学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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零と飛山のこれからのご活躍を心よりお祈り

 雲川のチームに入ることになった鷹一には、勧誘してくれた19人のリーダーそれぞれに連絡を入れ、比較的丁寧に断りの言葉を届けた。一部のリーダーは鷹一の言葉を自然に受け取り、また一部は『今後はよき好敵手としてあろう』と告げ、また一部のリーダーは『今後も友好的な交友関係を続けたい』と言い、また一部のリーダーは『考え直してくれないか』と訴えた。そして極一部のリーダーは激怒した。

 

 激怒したリーダー、(かずなし)アリシアに呼び出された鷹一は、待ち合わせの喫茶店に来ていた。

 

「鷲島っ! アンタ、結局断るとかどういうつもり? それも龍華のチームですらないなんてっ! もしかして、二位の――」

「――はいはい、アリシアアリシア、ストップストップ!」

 

 零が全て言い切る前に飛山がそれを遮る。相変わらずのやり取りに『仲が良い幼馴染だな』と鷹一は思った。

 

「……分かってるわよ」

 

「飛山も来てたんだな」

 

「うん、来たよー。アリシアが張り切ってたから、ついでって感じだけど、私も鷲島君に聞きたい事があるしね」

 

「そうか。勧誘には時間と労力を割かせてしまったし、俺の答えられる範囲でなら答えよう」

 

「っ! 相変わらず、コイツ上から目線で腹立つ」

 

 鷹一の言葉を聞いて、零が怒りで赤髪を震わせた。

 

「まあまあ、アリシア、たぶん鷲島君に悪気は無いよ。こういう人なんだよ」

 

「本当にふざけたヤツよね……で、鷲島、アンタ結局どのチームにしたの? それくらいは教えなさいよね」

 

「雲川……雲川紫苑のチームに入った」

 

「雲川? 聞かないわね。私と龍華の誘いを断るくらいだし、やっぱり強いの?」

 

「それは分からない」

 

「惚けんじゃないわよ。アンタくらい強ければ、見ただけでだいたいの強さは分かるでしょ。その雲川ってヤツ、私より強いの?」

 

「強さの定義にもよるが……おそらく零の考え方からすると、『弱い』だ」

 

 答えを聞くと、零は一瞬だけ口元を緩めたが、しかしすぐに、鋭い視線を鷹一に向けた。

 

「じゃあ、何でそのチームにしたのよ。前言ってた、戦術? チームコンセプトってやつが気に入ったの?」

 

「あっ! それ私も気になる。鷲島君の考える最適解のリーダーみたいな感じなんだよね? どんなコンセプトか聞きたいなー」

 

 零の質問に対して、鷹一よりも早く飛山が反応した。そして、微笑みながら鷹一に問いかけた。飛山の微笑みには、えも言えぬ圧力があり、もし金崎がこの場にいれば、『なんか笑ってるのに、この子怖い』と言っただろう。

 

「…………いや、期待に沿えず悪いが、飛山の考えるコンセプトよりは劣っていただろう。現状では、だが」

 

「うーん? それだと何で? 聞いた感じ、名前の響きから、女の子だよね雲川さん。アレかな? 凄い可愛い子だったりするのかな? 好きになっちゃった感じ?」

「――それはない」

 

 飛山の問いかけに対して、尋常じゃない速さで鷹一が返した。

 

「おお! 即答っ! でも、それはそれで冷たいよ、鷲島君。雲川さんが可哀想だよ」

 

「そうか、では言い方を変える。『可能性が低い』……いや、違うな、『可能性が限りなく低い』と言っておこう」

 

「ほうほう、それだと、私とアリシアだとどっちの方が可能性がありそうな感じ? 鷲島君の女の子のタイプはどんな感じなの?」

 

「ちょっと、龍華、話逸らさないでよ。鷲島も、それなら、何で、その雲川ってヤツのチームにしたのよ。私より弱くて、龍華より適当なヤツなんでしょ」

 

「理由か…………………………無いと駄目か?」

 

 鷹一は困惑の色を強く滲ませながら質問に答えた。非常に珍しい鷹一の雰囲気に、零と飛山もまた困惑した。

 

「は……? いやっ! ダメに決まってるでしょっ! アンタ、あんなに色々言っておいて、理由無しとか、有り得ないんだけどっ!」

 

「そうか。いや、すまない。理由が無いわけではない。ただ何と言うか……」

 

「もしかして、言えない感じなのかな? 言うとチームの戦術がバレちゃうとか、根本が崩れるとか?」

 

 詰まる鷹一を見て飛山が口を挟んだ。

 

「そういった要素も無いとは言えないが……ただ、それ以上に、俺が上手く言語化できない」

 

「まどろっこしいわねっ! つまり結局アンタは口だけの男で、チームも適当に決めたってことでしょっ!」

 

「そういった要素も無いとは言えないな」

 

 睨みつける零に対して鷹一は淡々と答えた。まさか肯定されるとは思っていなかったのか、零は鼻白んだ。一方で、飛山は鷹一の態度が興味深いと思ったが、口には出さなかった。

 

「……アンタ、それでいいの? もっと上を目指そうとか思わないわけ?」

 

「そうだな。分かった。本当は言うべきではないが、特別に答えよう。俺のチームはリーダーの方針によってBランクを目指すつもりだ。つまり、そこまで頑張らなくても問題は無いだろう」

 

「――っ! Bランクっ! アンタがっ! それにリーダーの方針って! 鷲島っ! 今からでも遅くないわ。アンタ、私のチームに来なさい。その雲川ってリーダー、はっきり言ってゴミよ。アンタがいるのにBランクを目指すなんて宝の持ち腐れもいいところ。アンタは実力にあったチームに来るべきだわ。最悪、龍華のチームでもいいわ」

 

「最悪なの?」

 

 話題に挙がった飛山が少し悲しそうに零を見た。

 

「俺のことを高く評価してくれる点はありがたいが、俺もBランクというのは不満がない。個室が貰えれば十分だ。言ってなかったかもしれないが、俺は衣食住と教育に惹かれてこの学園に来た。チーム戦はあまり重視していない。Bランクならば平均よりもかなり高い生活水準を送れる」

 

「! そんな凡人みたいな考え……!」

 

 そう言って零は口をつぐんだ。鷹一のどこか遠い目を見て、説得が無駄だと悟ったのだ。この男は自分とは違う。野心がない。戦闘適性順位一位とは思えないほどに。

 

「なるほどなるほど。鷲島君の目標は分かったよ。正直、頑張らなくてもBランク達成できるっていうのが、自信過剰に聞こえちゃうけど……でも鷲島君のポテンシャルを考えると行けちゃうのかな? あー、でもでもチーム戦は結構不確定要素大きそうだし、そう上手く行くかな~」

 

 黙った零に変わって飛山が口を開いた。その口元はどこか面白そうに弧を描いていた。

 

「まだ確定していないが、ある程度戦い方はある。絶対にBランクを達成できるとは言わないが、可能性は十分あると俺は考えている」

 

「ふーん? でも、それなら意地悪しちゃおっかな。私とアリシアのチームがチーム戦で雲川さんのチームに当たる度に集中攻撃するの。鷲島君は倒せなくても他の人を全員倒すくらいならできるかもよ? そしたらBランク達成できないかもねー」

 

 にやにやと飛山は意地悪そうな笑みを浮かべた。そんな飛山を鷹一は淡々と見た。

 

「特定のチームだけを狙うと、マッチングした他のチームの利になるだろう。一位を目指す零が納得する戦い方ではないな」

 

「そうだねー。でもそれなら、私のチームだけでやっちゃおうかな?」

 

「お前にそれをやるメリットはあるのか?」

 

 微笑む飛山に対して、無表情で鷹一が問いかけた。

 

「鷲島君の困る顔が見えるかも?」

 

「リスクに釣り合わないな」

 

「私がやらないと思う?」

 

「お前はやらない。お前はリターンが高い選択肢を選ぶタイプの人間だ」

 

 鷹一の言葉が飛山に刺さった。

 

「…………そうかもしれないけど、鷲島君が威張ってるから、ムカムカしてきて感情からのリスク無視の行動をするかもよ?」

 

 飛山は僅かに詰まるが、すぐに舌を回した。彼女は内心で僅かな焦りがあった。

 

「お前は自身の感情で無鉄砲な行動はしないし、ついでに言うと俺に対する感情は殆どない。感情があるふりをしているだけだ。そして何より、お前は友人思いだ。零が困ることはやらないだろう」

 

 さらに三つの言葉が飛山を突き刺した。

 

「……んっとっと、これは、ちょっと重い一撃、ううん、三撃くらい貰っちゃたかな。アリシア~、ごめんね、私じゃ鷲島君に勝てないや。口なら勝負くらいにはなるかと思ったけど、ダメだね。あ、でも一つだけ修正ね。鷲島君のことは結構興味あるよ。感情はもしかしたら無いかもだけど、興味があるよ。凄く強い選手だからね。あ、でもでも、今、感情も少し芽生えたかも?」

 

「どんな感情だ? 参考までに聞きたい」

 

「うーん、さっきまで本当に意地悪する気は無かったけど、今はちょびっと意地悪したい気持ちがあるかな。あ、でも、安心して。別にチーム戦で嫌がらせに集中攻撃はしないよ。そこまで意地悪したいわけじゃないし、何より鷲島君の言う通り、リターンが良くないからね」

 

「そうか。参考になるか分からないが……俺はもし、…………いや、これは言うべきではないな」

 

 鷹一は『もし紫苑と会わなければ、おそらく飛山のチームに入っていただろう』という言葉は噛み殺した。

 

「そう言われると気になるよ。試合で当たったら集中攻撃したくなっちゃうよ」

 

 少しふざけた風に飛山が告げた。冗談であることを示すためだ。

 

「お前たちがAランクを目指すならば、俺と戦う機会はあまり無いだろう」

 

 鷹一は冗談を理解したのか理解してないのか、淡々と飛山に答えた。その態度に、飛山は少しだけ笑った後、

 

「そっか……」

 

 と言葉を漏らした。

 そして、飛山は少しだけ残念そうに遠くを見た。目の前の男の性質を何となく感じ取ってしまったからだ。

 しばらく無言のまま喫茶店での時間が流れた。鷹一はこれ以上ここにいても意味が無いと考え、席を立とうとしたが、それを制するように零が勢いよく立ち上がった。そして鷹一をじっと見た。爛々と輝く瞳には強い意志が込められていた。

 

「鷲島、アンタのチームは第一試合出るの?」

 

「出場しない予定だ」

 

「そう、なら私の試合見に来なさい。アンタが逃したチームが勝ち上がる所、しっかり目に焼き付けておきなさい!」

 

 零は鷹一を指差しながら、そう宣言して、勝気な笑みを浮かべた。

 

「元々試合は全て見る予定だ。だが、そうだな……零、お前が勝つところは、アーカイブではなく、観戦会場から直接見よう」

 

 鷹一は、いつも通り淡々と答えた。

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