学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『麻倉リーダー、上村選手を狙うそぶりを見せましたが、迷って結局撃たず!』
『遮蔽物が良い感じに邪魔して北からだと上村に射撃できないな。この辺りは、上村の位置取りが上手いな』
『麻倉リーダー、アサルトライフルを構えて、零リーダー・鷲島選手を狙っています! これは介入しそうな流れ……! 麻倉リーダー発砲しました! 鷲島選手、零リーダー、ブレード戦をしながらも、即座にシールドでガード! 凄まじい反応速度だ! まるで奇襲を知っていたかのようです!』
『今のは反応が良すぎるな。二人とも、射撃前には麻倉の存在を意識してたな。零は秀川あたりから麻倉の位置情報を掴んでて、鷲島も金崎が観測してたって感じだろうな』
この四宮の予想は零に関しては当たっていた。一方で鷹一に関しては違った。鷹一は金崎から報告を受けていたわけではなく、雲川の最後の通信とレーダーの情報から麻倉チームによる介入を警戒しており、さらには超人的な反応速度で無理やりなシールドを展開したというのが正解であった。
『麻倉リーダーの射撃の介入がありつつも、零リーダー・鷲島選手のブレード戦は続きます! 上村選手の援護射撃も健在! しかし双方ダメージを負わず、切り結んでいます……! 膠着状態ですが、これは状況的に鷲島選手が不利に見えます! 鷲島選手は必殺の【超高速ブレード突撃】がありますし、もう少し間合いを取った方が良さそうですが……?』
『いや、これでいい。鷲島からすると距離を取ると、五条と零の射撃参加で、十字砲火のリスクがある。それに鷲島のブレード突撃は諸刃の剣だ。今は使いたくないだろ』
『使いたくない、と言いますと?』
『鷲島のブレード突撃は速度は凄いけど旋回性がない。上村や零の射撃技量なら突撃中に致命傷を与えられる。零を落とされるかもしれないが、ほぼほぼ鷲島も落ちる。鷲島はそれを分かった上で【超高速ブレード突撃】を使わないんだ。一年にしては、よく考えてる。逆に、零チーム視点だと、盤上的に、零と鷲島で駒交換した方が優位だし、そうするべきだ』
四宮は鋭い言葉ながらも、鷹一を高く評した。そして、一方で、どこか断ずるような口調で零チームに対する言葉を口にした。
『ということは、鷲島選手ではなく零リーダーの方から距離を取った方がいいということでしょうか……? しかし、零リーダーはブレード戦に注力していますが、これは気付けていないのでしょうか……!?』
『零もさすがに、ある程度は考えてるだろ。でも『しない』んだよな……なんでしないかっていうと、たぶん零はビビってる。鷲島に一方的にやられるケースを想定していて、それの比重が重い。だから確実性を取って秀川を待ってる。
でも俺から言わせれば消極的にすぎるな。ブレード戦でじりじり削られるリスクもあるんだし、さっさと距離取って鷲島を十字砲火で〆るか、鷲島に突撃させて、相打ちするかを選んだ方が有利だろ。鷲島相手にビビりすぎなんだよ』
四宮の厳しい指摘を受けて、飛山が悔しそうな表情を作った。
「うわー、アリシアがボロクソに叩かれてる~、悲しいな~」
飛山は、親友が舐められて悔しいと言った風な雰囲気を出しつつも、内心ではそのような感情は殆ど無かった。
(むむ、結構アリシアの性格、読まれてるな。やっぱり二年生の上位だけあって、経験豊富だし、思考も鋭いかな。まあ、経験の強さが逆に佐々木君や鷲島君のような理外を相手にする時、足を引っ張るけど……でもアリシアみたいな常識的なタイプには十分に利く……個人的には、あんまり観客がいっぱいいるところでアリシアの思考をバラして欲しくないんだけどな~。うーん、まあ、思考面では秀川君と上村君もいるし、そこまで心配しなくても大丈夫かな。それに今回は初手で落ちちゃったけど、根崎さんも十分、理外の存在だしね。うんうん、大丈夫かな? ちょっと匂坂さんのせいで、厳しいけど、まだ芽はあるし、アリシアの一位計画、上手くいくといいな~)
「フフッ、個人的には、零さんの予想は合っていると思いますよ。鷲島君は最強です。零さんが一方的に撃破される可能性は十分にあります。まあ、鷲島君の力量を精確に見ることができないような、技量に欠ける者の言うことです。あまり気にしないでいいでしょう」
まるで飛山を気遣うような匂坂の言葉であったが、種村はそうは読み取らなかった。
(飛山さんの事気にしてる風を装ってるけど、絶対、解説を下げたいだけでしょ、コレ……
種村が思案し、石河が油断なく飛山を見張っている中、試合が大きく動いた。
鷹一が、全員の僅かな隙の積み重ねを突いた一瞬の攻撃――【ブレード突撃】を行ったからだ。警戒されていた【超高速ブレード突撃】ではなく、特殊な歩法を組み合わせた制御と旋回性を重視した【ブレード突撃】であった。零の横を鷹一は一瞬で通り抜け、片手を代償に零をダウンさせた。
『!? うまい! 全員のタイミングを計ったな……! 片手は落としたが……だが、今の不利な状況で、片手の損失だけで零を落としたのは見事だ……!』
四宮が感嘆の声を漏らした。実況前に言っていた『驚きリアクションはしない』『厳しく評価する』『一年をマンセーしない』、そういった言葉を忘れたかのようであった。しかし、これは無理のないことであった。鷹一の超人的な技量は、二年生のAランクであっても、真剣に試合に熱中させる魅力があった。
そして、観客席でも、鷹一の技量に魅入られる者がいた。
「…………さすがは、鷲島君です」
うっとりとした表情で匂坂が呟いた。
「うげー、凄い技だ~」
適当な言葉を吐きつつ飛山は思案した。
(……今の鷲島君、凄い洞察力だ。それに解説の二年生も凄い。私は、麻倉さんの射撃とアリシアの隙にしか気付けなかった。たぶんタイミング的に上村君のリロードの隙も噛み合ってしまったんだ……それを一瞬で見極めたのは二年生の経験値かな? いや、それより鷲島君の方が危険だ。安全な場所から複数の映像で客観的に見るのではなく、会場で主観視点で、それもアリシアとの戦闘と上村君の射撃を受けながら、隙を見つけて、そこを貫いた。ブレード突撃の技量も凄いけど、戦闘中にここまで冷静に隙を見極めて、それを見逃さず一撃で刺し貫く判断力と胆力……洞察・判断・胆力、近接役として鷲島君は内面も完璧すぎる……本当に同い年?)
「なんかもう、人外スペシャルバトルみたいになってるね。というか、個人的には、アレに反応して、片手落としただけでも、零さんが凄いよ……」
思案し、それを表に出さない飛山とは違い、種村が素直な感想を口にした。
『鷲島選手、ブレード突撃で零リーダーを討ち取りましたが、反撃を食らい右手を失いました! さらに上村選手の狙撃を受けて右肩を負傷……! ほぼ同時に秀川選手が麻倉リーダーを落として、その勢いに乗って鷲島選手を攻撃! 五条選手も攻撃に参加! 鷲島選手、弾幕を前に近づけません! しかし、一方で、鷲島選手も、分散シールドを展開! 圧倒的な防御力で耐えます!』
『この弾幕をよく防げるな……射撃も強いが、鷲島も堅い。これだと決定打が出ないが……ただこんな曲芸的なシールドがずっと続くかって問題がある。鷲島の集中力が切れれば蜂の巣確定だが……いや、今までのコイツの曲芸っぷりを見ると、集中力より先に、魔力が尽きるか……?』
解説役の四宮は、感心と呆れが混じったような言葉を口にした。
「いや、本当に凄いね。鷲島君の分散シールド。片腕負傷の秀川君だと厳しそうかなー? うーん、やっぱり根崎さんが初手で落ちたのが響くなぁ~。うーん、こんなに強いのはなー、ちょっとズルくない?」
少しふざけたような口調で飛山が問いかけた。そして真っ先に種村が頷いた。
「普通にインチキだね。チーターだよ、チーター、ニア匂坂だよ。というか、そもそも、分散シールドがこんな強いなんて、私、知らなかったし……というかこんなチート装備なのに、何で誰も使ってないんだろう? 私みたくちゃんと装備チェックしてないのかな?」
「二年生の解説も言っていましたが、分散シールドは、かなり扱いが難しい装備です。魔力効率も悪いですから、一般的に普通のシールドの方が使いやすく、また多くの生徒にとっては、普通のシールドの方が強いです。私も分散シールドを使うより普通のシールドを使った方が強いですし、分散シールドの方が強い生徒など恐らく鷲島君くらいでしょう……ああ、いえ、星川さんがいましたね。彼女ならば、鷲島君までとはいきませんが、普通のシールドより上手く使える可能性はありますね」
種村の言葉に対して、匂坂が素早く答えた。それを聞いた、種村が納得したように目を瞬かせた。
「へー、そうなんだ」
珍しく平和的な種村と匂坂のやり取りを、石河が興味深いとばかりに見つめた。
十数秒ほど無言となり、その間も、観戦会場では、鷹一がひたすら弾幕に耐え続ける姿が流された。零による斬撃と、その直後の上村による狙撃以外では一切傷を負っていない鷹一の姿を見て、匂坂は微笑み口を開いた。
「……ところで、ここにいる私たち五人は、一年生Aランクの中でもエースといっても過言ではないと思っています。それ故の質問なのですが……鷲島君の分散シールド、撃ち抜けますか?」
鷲島の圧倒的なシールド技量、それを突破できるかという問いかけであった。普通であれば『できない』と即答するような、そんな質問であったが、しかし、問われた四人は、一年生の中でも、優れた戦闘技量の持ち主ばかりであった。故に、『できない』一色とはならなかった。
まず、始めに道合が答えた。
「どうでしょう? やってみないと? あ、でも、あのシールドの合間を撃ち抜けばいいんですよね! それなら、できると思いますっ!」
道合の言葉は、鷹一のピンポイントで展開しているシールドの合間を射貫くということを意味していた。それは、つまり、鷲島の反応速度を超える狙撃ができるという宣言であった。
その言葉を聞いて、匂坂は目を見開き、種村は『まああり得るか』という思いを抱き、そして、石河は飛山の方をチラリと見た。飛山は石河の視線を感じたため、すぐに表情を取り繕ったが、内心では少し慌てた。
(うぉぉ! 言っちゃった……! あ、でも、これはこれでアリかな? 実際、もう道合さんの射撃速度と精度は匂坂さんや反町さんにはバレてるだろうし……むしろ、今の『嘘はないけど、誤解を招く表現』は逆にいいかも……! まあ、匂坂さんや種村さんが信じるかっていうのもあるけど……うんうん、まあ、そこまで悪くも無いかな? でも、一応、コレ終わったら道合さんにはもう少し注意して喋ってもらった方がいいかな~。うーん、でも、それを私が言うと、道合さんは誰にも口を利かなくなっちゃう気がするしなー、うーん、それは道合さんに悪いよな~)
飛山は道合の真面目過ぎる面を考慮し、今後の接し方について思い悩んだ。一方で、匂坂は、粘着質の強い笑みを道合に向けた。
「フフッ、少し自惚れに聞こえますが、昨日の試合での活躍を思い出すと、有り得ないとはいえませんね……鷲島君と道合さんが戦う時が楽しみです。飛山さんはどうですか? 道合さんが撃ち抜けると言ってますが、リーダーの飛山さんも撃ち抜けますか?」
匂坂は、魔力の圧を道合にぶつけつつも、『次の獲物は』とばかりに飛山の方を見た。
「無理、無理。私じゃ、反応速度も、射撃精度も、貫通力も鷲島君のシールドには及ばないからね。というか、私ってたぶん鷲島君とは相性悪いから、わりと一方的に負ける展開になりそう」
珍しく内心を少し多めに飛山が吐露した。勿論、全ては口にしなかったが。
(鷲島君相手に、近接だと厳し過ぎるし……うーん、ある程度距離があれば、ひたすら逃げ撃ちするみたいな感じになりそう。まあ、鷲島君を撃ち抜けるとは思えないし、せいぜい時間稼ぎが精一杯かな? うちは針谷さんも鷲島君相手は厳しいし、伊舎堂さんはエース級とは戦えない。道合さんのワンチャンに期待するしか、対鷲島君撃破法が無いんだよな~)
「本当でしょうか? 飛山さんなら、対鷲島君の戦い方を考えているとは思いますが……まあ、いいでしょう。いずれ試合で分かることでしょうから。種村さんはどうですか? 先程は一割ほどの確率で鷲島君に勝てるなどと言っていましたが、心境の変化はありましたか?」
じっと、匂坂が舐めるように種村を見た。種村は嫌そうな顔をした。
「あのさ、私それ、『鷲島君が意識してない』って条件付きで言ったんだけど? なんで、そんな威圧感出してくるの?」
「フフッ、威圧感を出しているつもりはありませんよ。ただ、私自身、鷲島君を倒せると思えないので、倒せる案を集めているのです。その気持ちが強すぎて、雰囲気に出てしまったのかもしれませんね」
「ああそう……まあいいや。心境は少し変化したよ。チーター鷲島君がハイパーチーター鷲島君になったね。でも、まあ、撃ち抜くのは可能だと思う。シールドの防御力が低いからね。私なら壊せるよ。まあ、実戦だと、鷲島君は機動力が高すぎるから、さっき言った通り、『私の存在が意識されている』って状況なら鷲島君も足を止めないだろうし、勝ち目はないかな。逆に私を無視してたり、何かの理由で足が止まっていたら、ワンチャンあるかもね」
種村の言葉は、鷹一の分散シールドの破壊が可能であると示していた。
秀川・五条・上村・零といった猛者たちが破壊できないほど、厚いシールドを破壊できるという言葉は、普通の生徒が言えば、『自惚れ』ないし『現実が見えていない』と断じられる言葉であるが、こと種村に関しては自惚れでも無く、現実を見据えた言葉であった。それほどまでに種村のシールド破壊能力は高いのである。
「他人のことをチートなどと言っていますが、種村さんの魔力とシールド破壊能力も十分規格外と言えるでしょう。その刃が鷲島君に届くかは少し興味があります」
「そう。私は正直、雲川さんのチームとはあんまり戦いたくないし、鷲島君とも刃を交えたくないけどね。ところで、石河さんや匂坂はどうなの? 鷲島君のシールド、貫けるの?」
『情報を出したんだから、そっちも出せ』と言わんばかりの言葉であった。石河は僅かに視線を匂坂へ向け、彼女に伺いを立てた。匂坂はただただ微笑むのみだったが、石河はそこから指示を読み取り、口を開いた。
「鷲島君のシールドは、とても精巧なシールドですけど、一度に出せる数には限度があると思います。それに、何より、鷲島君の魔力の限界もあります。時間を頂いていいなら、いつかは撃破できると思います。でも、確実に仕留めるには山見さんか谷崎さんに力を借りたいです」
正面対決ならば、十分に撃破可能性があると石河が答えた。その言葉に、飛山と種村はそれぞれ思考した。
(ふーむ、ちょっと興味深い言い回しだなぁ。実際、石河さんの言葉は嘘はないと思うけど……接近されるリスクがあるよね。石河さんも近距離戦なら鷲島君には勝てないはず。石河さんの弾幕能力やシールド破壊能力は高いけど、鷲島君の接近能力も凄いからなー。うーん、戦闘開始距離によるかな? まあ、実際、今みたいに鷲島君が動けずに釘付けって状況なら、石河さんの言う通り撃破可能かも)
(石河さんも
匂坂は、思考する二人の方を見ると、うきうきとした様子で喋り出した
「因みにですが、私は、鷲島君の今の出力のシールドであれば、シールドそのものは時間をかけずに破壊できるでしょう。しかし、実際は鷲島君の回避力もありますから簡単にはいかないでしょう。それに、鷲島君のことです。これだけで終わりではないでしょう」
まるで、鷹一のことならば『全て理解している』と言いたげな表情であった。
アンケートを設置しました。
もしよろしければご回答ください。
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