学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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第四試合⑯ 試合の終わり、次なる準備

 

「なんか本当に凄い試合だったね。鷲島君のヤバさがひたすら強調されてた気がした」

 

 実況・解説が閉幕したのを見て、種村がおもむろに口を開いた。

 

「そうだねー。こういうの見せられちゃうと、やっぱり鷲島君にチームに入って欲しかったって思うよ」

 

「あ、やっぱり鷲島君のこと勧誘してたんだ……」

 

 飛山の言葉に、どこか納得したように種村が答えた。

 

「うん。匂坂さんには『身の程知らずめー!』って怒られちゃいそうだけど、やっぱり、あれだけ『つよつよ』だと勧誘したくなるよね」

 

「フフッ、飛山さんほど優れたリーダーであれば、そこまで身の程知らずとは思いませんよ」

 

 そう言って匂坂が優しく微笑んだ。それを見て、種村は『匂坂(ゴリラ)、たまに普通に優しい見た目になるのは世界のバグでしょ……』と思った。

 

「お! 褒められちゃったね……! でも残念ながら、鷲島君には断られちゃったからね。雲川さんには勝てなかったね」

 

「まあ、巡り合わせは複雑だからね。うちのチームのリーダーも鷲島君のこと、勧誘したんだけどね……上手く行かなかったみたいだし……」

 

 飛山の嘆くような言葉に、種村が口を挟んだ。

 

「梶田さんも勧誘したんだ。ちょっと意外。梶田さんと鷲島君って相性悪そうだけど」

 

「流石は飛山さん。よく分かってるね。梶田、勧誘に失敗したどころか、無茶苦茶ボコボコにされたみたいで、泣いてたよ」

 

「鷲島君は暴力は振るわないタイプだと思うけど」

 

「あ、いや、滅茶苦茶ロジハラされたって言ってた」

 

 種村の言葉に、飛山は小さく笑った。

 

「あれは鷲島君の個性だよ。まあ、相手によって個性を発揮する時とそうでない時がありそうだから、梶田さんとはやっぱり相性が悪いのかもだけどね」

 

「とすると雲川さんは相性が良いのか……遠目でしか見たことないけど、ああいう感じなのがいいのか……」

 

「そこは鷲島君に直接聞かないと分からないところだね」

 

「まあそうだね。……ああ、そうだ。そういえばさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど。いいかな?」

 

 種村は一度言葉を区切ると、改まって飛山に伺いの言葉を立てた。

 

「私? 何かな?」

 

「まあ、飛山さんにメインで、一応匂坂にも聞いとくけどさ……今回の試合で鷲島君は防御も完璧なチーターだと判明したけど、二人は何か対策とかある?」

 

 それは対鷲島戦術に関する質問であった。これを聞くことは種村にとって複数の意味があった。一つは純粋に言葉通りに対鷲島のアイディア集めのため。二つ目は、そのアイディアから導き出される飛山チーム・匂坂チームの可能な戦力を測るため、そして三つ目は、手土産のためであった。

 

「ふむふむ……まあ、ほどほどにあるかな? 匂坂さんはどう?」

 

「フフッ、私は、鷲島君のことなら語れますよ?」

 

 嬉しそうに匂坂が答えた。

 

「いや、語らなくていいから、対策があるかだけ教えて欲しいんだけど。あ、できれば対策法も聞いておきたい」

 

「語れますよ?」

 

 うずうずと気持ちが抑えられないとばかりの表情であった。

 

「いや、いいから。対策があるのか教えろ」

 

「フフッ、そのようなことを言われると教える気分ではなくなってしまいますね」

 

 どこか粘着質な匂坂の視線が種村を値踏みした。

 

「じゃあいいや。飛山さん、ちなみに対策法については聞いてみてもいい?」

 

「うーむ、まだ未完成だからお披露目するのはちょっと恥ずかしいかな~」

 

 飛山の言葉は、遠回しながらも情報を落とす気がないという言葉であった。

 

「駄目か……まあ仕方がない。ちなみに飛山さんの予想を聞きたいんだけど、鷲島君対策をしてるチームってどのくらいあるのかな?」

 

「んー? どのくらい? 鷲島君は凄く強いから対策必須だと思うけど……マッチング的にAランク、Bランク候補のチームはだいたいやってるんじゃない? というか、梶田さんのチームはどうなの? 対策してる?」

 

「うん。まあ、答えてくれたし、私も答えるけど……実は結構自信のある作戦がある。詳しくは言えないけど、珍しく、反町のやつと意見が合ってね。対鷲島君の必勝の策。きっと驚くよ……!」

 

 種村は普段の緩んだ顔を抑えて、故意にキリリと緊張感を持った表情を作った。しかし、生まれつきの緩さのせいか、数秒と持たず、すぐにほのぼのとした、いつもの表情に戻った。

 

「必勝? 何だろう、気になるな~」

 

「これはダメだよ。教えられないよっ……!」

 

 得意げな顔で種村が飛山の言葉を断った。

 

「鷲島君相手に必勝などと、大言が過ぎると言いたいですね。本当に必勝なのでしょうか? もしできなければ、種村さんはどうするのですか?」

 

 じっとりと粘性のある湿った視線が強い圧とともに種村に注がれた。

 

「急に詰めないでよ。怖いよ……いや、まあ、必勝ではないかもだけどさ……実際に上手くいくかは、雲川チームの動き次第だけど……でも、普通に戦うよりは遥かに強い策だよ。まあ、私は賢いからね。ちゃんと頭を使えるよ。ゴリゴリするだけじゃあ駄目だよ」

 

 種村は指で自身の頭を二回叩いた。『知的である』というアピールのつもりであった。

 匂坂は粘着性のある笑みとともに強い魔力の波を種村へと向けた。

 

 しばらくの間、じゃれあう匂坂と種村、それを見守る石河・飛山・道合の五人組は、観戦会場に留まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 第四試合終了後、鷹一は帰還室で、金崎と雲川と合流した。金崎は非常に申し訳なさそうな顔であり、一方で、雲川はどこかしょんぼりとした顔であった。

 

「鷲島、その、本当にごめん……油断した。頭がパーになってた。いや、本当に、ごめん……」

 

 開幕は金崎の謝罪であった。それを見た雲川は、内心で『私も何か言った方が……でも鷹一くんの言う通りやったし……』と葛藤した。

 

「謝る必要はない。むしろ、金崎、よくやった。あの射撃を決めてくれたのは大きかった。今回のターニングポイントだったと思う。零チーム相手に引き分けまで持ち込めたのはお前の働きが大きい。紫苑、頑張ったな。得点は取れなかったが、訓練の成果が見えた動きだった。個人訓練でも手を抜いていないのは分かった。今の環境は、紫苑には合わないと思うが、それでも前向きに頑張ったのは良いことだと俺は思う」

 

「う、うん……その、最初の方で、落ちちゃって……ごめんね……」

 

 俯きながらも雲川が答えた。

 

「今回は、……いや前回もだが、投入運が悪かったな。それに撃破された件に関しては、俺も考えが足りなかった。決して佐々木を侮っていたわけではないが、どこか常識の範疇であの男を捉えていた。あの男は常識では測ってはいけない相手だった。佐々木は匂坂と同類――化物だ。次は、それを考慮して戦うことにする」

 

 鷹一の言葉には強い真剣さがあった。それほどまでに佐々木の脅威度を上げていたのだ。

 

「うん……その、頑張ってね……?」

 

 どこか他人事のように雲川が呟いた。それを鷹一は見逃さなかった。

 

「紫苑、俺たちはチームだ。一応、作戦や指揮は俺が代役として務めるし、前線で戦うのは俺が基本でサブは金崎だろう。だが、紫苑も同じマップで戦うということは、しっかりと覚えてくれ」

 

「え、あ、うん……ごめんね……」

 

「ああ、いや、そうだな。今は別にこういうことを言いたいわけじゃない。とりあえず、金崎、紫苑、今日は二人ともよく頑張った。このマッチングで、6得点はかなりの成果だ。五月からのBランクは確定。目標達成だな。今後はBランクの維持が課題にはなるが……その話はまた今度にしよう。俺はこの後、午後の試合を見る予定だが、二人はどうする? 一緒に見るか? それとも別個で見るか? 勿論、疲れたなら休んでもいい。情報は俺の方でまとめておく」

 

「えっと、今日は疲れたから……」

 

 おっかなびっくりしながらも、どこか素早さをもって雲川が答えた。こういった返事に関しては雲川は早いのであった。

 

「そうか、なら今日はゆっくりするといい。金崎はどうする?」

 

「あ、その俺は……ちょっとトレーニングをしたいと思ってる。今日、俺が落ちなきゃ――ああ、いや、その兎に角、やっぱりまだまだ鷲島の足を引っ張ってると思うし、上村にやられたのも、もっと俺がシールドとか上手ければ耐えられたんじゃないかって思ってて、それで少しでもトレーニングしたいんだ」

 

 金崎の瞳には自責の念が強かった。鷹一はすぐにそれを読み取った。僅かな間、鷹一が無言になった。その沈黙が、金崎を緊張させるよりも早く、鷹一は口を開いた。

 

「…………そうか。分かった。それは悪い事ではないと思う。ただ、あまり気負い過ぎないでほしい。俺は、お前が足を引っ張っているとは思っていない。むしろ逆だ。チームのためによくやってくれていると思っている」

 

 これは本心からの言葉であった。鷹一は、ここまで金崎が雲川チームに貢献できるとは思っていなかったのだ。それはある意味で、金崎の実力を低く見積もっていたということでもあった。

 

「ああ、ありがとう。鷲島。それと、その、いつも鷲島頼りで悪いんだが……今回のようなミスを無くすには、どうトレーニングしたらいいと思う? いや、勿論、自分で考えろって話だと思うけど、でも、きっと俺が考えるより、鷲島に聞いた方が正しいと思うから、教えてほしい」

 

「教える分には全然構わない。俺個人としては、今まで通り基礎を伸ばしていくことが、最終的な強さに繋がるとは思うが……ただ、金崎としては、今回の敗因が気になっているようだし、そちらを意識したい気持ちがあるだろう。それは悪い考えではない……そうだな、狙撃後の退避方法、遮蔽の利用や離脱ルートに関していくつか訓練法を以前作っておいた。共有フォルダの……これだな、このページを参考にしてみてくれ。あと余裕があったら、この前作った、シールド特訓用の射撃反応プログラムを実行してみてくれ。レベル4のクリアを目標にしよう」

 

 鷹一は端末を取り出し、それを金崎に見せながら、必要な訓練法を教えた。

 

「レベル4……分かった。ありがとう、やってみる」

 

 そう言って金崎はその場を後にした。雲川も金崎が去ったのを見て、休息のため一時寮へと戻った。

 二人の後ろ姿を見ながら鷹一は思案した。

 

(まだまだBランク帯では実力不足だが、それでも少しずつ成長している。伸びしろはまだまだあるだろう。俺も、やるべきことをやらないとな)

 

 思いを新たにし、鷹一は警戒しながら、観戦会場へと入った。そして、匂坂から距離を取れる安全な場所を見つけ、そこから午後の試合を観戦するのであった。

 




★★おまけ★★

★日曜日AランクBランクの帯の試合 結果

Aランク帯
零・麻倉・雲川のチーム戦:6-3-6で引き分け。
蓮・高光・滝本のチーム戦:10-5-0で蓮チームの勝利。

Bランク帯
安重・有坂・木下のチーム戦:9-4ー0で安重チームの勝利。

★最終順位(AランクからCランクまで)
順位  チーム名    合計点
1位   匂坂      42点
2位   飛山      39点
3位   梶田      33点
4位   蓮       32点
5位   零       31点
6位   舞島      25点
7位   高光      25点
8位   星川      25点
9位   安重      24点
10位  中       23点
11位  麻倉      23点
12位  雲川      22点
13位  水渕      21点
14位  神岡      20点
15位  下水流     20点
16位  滝本      19点
17位  劉       19点
18位  大町      19点
19位  壇上      19点
20位  柚木      18点
21位  有坂      17点
22位  淡路      17点
23位  天野      17点
24位  秩父      17点
25位  近藤      16点
26位  清沢      15点
27位  源内      15点
28位  畑中      13点
29位  三宮      13点
30位  ザベリンスカヤ 13点

※Aランク:1位~10位
※Bランク:11位~20位
※Cランク:21位~30位

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