学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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雲川チームと梶田チーム

 

 そうして、五月四日、梶田・雲川チームの同盟締結の日がやってきた。

 この日は、両チームのメンバーの顔合わせということもあり、雲川チーム3人、梶田チーム5人全員が一部屋に集まることになった。

 集合場所はAランク高級マンション、梶田チームの所有する一室であった。

 

 鷹一は、雲川・金崎両名を引き連れてAランク高級マンションのエントランスを潜った。淡々と進む鷹一に対して、初めてこのマンションに訪れた雲川と金崎はどこか及び腰であった。

 事情を知らない人が見れば、間違いなく、動じないリーダーと、臆病な選手二人の組み合わせと誤解しただろう。

 勿論、この高級マンションの住人で、鷹一が選手であることを知らないような低レベルの生徒など当然いないので、このような誤解はありえないのだが。

 

 事前に反町に連絡していることもあり特に障害なく梶田チームの支配する26階へと、鷹一たちは辿り着いた。

 エレベーターが開くと、のほほんとした顔の種村が待っていた。

 

「おお、来たね。三人とも、今日はよろしくね」

 

「ああ、種村、よろしく頼む」

「う、うん……種村さん、よろしく……」

「あ、あ、ど、どうも、よ、よろしく……!」

 

 鷹一・雲川・金崎と三者三様――鷹一は自然に、雲川は少しだけ不安そうに、そして金崎はかなり緊張しながら、種村に応じた。

 種村は後者二人をそれぞれ見て、両手を前に出した。

 

「まあ、まあ、雲川さん、金崎君、そんなに緊張せずに。まあ、まあ、気楽に、気楽に」

 

 そして、ぼんやりと、のんびりとしたように言葉を発した。

 

「すまない。種村。うちのチームは俺も含めて人見知りでな。今日は少しぎこちなくなるかもしれない」

 

「お、お……? 人見知り……? まあ、雲川さんはちょっとそういうところがあるかもね。金崎君は、人見知りっていうより、なんか、アレかな。高魔力の人が苦手とかじゃないかな? あと、鷲島君は流石に人見知りは嘘でしょ……」

 

 鷹一の言葉に最初は驚きつつも、種村は三人それぞれについて自論を述べた。

 

「いや、本当だ」

 

「そんな感じには見えないし、実際、反町も梶田も、そんな風には言ってなかったかな。というか、むしろ、二人とも、鷲島君の覇気にビビってたよ」

 

「覇気? 俺がか……?」

 

「うん、覇気あるね。なんか、こう、強い人特有のオーラ的なモノがある。魔力はあんまり無さそうだけど、戦ったら勝てない感がある。というか、私は相性的に魔力とか関係なく勝てないんだけどね」

 

「俺はお前とはあまり戦いたくないがな。高魔力なだけではなく、技術力も高い。梶田チームは優秀な生徒が多いが、特に技術力という意味ではお前と一之瀬は頭抜けている。恐らく、全生徒の中でも上位になるだろう」

 

 淡々と、それでいて正直に鷹一は思ったことを口にした。

 

「おお……リップサービス的な感じなんだろうけど、鷲島君に褒められると嬉しいね。『あんたほどの実力者が……』ってやつだね……おっとっと、なんか話し込んじゃうね。うん。鷲島君とは初めて話すけど、思ったより全然話しやすい人だね。もっと怖い人だと思ってたよ」

 

「そのように評価されているのは、俺もなんとなく理解している」

 

「え、そうなの……? それなら、もっと柔らかい感じで喋ったりすれば……? その方が友達とかできるよ」

 

 鷹一の言葉に種村は少し困惑しつつも助言を口にした。

 

「興味深い助言だな。今後の参考にしよう」

 

「その答え方、やらないやつでしょ……」

 

 種村は呆れるように呟いた。

 

「そう聞こえたか?」

 

「え、あー、まあいいや、うん、ここで話し込んじゃうのも良くないしね。うん、ではでは、私が梶田チームの部屋まで案内しましょう。まあ、案内もなにもそこの部屋なんだけどね」

 

 そう言って、種村はすぐ近くの部屋を指差した。

 チラリと鷹一は雲川と金崎を見た。

 

(二人とも、さっきよりかは不安や緊張が和らいだな……種村はチーム戦で優秀なだけではないな。まだ梶田や反町が少し心配ではあるが、種村がいれば、紫苑や金崎の負担はだいぶ減りそうではあるか)

 

 鷹一が思案する間に、種村は扉を開けた。彼女に案内されるまま、三人は部屋へと入った。

 部屋の中には四人の少女が待ち構えていた。

 まず、目を引くのは、無駄に豪華な椅子に腰かける少女であった。気が強そうな顔立ちに堂々と腕を組み、そして、入室してきた三人を鋭く睨んだ。雲川は素早く目を逸らした。雲川の『ほんわか危機管理レーダー』がエマージェンシーを発令したからだ。

 

(怖い人がいる……この前の滝本さんよりずっと怖い……ううん、この学園で会った人で一番怖いかも……あ、でも青井さんも……でも青井さんは笑ってたし、この人の方が怖いかも……)

 

 また、同時に、金崎も視線をその少女から逸らした。彼女が持つ強い圧に金崎もまた屈したからだ。

 

(なんか、凄い圧がある……やばい、なんか目を逸らしちゃった……ていうか、何で、こんな椅子豪華なんだ? Aランクの備品ってあんな王様が座るみたいな椅子なのか?)

 

 一方で、この気が強い少女――Aランク3位のリーダー梶田霰にとって、雑魚二人などどうでも良かった。彼女にとって重要なのは鷹一であった。じっと、少女が鷹一を鋭く睨んだ。鷹一は淡々と彼女を見返した。

 

(やはり、紫苑には梶田は厳しかったな。それに金崎にも厳しかったか……まあ、ここは予想できていたことだ。種村と一之瀬もいるし、二人の心情は何とかなるだろう)

 

 梶田について考えつつも鷹一は、梶田のすぐ隣に控える美少女――柔らかな表情を浮かべる反町を見た。

 反町は鷹一と視線が合うと、微笑んだ。

 

「鷲島、それに、雲川、金崎。今日は来てくれてありがとう。知っているかもしれないけど、一応自己紹介するわね。私は、反町真理、梶田チームに所属しているわ。一応、梶田チームの作戦とかを考えたりしているの」

 

 強い圧を持ち豪華な椅子に腰かける梶田、そしてその梶田のすぐ隣に控える穏やかで知的そうな反町。まるで王とそれを支える軍師のような二人組であった。

 

「う、うん……よろしく」

「あ、ああ、えっと、よろしく」

 

 梶田の威圧感を感じつつも、雲川・金崎は、反町の柔らかい雰囲気のお陰で何とか言葉を発することができた。

 

(良かった……この人は優しそう……? …………? …………? 優しいよね……? あれ……? 笑ってるよね……? 目もちゃんと笑ってるよね……? うん、笑ってる。優しい人のはず……? あれ……? でも、この人なんか、変……?)

 

 雲川はちらちらと反町を見た。反町はただただ微笑んで雲川を見つめ返した。

 なにか釈然としないものを雲川は感じた。

 一方で反町もまた内心で苦笑した。

 

(やっぱり、私は、雲川とは相性が悪いわね。本能的……いえ、環境的なものかしら? まあ、どちらにしろ、その辺りは種村に任せましょう。金崎は……雲川よりは上手く関われそうだけれど……結局、一之瀬が関わった方が速いわね。無理に近づいて嫌われちゃうのも良くないし、私は素直に鷲島に集中ね)

 

「それで、こっちの、むすっとしているのが梶田よ。よろしくね」

 

 そう言って反町は、梶田の髪を撫でた。梶田は反町の手を乱暴に払いつつ、口を開いた。

 

「Aランク三位のリーダー、梶田霰よ。戦闘適性順位は8位。まあ、でもアレは所詮遊びだから、本来の順位はもっと上よ。匂坂と同じくらいとでも思っておきなさい。あと、あんたたち三人に大事なことを教えておくわ。私の好きなタイプは私の命令に服従できる奴、嫌いなタイプは私に反抗する奴。以上よ」

 

 言葉と共に、梶田は冷たく微笑んだ。

 

 梶田の態度に対して部屋内の人物はそれぞれの反応を示した。

 

 雲川は恐怖を感じたため鷲島の背中に隠れ、金崎もまた梶田の圧に屈し視線を逸らした。

 一方で、鷹一はいつも通り、淡々と梶田を見返した。

 梶田と鷹一、二人の超人が発する圧が衝突し、室内の緊張を高めた。二人の様子を反町は微笑んで見守り、一之瀬は二人の発する圧に驚きつつも一拍置いて種村を見た。そして同時に種村が動いた。

 

「おい、おい、梶田。お前、それちょっと態度悪いぞ。これから一緒に頑張るんだから、そういう態度じゃ、だめだろ……」

 

 ぼんやりと、それでいてどこか呆れを含んだ声で、種村は諭すような言葉を梶田に向けた。

 梶田が視線を鷹一から外し、種村へと向ける。それに合わせて、鷹一もまた視線を種村へと向けた。部屋内の圧が大きく下がった。

 

「この程度の言葉と圧で沈む程度のチームなら、『一緒に』頑張るのは無理でしょ。せいぜい、私の『下で』頑張る、でしょ? そんくらい、あんたも分かってるでしょ、種村」

 

「だから、お前、そういう風にすぐ攻撃的になるから、お前は、アレなんだぞ……というか、『一緒に』頑張るのはもう決めたことだろ。お前も、それに関しては、納得したんだから、今更、話を変えるなよ。雲川さんたちが困っちゃうだろ……」

 

「話は変えてないわ。私は、あの時、『私が強いと認められる相手なら』と言ったでしょ。私と、目も合わせられないような生徒が、認めるに足る存在になると思う?」

 

 そう言って、梶田は顔をしかめた。

 一方で、種村もまた、内心で少し苛立った。

 

(お前、それ、前に説明しただろ……鷲島君一人でお釣りがくるんだよ。てか、こっちは相性的に鷲島君はキツいんだって……忘れてる、わけじゃないよな……いや、これは、むしろ……)

 

 そこまで考えて、種村は察した。梶田は同盟を嫌がっているのではない、ただ単に機嫌が悪いのだと。

 

(コイツ、へそ曲げると、時間かかるんだよな……今は、さっさと同盟結びたいし、梶田の機嫌を取ってる暇は無い。仕方ない……禁術を使うか……)

 

 種村は、反町へと視線を向けた。禁術、それは反町という劇薬を使うという手段だった。

 

「反町、お前、梶田担当なんだから、ちゃんと機嫌管理しといてよ」

 

 不満そうな種村に対して、反町は穏やかに微笑んだ。

 

「それは幼馴染である貴女の役目よ」

 

「いや、お前が最近、謎実験に梶田をつきあわせたせいなんだから、お前が責任とれって……」

 

「梶田の機嫌を取るのは難しいわ。まさか醤油をつけたプリンで誤魔化すわけにはいかないでしょう」

 

 そう言って反町は雲川の方を見て、穏やかに微笑んだ。

 急に視線を向けられた雲川は、少し驚いたものの、その視線に敵意がなく、穏やかなものであったため、すぐに心を落ち着かせた。

 

(反町さんは、そんなに怖い人じゃないのかも……? さっき、ちょっと変な気がしたけど……気のせいかな……? 実は匂坂さんみたいな人なのかな……? そうだといいな……)

 

 雲川が呑気なことを考える一方で、種村は焦った。雲川に行った大罪が露見することを恐れたのだ。

 

「おい、ばか、やめろ。それは墓の底まで持って行く約束だろ」

 

(私が雲川さんの中で極悪人になっちゃうだろ)

 

 じっと、圧を込めた視線を種村が反町へと向けた。種村は、プリンをウニと偽ったことに対して、罪悪感を持っていたからだ。

 圧を向けられた反町は、穏やかな笑みのまま、視線を一瞬だけ鷲島へと向けた。そしてほんの僅かな時間、意味深に口元を歪ませた。しかし、それはすぐに元へと戻り、再び種村へ穏やかな笑みを向けた。

 

「墓の底……それは言い得て妙ね、いえ、むしろ、瓢箪から駒、かしら? どちらにしろ、鷲島の前で、その言葉を選ぶのは中々センスがあるわね」

 

「鷲島君……? いや、騙されんぞ。お前、今、適当な事言って煙に巻く気だろ。というか本当、お前ら、もっとちゃんと真面目にやれ。雲川さんたちが来てるんだぞ。梶田はちょっとは愛想良くしろ。反町は意味不明な事言ってないで、ちゃんと同盟の話をしろ。あと、石井、お前、いつまで本読んでんだ。お前、今、同盟が決まる大事なタイミングなんだから、本をしまえ……!」

 

 普段のほのぼの顔を引っ込めて、種村はきりりとした表情で、チームメイト三人を注意した。

 注意された三人のうち、二人は種村の言葉を無視し、片方は不機嫌な顔を続け、もう片方は本を読み続けた。一方で、反町は種村の言葉に従うことにした。少なくとも表面上は。

 

「そうね。ごめんなさい。三人とも。お客様の前でするような話ではなかったわね。ただ、言い訳をすると、梶田も私も少し緊張しているの。最強の選手の前だからかしら? 緊張でおかしなことを口走ってしまったかもしれないわ。許してくれると嬉しいわね」

 

 そう言うと、反町は、穏やかな笑みに少しの罪悪感や謝罪の気持ちを組み込み、雲川チームの三人を順に見た。

 鷹一は一瞬だけ雲川を見た。雲川は困った顔をしていた。

 チーム代表し、鷹一が言葉を返すことにした。

 

「いや、それは構わない。そちらにも色々と事情はあるだろう。同盟条件でだいぶこちらに合わせてくれた。多少の事はこちらも配慮するつもりだ。ただ、一つ聞いておきたいが、反町が事前に言った条件で――つまり限りなく対等で互恵的な関係を両チームの間で結ぶ、というのは代わりないな? 梶田も、それで否はないな?」

 

 じっと、鷹一の強い力を持った視線が梶田に突き刺さった。梶田もその力に負けないように、強く睨み返した。二人の超人が持つ覇気が互いに衝突した。

 

 

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