学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
鷹一は雲川とともに、個室のスペースが確保できる喫茶店――以前飛山に紹介された喫茶店に場所を移した。これからする話は、チームにおける今後の戦略に関わることであり、チームメイト以外に聞かせるわけにはいかなかったからだ。
「紫苑。まず、チームの目標について話したい」
「目標……?」
「そうだ。俺たちはどこを目指す? とにかく上を目指すというのも有りだが、現実的なラインで妥協するというのも有りだ。具体的には、俺たちは、五月以降のチームランクで待遇が決まる。その待遇表から目指すラインを決めるというのは一つの手だ。ちなみに俺は最低でもDランク、できればBランクを目指したいと考えている」
チーム戦の結果でチームランクが決まり、その結果が待遇に直結する。この学園における邪悪な実力主義であった。
「う、うん……待遇表は私も少し見たよ。個室が貰えるのがBランクからだよね……お風呂も大浴場が使えるし、私もBランクがいいかな……」
「一応、C・Dランクのチームは二部屋支給されるから、俺と紫苑だけのチームならば、Dランク達成で個室達成だ。まあ、現実的には他の選手を入れることになるだろうから、そうすると、確実に個室を確保するためには、六部屋支給されるBランクを狙いたいな」
「あ、そっか……二人だけのチームならDランクでもいいんだね……でも、お風呂はBランクの方が良さそうだよね……」
「収容区画の風呂に比べれば、Dランクの風呂の質はかなり高いと思うが……いや、そういう話ではないか。確かに、風呂に限らず、Bランクからはかなり待遇が良くなる。チーム支給のZPもかなり良くなるし、生活面において、この学園で困ることはなくなるだろう」
鷹一の言葉通り、学園内での生活水準が大きく向上するのがBランクであった。Bランクは質の高い施設の使用権が付与されるだけではなく、学園内の貴重な通貨であるZPの配給も多い。多くのチームのリーダーが狙っているランクであった。
「うん……Dランクでも普通に生活はできそうだけど……Bランクのお風呂を見ちゃうと、Bランクになりたいって思っちゃうよ……」
「分かった。リーダーのお前がそう言うなら、俺もそこを目指そう。よし、目標はBランク到達とその維持だ。Bランクになるには、チーム戦において上位20チームに入り維持する必要がある。そのためには、やるべきことが沢山あるが、できそうか?」
「え、……あ、うん、そうだよね……20番……入れるかな……?」
Bランクの達成条件――チーム戦での成績が上位11位から20位という条件を思い出して、雲川が不安そうに呟いた。
「現状では難しい。戦力も情報も足りないからだ。とりあえず、まずは情報だ。お互いにチームメイト同士になったから、入学成績を見せあおう。お互いの能力を正確に知って、できること、できないことをはっきりさせよう」
「う、うん……」
鷹一と雲川は互いに端末を見せあった。そして、すぐに互いに頭を抱えた。鷹一は雲川が想像以上に弱かったことに内心で頭を抱え、雲川は鷹一が強すぎてよく分からなかったことに頭を抱えた。
「とりあえず、紫苑のことは分かった。それとリーダーの権限である成績開示権だが、これはできればまだ使わないで欲しい」
「それはいいけど……なんで……?」
「できれば、チーム戦が始まった後、厄介な敵に使いたい。勿論、場合によっては、チームに採用するメンバーに使うのもアリだが、メインは敵調査に使う。これは敵を知るシステムだと俺は思っている」
「そ、そうなんだ……分かった。使わない。鷹一くんが決めた相手に使うよ……」
「いや、それは――本来なら紫苑が決めた敵に使うべきだが……いや、そうだな。分かった。成績開示のタイミングは俺が指示しよう。ただ、得られた情報は五月までは紫苑が暗記するしかない。だから、それは頑張ってくれ」
「うん……! 頑張る……!」
雲川は少し気合を込めたような表情をした。一方で鷹一はその表情を淡々とした気持ちで見た。雲川の性格を熟知していたからだ。
「それと、順位表も暗記してくれ。戦闘適性も筆記適性も両方だ」
「う、うん……が、頑張る……」
頑張ると言った傍から、雲川は雲行きが怪しい顔となった。
「もし厳しいようなら上位30人くらいだけでもいい」
「そ、それなら、何とかなるかも……」
「一応、全員覚えることを目指してくれ」
「うん……」
一瞬だけ息を吹き返した雲川だったが、鷹一の再度の言葉で、また沈んだ。
「それで、今週末から始まるチーム戦についてだが……第一試合、出場するか? 一応、準備が間に合わなければ第二試合から出る手もある。チームランクはチーム戦中に獲得した点数の合計で決まる。試合中は、加点のみで、減点はない。故に、第一試合から出た方が有利……というか、出る試合数が少ないほど不利になる。どうする? 出れそうか?」
「……えっと…………ちょっとまだ、全然覚えられてなくて、今週末だと……」
「そうか、分かった。初戦の結果は、メンタルにも影響を与えるだろう。第二試合から出場するのも悪くはない」
「じゃ、じゃあ、第二試合から、で……」
「よし、第一試合は観戦して情報を集めよう。実際のチーム戦の試合展開も見れるし、情報面では少し優位に立てるかもしれないな」
「そ、そっか……」
「あとは、人材の確保と装備構成、戦闘練習だ」
「ま、まだあるの……?」
鷹一の言葉に雲川が困惑の表情をした。雲川には頑張れる範囲があるのだ。
「この三つを話したら今日は終わりでもいい」
「そ、それなら……」
「まずは、人材の確保から話す。チーム戦は人数差がかなり結果に影響を与える。理由は単純に戦いは人数が多い方が有利という点と、もう一つは任務点の存在だ。チーム戦では、各参加生徒は一試合に一つ任務を与えられる。それを達成すればチームの点になる。どの任務も点は1点だ。だから、一試合に獲得できる任務点の上限は、チームに所属している人数になる。明らかに人数が多いチームが有利だ。そして、さらに言うと、チームは60チームあり、生徒数は240人、そして各チーム5人が上限だ。チームの数に対して生徒数が少ないので、どう考えても選手が足りないチームが出てしまう。おそらく選手はすぐ売り切れる。だから、紫苑、お前はリーダーとして選手を確保しなくてはいけない」
「確保って、つまり、チームに誘うってことだよね……」
「そうだ。Bランクを目指すなら人を確保する必要がある」
鷹一は内心で、最悪2人だけのチームでもBランク程度ならば、と思ったが、すぐに己惚れ過ぎかと自身を戒めた。
「う、うん……でも、どんな人を誘えばいいの? 勝てる人……? 順位表の上の方の人を選べばいいの……?」
「最低限の人格さえあれば、質よりも数を優先してもいい。ただ、もし可能ならば……ある程度の機動力があって、魔銃――アサルトライフルタイプの魔銃を使える魔力量があり、さらに最低限の人格と戦術理解力が欲しい。これを満たせる人材ならば、どのような状況でも戦闘に貢献できる」
鷹一が言及した魔銃は魔力を用いた戦闘で最もよく使われる武器だ。銃という人類にとって革命的な武器は、魔力を用いた戦闘であるチーム戦においても重要な存在であった。ただ、欠点として、大型の魔銃ほど消費魔力が大きかった。鷹一が言及したアサルトライフルタイプであれば、ある程度の魔力があれば十分ではあるが、それでも生徒の中には条件を満たさない者もいる。
「う、うん……? 機動力と魔力……え、でも順位だけだと分からないよ。成績開示は使っちゃダメなんだよね……?」
「紫苑は、人を見た時、歩き方とか気にするか?」
「え、……どうだろう? 気にしないと思うけど……」
雲川は鷹一に問いかけが分からず困惑した。
「そうか。ちなみに、相手を見ただけで魔力量が分かったりするか?」
「しないよ……普通分からないよ……」
まるで当然分かるだろうと言いたげな鷹一を見て、雲川が無理を言うなとばかりに呟いた。
「そうか。人材は俺の方でも探そう。ただ、紫苑のチームだ。最終的な決定は紫苑がするべきだろう。それと、たぶん紫苑は仲間には『納得できる相手であること』を求めるはずだ。だから、人格面でも、紫苑が『仲間として良い』と思った相手ならば、能力に関係なく誘っていいと思う。紫苑が認めた時点で最低限の人格は保証されるだろうからな」
「……わ、分かった……私も頑張って、話したり、誘ったりしてみるね……」
「よし。あとは装備と戦闘練習の件だが……これは人材が集まったらだな。チーム戦のために、何か戦術を用意する必要がある。ただ、どんな戦術が可能かは集まる人材と装備構成で決まる。だから人材が一通り決まったら、戦術を決めて、それに見合った装備構成を決めよう。魔力の大きさや本人の性格や運動能力によって適性のある武器はそれぞれだからな。装備が決まったら、実際にそれを運用するために戦闘演習を行う。戦闘演習はZPを使って密閉訓練室を借りれる。密閉訓練室では、実際のチーム戦が行われる仮想空間の再現も可能だ。そこで練習をして、本番に備える。いいな?」
「う、うん……が、頑張る……」
そうして、第一回雲川チームの作戦会議は終了した。
なお、鷹一は喫茶店での費用――1000ZPを超えてしまう出費に僅かに眉を顰めたが、すぐに情報の秘匿のためと割り切った。