学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
『なんつーか、引き分けは読めなかった。ただ、ちょっと言い訳すると、鷲島が強すぎたな。あと、根崎が序盤で落ちたのが大きかった。根崎が生きていたら結果はかなり違ったはずだ』
試合結果を確認して、解説の四宮が少しの悔しさを声音に乗せた。
『根崎選手の脱落は、かなり驚きましたね。佐々木選手の攻撃で落ちた形ですが……』
実況担当の中村は、文脈的に佐々木に触れざるを得なかったが、Aランクの四宮に配慮し、言葉を選んだ。
『何だよ、中村、気を遣ってるのかよ。まあ、いいや。俺も佐々木のことはちょっと舐めてたな……いや、舐めてたっていうか、実際、曲射砲はそんなに凄い武器じゃないんだよ。一年も使ってるヤツは分かると思うけど、あれは精巧に撃つ武器じゃない。本来は攪乱目的の武器だ。高速で動く相手に当てたり、二枚抜きしようとしたり、接近されてるのに援護に使ったり、クラスター弾を収束しながら撃ったりするもんじゃないんだよ』
『ちょっと佐々木選手は色々な意味で飛び抜けていましたね。砲撃の精度も、メンタルも強いです。あ、あと、魔力もかなり多いように見えます』
『ああ、それな。実際、根崎の倒し方はちょっと興味深い感じだった。拡張弾倉を使って強化徹甲弾の高速砲撃で根崎を倒したんだと思うが……根崎のシールドを抜いたって点と、それまでのクラスター弾の馬鹿みたいな攻撃範囲から推測すると……佐々木の魔力量が尋常じゃないな。ワンチャン根崎より上かもな。
てか、これ、ちょっと意味不明なんだよなー。俺は結構魔力探知上手い方なんだが……佐々木はそこまで魔力がある方には見えないんだよな。見た感じの魔力量と、実際の魔力量があってない気がする』
「佐々木君の魔力量、どのくらいに見ますか?」
解説の声を耳にしながら、匂坂が周囲に問いかけた。
「どうかなー、うーん、解説の人と同じ意見になっちゃうけど……やっぱり、見た感じ、根崎さん以下、秀川君以上だけど……戦い方見てるともっとありそうなんだよね。だから実は根崎さんくらいあるのかも。邪神様と同じで何か特殊な技術でも使ってるのかな?」
飛山は、適当な言葉を口にしつつも思考を深めた。
(ところがどっこい、佐々木君は詳細成績でもなぜか魔力判定が根崎さん以下になってるんだよねー。うーん? でも、根崎さん以上ありそうなんだよなー。となると、佐々木君は学園の魔力判定を誤魔化しているのかな? 何のために? 戦闘適性順位低く出ちゃうと思うけど……何かを警戒したのかな?)
「わりと佐々木君もゴリラだよね」
飛山が思案を重ねる一方で、種村は素直な気持ちを口にした。
『しかし、根崎選手が魔力でも佐々木選手に抜かれていたとなると、砲撃で落ちたのは必然だったかもしれませんね』
『いや、俺はそうは思わないな。佐々木の曲射砲技量は学園トップ、というか、おそらく歴代最高だと思うが……そうだとしても曲射砲の構造上の欠点はある。曲射砲は広範囲を攻撃できる上に間接攻撃できるが、一方で、消費魔力に対するシールド貫通能力は低い。
まあ、それを踏まえての拡張弾倉を使った強化徹甲弾だったんだと思うが……あれは根崎なら撃ち落とせたはずだ。情報に無い初見殺しみたいな技だから刺さったっていうのもあるが、それにしても刺さりすぎだな。正直、根崎が対応しきれなかったのが問題だな。Aランクチームのエースなんだから、初見殺しにいちいちやられてたらダメだろ』
四宮の指摘は厳しいものだった。評価していた根崎が、評価していなかった佐々木に敗れたゆえの鬱憤もあったが、しかし、それ以上に当然だという思いもあった。二年生Aランクという高みにいるからこそ、Aランクのエースである根崎に対する要求レベルが自然と高くなってしまうのだ。
『まだ一年生ですし、この対応は難しいのでは……?』
『いや、もう第四試合だしな。ずっとAランクにいる根崎が最序盤で落ちたのが問題なんだよ。これさえなければ、零チームが勝ってたからな』
解説役の言葉を聞いて、観客席にいる匂坂は意味深に笑った。
「フフッ、先程から、随分な物言いですね。根崎さんほどの強者が敗れたのには理由があります。そんなことも分からないとは……それに、あの解説役は佐々木君ほどの強者と戦った経験は如何ほどなのでしょうか? 口だけで無ければいいのですが……二年生とマッチングしないのが残念でなりませんね」
匂坂の笑みの方向性が挑発的なものであることに気付いた種村は、呆れた顔をした。
(
「根崎さんが敗れた理由って何か聞いても良い?」
純粋な興味から飛山が匂坂に問いかけた。
「佐々木君が強すぎました。そして麻倉チームの作戦が良かったでしょう。根崎さんの個人的な力量が劣っていたというよりも、零チーム対策を考えた麻倉チームと、麻倉チームへの対策を怠った零チームという視点の方が重要です。つまり、リーダーと参謀の力量の差が出た形なのです。根崎さん一人の責任にするべきではないでしょう」
「それはちょっと同意かな」
(まあ、私もアリシアの作戦会議参加したから、ちょっと戦犯だけどね)
同意の言葉を口にしながらも、飛山は内心で根崎に小さく詫びた。
「おや? 零さんの悪口になってしまいますが、同意するんですか?」
「アリシアも頑張ってるけど、騙し合いより殴り合いが得意だからね。むしろ個人的には、麻倉さんのチームが色々やってたのが気になったかなー。優しそうな感じの人が多かったし、こういう読み合い・騙し合いは苦手だと勝手に思ってたかな?」
「フフッ、飛山さんらしい着目点ですね」
少しだけ嬉しそうに匂坂が微笑んだ。
『まあ、佐々木に関してはこれくらいでいいや。それに試合中はあんまり見る余裕がなかったけど、振り返ってみると、序盤は南側の攻防も重要だった気がするし、ちょっとそっち解説するか』
『南側、主に上村選手と七宮選手の戦いですね。また戦闘には参加していませんか、零リーダー、金崎選手が初期南側スタートでした』
中村は素早く試合序盤のマップを表示した。
『序盤戦は北側と南側で戦いが分かれて、北側は主に佐々木が暴れてた感じだな。南側のメインは上村対七宮戦、これも、この後の流れを考えると、結構重要な戦いだったと思う。佐々木の援護もあるから七宮有利だったし、実際、佐々木の砲撃のあとブレード突撃をやったのが良かったな。今までの試合では使ってなかったから隠し札を切った形だ。綺麗に決まったと思ったが、上村が上手く避けたな』
『改めて見ると、上村選手もかなり反応速度が高いですね』
『まあチームリーダーの零のブレード突撃見てれば、七宮のは避けれるのは分かる。ただ、上村も上村で隠し玉を持ってたな』
『ブレード投擲ですね。こちらも上村選手が今まで使っていない技でしたが……』
『射撃で七宮を負傷させ、シールドを使わせた後、上手い感じに射撃で傷を負わせつつシールドの集中を割いて、最後は投擲で綺麗に決めたな。ちょっと鷲島っぽい戦い方だ。パクったのかもな。パクり元よりも射撃武器の質が良いが、投擲技能で大きく劣るって感じだな。
ただ、今までの試合で、ずっと援護射撃に徹していた上村がやるって意味では意外性のある攻撃だったし、タイミングも良かったな。上村は、この後の展開でもそうだけど、全体的に試合をよく見てるな。一年の射撃担当としては、かなり質が高い』
『やはり、零チームは、駒質が高いことが窺えますね』
『そこはそうだな。実際、南側の零もかなりの機動力で北側に詰めた。最初は動き的に雲川狙いだな。んで、佐々木の砲撃が入ってからは佐々木狙いに変更。まあ、相性的に考えれば納得の行動だな。今回の高隠蔽の駒は接近戦に弱いし、それは佐々木も同じだ。零が詰めるのは理にかなってる。
あと、序盤、金崎がずっと動かないで、戦場を見てるのは、結構良かったな。雲川チームは序盤から終盤まで南側の情報をしっかり持ってて、これが中盤戦で活きた形になる』
四宮は零チームの駒質について触れつつも同時に、南戦場にいた金崎について言及した。
『序盤と中盤の切れ目は、やはり佐々木選手がダウンするところでしょうか?』
『まあ、そうだな。厳密に言うと、雲川と双葉が落ちたあたりで序盤戦終了って感じだな。
序盤戦は、佐々木の根崎爆殺からはじまり、爆炎に紛れて麻倉と黒沢が南下する作戦、佐々木の援護砲撃、七宮のブレード突撃、佐々木の二枚抜きショット、佐々木と双葉の連携雲川撃破と、佐々木が死ぬまでの間は、全体的に麻倉チームが盤上をコントロールしてたな。
まあ、でも序盤戦で、七宮が敗死して、佐々木も討ち取られたし、双葉も落ちた。序盤が終わると麻倉チームはほとんど駒を失ったがな。この辺りは、佐々木を速攻で殺しに行った鷲島と、七宮に上手く対応した上村のおかげだ。両者が麻倉チームからコントロールを取り戻して、これが中盤以降の雲川チーム対零チームの流れになる』
『なるほど、序盤戦に限れば麻倉チームが有利だったわけですね。そして、中盤戦ですが、最初は鷲島選手と零リーダーの1対1の戦いですが……』
『ああ、まずは、零と鷲島の追いかけっこだな。これは、零が速攻で逃げたのが少し興味深い。まあ、鷲島と1対1で戦うよりは援護が貰える場所まで撤退するのは理には適ってるし、戦術としては正しい。だが……なんかさー、零のこの後の行動見ると、コイツって鷲島相手にビビってるんじゃねーのかな、って気がするんだよな』
四宮の鋭い言葉が入り、観客席にいる飛山は僅かに顔をしかめた。
『……彼我の戦力差を考え、冷静な判断を下したようにも見えますが……』
『それはそうだが、零のこの後の戦い方がな……いや、まあ、そこは俺の憶測も多いから、いいや。んじゃー、中盤戦だな』
そこで四宮は一度言葉を区切り、数秒程間をおいてから、再度口を開いた。
『……だいたい秀川・金崎が落ちるくらいまでだな。この辺は解説が必要なのは……零チームの十字砲火、鷲島の分散シールドとブレード突撃、金崎の狙撃あたりか。
でもその辺りはだいたい試合中に解説したからな……まあ、一応、中盤戦の全体の流れとしては、兎に角、鷲島の個人芸がぶっ飛んでた。分散シールドは魔力量からは考えられないほど堅いし、ブレード突撃も曲芸みたいな方法で使ったな。零チームは始終後手に回った感じだ。この辺は鷲島対星川チームの焼き直し感があるな。鷲島は強いだけじゃなくて、胆力と判断力がかなり高い。あと相手の隙を突くのが上手いんだよな。タイミングが毎回、際どすぎる。
てか、普通にコイツと正面から戦いたくないな。しかも、コイツ、毎回、隠し玉持ってくるんだよな。ちょっと嫌らしいレベル。流石にもうネタ切れだとは思うが……』
『鷲島選手以外の注目ポイントはどうでしょうか?』
『零チームの十字砲火は普通に上手かった。火線を上手く集中させてたし、相手が鷲島じゃなきゃ落とせてた。まあ、鷲島の分散シールドを使わせたって言う点で、情報的には今後の為にはなったかもな。秀川も片腕無いなりにダッシュしてたし、拡張弾倉の使い方も良かった。チームとしての動きって意味では悪くないと思う。ただ、やっぱり根崎が生きていればって思うような展開だったと思う。根崎と秀川の立場が逆なら、ほぼほぼ鷲島落とせたからな。
麻倉チームも黒沢を逃がして麻倉だけ戦線に殴りこむっていうのは、結果から考えると、ベターな選択肢だったし、零と鷲島への射撃自体は決まらなかったが悪くなかったと思う。もう少し射撃精度と威力があれば、ワンチャンどっちか落とせたかもな。
あーあと、金崎、コイツ、最初はどうかなーって思ったけど、狙撃決めたのは大きかったな。まあ、厳密にはダメージ蓄積によるダウンだから、狙撃ちゃんと決めてないし、佐々木の食い残しを食った感あるけど、でも1点は1点だ。格上の秀川にトドメ刺したのは、駒交換的な意味でも、盤面への影響力的にも大きい。あと、序盤の観測で南側の位置情報をコイツが取ってたと思うから、そこも良かったな。雲川チームはエースで殴り殺すスタイルだから、他の生徒がエースを支える動きをするっていうのは良いと思う』
『金崎選手の狙撃は、決まるか決まらないか微妙な位置からでしたが、しっかり秀川選手を落としましたね』
『400メートルくらいだったからな。まあ、当てるくらいならできるんだろ。ただ危なっかしい射撃精度だから、もう少し近くで撃ちたいところだけど……零チームのレーダー網を気にしたんだろうな。そういう意味では、金崎の位置取りも良かったな。狙撃ポジションが、絶妙な位置と言える。零チームのレーダーに引っかからない距離でかつ、金崎の射撃がギリギリ当たる距離って感じだ。この辺も金崎が考えてるなら、わりと頑張ってるな』
この四宮の予想は外れていた。狙撃位置は鷹一が金崎に指示したものだったからだ。ただ、勿論、秀川・上村といった猛者たちに気付かれないように、狙撃位置へ移動できたのは金崎のこれまでの練習の成果であった。
『しかし、中々、拡張弾倉の使い方が難しいですね。今回のように狙撃に警戒するとなると、シールドは必須になりますし、そうすると拡張弾倉は……』
『まあ、その辺はリスク・リターンを考えつつだな。今回のケースは、秀川が狙撃の警戒を怠ってたって点もあるけど、状況的に鷲島を倒さないと零の落ち損だし、あそこで攻撃に集中していたのは悪い考えじゃない。実際、もうちょっとで鷲島落とせそうだったからな。まあ、そこも含めて、雲川チームの読み合いと金崎の射撃が良い感じに刺さったな』
「金崎君は、最後まで撃たなかったのが良かったね。序盤から撃っちゃいたくなるタイミングが何度もあったと思うんだけど、そこを堪えたのは頑張りポイントだね。まあ、鷲島君がなんか言ったのかもしれないけど」
四宮の解説を聞いて、観客席にいる飛山もまた感想を口にした。
「その可能性はありますね。私は金崎君のことはあまり存じていませんが、鷲島君が的確な攻撃指示をしているというのは納得できます」
そして素早く、匂坂が鷲島の話題に食いついた。そんな匂坂を種村が冷めた目で見た。
「自分で頑張ったんじゃない? 鷲島君も佐々木君や零さんの相手で大変だったろうし、いちいち味方の指示まで出す暇ないでしょ」
「フフッ、意見が合いませんね……では、道合さんはどう思いますか? 秀川君への狙撃は、金崎君個人の技量と精神力のよるものだと思いますか?」
「――えっ?」
道合は、チラリと飛山を見た。飛山は、僅かに悩んでから軽く頷いた。それを確認すると道合と少し悩まし気な表情を浮かべた後、結論を述べた。
「私は金崎君個人の力量だと思います! 金崎君とは、前に、一度会ったことがあります……! なんだか、支援射撃が上手そうな男の子に見えました!」
道合の言葉を聞いて、飛山は内心で、『第三試合の祝勝会のときのことかな?』と道合の言葉にあたりを付けた。
「種村さんと同じ意見ですか……まあいいでしょう。ところで、道合さんと種村さんなら、今の金崎君のポジションにいたら、無傷の状態の秀川君でも一撃で倒せますか? 私はお二人ならできると思いますが、お考えを聞きたいです」
「んー、無理なんじゃないかな。今の狙撃が決まったのは秀川君が狙撃を警戒しなかったのが大きいよ。もし、生き残っているのが道合さんなら軍師秀川は当然警戒するよ。まあ私とアリシアのチームは同盟結んでるから、道合さん対秀川君の戦いは見れないけどね」
道合が答えるよりも早く飛山が答えた。
「私は、たぶんレーダーに映っちゃうから、そもそも、こんな状況にならないんじゃないかな」
飛山に合わせるように、種村もまた答えた。
「種村さんは、金崎君に勝てませんか?」
「それは論点をすり替えすぎでしょ……状況によって使える手札は変わるんだし、金崎君にできることが私にできないこともあるし、逆もまたしかりでしょ」
「いえいえ……もし、金崎君が種村さんや道合さんの言うように優秀な判断力のある選手ならば……雲川さんのチームの優秀な射撃担当ということになりますから……ポジション的に、梶田さんのチームの種村さん、飛山さんのチームの道合さんに似ていると思ったのです。どうでしょう? 金崎君は種村さんや道合さんに並びますか?」
「たぶん挑発してるんだろうけど、私は乗らないから、道合さんとゴリラ相撲……じゃなくて、ラップバトルしてね」
「フフッ、残念です。道合さんはどうでしょう? 金崎君に勝てますか?」
匂坂に問いかけられた道合は、再びチラリと飛山を見た。飛山は小さく笑って、石河に悟られないように頷いた。
「金崎君は……そのっ! 私と少し似ていると思います!」
突然の道合の言葉に、残る四人は僅かに固まった。まず匂坂の質問に答えていないからだ。そしてそれ以上に、納得できないと感じたからだ。挑発した匂坂もそうであった。なぜなら、道合は、チーム戦第二位の飛山チームのエースなのだ。その道合と、鷲島以外に取り柄が無い雲川チームの金崎が似ているというのは、どうにも腑に落ちない答えなのだ。
(うーん、これはアレかな。精神面が似てるみたいな感じかなー? 金崎君は見た感じ、たぶん良い人っぽいけど、……道合さんとは似てるかな? 真面目な感じがちょっと似てる……? でもその程度で似てるとか言ったら大半の人と似てるからなー。金崎君の事を侮るわけじゃないけど、戦闘力も判断力も胆力も機転も道合さんの方が上のはず。何か、道合さんの琴線に触れたのかな?)
いち早く、膠着から解けた飛山が、思案した。
「まず私の質問に答えて欲しいのですが……まあいいでしょう、道合さん、似ているというと、どの辺りでしょうか? 道合さんと同じくらい金崎君は優秀な生徒なのでしょうか?」
「ええっと、その金崎君は、とても頑張ってる感じがして……! 私も、普段からもっと頑張らなくちゃって思ってて……! 金崎君もそうなのかなって思ったんです!」
「……言いたい事は朧気に理解できました。精神面の話をしたいわけですね。ところで、技術面や魔力の面ではどうでしょうか? 金崎君は道合さんと近いと思いますか?」
匂坂の問いかけに、道合は人差し指を自身の顎に当て考えるような仕草をした。
「魔力は私の方が上だと思います。あと、射撃精度と速度も……、たぶんシールド技術も……あと機動力も上で……あれ……?」
少しずつ、冷静に道合が金崎と自分の能力値を比較していく。そして、いくつかの能力を比較した時に、何かに気付いたような顔になった。
それから数秒間、道合は必死に思考を巡らせた。
何か張り合うものがないかと金崎の長所を探したのだ。そして、それは見つかった。
「ええっと…………あっ! 連射速度は金崎君の方が上だと思います……たぶん……? あ! 一発目から二発目への速度、三発目までの速度は金崎君の方が速いです! これは絶対……!」
ようやく道合が見つけた金崎の長所は武器の連射速度の差であった。しかし、それはあまりにも酷い答えであった。道合の答えに飛山は少し苦い顔になり、種村は疑念を浮かべ、石河は失笑した。そして、匂坂は、呆れたような表情を浮かべた。
「それは当然では? 金崎君の武器はアサルトライフルです。スナイパーライフル、それもボルトアクション方式の道合さんでは連射速度で勝てるはずがありません。いえ……というより、今、『三発目まで』と言いましたね。これは、金崎君のバースト射撃のことを指していると思いますが……」
匂坂は最初は呆れた表情であった。しかし、言葉を紡いでいくうちに、あることに気付き表情を引き締めて道合を見た。道合は、意味が分からず、不思議そうな顔をした。一方で、飛山は『あーあ、やっぱり気付かれたか~』と内心で唸り声を上げた。
「……フフッ、そういうことですか。道合さん、貴女は、金崎君のバースト射撃を終えてから次のバースト射撃を行うまでの間に四発の弾を撃ち込めるということですね?」
「えっと……その、撃つだけなら……?」
迫るような表情の匂坂を見て、道合は自分が失言をしてしまったかもしれないと思い、慌てて語気を小さくした。それを見て、匂坂は意味深な笑みを浮かべ、種村は『道合さんも普通にヤバそうな技量持ってるな……』とライバルの強さに戦き、そして石河はじっと飛山を観察し続けた。
『んで、最後は終盤戦。生き残ったのは、上村・黒沢・五条・鷲島の四人だな。展開的には、鷲島が上村を、五条が黒沢を倒して、その後最終決戦って流れだ』
『駒が減った終盤戦でしたが、色々と驚愕的なことがありました! とくに注目すべき点はどこでしょうか?』
『個人芸って意味だと鷲島対五条だな……だけど、チーム戦って意味だと上村と黒沢の動きの方が重要だな。
特に上村、こいつの動きがかなり良い。秀川が死んだあと、即座に金崎をカウンターで落として、さらに鷲島を引き付けて、五条の得点を伸ばした。上村の駒質やポジションを考えると大戦果だな。というか、こいつは序盤から動きや位置取りが本当に良いんだよ。空間を上手く使って佐々木の砲撃を回避したり、奥の手で七宮落としたりしてる。配置転換や援護狙撃の位置取りも上手い。全体的に動きに無駄が無いな。
てか、試合全体を通して見ると、わりとコイツが試合のターニングポイントを抑えてる。今日の零チームのMVPは上村で決まりだな。あと個人芸的な面で見ても、射撃精度は一級品だし、二年の射撃精度高い組くらいはありそうだな』
「うむうむ、上村君が二年生に褒められてて、私も鼻が高いよ。零チームの推しキャラ投票では、私に先見の明があったようだね」
種村が少し自慢げに他の四人に向けて喋った。
「うーん、軍師秀川馬券は一着ならずだったね。あ、でも複勝くらいにはならないかな?」
飛山は少しだけ悔しそうな表情を作った。
(作戦担当だったから、今回の試合に限って言えば、戦犯はアリシアと秀川君と私かな。まあ、得られた情報も多いし、逆に隠した情報も多い。戦略的には良い方かも。というより、戦術的にも別に――うん、佐々木君が有利なマップ状況で、根崎さんが初手で落ちるっていう結構アレな状況で、大邪神様チームと引き分けたのは、戦術的にも悪くは無い。むしろ鷲島君の規格外っぷりを考えると、零チームの強さを証明したって言えるかもしれないね。まあ、上村君の機転によるところが大きい得点だけど……いや、それも含めて零チームかな。うーん、もう少し、上村君の意見が通るような環境にした方がいいのかな? でも、上村君は性格的にそんなに意見通すタイプじゃないし、無理に誘導するのも『今』のアリシアのチームの枠がズレちゃいそうなんだよね。うーん、どうするのがいいのかな~)
心の中で思案する飛山をじっと石河が見つめていた。勿論、飛山も石河の視線には気付いており、ずっと何食わぬ顔を浮かべていた。
「五人しかいないのに、複勝とかあるの? まあ根崎さん馬券以外はワンチャンあるかな?」
そう言って、種村はチラリと匂坂を見た。匂坂は魔力の重圧を種村へ向けた。
「だからさぁ、そういうすぐゴリゴリするの止めなよ……」
「フフッ……確かに、今回の試合運びを考えると上村君の役割は大きいでしょう。それに関しては、種村さんの指摘はごもっともです。しかし……根崎さんの実力を低く見積もりすぎです、種村さんも、あの解説役も。解説役に至っては、鷲島君や佐々木君の実力も見誤っていたようですし……やはり、真の強者たちが正しく評価されないことが、私には不満ですね」
「まあ、言いたい事は分かるよ。実際、根崎さん、鷲島君、佐々木君、あと零さんも入れれば、今回の試合の四大怪物大集合って感じがする。
でもさ、実際の得点は面白いよね。鷲島君は例外だけど、佐々木君は1点しか取ってないし、零さんと根崎さんは0点。零チームはエース以外の人たちが点数を取ってる。匂坂は不満かもしれないけど、これは試合として見れば面白いんじゃない? 私は結構面白い点数だと思ったよ。あ、別に根崎さんや零さんを馬鹿にしたいわけではなくてね」
「私としては、その点はあまり面白いとは感じていませんが……そんなことより、私は、二年生と今すぐマッチングしたいのですが、どうにか方法はないのでしょうか?」
「闘争意欲高すぎでしょ……何が匂坂をそこまで争いに導くの……? やっぱり、本当はゴリラなの? ゴリラの魂が人間に憑依したの……?」
匂坂と種村が戯れる一方で、解説の四宮は続きの言葉を口にした。
『んで、黒沢の方も個人的には評価したい。駒質的には厳しい試合だったと思うけど、一人になっても任務点確保のために考えて動いてたのが良かった。勿論、最後、根性見せたのが良い。
Aランク帯の試合では、弱くてもできることしないと駄目だ。この試合でAランクが決まるわけだしな。やっぱり、Aランクで雑魚がタダ乗りするのは、俺としてはムカつくんだよな。ただ、這ってでも任務点取ろうとする根性があるならギリ許せる。ちゃんと頑張ってるやつは嫌いじゃない。この辺はまあ、雲川チームの金崎にも言えることだな。弱いなりに偵察とか、援護とか頑張るなら許せる』
『黒沢選手、金崎選手、両者の執念と努力が垣間見えた試合でしたね。チーム戦はエースの働きだけでは決まりませんからね』
『特に、鷲島は射程、佐々木は高速近接っていう弱点があるからな……それじゃあ、最後、五条対鷲島だな。ただ、これはもうなんかなぁ……』
四宮は半ば呆れたような声を上げた。お手上げと言わんばかりであった。
『凄まじい戦いでしたね。まさかの鷲島選手の判定勝ちみたいな方法でした』
『改めて考えても、こういう戦い方するか、フツーって感じだ。鷲島、コイツちょっとヤバすぎるよな。特に、回避力が高すぎる。あと忍耐力、精神力もだいぶ強いな』
『心身共に近接戦闘では、飛び抜けた才幹を持っているように見えました』
『実際、コイツは近接に限って言えば二年生Aランクレベルだな。総合的に見ても、一年の四月ってことを考えると120点くらいだ。頭の方も結構回ってて、ブレード突撃できるところで、あえて突撃しなかったのとか、全体的に戦況をよく見てる。特に零の処理が印象的だな。頭も体も優れた近接役だ』
三分の一は苦々しく、三分の一は呆れ、そして残りは感心の色を持った声で、四宮は鷲島について評した。
『シールド能力も高かったですね。これも近接担当としては魅力的なポイントでしょうか?』
『まあ、そうだな。実際、コイツの分散シールドの扱いに関しては次元が違うな。たぶんシールド精度と展開能力ならコイツはこの学園でも五本の指に入るな。五本の指に二年が一人しか入らなそうなのが悲しいところだな。ただ、魔力量はそこまででも無さそうだから、耐久能力はそこまで突出してないイメージだな。魔力の割に滅茶苦茶固いけど、純粋な高魔力のシールドほど厚みはない。
実際、五条が鷲島の立場だったら、秀川・上村・零が相手でも被弾しないだろ。そういう面では流石に劣るな。ただ、総合力として考えると、鷲島は強すぎる。明確な弱点が射程くらいしかない。てか、新入生の戦闘順位一位はコイツなんじゃねーの? もしコイツなら面白いよな。入学時戦闘成績一位の中で魔力量は間違いなくドベになるからな』
この予想は半分正解だった。鷹一は確かに新入生の戦闘適性順位一位であった。しかし、半分は間違えていた。鷲島は一般的に高魔力と言えるほどの魔力を持っていたからだ。
『四宮選手にそこまで言わせるとなると、今後の鷲島選手や雲川チームの活躍が期待できますね。現状は暫定Bランクですが、ポテンシャル的にはAランクを狙えそうな感じがしますが……?』
中村にとって二年生Aランクの四宮は雲の上の存在である。彼がそこまで評するのなら、やはり鷲島は超人なのだと再認識したのだ。
『あー、雲川チームか。鷲島は期待できるけどな。まあ、ギリ金崎も見れないことはないけど……雲川チームって考えると少し厳しいな。色々、まだチーム戦の動きとしての基礎とか役割分担とかできてないからな』
『役割分担、といいますと?』
『例えばだな、序盤、鷲島が北側の偵察してただろ。これはちょっと俺的には微妙な選択なんだよな。鷲島に偵察させるのかって所なんだよ。てか、第三試合とかもだけど、コイツ、偵察し過ぎなんだよ。情報を重視するっていうスタンスは嫌いじゃないけど、ポジション的にコイツの仕事ではないだろ』
『戦闘力と機動力があるので威力偵察向きではありそうですが……』
少し悩まし気に中村が意見を口にした。
『分からなくはないけど、雲川チームはエースで殴り殺すスタイルなんだから、偵察くらいは他の奴がやれよ』
『金崎選手は、今回南側をよく偵察していた印象がありますが……』
『いや、まあもう名前上げるけどよ、雲川がやった方がいいだろ。ポジション的にも合ってるし、というか、序盤、東に逃げる時だって、もう少し北側を走って、中央部から北戦場を偵察するとかできたわけで、そうすれば、今回だって鷲島の偵察がいらないだろ。最序盤の鷲島の動きを偵察に使うのが勿体ないんだよ。一手遅れる。鷲島頼りのチームなんだから、鷲島が一手遅れちゃダメだろ』
『……それは、そうですね……雲川リーダーの撃墜を嫌ったのかもしれませんが……』
特定の生徒――それも戦闘力に欠ける雲川を直接批判するのを中村は避けたかった。それゆえの言い訳のような言葉であった。
『もし、それで落ちるなら、そもそも――いや、まあいいか。とりあえず、色々言ったけど、雲川チームはBランクは堅いだろうし、まだ伸びしろはある。今後チームメイトの再編や活躍次第では、ワンチャンありそうなチームだな』
『雲川チーム以外――零チームや麻倉チームに関しましては、なにかありますか?』
『そうだな……まあ、根崎が生きていればに尽きる話だな。最序盤に根崎が落ちたのが本当に痛い。それさえ無ければ勝ってただろ。
あと個人的な意見だが、零がリーダーとしては弱気で消極的なのが気になるな。第一試合もそうだったけど、零は有利な局面で逆に弱い。駒が強いんだから、もっと攻めた方がいい。戦士としては優秀だが、リーダーとしては少し微妙。ぶっちゃけると、上村あたりとリーダーをチェンジした方がいい』
四宮は試合開始直後からの根崎と零への厳しい評価を崩さなかった。
『ですが、不利な局面での判断は優れている印象です。第二試合で根崎選手・上村選手が落ちた後の零チームの動きは優れていたと思います。実際、零リーダーの用心深さも重要ではないでしょうか……? 零リーダーが生きていれば、秀川選手に狙撃の警戒を促したかもしれません』
『それはまあ、あり得るな。ただ、秀川の判断も別に間違えたわけじゃない。秀川は、思い切りがいいんだよ。好みが出るが、俺は零よりは好きだな。
それで最後、麻倉チーム。ここはチームとしての完成度がわりと高い気がする。チーム戦術とか連携とか上手いし、今のチーム戦の環境に噛み合ってる。役割分担も出来ていると言える。まあ、佐々木・七宮あたりの負荷が大きいから、そこらへんは他のメンバーにもう少し仕事回した方が良さそうだけどな。ん、そろそろ終了時間か?』
『はい、ほぼほぼ終了時間になります。四宮選手、今日はありがとうございました』
『おう。想像の数十倍は楽しめた試合だった。またなんかあったらよろしくな』
そう言って、第四試合『零・麻倉・雲川のチーム戦』の試合後解説は終了となった。
沢山のご感想・ご評価・ブクマ等、ありがとうございます。
最近、ちょっと展開が遅れ気味ですみません。
色々とご意見いただいているので、第五試合(五月の第一試合)ではちょっと気を付けて書いていきたいと思っています。
次話で、観客席のメンバーの最後の会話を少しやって、雲川チームに視点が戻って、そこで少し話をしたら、第四試合は終了です。
第四試合が終わったら四月最後のイベントをやって、ようやく一章終了です。
次は二章の五月編になります。