学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
そうして四月三十日の夜23時50分。
雲川チームの作戦室にて、椅子に座る雲川は必死の形相で、自身の端末に記載されている情報――四人の詳細成績と、順位表を暗記していた。
既に筆記用具がテーブルに置かれている。
10分後、五月一日になると同時に、端末からデータが消される。消されたらすぐに、頭の中にある情報を紙に転写するのだ。
鷹一は、その様子を淡々と見守っていた。なお、金崎は既に就寝している。本当は金崎もリーダーが苦難にあることを憂い、作戦室に残るという話になったが、鷹一は「大丈夫だ」と押し通し、金崎を就寝させたのだ。努力家で、休みの間も訓練を続けるチームメイトに、いらぬ苦労をかけさせたくなかったのだ。
そして、無言で時が過ぎていき、10分が経過した。
雲川が端末からデータが削除されたのを確認した。同時に鷹一も時刻を確認し、雲川にGOサインを出した。
凄まじい速さで雲川が筆記用具を操った。いつもの、ほのぼのとした様子から信じられない程の速度であった。
一刻一刻と、書くたびに雲川の記憶から情報が抜けていく。
それでも、この二日間の苦しみを無駄にしないために、雲川は必死で書き続けた。
しかし、雲川の小さい頭に留めて置ける情報は少ない。
必死で頑張る雲川だが、五分程度で書く速さが遅くなっていき、十分もすると、ほとんど動かなくなった。ただただ、唸り声をあげ、必死に記憶を思い返しては、一文字書く、そういったような、鈍い生物へと成り下がった。
三十分ほどして、雲川の情報が完全に出なくなったのを確認して、鷹一が声をかけた。
「紫苑。ここまでにしよう。よくやってくれた。だいぶ情報を手に入れた。本当によく頑張った。明日――いや、もう今日か。今日の夜は三人で寿司を食おう」
「うん…………」
緊張が切れた雲川は眠そうに頷いた。二日間の苦難で溜まった疲労がどっと彼女に眠気となり襲い掛かって来たのだ。
「もう寝よう。自分の部屋まで歩けるか?」
「う、うん……」
鷹一は念のため、雲川がしっかりと自室のベッドに倒れるのを見届けた後、再び作戦室へと戻った。
そして雲川の成果を確認した。
―――――――――――――――――――――
戦闘適性順位
順位 名前
1 鷲島
2 書いてなかった
3 青井
4 マスタング
5 谷崎
6 高坂
7 書いてなかった
8 分かんない
9 根崎
10 佐々木
11 山見
12 書いてなかった
13 石河
14 書いてなかった
15 赤岡
16 青山
17 西
18 南
19 書いてなかった
20 分かんない
21 東
22 分かんない
23 分かんない
24 秀川
25 分かんない
26 分かんない
27 書いてなかった
28 針谷
29 早木
30 分かんない
31 分かんない
32 分かんない
33 七宮
34 分かんない
35 分かんない
36 分かんない
37 分かんない
38 分かんない
39 分かんない
40 書いてなかった
―――――――――――――――――――――
鷹一は、まじまじと大量の「分かんない」を見た。
(一応、トップ20位はだいたい押さえたな……もう少し欲しかったが。いや、紫苑も頑張ったんだろう……戦闘順位8位は以前の雲川の暴露から考えるとリーダーのはずだが……紫苑はそのことも忘れているのか……)
少し呆れつつも、鷹一は情報を整理していく。
(2・7・8・12・14・19・27・40位がリーダーか……2位は間違いなく匂坂だろう。7位と8位のどちらかは零……もう片方は……星川か梶田のどちらかだな。おそらくは梶田。そうすると12位が星川か……? いや、飛山という可能性もあるか。恐らく、12位・14位・19位に星川と飛山がいるな。もう一人は誰だ……? いや、20位がリーダーという可能性もあるな。あまり特定はできないか……)
リーダーたちの見えない順位について軽く考えを向けた後、鷹一は第四試合でマッチングした二人の強者を思い返した。
(根崎・佐々木が思ったより低い……いや、この二人より明らかな上位は、高坂・谷崎・マスタング・青井と実力者ばかりだ。この順位でおかしくはないのだろう……しかし根崎が9位か……)
続いて、期待せずに筆記順位の方も開いた。
―――――――――――――――――――――
筆記試験順位
順位 名前
1 書いてなかった
2 岳下
3 書いてなかった
4 佐々木
5 反町
6 有賀
7 鷲島
8 書いてなかった
9 書いてなかった
10 書いてなかった
11 江原
12 分かんない
13 伊舎堂
14 乾
15 森合
16 樋口
17 分かんない
18 分かんない
19 山見
20 分かんない
21 分かんない
22 分かんない
23 分かんない
24 分かんない
25 分かんない
26 分かんない
27 書いてなかった
28 書いてなかった
29 書いてなかった
30 木村
31 分かんない
32 分かんない
33 分かんない
34 稲葉
35 分かんない
36 書いてなかった
37 分かんない
38 分かんない
39 分かんない
40 分かんない
―――――――――――――――――――――
戦闘適性以上にスカスカの中身を見て、鷹一は小さく溜息を吐いた。
(筆記上位者のリーダーが多いと分かっただけでも収穫か。それに……)
鷹一は今度は詳細成績を見た。四人――佐々木、青井、道合、山見の詳細成績に関しては、ほぼほぼ網羅されていた。
(こっちを頑張ったんだな。実際、この四人のデータはかなり大きい。特に佐々木と青井は…………っ!? どういうことだ……? 佐々木の魔力が低すぎる。根崎以下など有り得ない。佐々木のこの前の試合の動きから考えると間違いなく五条レベルかそれ以上だ。なぜだ……? 学園の魔力探知を誤魔化したのか? 何のために? やはり、佐々木は危険だ……)
鷹一は知らぬことだったが、これは誤解があった。佐々木は非常に強い魔力の持ち主であったが、決して悪意や何か目的があって魔力を誤魔化したわけではなかったのだ。単に、魔力を制限するのが、佐々木の普段の癖だったからだ。
(魔力以外は……そこまでおかしな値ではないが、やはり機動力が高いな。あれほどの重装備で、高機動力……潜在的な機動力は根崎に近いな。やはり佐々木は危険だ……シールドもあまり使っていなかったが、非常に堅い。強度も反応速度も高いな。これだけ高いと安重チームに倒されたのが少し疑問だが……この辺りは安重チームの包囲の仕方が良かったんだろうな。他に高練度の武器は無しか。良い情報だが……佐々木のことだから学園相手に情報を絞った可能性も……それに今現在新しい武器を習得している可能性もある。やはり佐々木は危険だ……)
佐々木に関して、簡易な考察をした次に、鷹一は戦闘適性順位3位の怪物について目を向けた。
(青井は、やはりスペックが高すぎる。魔力も俺より高い……秀川クラスだな。そしてアサルトライフルとシールド、機動力、全ての技量が秀川を凌駕している。攻防走、隙がなくバランスが良い。試合ではあまりシールドを使っているイメージは少ないが、それでも確かなシールド技量を持っている)
詳細成績を見ただけ分かる異常な程の能力の高さが、青井舞美という生徒の分かりやすい強さだった。しかし、青井はそれだけではなかった。
(……というより、青井はこれまでの試合、殆ど防御していない。回避の方が多い。いや、回避すらしていないことが多い。青井はほぼ確実に先制攻撃を決めている。青井は本当に攻撃のタイミングが上手く、そして攻撃に至るまでのポジション取りが上手い。攻撃したい時、必ず攻撃しやすい場所にいる。恐らくマップ研究や対戦相手の研究、流動する戦場の流れを読んでいるのだろうな。いや、この辺りは、青井ではなく蓮チーム全体の技量か……? いや、それは違うか。内部に問題を抱えている蓮チームにそんな事ができるとは思えない。やはり青井個人の技量として見た方がいいな)
回避能力や、試合における立ち回り、攻撃の上手さなど、様々な点が青井の強者性を強調しているのだ。特に、試合における貢献能力は高く、チームランキング2位のリーダーである飛山が、『チーム戦で最も脅威に感じているのは佐々木だったが、次点は青井である』と言うほどであった。
(……それに、青井の突撃銃の技能は、あまりに人間離れし過ぎている。第四試合など一瞬……刹那の間に相手を倒しすぎている。相手が弱いわけではない。相手もAランク帯だ、むしろ強者だ……だが、どういうわけか誰もが青井にことごとく倒されている。青井の攻撃を防げないんだ。あのマスタングすら速攻で落ちた。純粋の攻撃技能の高さもあるが……それだけでは説明がつかない)
第四試合で中央を確保した青井がただただひたすら作業のように生徒たちを撃破していく姿が、今でも鷹一の中で鮮明に残っていた。
純粋に突撃銃使いとして極めて技量が高いというのもあったが、それだけではないと鷹一は感じていた。
(このデータでも青井は十分強いが、それでも青井の強さを表しきっていない気がするな……何か、意識の隙でも突いているのか……? 少し俺と似ているか……? いや、俺のは単なる反射の問題だが、青井のは、もっと修練を積んだように見える……何か、そう、特別な技術のようなモノに見えるな。それにマスタングの倒し方も気になるな……)
それから鷹一は少しの間、黙々と青井について考察した後、一度息を吐き水分を補給してから、次の詳細成績に目を通した。
(山見は、やはりチーム戦では危険な存在だ。狙撃手でありながら、近接戦能力がかなり高い……情報的には、山見のアクセル技能が知れたのは大きいな。ブレードの習熟度から考えると、ほぼ確実にブレード突撃ができるな)
山見は相対的に活躍が少ない生徒であった。撃破点は少なく、他の三人ほどの衝撃は無かった。しかし、直接の撃破点は少なくとも、秀川や飛山といった猛者たちを追い詰める狙撃の技量を鷹一は評価していた。
また、山見はこれまで試合では一度もアクセルを使用していなかった。戦闘適性試験での高いアクセル技能は、彼女が四月に手の内を見せていないことの証明でもあった。
一般に、多くのリーダー・選手から、匂坂・谷崎・石河に比べると、一段低く見られがちな山見であったが、鷹一は油断せずにデータを分析した。
しかし、そんな鷹一であっても、読み解けないことがあった。
それは山見の悍ましいほどに卓越した『ある特殊な技術』であった。その技術は、戦闘適性試験などでは決して現れないし、試合でも端から見ると使ったようには見えない特殊な技術だ。だが、それは既に少しずつ毒のようにAランク帯を侵食していた。
鷹一が、山見の悍ましい技術に気づくには、まだまだ時間が必要だった。
(道合は……試合での活躍を見るにかなり優秀な生徒のはずだが……思ったより学園の評価が低いな。高魔力だが……シールドの得点が少し悪いのが響いているな。それにAI戦闘の結果も低い……いや、待て。入学試験で使った武器が突撃銃か……試合では狙撃銃を使っていたが……それにアクセルも試験では使っていないのか……となると、どちらも入学後に開花した才能か? もしそうならば成長速度という意味では非常に脅威だが……佐々木と同じで学園に情報を落とすことを嫌ったか……?)
それから鷹一はしばらくの間、四人の詳細成績に関して、これまでの試合でのデータを見ながら、思考を重ね、一時間ほどしてから、ようやく情報を纏め終え、就寝へとつくのであった。
日付はついに、五月一日。
――新たな試練の発表まで残り10時間30分。
これにて一章完結です。ここまで、読んでいただきありがとうございます。
また、いつも、ご感想・高評価・お気に入り・しおり・いいね絨毯爆撃・誤字報告など、大変ありがとうございます。創作活動をするにあたって、本当に助かっています。
おかげさまで、何とか、一章を書ききることができました。
特に平均評価や文字あたりの評価で前作を超えられたのが本当に嬉しいです。
この嬉しさをパワーに二章も書き上げることができれば、と思っています。
二章は現在、執筆中ですので、あまり間を置かずに二章投稿に入れると思います。
二章では、生徒たちに課される新しい試練で、試合以外での駆け引きの要素が加わってきます。
他のチームと試合以外で関わることになりつつも、雲川チームは、時には勤勉に、時にはまったり努力しながらチーム戦に挑んでいきます。
お楽しみに!
★おまけ★
道合・山見・佐々木・青井のパネル情報です。
雲川が頑張って手に入れた詳細成績データ+鷲島が四月中に得た試合の情報をもとに、鷲島がさらに考察をして得た情報になります。
あくまで、鷲島視点の情報なので完璧ではありません(適性試験や四月の間、実力を隠していたり、鷲島が間違った解釈をしている可能性もあります)。
またパネルはメタ的な表現なので、実際は鷲島も「道合は狙撃精度パネルを沢山持ってる」みたいな認識ではなく、「道合は今までの試合での活躍を見るに、狙撃技能がかなり高い」みたいな認識です。
そういった認識をパネル的に表現したデータになります。
詳細成績を踏まえて、鷲島から見ると、こんな感じの四人です。
道合
【挿絵表示】
山見
【挿絵表示】
佐々木
【挿絵表示】
青井
【挿絵表示】
ネタバレになりますが、実は鷲島から見えていないだけで凶悪なパネルを隠し持っているキャラがいます。ご注意下さい。