学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
梶田チームの面々と別れた後、鷹一は反町との約束を済ませていた。
つまり、反町に貰った、『防諜グッズ』を雲川チームの各部屋で使用したのだ。
幸いにも、盗聴器の類は発見できなかった。
その事に鷹一は少しだけ安心しつつも、今度はこの『防諜グッズ』の置き場所に悩んだ。
(これそのものが盗聴器という可能性も完全にゼロとは言い難いな……一応、誰も使わない空き部屋に入れておこう。その上で……毎週末に各部屋で使用すれば、反町への義理は果たしたと言えるだろう)
義務を終えた鷹一は、少しだけ休息をとった後、今後の戦略――チーム間の謀略、チーム戦における戦術、雲川・金崎の育成法、自身のトレーニングに関してなどを考え始めた。
数十分ほど、時間が経過した時、鷹一の端末が鳴り響いた。
相手は、Aランク2位のリーダー、飛山龍華であった。
(……飛山か。用件は何だ……? いや、まさかな……)
鷹一は飛山が通話を行う理由について僅かに心当たりがあったが、すぐに否定した。それはあまりにも早すぎる行為であったからだ。
首を小さく横に振った後、鷹一は通話に出た。
「鷲島だ」
『おお~! どうも! どうも! 飛山でーす! 大邪神様、お元気ですか~?』
「ほどほどにな。お前はどうだ?」
『ほうほう。元気そうで何より。まあ、でも元気なのは納得かな。Aランクの、それもつよつよの梶田さんの所と組んだんだもんね。いやー、流石ですね~。ちなみに私はあんまり元気じゃないです。ライバルの梶田さんのところに、鷲島君のサポートが入ると思うと、いやー、もう今からでも胃がキリキリと痛むよ~』
どこかふざけたような飛山の言葉を聞いて、鷹一は有り得ぬ予感が事実となったことに、驚きと迷いが脳内を巡った。
――雲川チームと梶田チームは正式の同盟を結んだが、それはまだ誰にも告知されていないからだ。
システム上、他チームへの正式な告知は翌日になるのだ。
それなのに、まだ同盟を組んで数時間と経っていないのに、飛山はどういう訳かそのことを掴んだのだ。そして、今、鷹一へ通話をかけた。そこから考えられる意味を考察し、鷹一は警戒心を強めた。
「なぜ、梶田と組んだと思う? まだ雲川チームがどこと同盟しているかの告知は出ていないと思うが?」
『ふっふっふ、こう見えて、私は、『耳』がいいんだよね~』
どこか得意げに飛山が喋った。一瞬、鷹一が無言になった。脳内で、盗聴という単語が過った。
鷹一が僅かに無言になったことから、何かを読み取ったのか、飛山は少し慌てたように言葉を続けた。
『あ、ちなみにだけど、別に盗聴してたりしないから、そこは心配しないでね。というより、その辺りは、反町さんがちゃんと警戒してるかな?』
飛山の言葉は鷹一を安心させようとした言葉だったが、それは逆効果であった。盗聴を警戒したことも、そして反町の行動も飛山には筒抜けだったからだ。
(これは、敵わないな。戦闘ならまだしも……他の部門では俺は飛山という生徒の足元にも及ばないようだ……少し調子に乗っていたな。どこか飛山のことを読み切っていたような自惚れがあった……)
「……、……なぜ、分かったか教えてもらえるか? 同盟先の件も、盗聴を警戒したことも、反町の考えを読めたことも」
騙し合いでは勝負にならないと悟った鷹一は、正直に飛山に問いかけた。
『……、――残念ながら、企業秘密ですっ……! 知りたければ、飛山龍華の好感度を上げてください……! だいたい80くらいになると秘密が公開されるよ!』
僅かな無言の後、飛山が明るい口調で言葉を紡いだ。
「今いくつだ?」
『難しいところですが~、実は、私、鷲島君に対して、結構好感度高くて、今、70くらいかな~。もうちょっと、もうちょっとで、秘密話しちゃいますよ……! どうでしょう、鷲島君、飛山龍華の好感度頑張って上げていきませんか?』
明るくノリノリで語りかけてくる飛山であったが、一方で鷹一は冷静に言葉を見極めていた。
(70は嘘だな。せいぜい10か20か、いや、飛山のことだ、0ということも十分にあり得るな)
「上げる条件を教えてくれ」
『同盟を組む……! と言いたいところですが、私はアリシアと、雲川さんはもう梶田さんと組んじゃってるから難しいね。うーん、どうしよう、あんまり考えてなかったなー。
ん~、じゃあ、この前の招待券でどうかな? この前、鷲島君は渋ってたけど、Aランクの高級スパの招待券上げるから一緒に行こうよ。うん、適当に思いついたけど、いいかも、いいかも。うん、うん、一緒にスパを楽しもう! それで互いに好感度を上げよう……! どうでしょうか。今なら、オマケで、何で私が雲川さんと梶田さんの同盟に気付いたか教えちゃいます……!』
飛山の明るく、それでいて表面的にはふざけているように感じられる言葉を聞いて、鷹一は僅かに悩んだ。
そして、決断した。
「それは……、……そうだな。分かった。招待券を受け取ろう。ここまでお前に譲歩させた以上、受け取るべきだろう」
『うぉぉーー! 鷲島君の好感度が上がる音が、聞こえる~! ではでは、報酬というわけではないですが、教えます。とは言っても、実は全然大したことじゃないと言いますか、多分聞いたら『そんだけかい!』とガッカリするような内容なのですが、本当に聞いちゃいますか……?』
「ああ、教えて欲しい」
『おお……思ったより真剣な声……どうしよう。いや、教えるのは良いんだけど……正直、今回の私の動きって、あんまりレベルが高くないから、鷲島君に『詐欺だ……!』と訴えられないか心配で……というか、招待券受け取らないと思ったんだけど……いや、まあいっか。さっき条件付けたので話しちゃいます。実はですね……』
そこで、飛山は言葉を切り、どこか様子を窺うように黙った。
しかし、鷹一が無言で飛山の言葉を待つと、飛山は諦めたように言葉を続けた。
『言いにくいんだけど……実はそんなに確信はなくて、適当な事言ったら偶々当たっちゃったんだよね……勿論、情報とかが全くなかったわけではなく、まあ、霊感みたいなのはあったかな。
あんまり詳しく言うと、私の手の内がバレちゃうから、秘密だけど……まずそうだな……とりあえず、考察はしてたんだよね。鷲島君が組みたいチームはどこかなー、っていうのと、逆に鷲島君を欲しいチームはどこかなー、っていうのだね』
そこで飛山は再度言葉を切るが、無言で聴き入る鷹一に観念して、再度言葉を続けた。
『……それで色々考えて、
で、色々考えたら、梶田さんチームと鷲島君は、十分組む条件が揃ってることに気付いちゃったんだよね。あとは、まあ雲川さんチームと梶田さんチームを警戒してたら、なんか仲良さそうにしてたから、組むんだなーって思った感じかな。どうかな、ちょっとぼんやりしすぎかな? ぼんやり策士の飛山龍華です……!』
どこかふざけたような飛山の言葉を聞きながら、鷹一はあることが気にかかった。
「そうか。教えてくれて、ありがとう。ただ、いくつか気になることがある……雲川チームと梶田チームの同盟について考察をしたのは何時だ?」
『あ、そこ聞いちゃう?』
鷹一の指摘を受けた飛山は、まるで『聞かれたくない所だった』とばかりの声音で返した。
「ああ。推測になるが、それを聞くと俺はだいぶ納得できるはずだ。だが、そうだな、この質問は一種、お前の手の内を聞く質問ではある。答えたくなければ別にいい」
『んー、んー、そう言う言い方をするということは……まあいっか。たぶんバレちゃってるから正直に言うね。実は、試練発表の時、鷲島君と話をしている時に考えたんだよね。
んで、実は、あの後、Bランクマンションのエントランスを張ってました。そしたらそしたら、何と何と、鷲島君がAランクマンションに来て反町さんに会っているではないですかっ! 主人の浮気を目撃した家政婦の気分だったねっ……! それから梶田チームの皆と雲川チームの皆をほどほどにマークしたかな。凄い勢いで交友関係作ってるから、『あちゃー、鷲島君取られたー』ってなったよ』
「やはり、そうだったか……張っていたのは、お前か、それとも道合か?」
飛山の言葉に納得した鷹一は追加の質問をした。
この質問は、鷹一としては、ただの確認であった。
しかし、この質問は飛山には鋭く刺さった。
『ほよ? どうしてここで道合さんの名前が?』
「道合ならば、それが可能だと思ったからだ。それに、お前は道合は信頼しているし、道合もお前を信頼している。正直、俺から見ると、零とお前よりも道合とお前の方が絆が強く見えるな」
どこか惚けたような飛山の言葉に対して、鷹一が鋭く打ち返した。
『ほほうー、道合さんを高く評価するとは、お目が高いっ……!』
「道合はチーム戦における強さは佐々木とさほど変わらないだろう。注目するのは当然だ」
『うぉおっ……佐々木君レベルですか。なるほどなるほど……ちょっと想像以上に道合さんが高く評価されてて、ビックリ半分納得半分かな。ちょっと今の大邪神様のコメントは道合さんに伝えておきます……! 道合さんは大邪神様に敬意を払っているので、無茶苦茶喜ぶと思います。私もリーダーとして嬉しいです……! 大邪神様……!』
(質問を流されたな……張っていたのは飛山ではなかったということか……? 飛山か道合か……伊舎堂・針谷という可能性もあるか……? いや、それはそこまで重要なことではないが、いや、重要なことではないはずだが……飛山が答えなかったことを考えると、飛山に取っては触れて欲しくない点だったか。道合の力量を読まれることを警戒している……?)
そこまで考えた鷹一は内心で首を横に振った。
(いや、それは流石に無いか。道合ほど優れた生徒を今更隠すのは不可能だ。分からないな。恐らく見えている俺と飛山では視座が違う。あまり考えても仕方がないし、変に知りすぎて、飛山の敵になるのは危険か。ここは勘ぐらない方がいいな。幸い、恐らくだが、飛山は俺と一定以上の関係を維持したいはずだ。こちらが無理をしなければ、短期的には飛山が敵になることはないはずだ)
思考を加速させつつも、鷹一は飛山に対して言葉を作る。
「そうか、それは良かった。俺も、できればお前とは敵対したくない。お前は単独で見ても純粋に能力が高いし、チーム単位で見ても脅威だろう。俺としては、今後もある程度以上には友好的でありたいと思っている」
『おお~、大邪神様に褒めてもらえて、凄く嬉しいです! 私も、鷲島君とは仲良くしたいよ~。ところで、ところで、招待券に話を戻すけど、いつ行く? 今日もう行っちゃう? 私はこの後予定は……まあ、ないこともないけど、鷲島君のためなら、予定全部空けられるから、全然この後すぐでも大丈夫だよー!』
飛山が明るく賑やかに振る舞う一方で、鷹一は警戒心を持ちながら思い悩んだ。
(今からか……予定的には問題は無いが……どうも飛山のペースに巻き込まれ過ぎている気がするな。それに、梶田チームと懇談会をした直後に、梶田チームの仮想敵とも言える飛山と高級スパに行くのは……梶田・反町・一之瀬あたりに露見すると今後の同盟関係に支障が出る可能性がある)
「誘いは嬉しいが、お前の予定に無理やりねじ込むのは、後が怖いな。それに、俺も少し予定がある。できれば、後日にしてくれるとありがたいが……」
『およよ? 私の予定は大したことじゃないから、全然ねじ込んでくれていいんだけど……鷲島君の予定が気になるな~。もしかして、蓮さんとデート?』
想定外の飛山の問いかけに鷹一は一瞬思考が止まった。
(……、……この質問、どういう意味だ……?)
「なぜ、蓮の名前が出る? 俺は特に、蓮と交際してはいないが……そのような噂でもあるのか?」
『いや、だって、蓮さんからも招待券貰ったでしょ? だから、てっきり、もう蓮さんと一緒に行く約束してて、それが今日この後なのかなーって思ったんだよね。あれ? 違うかな?』
飛山の言葉に鷹一は驚愕と、そして少しの恐怖を覚えた。
なぜなら、鷹一は、この休み期間中に、蓮と交流を持ったのだ。そして、その交流の結果、蓮から招待券を貰うことになってしまったのだ。鷹一としてもやや不本意な経緯ではあったが、断ることができず招待券を受け取ることになったのだ。
(なぜ、俺が蓮から招待券を貰っていることを知っている……? あの時、周囲には誰もいなかったはずだが……蓮が告げたか? 俺と他のAランクリーダーとの関係を裂くため……蓮の能力や蓮チームの現状を考えると有り得なくはないが、蓮の人格とは合わない気がするな……それに、もしそうならば反町が何か言ってきそうではある)
「……飛山。俺は、先程お前が言った通り、梶田チームと同盟をすることになっている。正直な話、他のAランクリーダーと友好的だと思われると、梶田との関係に響く。勿論、俺、個人としては、お前のような優秀なリーダーとは関係を維持したいが、そこにさらに他のリーダーとの関係も疑われると、あまり梶田も良い顔をしないだろう。そういった噂はしないで貰えると助かる」
『んー、梶田さんとは表側の同盟で、本命は蓮さんってことなの? ん、ん、んー? あれ、もしかして、私の読み違いだったかな。あれ? もしかして、本命は蓮さんじゃなくて、青井さん? それはちょっと、いや、かなり困るかな。んー、んー、あれ、ちょっと好感度チェックしたいんだけどさ、鷲島君的に、一番好感度が高いリーダーって誰? あ、雲川さんは除いてね』
やや困った声音で飛山が尋ねた。普段から明るい飛山にしては珍しい声音であり、それが、鷹一に思考をより加速させた。
(……今の質問は……不味いな。蓮との関係を誤魔化そうとしたせいで、余計な誤解を与えたな……飛山相手に、こういった面で勝てるとは思っていないが……正直に話すべきだったか……? いやだが、以前招待券を断ったこともあるし、蓮との関係は現状のAランクの環境を考えると開示しにくいのも事実……それに、飛山相手に全ての情報を差し出すのも、情報面で雲川チームが飛山に支配されることになる。反町との関係もあるし、それは避けなければならない)
蓮、飛山、反町、様々な人物との関係を踏まえた上で鷹一は思考を重ねる
(――いや、だが、飛山に警戒されるのはそれ以上の危険もあるか……? 飛山に睨まれるのは避けたいが……だが、蓮との関係は可能なら伏せたい……、一度切って反町に相談するか? いや、だが反町にも蓮・飛山と関係があることを伝えるのもリスクか……?)
「待て。飛山、何か誤解がある。どうも、俺は警戒されているようだが、お前のような雲の上のリーダーが警戒するような存在ではない。そこをまずは、はっきりさせたい」
鷹一は真剣な気持ちで言葉を紡いだが、それは飛山には届かなかった。
なぜなら、『自身が警戒されるような存在ではない』という鷹一の言葉は、あまりにも真実からは遠かったからだ。これほどまでの怪物、どうして無警戒でいられようか。
『ん~。いや~、私もあんまり鷲島君を困らせたくはないんだけど……ちょっと大事なところで……あー、いや、これは私が考えすぎだったかな? とすると……んーっと、ごめん、やっぱり好感度チェックはしたいかな。誰が一番? 教えてくれたら、飛山龍華の好感度が100になります……! 100になると、なんと、頑張って鷲島君を困らせないような話術を身に着ける努力をします……! お願いします、鷲島君の好感度知りたいです……! 大邪神様に好かれる女子の秘訣を教えて下さい……!』
鷹一の真剣な声から、飛山は考えを改め、声を、いつものような明るくどこかふざけた調子のものに戻した。
「……、……、…………信じてもらうのは難しいと思うが……そうだな、正直に言おう。俺が雲川を除いて、一番好感を持っているリーダーは……源内だ。次点で、飛山だな」
これは殆ど正直な感想であった。
鷹一にとって、気楽に接することができる源内は、リーダーの中ではかなり好感度が高かった。また源内が比較的善良かつ優秀な人物というのも評価を上げる点であった。善良さなら秩父が勝り、優秀さなら蓮・飛山が勝った。しかし、秩父は能力に甘い面があり、蓮は環境的に一定の距離を保ちたい相手であり、飛山は気楽に接しにくい相手だった。
『うぉ!? 予想外の人が出て来た。まさかの男子! 女子じゃなかった……! 源内君に負けた……!? でも、二位なら、満足……! 女の子の中では一位ってことでいいかな? あ、でも雲川さんを除くから二位かな? でも蓮さんや青井さんよりは上ってことかな? そうだと嬉しいかな』
「そうなるな」
『うぉぉーー! よし、二位をゲットだ~! でもー、源内君かー。確かに、なかなか優秀なリーダーだし、分からなくも無いけど、ちょっと意外かな。鷲島君は、もっとお堅い感じの人が好きかと……あ、でも雲川さん、源内君、私、だと全員緩いね。緩い感じの子が好きなのかな? あれかな、自分に無いモノを求める、みたいな? 五条さんとか好きだったり?
あ、でも、源内君は戦闘スタイルは鷲島君にちょっと似てるよね。ブレード戦が上手いし、シールドも結構上手い。銃撃戦の中、接近する技術もある。言葉にすると、鷲島君と源内君ってかなり似てるね。見た目の印象とかは全然違うけど』
(五条は別に好きではないな)
何となく気になった点について、鷹一は内心で感想を述べた。
「そうだな。俺と源内は戦闘スタイルが近い。そう言った面でシンパシーを感じたということもありそうだな」
『うーん、なるほど……あ! でも、私もブレード使い兼アクセル使いだから、鷲島君と戦い方がちょっと似てると思うんだけど、どうでしょうか、ランキング更新しませんか? 一位の高みに至りたいです……!』
「お前はかなり優秀だし、人格面でも、好感を抱いている面はあるが……正直に言おう、お前は優秀すぎる。それにAランク2位のリーダーだ。どうしても警戒してしまうし、警戒しなくてはいけないのだろう。お前の優秀さと立場がどうしても、そうさせてしまうんだ。これは俺に限った話じゃない。恐らく多くの生徒はそう思っている。気が休まらないんだ。
源内は、そういったモノをあまり相手に感じさせないタイプだ。一緒にいると気が休まる。そこ一点に関してのみ言えば、源内はお前を超えている。あくまで、そこ一点であって、他の面では、源内がお前に勝るところは無いだろうが、だが、その一点が重要だ。少なくとも、俺にはな」
淡々とした声音で鷹一が自身の認識を口にした。
鷹一は、個人的には飛山に好感を持っているところがあった。多方面に優秀な才能に、リーダーとしての器、また理知的な人格など、好ましいと思えるところが多かった。しかし、一緒にいて安心できる相手ではなかった。優秀過ぎ――あの悍ましい怪物、匂坂キッカをも苦戦させるほどの才幹に加え、どこか心を読ませない態度は、どうしても周囲を警戒させてしまう。
そして何より、鷹一が推測する飛山の人格――冷徹で冷淡、人を数字としか見ていなそうな人格が、鷹一の心を休ませないのだ。
そして、それは飛山には鋭く刺さった。
『……、…………、むむむ……心当たりがある言葉です……また鷲島君にグッサリ刺されてしまった……でも真実なので、受け止めていく所存です……! あ、ところで、ちょっと雲行きが怪しいので、話を無理やり変えようと思うんだけど、何時、遊びに行く? 私としては、ちょっと鷲島君の心が離れていきそうなので、早めに遊びに行きたいんだけど、ちょっと重い彼女ムーブ過ぎるかな?』
「彼女彼氏ではなく、同じ学園の生徒として交友を深めるためという条件ならば、今日でも構わない。俺個人としては、できれば明日が良いが、お前が俺を現状信用できず、そして今日行くことで、その信用が回復するならば、俺としては今日で構わない」
淡々とした声で鷹一が答えた。
『いえいえ、そこまで鷲島君の事を疑ってはいません……! ただ今ちょっと、私、重い彼女ムーブみたいだったかなーって思って、『切られるかもっ……』と必死になってしまいました。リーダーの重圧で苦しむ飛山龍華です……! でもでも、鷲島君が明日が良いなら、明日に合わせます……! 鷲島君に配慮するアピールをすることで、好感度を回復させていきたいです……!』
「俺としては、お前に『切られないか』、『敵として処理されないか』という方が不安だがな……ただ、明日にしてくれるという配慮は助かる。明日会おう。その時、今日の互いの誤解や不信が解けることを願っている」
『うぉぉ……これちょっと不味い感じですか? もしかして、鷲島君の好感度がっつり下がりましたか? ちょっと明日頑張って稼ぎます……!』
それから、鷹一と飛山は翌日に落ちあう時間と場所を決めて、通話を切った。
鷹一は、小さく息を吐いた。
(何とかなったか……? 正直、蓮のことを隠したのは良くなかったな。いや、それ以上に、飛山の人格面に触れたのが失敗だったか。以前から分かっていたつもりだったが……どうやら俺の想像以上に、飛山は自身の人格について言及されるのを嫌うタイプのようだ。どうも俺が考える『飛山の人格』に合わない気がするが……推測が間違っていたか……?)
それから、鷹一は悩みつつも、蓮へと連絡を入れた。
交渉の結果、三日後に予定されていた、蓮との約束――高級スパに一緒に行く約束は延期となった。
本来、鷹一の予定的には問題のない日であったが、飛山との関係、梶田チームとの関係を踏まえ、安全のため延期したかったのだ。
蓮は、特に気にした素ぶりもなく、何かを勘ぐるようなこともなく、自然と延期を受け入れ、代わりの日程について話した。
そんな蓮の自然な態度に、鷹一は、『こういった自然な配慮ができるところ』をありがたいと思いつつも、同時に、『蓮は優秀なリーダーであることを踏まえると、こちらの裏事情に気付いているかもしれない』と考えてしまうのであった。
(この学園にいると、人を疑うのが癖になりそうだな……)
鷹一はそんなことを思いながらも、今後の試練や試合に関して備えるのであった。
★お知らせ
いつも、本作品を読んで下さって、ありがとうございます。
手首を痛めてしまいました。
結構痛いので、申し訳ないのですが、しばらくの間、執筆がゆっくりになります。
なので、来週の更新は遅れるかもしれません。
お楽しみのところ、お待たせしてしまって申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。