学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合⑫ 分散シールド

 

『さて、佐々木選手を討ち取った鷲島選手は南側へ入り、零リーダーの方へ! 一方で、零リーダーは猛ダッシュで東へ逃亡! 逃げる零リーダーを追いかける鷲島選手! 速度は鷲島選手の方があるので、追いつくのは時間の問題ですが、このうちに、五条・上村両選手が射撃位置へ移動中! さらに北側では秀川選手も南下してきています! 対鷲島選手用の攻撃網を作っているようです!』

 

 実況の中村が試合会場の南側の展開に焦点を合わせた。

 

『麻倉と黒沢が合流して中央に入ろうとしてるな。あと、秀川は動き的に麻倉達を追ってる感じに見えるな。レーダーで捉えたか、爆炎が止んで目視したのか。鷲島の相手を三人でして、麻倉と黒沢を秀川が撃破。残った金崎を仕留めて終わりって流れになりそうだな』

 

 一方で、解説の四宮は、麻倉・黒沢・秀川の動きに着目した。

 

『鷲島選手が零リーダーを捉えてハンドガンを速射! しかし、零リーダーはアクセルを使い逃亡! 抜群の機動力で逃げようとしますが、鷲島選手も追っかけアクセル……!』

 

『二人とも慣性アクセルみたいな使い方しやがって……』

 

 一年生の早熟さを見て、四宮が呆れと感心と苛立ちが混じったような声を漏らした。

 

『鷲島選手の方が速い! 距離を詰めます! アクセルが先に切れた零リーダーは上手く隙を殺して反転、射撃しますが、命中せず! 鷲島選手、独特の歩法で接近しながらハンドガンを連射! 零リーダーはシールドでガード! 零リーダーの応戦……! おっと、ここで超人的なバック走です。バック走、ステップ避け、シールド、射撃、これらを織り交ぜながら鷲島選手を牽制します! 鷲島選手を近づけない構えです!』

 

『射程距離的に、間合いが開いていた方が零が有利だ。零としては、できるだけ距離を保ってから仲間と合流したいだろう。逆に、鷲島は近寄らなきゃ始まらないから近づきたい』

 

『双方譲らず、戦場は東へ東へ移動していきます! そして、上村選手・五条選手が射撃体勢です……これは……! あ、鷲島選手、ついに追いつきました。しかし――』

『――零チームが間に合ったな。鷲島は中々頑張ったが、これで〆だ』

 

 実況の中村が全て言い切る前に、四宮が割り込んだ。零チームによる完璧な十字砲火の陣形が整ったのだ。

 試合会場の鷹一はそれに気づいていないのか、ハンドガン射撃とブレード投擲を織り交ぜた攻撃を零へと向けていた。

 零がハンドガンを防ぎ、投擲を回避した直後に、上村の鋭い射撃と五条の乱射が鷹一へと襲い掛かった。少し遅れて、零のアサルトライフルも火を噴いた。零チームの火線が鷹一へと集中した。

 

『鷲島はアクセルの切るタイミングを間違えたな。クールタイムのせいで、肝心な時に使えなかった。『今』使えれば、この場から離脱することも、零と相打ちを狙うこともできただろう。自分と相手、戦場全体の状況からアクセルを使用するタイミングを見極める。難しい事だが、Aランクで近接役として活躍したいならいつかはできないと駄目なところだ』

 

 鷹一の確実な致命傷を四宮は予想した。四宮の長いチーム戦での経験から得た鋭い勘が、鷲島の致命傷を予期していたのだ。それ故の『鷲島の失敗を振り返った』解説の言葉だった。

 一応、そこには多少の親切心が含まれていた。観戦会場にいる近接役の一年生や、これを後から見るであろう鷹一へ向けての親切心であった。

 しかし、これは大きく裏切られることになった。

 

『え!? 鷲島選手、零リーダーに肉薄します……! 大ダメージを受けつつも……?! いえ、ノーダメージです! 鷲島選手、無傷です! 無傷で接近します! 零チーム次々と魔力弾を放ちますが、全部当たりません!? どうなってるんでしょうか!?』

 

 鷹一が使ったシールド――分散シールドと呼ばれる特殊なシールドが、零チームの攻撃を弾いていた。

 

『は…………? これは…………おいおい……何だよ、この一年……こういう驚きムーブで恥晒したくなかったんだけどな……流石にこれはもう俺も呆れるしかねぇよ』

 

 優秀で勤勉な生徒だったが故に、四宮は、鷹一が使っていたシールドの仕組みを理解してしまった。そして、その驚異的な技量に驚き、ついには呆れた。

 

『四宮選手、何か分かったのでしょうか!』

 

『今のは分散シールドだ。本来は、シールドは一つの発生装置につき1つしか展開できない。分散シールドはその縛りを無くす特殊なシールドだ。まあ、欠点もかなり多い装備だから、使ってない奴の方が多い。二年でコレを使いこなせるのは数人しかいない。

 いや、それよりも鷲島の場合は使い方がヤバい。分散シールドの一つ一つを極小サイズにして、厚さを強化してやがる。普通、戦闘中、こんな極小なシールドは意味無いんだが……どういうわけか、さっきから、鷲島はピンポイントで極小シールドを魔力弾にぴったしと当ててきてる。てか、何でこんな使い方を……それなら厚いシールドを1枚展開すれば……あー、そうか、コイツ、魔力殆ど無いんだったな……』

 

 この四宮の解説は概ね正しいものだった。鷹一は分散シールド発生装置を装備しており、それを使い、複数の極小シールドを次々と展開し、魔力弾を防いでいた。間違った点があるとすれば、それは鷹一の魔力量は決して低くはないというところであった。

 四宮が鷹一のシールドの仕組みを解説する間にも試合は進んでいく。

 

『そういうことでしたか! あ! 鷲島選手、ブレード出しました! 零リーダーも応戦! ブレード戦です!』

 

 零と鷹一のブレード戦――あまりにも高速で常人には目で追いきれない速さであった。

 それを見て観戦席の飛山が声を上げた。

 

「うぉあぁ! 凄い戦い……! アリシア、頑張れ~」

 

「何て言うか……鷲島君も零さんもブレード戦が上手すぎるね。速すぎて殆ど目で追えないよ。ブレード使いって皆、アレを目指してるの?」

 

「フフッ、このレベルのブレード使いは滅多にいないでしょう。そして、鷲島君の力量を目指すなど不可能です。いえ、凡人であれば零さんの技量に近づくことすら難しいかもしれませんね。ブレード使いとして、この二人は真の上澄みと言えるでしょうから」

 

 種村のぼんやりとした問いかけに匂坂が答えた。

 

「だよね。ちなみに、飛山さんもブレード使いだと思うけど、あの二人の力量には近づけそう? 零さんとは確か友達なんだよね?」

 

 今、この場にいる五人の中で唯一ブレードを使う飛山へ種村が話を向けた。

 

「うーん、それはちょっと難しいかな。私からするとブレード分野ではアリシアは雲の上の人だからね」

 

 観戦席で彼女たちが話をする間にも試合会場では、各チームの生徒が懸命に点数を確保するために動き続けていた。

 

『そして、ブレード戦では鷲島選手が優勢! って、上村選手、まさかの狙撃! 零リーダーがいるのにお構いなしです! 鷲島選手は分散シールドで対応! ブレード戦中に凄い余裕だ!』

 

『上村の射撃が上手いな。さっきから、零に当てずに、鷲島だけを狙ってる。このレベルの高速戦闘に射撃で介入できるのは、かなりの射撃精度だ』

 

『そして、一方で、麻倉リーダー・黒沢選手は中央に入りましたが、一度分かれて、黒沢選手は東へ移動、麻倉リーダーは射撃位置へ。これは南戦場に干渉できる位置取りです! そして麻倉リーダーを追うようにして片腕を失った秀川選手が移動中!』

 

「おお、私の推し選手が活躍してるね。応援しておこう。上村君、がんばれ、がんばれ」

 

 ほのぼのとした感じで種村が手を叩いた。そして、意味深に匂坂の方を見た。

 

「何か言いたそうですね」

 

「いや、匂坂の推し選手だけ、もう脱落したな、と思ってね」

 

 そう言うと種村は得意げな顔をした。それを見た匂坂は優しく微笑むと魔力の波を形成した。

 

「だから、そうやって、すぐ魔力ハラスメントするから、嫌われるんだよ。もっと余裕を持ちなよ」

 

 種村と匂坂が戯れている間にも、飛山は一人思案した。

 

(黒沢さんと分かれたのは、たぶん、麻倉さんが捕捉されてるからかな? 黒沢さんの隠蔽を維持して、麻倉さんが少しでも得点を稼ぐ流れ……さっき双葉さんを使い切ったのと同じやり方だ。ということは、麻倉さんか黒沢さんがメイン作戦を考えてるのかな? うーん? でも第三試合の動きを考えると黒沢さんは、そんな感じしなかったな……ということは作戦担当は麻倉さんかな? 麻倉さんは優しそうな感じだからちょっと意外かな……うん?)

 

 飛山は視線を感じ横を向いた。石河がじっと飛山を見つめていた。

 

「ほむ? 何かね? 石河さんや」

 

「いえ、何か考えているようでしたので。分析でもしていたのかな、と」

 

「ほーほー、顔に出てたかな。ちょっと考え事だね。いや、何で、黒沢さんが麻倉さんと分かれたのかなーって思ってね。石河さんは何でだと思う? 知ってたら、教えて欲しいなー」

 

 問いかける飛山を石河がじっと見つめた。

 

「私が飛山さん相手に戦術講義できるとは思えませんが……そうですね。さっき、解説の四宮先輩が言っていましたが、やっぱり、秀川君に見つかってしまったんだと思います。そして、それを麻倉さんたちが気付いて、黒沢さんを逃がそうとしてるんだと思います。あとは、麻倉さんで秀川君を釣って、側面から黒沢さんが射撃をする、という作戦かもしれません。飛山さんはどう考えてますか?」

 

「おお! 試合前よりは語ってくれたね……! うんうん、石河さんの好感度が上がってる感じがして嬉しいよ。ええっと、それで、私の読みだと、まあ、実は石河さんとだいたい一緒かな。麻倉さんを囮に黒沢さんが逃げようとしてるんだと思う。側面攻撃は個人的には難しいと思ってる感じ。たぶん黒沢さんは潜伏からの任務点獲得が狙いじゃないかな。麻倉さんはこの後、南側の戦場に介入して頑張る感じだと思う。今回の試合は強い人ばっかりだから感覚がマヒしそうだけど、麻倉さんも普通に、この学園では強い方だからね。1点くらいは十分狙えると思うよ」

 

「それなら、猶更、二人がかりで秀川君と対峙した方が良いと思いますけど」

 

「うーん、これはちょっと私の偏見なんだけど、黒沢さんにそれをさせるのは難しいと思う。たぶん基礎的な面がまだまだ不十分なんじゃないかな。とてもじゃないけど、秀川君の相手はできないよ」

 

 飛山の言葉には強い確信があった。麻倉はこの学園では上位だが、秀川はさらにその上を行くのだ。とてもじゃないが、黒沢では役者不足である。

 

「……そういえば、第三試合では双葉さんと黒沢さんの連携を飛山さんは単独で撃破してましたね」

 

「お! 覚えてもらってましたか。実はね。石河さんたちほどじゃないけど、私もそこそこ戦闘は得意なんだよね……!」

 

 飛山は得意げな表情を作った。それを見て、石河は内心で、『やはり読みにくい』と感じた。

 

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