学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合⑭ 決着

 

 

 観客席での匂坂たちの会話が盛り上がる一方で、実況席の二人もまた試合を分析していた。

 

『かなり硬直した試合展開です……! ひたすら弾幕を展開する零チームに対して、鷲島選手は防御に専念。鷲島選手は新たなダメージを受けてはいませんが、一方で、距離を詰められません……! おおっと! ここで、金崎選手が移動を開始しました。僅かですが北東へ向かいます。これは鷲島選手への援護でしょうか?』

 

『移動先にもよるが……まだ任務発令前だ。横撃か、囮か、それとも狙撃か。どれを選ぶにしろ金崎だと少し厳しいが……』

 

『黒沢選手を狙っているという可能性は無いでしょうか? 黒沢選手は麻倉リーダーと分かれた後、マップ東側に到達し、その後ひたすら北上し主戦場から離れていますが……』

 

 四宮の言葉に、中村が盤面から想像できる可能性について言及した。

 

『雲川チーム視点で、黒沢の居場所は分からないだろ。まあ、メタ読みで東側の建物群に潜んでると予想して、そこに金崎を向かわしたって可能性も無くはないが、根拠が薄いな。……金崎を信じるなら狙撃、そうでないなら横撃か、囮だな』

 

『信じると、言いますと?』

 

『んー、いや、狙撃って結構難しいからな。ただ……あ、狙撃で決まりみたいだな。金崎が狙撃ポイントについた。位置的に狙いは秀川だな。そうか、金崎を信じる方を選んだか。まあこの位置だと、凡そ400メートルってとこか。この距離なら一年坊でも急所を撃ち抜ける奴は多いが……金崎に果たしてできるかっていうのが問題だな。まあ、秀川も負傷してるし、たぶんある程度ダメージ与えれば落ちるから、案外決まるかもな』

 

 四宮にとって金崎の評価は低い。ただ、それは金崎が持つ可能性全てを否定するわけではなかった。

 

『金崎選手の狙撃技量を、鷲島選手が信じるという形でしょうか?』

 

『そうなるな。横撃や、囮なら、最低限突撃させるだけで、ある程度時間は稼げるからな。まあ実力差的にほぼ確実に死ぬから、タイミング的に任務点も見据えるなら、狙撃一択ではある。ただし、膠着した状況の打破を狙うならば、狙撃は金崎の技量次第だ。金崎の技術がカスなら、無意味に位置だけバラして終わる展開になる。そういう意味で、信じる信じないだな。金崎は確実に死ぬけど技量に左右されずに最低保証がある横撃・囮か、金崎は死ににくいが結果が技量に大きく左右される狙撃か』

 

『なるほど! そういうことですか。そして、硬直した戦場ですが、そろそろ任務発令のお時間です!』

 

 二年生の実況と解説の声を耳に入れながらも飛山はじっと試合経過を見守りつつも思考を強めた。

 

(うーん、金崎君の技量で行けるかな? 五分五分って感じだけど……でも、秀川君のダメージ的に当てれば落とせるか……うーん、秀川君は結構シールド上手いから、拡張弾倉でも使わなければ撃ち抜かれるってことは無さそう。まあ、金崎君が無警戒の状態から初撃で急所部を撃ち抜けるなら、ワンチャンあるかな? ただ、無警戒ってことは――)

 

「――あ、鷲島君、突撃した」

 

 飛山の思考を種村の言葉が遮った。上村と秀川の射撃の隙を縫うように鷹一が突撃したからだ。それを見て、飛山と四宮は虚を突かれた。

 

(――!? ちょ、無警戒!? あっちゃー、これは、配置的に鷲島君の罠突撃くさい――!)

 

『おいおいおい、馬鹿。金崎に撃たせるのが先だろ!』

 

 零チームと鷹一に対して研究を重ねた飛山は二手三手先を踏まえての思考であった、

 一方で、両者についての情報が乏しい四宮は、経験から、『金崎を使って硬直した戦場を打破するのであって、これでは順序があべこべだ』と考えた。経験豊富な二年生Aランクであっても、一年生の生徒一人一人の細かな能力や性格、感情面までを読み取ることはできないのだ。

 

「あ、拡張弾倉」

 

 ぼんやりとした種村の声が、秀川が拡張弾倉を起動したことを示した。圧倒的な弾幕が形成され、それらは次々と鷹一に襲い掛かった。鷹一も分散シールドを使った防御をするが、迫りくる魔力弾が膨大であり、全てをカバーすることはできなかった。すぐに、鷹一の処理可能量を超えた。

 

「ありゃりゃ、これは鷲島君、不味いね」

 

『おいおい……金崎にそこまで託すか?』

 

(嵌められた~。うわー、これは秀川君の性格が読まれてたね~。うわー)

 

 種村、四宮、飛山、三者三様の感想を抱いた。

 種村の言葉は、純粋に盤面を見た感想であった。これは最も一般的な感想であった。

 四宮は秀川の拡張弾倉使用により考えを改めたのだ。新たな盤面の情報と自身の経験からの鋭い洞察により、『鷹一が囮となり、秀川に拡張弾倉を使わせることで、金崎の狙撃の成功率を上げる』という作戦を、飛山よりは一手遅れつつも読むことができたのだ。

 そして、飛山は『秀川と上村の不自然なリロードから、零チームが罠を仕掛け鷹一を討ち取ろうとしている。しかし、それは秀川の拡張弾倉の使用を前提としており、金崎の狙撃に対して無警戒になる、そして、それこそが鷹一が狙った盤面』だと推測した。

 

【挿絵表示】

 

『鷲島選手、ダメージ多数……! これは――あ! 金崎選手の狙撃! 秀川選手、ダメージ蓄積によりダウン! って、金崎選手もダウンしました! 得点は上村選手、そして、一目散に上村選手は南東へ逃亡! それを追う鷲島選手! 一方で、五条選手は北側へ……! おおっと! 黒沢選手、主戦場で撃ち合っている間に西側へ移動していました! どうやら、任務発令と同時に走っていたようです!』

 

『任務点狙いだな。これは五条と当たりそうだが……』

 

『黒沢選手、乾坤一擲の全力移動はどうなるか!? 南東では、鷲島選手と上村選手による地獄の追いかけっこが開催中です! 上村選手の足も速いですが、鷲島選手には及びません。どんどんと鷲島選手が距離を詰めます……!』

 

『あ、五条選手が黒沢選手を捕捉! そして南東でも鷲島選手が上村選手に追いつきました! お得意のハンドガンとブレード投擲殺法! 上村選手、何とか耐えますが、もうブレード戦の距離……! 討ち取られました! 上村選手ダウンです! またほぼ同時に五条選手が黒沢選手を射撃で撃破! 黒沢選手、重傷を負い、最後は這ってまで西に進んでいましたが、途中で吹き飛びました!』

 

 黒沢は五条の乱射をシールドで防ごうとするが、シールドごと片手を破壊された。シールドが無意味と分かると、ただただ全力で西側へ走るが、次の攻撃で足を吹き飛ばされ、最後は地面を這いながら進んだのだ。そして、進み続けるが、ある時、安心したような顔になり、這うのを止めた瞬間に五条に撃破されたのだった。

 

『魔力に関しては、五条はトップクラスだ。銃も威力に振ってるみたいだし、低魔力がシールドで挑んじゃダメだな。その辺の基礎からして黒沢はもっとちゃんと考えた方がいいが……最後、なんか這いつくばってたのに、撃ち殺される直前に手を止めたな……ただ諦めただけかもしれないが……これはちょっと結果が気になるな』

 

 四宮の言葉は、黒沢が任務点を確保した可能性があることを示していた。

 

『黒沢選手の結果は試合終了後に判明します……! そして、現在生き残りは、ダメージ蓄積が大きい鷲島選手と、無傷の五条選手です』

 

『今までの行動から考えて、鷲島は魔力消耗もかなり激しいだろうな。一方で、五条は、まだかなり余裕があるはずだ』

 

 この発言は鷹一の魔力を低く見積もりすぎたものであった。実際の鷹一はまだ少しだけ余裕があったのだ。これは、四宮の能力が低いわけではなく、鷹一の魔力隠蔽能力があまりにも高すぎたゆえの間違いであった。

 

『両選手、まだ任務があるかと思いますが、任務達成後に最終決戦という形でしょうか?』

 

『この盤上を知ってるならそうだな。五条はもう生き残りが自分と鷲島だけっていうのは分かるだろう。でも鷲島視点だとそこまで分かるとは思えないな。双葉や黒沢に警戒する必要があるし、何なら、二人の撃破点も考えてるかもしれない。麻倉チームと雲川チームは獲得得点も近いし、実質ライバルチームだ。

 そうすると、鷲島は、双葉・黒沢が任務点を獲得するかもっていうリスクも考慮しなきゃいけない。情報量によって動き方は大きく変わるな。

 ただ、五条とガチバトルっていう線は薄いな。相性的に鷲島だと五条の相手はかなりキツイ。五条のシールドはブレードすら防ぐだろ。つまり鷲島じゃシールド突破できない。これは最終的には、任務点取って後はタイムアップ待ちって流れだな……って、おいおい、鷲島、五条の方に向かったぞ。任務点をもう回収したのか?』

 

 解説の言葉を聞いて、客席の匂坂は嘲笑うような笑みを浮かべた。

 

「五条さん程度では、鷲島君の相手など務まるはずがないのですが……フフッ、また、恥の上塗りをしたいようですね」

 

「でも実際どうなんだろうね? いやさ、鷲島君が凄く強いっていうのには分かるけどさ、二年生の言う通り、五条さんとは相性が良くなさそうだよね。もし戦うなら、どうやって五条さんを攻略するんだろう?」

 

 相変わらずの匂坂の言葉に飛山が疑問を口にした。また、同時に、内心でも思考を深めた。

 

(鷲島君の能力的にも、奇襲で落とすのが良さそうだけど……この盤面なら、五条さんも鷲島君警戒のはず。そして、鷲島君もそれは分かってるから……んー、ブレード戦に持ち込んで五条さんの反応速度を超える戦い方でいくとかかな? でも、五条さんもその対策は一応ある。ただ、そもそも、五条さんの攻撃精度が悪いからなー、んー、あれ? これ、千日手になりそう。んー、もしかして、鷲島君、五条さんの魔力切れ狙い? いや、さすがにそれは……)

 

 五条と鷹一では勝負がつかないと予想した飛山は、それでも五条に挑もうとする鷹一の思考に当たりをつけた。しかし、一方で、確信が持てなかった。五条の莫大な魔力が切れるという状況が予想できなかったからだ。

 そもそも、雲川チーム全員の魔力を足しても秀川一人に及ばないのだ。その秀川を魔力で圧倒的に上回るのが根崎であり、その根崎ですら魔力量では勝てないのが五条なのだ。鷹一と五条の魔力差はあまりにも大きかったのだ。

 

「普通に鷲島君が有利なんじゃないの? 鷲島君には、あのブレード突撃があるよね」

 

 飛山の疑問に対して、種村がぼんやりと答えた。

 

「アレは今使えないんじゃないかな? 鷲島君、ダメージ多いし、手足も怪我してるし」

 

「ん? ダメージ関係ある?」

 

「アクセル制御が厳しいんだよね。特に加速が強いほど、難しくなるから、鷲島君ほどの超加速だと、僅かなダメージでも、致命的なんじゃないかな?」

 

 飛山チームは全員がアクセル使いゆえに、リーダーである飛山はその長所と短所を強く理解していた。

 

「ああ、なるほど。鷲島君ほど強いとそうなるんだね。一長一短だ」

 

 種村が納得したような顔で頷いた。しかし、すぐに、またしてもほのぼのとした口調で飛山に対して口を開く。

 

「でも、それでも、鷲島君有利じゃないかな? あのブレード戦の技量、五条じゃ、反応できないでしょ」

 

 一瞬、飛山は言葉に詰まった。五条の鷹一対策を知っていたからだ。

 

(確かに、反応はできないけど……五条さんに限って言えば、反応する必要は無いんだよね)

 

「フフっ、見事な洞察です。種村さん」

 

 思考する飛山をよそに、匂坂が割り込んだ。

 

「そう? 匂坂に褒められてもあんまり嬉しくないけど……でも、意外だね。匂坂はてっきり魔力が高い五条を贔屓すると思ったよ」

 

 そんな匂坂に対して、少し嫌そうにしながらも種村がお話に応じた。匂坂は、何だかんだで対応してくれる種村を見て、少し嬉しくなった。

 

「五条さんは、魔力が高いだけの凡人です。鷲島君には到底及びません。それに、五条さんには明確な弱点があります」

 

「弱点って?」

 

 種村の問いかけに、匂坂は意味深な笑みで飛山を見た。

 

「飛山さんなら分かるのでは?」

 

「ふむ? 何だろう?」

 

「フフッ、飛山さんでも分かりませんか」

 

「うん、分からないから、教えてー」

 

「では、秘密にしておきましょう。その方が、飛山さんの驚く顔が見れそうです……そろそろ鷲島君と五条さんの戦いが始まりますね」

 

 勿体ぶるような言葉とともに匂坂が観戦会場の大型スクリーンを見た。鷹一と五条の戦いが今にも始まりそうであった。

 

(んん? なんだろう。思わせぶりじゃなさそうかな。うーん、何かあるのかな?)

 

 飛山が思案する一方で、五条がアサルトライフルを発砲し、最後の戦いが始まった。

 鷹一が射撃を回避しながら、五条に接近しつつ反撃した。しかし、それらの攻撃は、五条の全身を覆う、圧倒的な出力の球形シールドにより防がれた。鷹一はめげずに接近し、ブレードで斬りかかった。

 ブレードの貫通力は非常に高い。本来ならば、シールドを破壊し、相手を切り裂き致命的なダメージを与える必殺の刃。しかし、それは五条には通らなかった。彼女の莫大な魔力と、重出力シールド発生装置の組み合わせは、どのような攻撃も無力化するのだ。これを破ったのは、未だかつてただ一人、ここにいる匂坂キッカという怪物しかいないのだ。

 

 二人の戦いを見ながら、飛山は思考を深める。

 

(鷲島君からの奇襲は無し。でも、やっぱりブレード戦に持ち込むよね。でもでも、五条さんも全力球形シールドで対策済み。ここまでは順調。でもここからは? どちらも決定打に欠ける。匂坂さんの読みは…………ん……なんか、さっきから……んー、え、もしかして、五条さんの弱点って――)

 

 瞬間、飛山の中で閃きが走った。

 

(――まずっ!?……くはないか。うん、大丈夫。少なくとも私のチームは……でも、アリシアのチームは、これは言わないと……いや、でも、これは逆に利用できるかも? それなら、知る人が少ない方が……いや、でも、アリシアには流石に伝えないと……んー、でも、今更言っても……そもそも、これって撃ち抜けるのは……上位だと、鷲島君、青井さん、高坂君、舞島さん、上村君あたりかな? でも、普通は撃ち抜かれるようなケースはまずない……まずないけど、鷲島君だけは、何度もある。あー、もう、いやらしいなー。ハンドガンと投擲固めの副産物かぁ……というか、さっきから鷲島君、五条さんの弱点突かないけど、これ知ってて敢えてやらないやつでしょ。さっきからチャンスが何度もあるのに、やってないし。うーむ、いやらしいなー)

 

 匂坂の挙げた五条の弱点、それを飛山もまた気付いたのだ。そして、それが五条だけの弱点ではないことと、鷹一と相対する相手はその弱点を露出するケースが多いことにも気付いた。そして、鷹一と同じように、この弱点は利用できるという発想にも至った。

 考察を進める飛山をよそに、鷹一と五条の戦いは続いた。しかし、それはあまりにも特殊な戦いであった。五条の射撃能力では鷹一を捉えることができず、また鷹一の攻撃能力では、五条のシールドを貫くことができなかった。両者、ともにダメージを発生させない戦闘であった。

 

『全然決着がつきません……! 両者、攻撃が相手に通りません……! 最終盤にして、なんという展開!』

 

 実況の中村の声が会場に響く中、種村が思わずと言った風に口を開く。

 

「これ、もしかして、試合時間終了まで続けるのかな?」

 

「いえ、そんなはずは……鷲島君なら、五条さんの弱点程度気付いているはずですが……」

 

 少しばかり困惑したように匂坂が呟いた。鷹一が五条相手に苦戦するなど、匂坂にとって、あり得ぬことであったからだ。憧れの相手が、五条ごときに苦戦するなどあってはならない。五条ごとき、鎧袖一触でなければならないのだ。

 そんな匂坂を見て、飛山は得意げな笑みを故意に作った。

 

「んー、匂坂さんのこと信頼してないわけじゃないけど、本当に五条さんの弱点なんてあるのかなー?」

 

(うん、鷲島君の戦い方が魔力の温存と五条さんの魔力の浪費を意識してる。となると、鷲島君の狙いは五条さんの魔力切れで、ほぼ確定かな。五条さんの弱点を敢えて隠す形にする。それで他のチームに気付かせない気かな。うーん、1位の人がやるような戦い方じゃないかなー。というか、いくら回避力が高いっていっても、ずっと五条さんの攻撃を避け続ける気なんだね……集中力とか途切れないのかな? やっぱり大邪神様は格が違うな―)

 

 言葉とは裏腹の思考を重ねつつも、飛山は怜悧な瞳で匂坂と石河、そして試合会場を観察した。

 一方で、解説の四宮は、あまりにも稚拙な五条の射撃技能と、無駄な戦闘をする鷹一に苛立ちを覚えた。

 

『鷲島はいつまで無駄な攻撃をする気だ。五条相手にハンドガンもブレードも効かないし、そんなことしたって意味が――いや、これは、まさか、……魔力切れ狙いか?』

 

 飛山に数周遅れて四宮もまた鷹一の狙いに気付いた。

 

『魔力切れ、ですか?』

 

『ああ、魔力が切れれば当然だがシールドは使えない。そして、鷲島はさっきから牽制的な攻撃を繰り返すことで、五条に球形の全力シールドを維持させ続けている。実際、五条が少しでも球形シールドを解けば、すぐにダウンするだろう。だが、球形で分厚いシールドを展開するのには、かなりの魔力を消費する。五条ほどの、膨大な魔力があれば、かなり持たせることはできる……ただ、それでも限界はある。鷲島、その限界まで攻撃を続けるつもりだろう』

 

『それは、かなり難しく聞こえますが、可能なのでしょうか!?』

 

 中村もまた二年生の中堅クラスとして、チームでの実戦経験は豊富であった。それ故の驚きであった。

 

『あくまで理論上は可能なんだが……現実的な手段じゃない。そもそもこの戦いは、元より鷲島不利だ。鷲島の方がダメージを負っているし魔力も少ない。そして、五条はシールドを展開するだけで鷲島の攻撃を防げるが、一方で、鷲島は五条の射撃を回避し続けないといけない。少しでも回避をミスすれば、黒沢みたいに蜂の巣になる。五条の魔力が切れるまで戦い続けるなんて、普通は集中力が持たねぇよ』

 

『しかし、他に手段が無ければ、持久戦の構えをするしかない、と見ることもできますが……実際、鷲島選手視点だと、これしか勝ち筋がないのではないでしょうか……?』

 

『そうだな。鷲島だと…………一応、いや、そうだな。鷲島にはこれしか勝ち筋がないんだろうな』

 

 四宮は一瞬だけ、他の方法を思いついたが、しかしそれは口に出さなかった。その方法は、鷹一には不可能な方法だと四宮は考えたからだ。

 

 結論から言うと、鷹一、匂坂、飛山、四宮が考えた対五条戦法は同じものであった。

 敢えて、違う点を挙げるとするならば、鷹一は二つの対五条の戦法があったが、残りの三人は一つの戦法のみを想像していた。

 

 四人が考えた戦法は、射撃口を狙い撃つというものであった。

 球形シールドは体全体を覆っているもので、通常、弱点はない。勿論、体全体を覆うという仕組みから、よほどの魔力がなければ、シールド自体が薄くなってしまい、シールドとしての機能を維持できなくなるが、五条の莫大な魔力量をもってすれば解決可能な問題である。つまり、五条のような魔力量を持った生徒が行う、全力の球形シールドには弱点がないのだ。

 しかし、ある特定のタイミングでは弱点――シールドが解除される部位が存在する。それが射撃口だ。五条は防御に専念しているわけではなく、鷹一に対して、アサルトライフルで反撃をしていた。その反撃が行われる際、シールドの極僅かの一部を解除し、射撃口を作り、そこから魔力弾を放っているのだ。その射撃口を狙い撃つことで、五条にダメージを与える、可能であれば致命的部位を撃ち抜くことで、五条を葬るというのが、四人が考えた戦法であった。

 ただし、これは非常に難しい戦法であった。戦闘中に射撃をする五条の攻撃を防ぎつつ、僅かの間しか開かない、極小の射撃口を狙い撃つなど、通常の人間には不可能である。驚異的な射撃精度を持った人間でなければ撃ち抜けないのだ。それゆえ四宮は不可能と考えた。一方で匂坂と飛山は、当然鷹一ならば可能だろうと結論を出した。

 けれど、鷹一はこの戦法を選ばなかった。射撃口問題は五条だけの問題ではなく、多くの生徒に関係する問題だったからだ。この問題を改善させないことで、射撃口の癖を一部の生徒につけることで、今後のチーム戦で僅かな有利を取れるのではないか、という期待が鷹一にはあった。そして、飛山もまたこの考えに至った。個人での勝利に拘る匂坂と、チームでの勝利に拘る飛山・鷹一とで、考えが分かれたのだ。

 だが、その飛山も、鷹一がもう一つ五条を倒せる手段を持っていたことには気付けなかった。飛山龍華という優れた洞察力と分析力を持つリーダーであっても、『鷹一の秘匿している特殊技能』に気付くことはなかった。

 

 そして、数分間の戦いの末、五条のシールドが解除された。魔力が尽きたのだ。

 

 鷹一は淡々と五条にハンドガンを撃ち込み、特に言うことはないとばかりにその場を離れ、マップ南側へ向かった。倒した五条のことなど欠片ほど気にするそぶりも見せずに、任務点を回収しにいく鷹一を見て、四宮は重く息を吐いた。

 

『何て奴だよ……まさか本当に魔力切れを狙うとはな……あー、最悪だな。一年坊相手に、驚きムーブもマンセーもしたくなかったんだけど、ここまでやれるとはな』

 

『最後は一瞬で終わりましたが……ある意味、凄まじい激闘でした。鷲島選手、超人的な集中力、そして発想力です……! 莫大な魔力を持つ五条選手を魔力切れに追い込みました……! そして、鷲島選手が任務点を回収! 早期決着条件を満たしたため、零・麻倉・雲川のチーム戦は終了です! そして任務点も明らかになりました。結果は6-3-6の引き分けです! 詳細成績は手元の端末でご確認ください!』

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

試合結果:引き分け

 

獲得得点

零チーム :撃破点5点+任務点1点=6点

麻倉チーム:撃破点2点+任務点1点=3点

雲川チーム:撃破点5点+任務点1点=6点

 

 

詳細得点

零アリシア :撃破点0点+任務点0点=0点

根崎彩   :撃破点0点+任務点0点=0点

五条愛   :撃破点1点+任務点1点=2点

上村聖   :撃破点2点+任務点0点=2点

秀川明   :撃破点2点+任務点0点=2点

 

麻倉優愛  :撃破点0点+任務点0点=0点

双葉愛里  :撃破点1点+任務点0点=1点

佐々木緑山:撃破点1点+任務点0点=1点

黒沢惠里加:撃破点0点+任務点1点=1点

七宮美雨  :撃破点0点+任務点0点=0点

 

雲川紫苑  :撃破点0点+任務点0点=0点

鷲島鷹一  :撃破点4点+任務点1点=5点

金崎飛燕  :撃破点1点+任務点0点=1点

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 




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