座に対応して分析したのかな? 匂坂さんはどっちも有り得そうで嫌だなー。うーん。やっぱり普通に頭も良くて柔軟なのが、匂坂さんの厄介なところなんだよなー。性格くらいしか弱点がない)
飛山が仮想敵の分析をしている間に、我に返った実況が声を上げた。
『え、ええっと、とりあえず根崎選手ダウンです! そして鷲島選手が佐々木選手の下へ向かいました。一方、秀川選手が今度は双葉選手を攻撃します! 麻倉リーダーはタイミングを図りながら南下し中央へ向かっています!
南戦場では上村選手と七宮選手の銃撃戦が続行! っと、ここで佐々木選手の砲撃です! 上村選手にクラスター弾が殺到! 上村選手大きく機動して砲撃を回避! そこを七宮選手がブレード突撃でしかけます! が、上村選手は回避して銃撃……! 七宮選手はシールドでガードするも負傷っ!
零リーダーも佐々木選手の元へ向かいます! 金崎選手は捕捉されていないのか、建物の一室から戦場の様子を見ています!』
移動する鷹一を見ながら飛山は口を開いた。
「雲川さんの援護じゃなくて、佐々木君を取りに行ったね」
(状況的に、これだと雲川さんが危ないけど……それだけ、佐々木君を警戒してるのかな?)
言葉と共に思案する飛山を見て、匂坂の口元が小さな弧を描いた。
「根崎さんが死んで佐々木君が用済みになったのでしょう。惚れ惚れするほど冷酷な判断です」
まるで、自分は鷹一の全てを理解していると言わんばかりの口調であった。
「分からなくはないけど、ちょっと早すぎないかな? まだ五条さんも秀川君もアリシアも生きてるよ。相性的に五条さんあたりを佐々木君が落としてからしかけた方がよくない?」
「いえ、鷲島君の判断は正しいです。鷲島君は最強です。ですが、それは無敵であるわけではありません。多数から攻撃されれば撃破されることもあるでしょう。そして、鷲島君にとってこの試合で最も危険な相手は根崎さんでした。ですが、根崎さんが倒れて、盤上が変わりました。この後は、鷲島君が佐々木君を撃破します。そうすれば、残る大駒は零さん一人。零さんの位置は金崎君が捕捉しているでしょうから、佐々木君を倒したあとに倒してもいいですし、零さんを無視して、他の駒を取ってもいいです」
「ふーん。ちなみに、佐々木君が倒れた後は、鷲島君はどうすると思う?」
「私なら、零さんを絶望させたいので、彼女の仲間を一人ずつひき潰していきますが……鷲島君なら合流前に零さんを叩くでしょう」
「私もその二つなら、鷲島君派だなぁ……お! 佐々木君のクラスター迎撃……! いや、あれも直射できるんだ……やっぱり佐々木君もどこかぶっ飛んでるね。さっきも南側に援護飛ばしてるし――って、どさくさに紛れて、また南側に砲撃したっ! えぇ~、鷲島君に迫られてる状況で、砲撃入れるとは……」
佐々木のクラスター弾による迎撃、そして、それを平然と回避する鷹一、鷹一が回避運動をしている間に南戦場へ砲撃を撃つ佐々木を見て、飛山は『やっぱり佐々木君は一番危険な駒だな』と再認識した。
「ですが、鷲島君には当たりません。やはり佐々木君では――」
『――ここで七宮選手ダウン! 上村選手、まさかの奥の手、ブレード投擲で仕留めました……! そして、七宮選手の仇を取るように雨あられと佐々木選手のクラスター弾が上村選手に迫ります……! が、これも上村選手は回避っ! って、今、佐々木選手がなんか凄い迎撃してたぞっ! でも鷲島選手は普通に回避っ!』
実況の声が匂坂の言葉を遮った。試合会場では七宮が上村に撃破され、そして一方で、佐々木が拡張弾倉の仕様を利用した二重の攻撃を行っていた。最初はクラスター弾を発射し、その後、拡張弾倉を使用し、強化徹甲弾を高速で発射したのだ。二つの速度差がある砲撃が鷹一に向かうが、鷹一は淡々とした顔でそれを避けたのだ。
鷹一は、そのまま、無表情で佐々木に接近し、彼の首を刎ねた。佐々木は最後の力で曲射砲を撃つが、鷹一はシールドを起動しつつ、素早くその場から離れた。
『佐々木選手ダウンです! 最後は、直射狙いで鷲島選手を狙ったようですが、鷲島選手の回避能力には敵いませんでした』
『……今のは判断ミスだな。二連射の直射なんてせずに、自爆するべきだった。直射のせいで、最後の自爆も上手くいかなかったからな……』
佐々木がダウンしたからか、解説の四宮がようやく口を開いた。しかし、佐々木の衝撃は未だ大きく、それゆえ、口は重かった。
そして、さらに追い打ちをかけるような事態が発生した。
佐々木の死に際に放ったクラスター弾がマップ中央部に降り注いだからだ。
『おおっと! 佐々木選手のクラスター弾が雲川リーダーの下へ……!? これは、たまたまでしょうか? まさか狙って撃ったとは……? あ! 大爆発です……! 雲川リーダー、建物に逃げ込みますが、建物ごと粉砕! 大ダメージです……!』
実況の中村が驚きの声を上げつつも、状況を読み解いていく。そして、解説の四宮は混乱の最中にあった。
『いや、これは、流れ弾……いや、待て、そんなはずが……』
常識的な考えから、偶然の流れ弾という言葉が出るが、しかし、一方で、二年生Aランクという激戦区を生き抜いた四宮の勘が、偶然ではないと導いていた。そして、それは正しい事が証明される。
魔力弾が放たれ、雲川が撃破されたからだ。そして、その射撃元は――
『おっと! 雲川リーダー、ダウンです! 得点は双葉選手……!? って、え、いや、あ! 双葉選手もダウンです! 得点は秀川選手です……! なんか今、凄い攻防が……!?』
『……ええっとちょっと手元の端末で見直してるんですけど、佐々木選手の爆撃で中央部が廃墟になって、射線が開きました。そこを双葉選手が北側の建物から狙撃しました。これで雲川リーダーがダウン。しかし、その直後、秀川選手の射撃で双葉選手がダウンしました……! これは、麻倉チームの戦術でしょうか!?
というか、秀川選手に攻撃されてて双葉選手は狙撃の余裕なんてなかったはずなんですが……あれ? すみません。双葉選手の狙撃の少し前に、秀川選手が爆炎に包まれています。というか、秀川選手、片腕がありません! さっきまであったのに!?』
『…………』
実況を続ける中村に対して、解説の四宮は完全に固まった。
そして、数秒の沈黙の後、ようやく四宮が口を開いた。
『秀川のダメージは佐々木の砲撃だ……佐々木が鷲島に行った二連射の直射。あれは鷲島を狙ったものではなかった。その奥にいる秀川狙いだ。
初撃のクラスター弾は鷲島を通り過ぎたあと分裂して秀川を襲い、そして二発目の強化徹甲弾が秀川の片腕を持ってった。秀川がこの対応をしている間、双葉がフリーになって、雲川を狙撃した。
おまけに、雲川への狙撃が通るように佐々木の最後の砲撃で、雲川ごと中央部の建物の一部を倒壊させた。佐々木の最後の三発は、対鷲島ではなく秀川と雲川を倒すための砲撃だったってことだ』
淡々と、できる限り自分の感情を押し殺しながら、四宮が分析を行った。これは彼が二年生Aランクという優れた立場にいるからこそできる分析であり、そして、それは正しかった。
四宮の顔色の変化を、観客席にいる匂坂はじっと見つめていた。そして、粘着質な笑みを浮かべた。
「フフッ、二年生Aランクという立派な看板にひびが入ってしまいそうですね」
「いやいや、匂坂さんや。これはちょっと、佐々木君、というか麻倉チームが怖いよ。佐々木君の技量も凄いし、双葉さんの狙撃も上手かった。連携も凄く良くできてた。というか、自爆しないで雲川さんを砲撃っていうのが、そもそも嫌らしいよ」
匂坂へ言葉を返しつつも、飛山は盤上を見た。雲川・双葉が落ち、麻倉・黒沢の両名が爆炎に紛れてマップ中央を目指している。
(状況的に、佐々木君が死ぬのは決まってたし、七宮さんも死んでた。鷲島君を自爆で倒しても盤上的にはアリシアのチームが有利だし、それなら、鷲島君を生かしてアリシアたちと潰し合いをさせる。その上で雲川さんの1点を確実に取るってことか~)
そこまで、考えた飛山は僅かに目を瞑って、思考を深めた。
(……しかも、わざわざ双葉さんに撃たせるのが、嫌らしい。秀川君に追い詰められてた双葉さんを死ぬまでコキ使った感じだ。でもおかげで、麻倉さんと黒沢さんは隠密を維持できる。任務点を狙えるし、上手く行けば撃破点も取れるかも? うーん、こういう作戦って誰が立ててるんだろう? 死んでた七宮さん以外だと思うけど……)
内心で思案を重ねる飛山を見て、隣の道合は『たぶん、今、龍華さん、凄い考え事してる……! でも指摘したら、きっと足を引っ張っちゃうし、ここは黙って気付かないフリをしよう! 沈黙! 沈黙!』と心の中で奮起した。
しかし、その決意は顔色に現れており、近くにいた種村を不審がらせた。種村は数秒程、道合の方を見るが、すぐに指摘することでもないかと思い、現在の話題である佐々木について口を挟んだ。
「というかさ、今、解説の二年生が言ってたけど、さっきの佐々木君の砲撃って鷲島君狙いじゃなくて、秀川君狙いだったの……?」
種村の問いかけに飛山が答えた。
「状況的にそうだね。ちょっと佐々木君の技量が頭おかしいけど、二年生の人達の解説が正しいと思う。つまり鷲島君・秀川君の二枚抜きだね。
たぶん一つ前のクラスター弾の拡散の仕方からして、鷲島君の回避方向を狭めて、秀川君と鷲島君が直線に並ぶようにしたんだと思う。その上での二枚抜きショットの二連射。
でもまあ、クラスター弾の子弾の分裂タイミングが鷲島君を通り過ぎた後だし、たぶん本命は秀川君だね。鷲島君には当たればいいやくらいな感じだったんだと思うよ。いやー怖いね、佐々木君は。鷲島君に迫られてる状況で、秀川君の撃破、双葉さんの援護、雲川さんの撃破、この三つを狙うんだから」
答えつつも飛山は内心でさらに思案した。
(というか、そもそも何でも雲川さんの位置が分かったんだろう? 麻倉さんのレーダーで見つけたのかな? それともアリシアの動きで読んだのかな? アリシアの動きで見当をつけて、麻倉さんを向かわせて、レーダーで捕捉して、爆撃って感じかなぁ。その上で、位置的には麻倉さんの方が攻撃しやすそうなのに、わざわざ双葉さんに撃たせた……麻倉チームは優しそうな雰囲気だけど、勝利に貪欲だねー)
思案する飛山を見て、匂坂は口を開いた。
「鷲島君への勝利を諦めてチームに貢献する。実力差を理解していたとはいえ、それでも、ここまで役割に徹しきれるのは中々のモノです。佐々木君ほどの強者であれば、鷲島君と戦おうと考えてもおかしくはありません。実際、彼は、特定の状況下では、根崎さんを撃破するほどの猛者です。けれど、先程は、鷲島君を倒そうとすら思っていなかったでしょう。中々、興味深い生徒です」
「それは確かに少し分かる。というか、私が佐々木君の立場だったら自爆したいかも。自分を倒したやつが、のうのうと無傷で戦場を闊歩してたらムカつくし」
匂坂の言葉に種村が同意の声を上げた。ほのぼのとした雰囲気の種村にしては、少し攻撃的な言葉だった。
「フフッ、そういった考えの持ち主は私は好きですよ。ですが、自爆しても、鷲島君のシールドに防がれていたでしょう」
「ああ、さっき一瞬展開してたやつか。というか鷲島君、シールド使えたんだね。試合で初めて使ったよね? あの魔力だと厳しそうだけど……まあ流石にシールドくらいは入れるか」
匂坂、種村両名ともに、鷹一が一瞬だけ起動していた対自爆用のシールドをしっかりと捉えていた。
「シールド使えたんだねー」
白々しく飛山が言葉を紡いだ。鷹一の詳細成績を持っている飛山は、当然シールドに関しては知っていたが、口には出さなかった。そして内心では鷹一のシールドについて分析していた。
(構築方法は半球型のシールド。それに、展開速度が凄く速かった。一瞬だったから良く見えなかったけど、強度も高そうだな~。やっぱりデータ通りシールドは凄く上手いみたい。あれ?)
そこまで考えたところで、飛山は一つの疑問を抱いた。
(球形じゃないのは何でだろう? シールド強度との兼ね合いかな? 爆風は食らう前提? いや、でもあの逃げ方と、針谷さんの時の被害を考えると……うわぁ、コレたぶん、完全に佐々木君の自爆対策してるやつだ……鷲島君って1位なのに、研究し過ぎだよ。もっと油断してよ。これじゃあ誰も勝てないよ)
心の中で、『うげー』と声を上げる飛山を知ってから知らずか、匂坂が嬉しそうに微笑んだ。
「今のシールドは展開速度、構築法、防御力、全てにおいて優れています。芸術的と言ってもいいでしょう。総合的なシールドの技量では五条さん以上でしょう。流石は鷲島君です」
「まあでも、雲川さん落ちちゃったけどね」
匂坂への当てつけか、種村は雲川チームの失点を口にした。
「瓦礫に押し潰されていて可愛かったですね」
斜め上の匂坂の回答を聞いて、石河以外の三人が一瞬言葉に詰まった。
「…………ええっと、聞かなかったことにする。というか、アレだ……さっきから、鷲島君、表情ずっと無なのが凄い。冷静沈着すぎる」
種村は露骨に話題を変えた。そして飛山が素早くそれに乗る。
「確かに、鷲島君はいつも冷静なイメージあるよね。でももしかしたら、案外、アレで内心は慌ててるかもよ?」
「あの顔でそれはないでしょ」
飛山の言葉を種村は即座に否定した。ふと魔力圧が飛山と種村に飛ばされた。
「鷲島君がこの程度のことで慌てるはずがありません。飛山さんも種村さんも鷲島君を低く見過ぎです」
少し怒ったような匂坂の言葉を聞き、種村は内心で『とばっちりだ……』と思った。