学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
高等部新入生入学の翌日。
鷲島鷹一は、前日にアポイントを取った四人のリーダーと話し合った後、げっそりとしたリーダーを四回連続で見送り、それから講義室へ向かった。
なお前日とは違い金崎の姿はない。金崎は講義室で授業を受けるよりも端末でのアーカイブ視聴を選んだのだ。その理由の一部には秀川の言葉の影響もあった。金崎は少し影響を受けやすいタイプであった。
前日よりも人が減ってしまった講義室で、鷹一は、午前の授業を受け、昼休み中には交流を求めるリーダーたちの相手をして、それからまたしても午後の授業を終わりまで受けた。そうして、授業後もまた、リーダーたちとの勧誘対応に勤しんだ。二日間で合計十九名のリーダーから勧誘を受けた鷹一は、無表情ながらも頭を悩ませた。
(思ったより勧誘が多いな。情報交換をできること、特に各リーダーの考え方を知れるのはかなりのアドバンテージだが……そこそこの数のリーダーが一位である俺に対して成績開示を行っている。これは今後に支障が出る)
夕日に照らされた鷹一の表情が徐々に硬くなっていく。もしここに金崎がいれば、『なんで怒ってるんだろう』と思っただろう。なお、現在、鷹一は怒ってはいない。自身の戦略的なアドバンテージの一部が損なわれた事を気にしているのだ。
(――それに、どうもしっくりこないな。十九名のリーダー、それぞれ長所があり、それぞれのチームには魅力がありそうだが……何か足りない。しかし、多くのリーダーは今日中の回答を求めている。現状、俺の考え方的にも、戦略的にも最も期待値が大きそうな選択肢は、飛山のチームに入ることだが……)
そこで小さく息を吐いた。
小さな音が空気を伝わった。びくり、と鷹一の近くにいた小柄な少女が震えた。そして、驚いたように鷹一を見た。少女は自身の近くに人がいるとは思っていなかったのだ。これは鷹一が自然と気配を消していたという点もあるが、少女が物思いにふけっていたことも理由の一つであった。
鷹一の鋭い視線と少女の弱弱しい視線が混ざり合った。少女はすぐに『人殺しみたいな目線の生徒がいる』と驚き、恐怖で小さな体を震わせた。そして、さらに少女にとって恐ろしいことが起こった。
「お前、
なんと人殺しのような男――鷹一が少女に話しかけたからだ。
「……、え……?」
少女――雲川紫苑は茫然と鷹一を見た。
「鷹一だ。鷲島鷹一。覚えてないか?」
「あ……え、鷹一くん……?」
雲川は信じられないようなモノ――まるで死んだはずの人間を見るような目で鷹一を見た。
「そうだ」
「え……え、でも……鷹一くんは…………」
「久しぶりだな」
困惑する雲川に気にせずに、鷹一は再会の言葉をかけた。
「う、うん……久しぶり、……この学園に来てたんだね……」
「ああ。来てた。お前も来てたんだな」
「……うん、一応、適性試験には何とか通ったみたいで……ぎりぎりだったけど……」
「そうか、……多分、それは、良かったんだな」
「良かったのかな……? あんまり良くないかも……」
雲川は沈んだ表情で答えた。
「……それは、どうしてだ?」
鷹一は雲川の表情から状況をある程度察したが、確認のために問いかけた。
「……鷹一くんなら知ってると思うけど、私……頭も悪いし、運動もできないから……筆記試験も戦闘適性試験も全然ダメだったんだ……あと魔力も全然なくて……自分の成績見た時、うわって思ったよ……」
「そうか……」
「うん……だから、このままだと学園追放に……あ、鷹一くんは、ルールとかもう読んだ……? 今回の試練のルール」
「一通り目を通した。仕組みから考えると、選手は学園追放されにくく、リーダーは学園追放の可能性があるが……紫苑は、リーダーだったのか……?」
「……やっぱり鷹一くんは凄いね。うん……私、リーダーだったよ。だから、最低でも一人、仲間を作らないといけない。けど、きっと私じゃ無理だから……私は追放されるんだと思う。折角入れたのになぁ……」
雲川は悲壮に満ちた表情で遠くを見た。
「まだ、入学二日目だ。追放になるまで、一か月近く時間はある。諦めず、勧誘活動をすれば、追放は避けられるかもしれない」
気休めにしかならない言葉を鷹一は吐いた。
(リーダーは、一人でも選手を確保できれば、学園追放は避けられる。だが……紫苑の能力、性格、この学園の気風や生徒の性質――恐らく難しいだろうな。紫苑は一人も選手を確保できずに、四月を終える可能性が高い)
鷹一は内心で、雲川の追放の可能性を見積もる。一方で、雲川は、諦観のまなざしを浮かべつつも、無理やりにも微笑んだ。
「う、うん……ありがとう。鷹一くん。やっぱり優しいね…………あ、あと……その、あの時はありがとう、それに、ごめんね……そ、その、じゃあ……」
無理に作ったような表情で、感謝と謝罪を述べた雲川は鷹一に背を向けて立ち去ろうとした。
それを見て、鷹一は仕方がないかと内心溜息を吐いた。
「紫苑、待った」
「え……?」
雲川は静止の言葉を聞き振り返った。
「もし、よかったら、俺をチームに入れてくれないか? 俺はリーダーではなく選手だ。ついでに言うとまだどのチームにも入っていない。紫苑が俺をチームに入れてくれれば、俺たちはどちらも追放を避けられる。良い提案だと思うが、どうだろうか?」
「え……?」
再度、雲川は声を漏らした。同じような声だったが、今度のそれは、驚愕と歓喜の色が混ざっていた。
「もし良かったら、俺をチームに入れてくれ」
鷹一は先程よりも短く、端的な言葉を放った。
「そ、それは……いいけど……でも、鷹一くんは良いの……? もっと強いチームに入らなくて……?」
「別にいい。俺は元々最低限の暮らしができればよかったからな。本質的にはチームはどこでも同じだ。なら幼馴染と組んでもいいだろう。追放されそうな幼馴染なら猶更だ」
「本当に……良いの?」
強く期待するように雲川は鷹一を見た。
「ああ、組もう」
「う、うん……!」
驚愕・歓喜・安堵・勇気、様々な感情が混ざったような表情の雲川紫苑を見て、鷹一は内心で、少し早まったかなと僅かな後悔をした。