学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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試験考察、上位チームからの連絡

 

 飛山を見送った後、鷹一は自室に戻り、目を瞑り、新たな試練である【同盟結成試練】について思案した。

 

(……今後を考えると、どこかと組む必要がある。問題はどこと組むかだ。同盟の本来の意義は試合でマッチングしないことだ。そして、一年生のうちは解消できないという縛りを考えると、疑似的な協力関係を結べるのが同盟のメリットだ。たとえば、情報共有、技術共有、場合によっては、試合での作戦に相互に関わることで、自チームを優位にすることが可能だ)

 

 鷹一は、自身が所属する雲川チームに必要なモノを考えた。

 

(……雲川チームは足りない面が大きい。俺も作戦は得意ではない。作戦面で補佐してもらえる人員がいるチームだとかなり良い。あとは順位表と詳細成績のデータを上手く残しているチーム、端的に言うと、リーダーの記憶力が高いチームは有用と言える。他にも試合時のレーダーの状態を聞ければ、隠蔽度の予想がつき、より高い精度で他のチームの装備構成を予想できる。技術共有の面もありがたい。金崎や紫苑に技術を教えてもらえば、俺の手が空く)

 

 そして同時に、これらのメリットを受け取るのに必要な対価についても、考えを巡らす。

 

(まあ、これらを同盟相手から提供してもらうには、こちらも貢献が必要になるが……特定のチームを俺が集中的に狙うというだけでも、価値があるはずだ。特にAランク帯ならば、これはかなりの説得材料になる)

 

 そこまで考えて、鷹一は目を開いた。

 

(――ここまでが、四月までの同盟先の考え方だった。だが、五月の試練で状況が変わった。まずはZPの配布だ。短期的だが、Cランク以下のチームと組むメリットができたし、同時にAランクと組む際の交渉ネタができたとも言える。逆にBランクと組むインセンティブは低い)

 

 学園の通貨とも言えるZPは重要であることは鷹一も理解していた。またその重要さが生徒によって違うことも。

 

(ZP以外の面で考えると……今後の試練や試合で同盟相手が関係するならば、能力が重要だ。高い能力を持ったチーム、特に、雲川チームに足りない面を補える強いチームがいい)

 

 再度、鷹一は雲川チームの『弱さ』について思考を向けた。

 

(雲川チームの弱点は多いが……指揮・戦術・戦略・交渉、戦闘面だと射撃、特に重射撃能力が欠如している。そして何より魔力だ。上位陣は高魔力が多すぎる一方で、雲川チームは俺以外かなり低い。そして俺もそこまで高くはない。実際、雲川チームの総魔力量は、俺の分を足しても秀川一人に劣る程度だろう)

 

 鷹一は、思考を回しながらも、候補となるチームを頭に思い浮かべた。

 

(これらの条件を満たすチーム……Aランクチームだな。特定の上位チームと結ぶことは、別の上位チームとの関係が難しくなるが……しかし、試練の性質上、どこかと繋がる必要がある。八方美人は難しい。ならばむしろ一年間という長い関係を考えるなら、強いチームと結んだ方がメリットは多そうだな)

 

 いくつかのチームの名前が鷹一の脳内に浮かんだ。

 

(Aランクでまだ同盟を組んでいないチームだと……指揮・戦術能力なら舞島チーム、魔力重視なら高光チームか梶田チームか。星川チームは、リーダーの技量はかなり魅力に感じるが、チームの性質的には雲川チームにやや近い。雲川チームほどではないが、人数・魔力量にも少し難がある。補いあう関係としては難しいだろう。匂坂チームは俺が組みたくない)

 

 最後のチーム、特にそのリーダーに対する恐怖を思い出し、鷹一は小さく首を横に振った。

 そして、次に思い浮かべるのは同じBランクのチームであった。

 

(直近のインセンティブは低いが、Bランクだと、やはり麻倉チームが突出している。佐々木の魔力は絶大だ。それにもし同盟と協力して戦うならば、佐々木の援護というのは喉から手が出るほど欲しい。仮に同盟と協力して戦うことがなくても、佐々木とマッチングしなくなるというのは、かなりのメリットか…………ただ、どうにも佐々木頼りだな。戦闘力と魔力が一人に集中し過ぎている。バランスが悪いな。この学園は人数を重視する所がある。一人の突出した人物に頼る形は少しリスクがありそうだ。特に雲川チームも同じようなスタイルだしな。そうすると、他はマスタングを有する上、有力な駒が多い滝本チームか、比較的高魔力が揃っている壇上チームあたりか)

 

 試練の性質上、やや優先度が下がる同ランク帯に面々を軽く考察すると、鷹一は最後に下位のランクについて思考を向けた。

 

(Cランクだと天野チームが高魔力で戦闘力もある。おまけに天野は人柄もいい。紫苑との相性も悪くないだろう。Cランク以下のチームではもっとも同盟相手として組みやすいが……恐らく競争率も高そうだな。下位からしても上位からしても人気の相手だろう。それに、戦術や戦略面は未知数だ。天野チーム以外だと……比較的、交流があるのは秩父チームだが、魔力量でも戦闘力でもその他の面でも頼りないな。他のチームは……源内は優秀そうなリーダーに見えたが、チーム戦術がブレード特化だ。俺と役割が被りすぎる)

 

 そして、鷹一は、さらに下のチームにも目を向ける。

 

(Dランク以下は問題点が目立つチームが多いから避けたいが……敢えて挙げるなら木下、正木あたりだが、どちらも人数が少ないチームだ。弱点が雲川チームと被る。やはり、選り好みすると、思ったより候補が少ないな。もう少し条件を緩めるべきか。いや、それよりも早く、一度紫苑と話した方がいいか。もしかしたら、紫苑に直接同盟話を持ってくるリーダーがいるかもしれない。そうなれば――)

 

 そこまで考えたところで、鷹一の端末が鳴り響いた。通話である。

 鷹一は発信元が登録されている番号であることに気付いた。そしてその相手は――

 

「向こうから来たか」

 

 チームランキング3位のリーダー、梶田であった。梶田は、入学直後、鷹一を勧誘していた。勧誘自体は失敗したが、その時に、互いに連絡先を交換していたのだ。

 鷹一は数秒ほど考えてから、通話ボタンを押した。

 

「鷲島だ」

 

『こんにちは。鷲島。今日もいい天気ね』

 

 通話先の声を聞いて、すぐに鷹一は違和感を覚えた。

 

「お前は誰だ。梶田じゃないな。以前聞いた声と違う」

 

『正解よ。私は梶田ではないわ。耳が良いわね。貴方と少しお話がしたくて、電話したの。今いいかしら?』

 

「まずは名乗れ。それとなぜ梶田の端末を使っている。梶田はどうした」

 

『……ごめんなさい。ちょっと気が急いでしまったわね。私は反町、反町真理よ。梶田チームに所属しているわ。貴方と連絡を取りたかったけど、生憎、私は連絡先を持っていなかったから、梶田の端末を借りたの。梶田は元気よ』

 

 電話の相手の声は覚えていなかったが、しかし、反町という名前は、鷹一も覚えていた。四月の試合で優秀な面を見せていた生徒の一人であったからだ。

 

「そうか。お前が反町か。ところで、梶田に代わってもらってもいいか?」

 

 一方で、電話相手が反町である確証も無かった。また万が一だが、梶田が端末を奪われた可能性などを考慮したからだ。勿論、生体認証がある以上、勝手に他人の端末は使えないが、それでも梶田経由で状況の確認をしたい鷹一であった。

 

『声は憶えられてなくても、貴方ほどの選手に名前を憶えてもらっていたのは光栄ね』

 

「お前ほど優秀な生徒ならば自然と記憶に残る。A・Bランクの生徒の多くはお前の名前を記憶しているだろう。ところで、梶田に代わってもらえるか?」

 

 再度、鷹一は反町に要求した。

 

『…………、――、今、梶田は電話に出られる状態じゃないわね』

 

 少しの間の後、鈍い音が電話先から聞こえ、その後、反町の声が流れた。

 

「電話に出られないとは、どういう状態だ?」

 

『少し言いにくいことね。でも言わなければ、貴方は納得しなさそうだから、正直に言うわ。梶田はお腹を痛めてしまったの。それに数日前から、体調が悪いようで頭痛も酷いみたい。どういう状態か、察してもらえると助かるわ。とにかく、今、彼女は電話に出られる状態じゃないわ』

 

「……そうか。それは悪かったな。ところで、梶田はトイレに行く前に、生体認証で端末を開いて、お前に渡したのか? あと、お前の事を疑っているわけではないが、お前が反町だと証明する方法はあるか?」

 

『梶田は、生体認証を解除して私に端末を渡したわね。貴方が梶田の性格を知っているならば、彼女が不用意に人に自分の端末を預けることが無い、ということも理解できるはずよ。勿論、信頼できるチームメイトになら託すけれどね』

 

 反町の言葉に、鷹一は脳内で梶田というリーダーを思い出した。その姿と言動は、確かに自身の端末を貸さないであろうと思った。しかし、鷹一はこうも考えた。『梶田は、信頼できるチームメイトにも端末を貸さないだろう』、と。

 

「言いたい事は理解できる。ところで、お前が反町だと証明する方法はあるか?」

 

 またしても鷹一が問いかけた。

 

『そうね……、私が私であることの証明だけれど……私の顔は覚えている? もしくは、私が出場している試合の映像データを持ってるかしら? どちらかが満たせるなら、通話をビデオモードにすれば、私が反町である証明になると思うわ』

 

「お前の顔は覚えている。分かった。ビデオ通話に切り替えよう」

 

 鷹一は通話のモードを変更し、反町も即座にそれに応じた。それにより、端末には反町の容貌――小柄で、穏やかそうな美少女の姿が映った。その姿は、鷹一が試合で何度も見た姿であった。

 

『これで、満足してもらえたかしら?』

 

 そう言って反町は穏やかに微笑んだ。

 

「ああ。疑うような事をしてしまって悪かったな。それで、今日は何の用だ?」

 

『そうね。今日、直接会えないかしら? 貴方と会って直に話をしたいと思っているわ』

 

「それは構わない。だが、この電話ではできない類の話か?」

 

『できなくはないわね。ただ……直接会いたい理由は二つあるわ。一つは盗聴。貴方の端末や、今、貴方のいる場所が盗聴されている可能性を警戒しているわ。貴方としたい話は、基本的に他の人に知られたくないと思っている。そして二つ目、直接会った方が、お互いの利益になるからよ。なぜ利益になるかは、一つ目の理由から今は説明できないわ。これで納得して貰えるかしら?』

 

「ある程度は理解した。盗聴の警戒相手は、学園か、それとも他の生徒か? 前者であれば、どこで話そうが防ぐのは難しいように俺には感じられるが」

 

『前者もある程度は意識しているわ。でも、本命は後者よ。手段を選ばずに行動するならば、最も強い生徒やチームを盗聴・盗撮するのはおかしなことではないでしょ』

 

「興味深い考え方だ。だが、そうすると、お前も他のチームを盗聴・盗撮しているのか?」

 

 鷹一の鋭い視線が画面を貫き反町へと届いた。それを受けても、反町は微笑みを崩さなかった。

 

『手段を選ばずに、と条件を加えて言ったはずよ。貴方から見て、私は手段を選ばない人間に見えるかしら?』

 

「何とも言えないな。見た目からは、そのような人間には見えないが、全ての人間が、全て見た目通りの行動をするとは限らないだろう。そして、俺はお前のことはあまり詳しくはない。試合での戦闘スタイルからある程度、思考回路は分かるが、それは試合中の行動パターンが分かるだけだ。それ以外の面での行動はそこまで深くは読めない」

 

 これは鷹一の本心であった。反町は外見だけならば、穏やかそうな少女に見えた。だが、そのような存在は既に前例がある。匂坂キッカという名前の化物だ。見た目など全く参考にはならないのだ。他にも、鷹一は反町の言動に少し警戒しているところがあった。

 

『もしかして警戒されているかしら? ならば光栄ね。貴方ほどの選手に警戒されるのは、秀でた生徒の証明になるもの……ただ、安心してもらっていいわ。貴方や雲川チームを盗聴していないわ。これは誓ってもいいわ』

 

 この通話中、何度も質問に対して直接答えない反町の言葉に、鷹一は様々な可能性を考慮するが、それを表には出さなかった。

 

「……そうか。信じよう。そして、それが理由というわけではないが、先程の返事をしよう。――直接、会おう。凡そ、お前の要件は理解しているつもりだ。ただ、どこで会う? 俺のチームの部屋だとお前の考える盗聴リスクを無視できないだろう。どこか場所を確保するか?」

 

『もし、貴方に不満がなければ、私のチームの部屋に来て欲しいわ。こちらから話を持ってきた上に、呼びつけるようで悪いけれど、盗聴対策は十全よ』

 

「分かった。梶田チームの部屋だな? 何時会う? それと何号室だ?」

 

『時間は、できるだけ早くがいいわ。場所はAランクマンションの26階、3号室よ』

 

「……そうか、俺としては、今からでも可能だが、今からそちらに行くか?」

 

『助かるわね。それなら、Aランクマンションの1階のエントランスで待っているわ』

 

「分かった。今から向かう」

 

 そう言って、鷹一は通信を切った。

 そして、手早く準備を済ませ、Aランクの高級マンションへと向かった。

 

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