学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す 作:集団戦大好きマン
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雲川チームの偵察・支援要員。
男性にしてはやや小柄。穏やかで人に気を遣う優しい人物。
休み期間は訓練をしたり、交流をしたりと充実した日々。
最近は訓練後、大浴場に行ってリラックスするのがマイブーム。
樋口との絆と城守の義侠心に助けられ、無事雲川を奪還した。
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Bランク12位、雲川チームのリーダー。
小柄で弱そう。戦闘適性順位238位。かよわき生き物。お寿司が好き。なぜか高級ネタばかり食べる。
休み期間は絶賛リフレッシュ中。匂坂に呼ばれて、ほいほい高級スパへと行った。
ようやく起きたけど、足が遅いので、柚木に運ばれてるよ。
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Bランク14位神岡チーム所属の狙撃手。
話好きで特に喋るのが好き。頭の回転が速く、知識も豊富。穏やかだが、抜け目ない面もある。
最近は、チーム外でお話相手を求めて活動中。特に気のいい金崎と話をするのがマイブーム。
抜け目なく谷崎から離れ、エントランスを脱出し、友人である柚木を見つけ彼女に助けを求めた。
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Bランク20位、柚木チームのリーダー。
頭の回転は速いが、人を煽ることが多いためか、やや人間関係に問題がある。一方で、人の心の動きには詳しい。
口で言っている事と考えている事がかなり乖離するタイプであり、谷崎を煽り散らす一方で、内心では谷崎のことをかなり高く評価している。
チーム戦においては、戦術眼に優れるタイプのリーダーであり、鷲島勧誘に失敗したリーダーの一人でもある。
逃げる四人組、金崎・雲川・柚木・樋口。
彼らは、三つのチームの合同行動という、この学園では珍しいシチュエーションであったが、それでも柚木の指示があり、しっかりと組織だった逃亡を行えていた。
敢えて言うならば、金崎が柚木・樋口のペースに追いつけず、落伍しそうであったことが問題であった。
なお、金崎より貧弱な雲川は、柚木に運ばれていたため、体力にゆとりがあった。勿論、脳内では『さっきまでキッカさんたちと一緒にいたのに、なんで今、私は運ばれてるんだろう……?』などと、ぼんやり考えていた。
ちなみに、こんな風にぼんやりといられるのは金崎のおかげもあった。もし金崎がいなければ、全く知らない二人組にさらわれたと雲川は誤解してしまい、恐慌状態に陥って端末から鷹一に助けを求めただろう。
勿論、今、雲川の端末を所持しているのは谷崎であり、そんなことは不可能であるどころか、もうすぐ大町チームによって雲川の端末は完全に破壊されるのだが、これは、まだ雲川の知りえぬ情報であった。
金崎のペースが崩れるのを柚木は確認すると、ペースを少し落としながら思考を回した。
(金崎君って思ったよりスタミナ無いですね。結構『使える選手』のイメージがありましたが……成長速度から考えて、やはり、試合に特化して訓練しているっぽい感じですかね。この辺は、鷲島君の鍛え方の問題でしょう。まあ、実際、試合で勝てればいいんだから、現実のスタミナとかは現状では求められていないので、正しいと言えば正しいですね。谷崎さんが暴れて、そこから逃げるケースとか普通想定しないですし。んー、ただ、どうしますかね。このまま地獄の持久走を金崎君に強要してもいいですけど……あんまりメリット無いですし、ここらで休憩を挟みますか。ちょうど糖分を補給したいですし)
ちらりと柚木は周囲を確認した。
「ここまで逃げれば、だいたい大丈夫でしょう。せっかくですし、ちょっとこの辺で、お茶しましょう」
「え……? もうちょっと距離を稼いだ方がいいと思うけど……」
柚木の提案に、樋口が答えた。彼は逃げることに必死で、金崎のペースを把握していなかった。柚木はすぐにそれを察した。
「それも悪くはない考えですが、建物の中に隠れるっていうのも十分アリだと思いますよ。というか谷崎さんの性格を考えると、むしろ建物の中に隠れる方がいいです。あの人そういう発想無さそうですから。それにちょっとやりたいこともありますし、休憩しましょう」
適当な言葉を並べつつも、柚木は、自分の意見を曲げなかった。
「ま、まあ、柚木さんが言うなら……あ……」
柚木の頑な態度を見て、樋口は頷いた後、ようやく金崎の様子に気付いた。そして、柚木の言葉が彼への気遣いだと理解した。一方で、精一杯の金崎は気付くことはなく、ただただ、休憩を得られた『偶然』を喜んだ。
「さーて、あの喫茶店に入りましょう。あそこの店、柚木さんが好きなパフェがあるんです。入りましょう、入りましょう」
そして、柚木に導かれるままに樋口・金崎・雲川は店へと入った。
店外からは見えないよう奥の席へとついた四人は、それぞれ注文を行った。
柚木がジャンボパフェを注文するのを見て、樋口と金崎は『一人でその量を食べるのか』と内心で引いてしまった。そして、そんな二人を見て、柚木は自然と口を開いた。
「いえいえ、糖分補給は知的活動には必須ですからね。柚木さんくらい賢くて、頭のCPUガンガン回してると、すぐ補給が必要になるんですよ」
言い訳ではなく、まるで当然と言った風な話し方であった。樋口は少し気まずそうに視線を逸らし、金崎は内心を読まれたことに驚きつつ謝罪を口にした。
「あ、いや、その……ごめん」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それより、すみません、ちょっと今から通話しますね」
「だ、誰に?」
素早く樋口が問いかけた。
「同じ一年生相手ですね。大町チームだけだと、谷崎さんを抑えるのは難しいですし……まあ、ほっといても何とかなりそうですけど、一応、時間稼ぎくらいはしておこうかな、と思いまして。それじゃあ、ちょっと通話するので、三人とも静かにして下さいね。気難しい相手なんで、お口はチャック、でね」
三人、特に雲川の方を見ながら柚木はにやりと笑い、自身の端末から相手を選び通話ボタンを押した。
「あ~、もしもし、天才リーダーの柚木さんです。お元気ですか?」
若干煽るような口調で柚木が通話相手に話しかけた。
『そこそこ、かな。暇人リーダーさん』
柚木がスピーカーモードをオンにしていたため、通話相手の声――少し低い女子生徒の声が響いた。
「それは良かったです。ところでちょっと兵隊貸して欲しいんですけど、いいですか?」
『いきなりすぎるね。君は、もう少し真っ当に話をする努力をした方が良いよ』
「ははは。すみません、柚木さん、凡人に合わせるの苦手なんですよ。で、兵隊、貸してもらえますか?」
通話相手の呆れの声に対しても、柚木は自分を崩さなかった。
『要件は理解したよ。ただ、理由を最低限言うべきでないかな? まさか、谷崎相手に戦わせる気かい?』
「おっ! ちゃんと抑えてますね。そういう優秀なところは柚木さん好きですよ。柚木さんの次くらいに頭いいですね。まあ、そこまで分かってるなら、柚木さんのやりたいことも分かりますよね?」
通話相手と柚木の言葉の応酬を聞き、樋口は鋭く思考を回した。通話相手が谷崎の話を急に持ち出したことを不思議に思ったからだ。
谷崎騒動は樋口たちにとっては目下最大の問題であったが、他者にとってはそうではない。それどころか、少し前に始まった騒動ゆえに、『今』この時点でそれに言及することは不自然だと樋口は感じたのだ。情報があまりに早過ぎる。
『おっと? 今聞き捨てならない言葉があったな……ボクの方が君より遥かに頭が良いと思うが。それに谷崎と戦わせるなら、兵隊は貸せないな。だって、返ってこないだろ、貸した兵隊』
通話相手は当然と言った風に答えた。
「いやいや、そんなことはありません。というか、別に戦わせるつもりはないです。むしろその後のために必要なんです。てか、ぶっちゃけますけど、欲しいの兵隊じゃなくてレンタル彼女です。これ一石四鳥の策なんですけど、あー、もしかして解説してあげないと分かりませんかね? 聞いちゃいます? まあ、柚木さん、今、結構機嫌良いんで、解説してもいいですよ?」
『必要ないよ。凡人リーダーさん。要は、あの猿を使いたいんだろう。ボクとしては、大切なチームメイトを猿ごときに貸したくはないかな』
再度、会話が飛んだ。既に金崎は柚木と通話相手の言葉の応酬にはついていけなかった。樋口だけは何とかそれを追っていたが、ここに来てさらなる飛躍が、内容の理解を難しくさせた。
「人を動物でたとえるなんて谷崎さんみたいで、聞いてて恥ずかしくなってきました」
『頭のおかしいゴリラ女と一緒にされるのは御免だ』
通話相手は、吐き捨てるように言った。
「まあ、それはどうでもいいです。というか、大切なチームメイトとか言ってますけど、利益の方が大切なんじゃないですか? あ、それとも分かりませんか? 柚木さんの考えた作戦。あ~、これは解説が必要ですかね? あー、まー、しょうがないですね。世の中の人は、柚木さんほど賢くは無いですし、しょうがないですね、解説を――」
『――必要ないよ。あの猿と谷崎の確執を強める、今後も猿を上手く使うラインを作る、あとは鷲島へ恩を着せるとか、その程度の考えだろ? 凡人の浅知恵にしては、まあまあってところかな』
柚木の言葉に被せるように通話相手が答えた。その声色には嘲りの色が含まれていた。そして、その答えは、柚木の考える策そのものであった。しかし、柚木は気にしなかった。煽り慣れている彼女は、同時に煽られ慣れてもいたからだ。
「ははは、コロンブスの卵って知ってますか? 最初にそれを思いついて実行できる者が歴史を動かすんですよ。それで、どうします、柚木さんの作戦に乗りますか? 別に乗らないならそれはそれでいいですよ。柚木さんが勝手にやるんで、利益は全部柚木さんが貰います。これは、友人として、利益の共有をさせてあげるって言ってるんですけどね」
『友人は嘘だろ。だが、まあいいよ。君のことは気にくわないけど、たまには凡人の浅はかな考えに乗るも悪くない』
通信相手は、どこか嘲りを含みつつも、柚木の提案に答えた。
柚木は、相手の態度は気にせず、回答には満足しつつも、言葉を紡いだ。
「はい、言質頂きました。じゃあ、まあ二人ほどお願いします。あ、あと知ってるかもですけど、鷲島君とは連絡取れないみたいです。今、こっちに雲川さんと金崎君がいるんですけど駄目らしいです」
『どうせ反町に端末を封じられてるとかだろ。あの女は疑り深いし、それに鷲島なんていう面白い玩具を手に入れたら放さないよ』
まるで当然の事実を伝えるかのように、通信相手は柚木へと話しかけた。同時に、金崎は尊敬しているチームメイトが、まるで物のように言われていることに僅かな嫌悪感を覚えた。
「柚木さんもそう思います。いやー、独占して重い彼女アピールきついですね。正直、重いのは装備と魔力だけにして欲しいです。てか今どこいます? もしかしてこの通話って聞かれてます?」
『聞かれている』――この表現は突飛で曖昧な表現であった。故に金崎はおろか樋口でさえ意味が分からなかった。しかし、通信相手はすぐに理解した。
『反町にかい? それなら、当然、聞かれていると思うよ。まあ、リアルタイムではなく録音だろうがね。反町のことだ、匂坂・飛山以外の全チームは盗聴されていると考えていい』
この言葉に、樋口と金崎は唖然とした。樋口はあまりにも壮大な話に、そして金崎は、同盟相手の選手の一人に凄まじい疑惑が発生したからだ。
「あー、そうですか、そうですか。なるほど、なるほど、じゃあそっち経由で鷲島君に情報送れそうですね」
『盗聴の逆利用をしろってか? 相変わらず君は面倒事を人に押し付けるのが上手いね。そういうところも凡人らしいよ。だが、まあ、いい、折角だし鷲島と逢瀬の約束でも取り付けておくよ』
「ありがとうございます。そっちの連絡は任せます。兵器はこっちが用意しとくんで、兵隊の確保はお願いしますね」
『水原と竹中には時間を空けておくように伝えておく。猿との交渉は任せたよ』
「ええ、お任せください」
そう言って、柚木は通話を終わらせた。そして周囲を見た。
樋口は柚木と視線が合うと、こっそりと目を逸らした。彼は、柚木の通話相手の声から相手が誰かを理解し、また会話内容から、これからの事態を察したのだ。樋口は黙りつつも、自身の端末を握る力を強めた。この一連の騒動を自身のチームのリーダーである神岡に伝えるべきか悩んだからだ。
神岡に伝えれば、この騒動をチームの利益に還元することができる。しかし一方で、事が大きくなっている状況で不用意に動く危険性も理解していた。
金崎は、不安と緊張が絶えなかった。先程までの谷崎の暴虐による恐怖は未だに残っていたし、また、同時に、目の前の柚木に対する不安もあった。状況的に助けてくれた味方と言えなくはなかったが、しかし、一方で、何となく胡散臭く感じる点が多かった。
それに、今の通話内容も、どこか雲川チームを商品のように見ているようで、不信感を覚えた。
なお、雲川は柚木の会話の意味など理解できなかったので、途中で聞くのを諦めて、自分が頼んだ注文へと意識を向けていた――つまり、パフェがまだ来ないかと、ずっとそわそわしながら厨房の方へと視線を向けていた。
そして、雲川の思いが通じたのか、柚木たちの注文がテーブルに届いた。
雲川のパフェ、金崎のBLTサンド、樋口のコーヒー、柚木のジャンボパフェだ。雲川は美味しそうなパフェを見て、じゅるりと口内で涎を出すが、ちらりと視界に入った柚木のジャンボパフェを見て、おののいた。
固まる雲川を横目に、金崎は今まで伝えられずにいた言葉を伝えることにした。事態があまりに急変し過ぎていたため、ずっと言えなかった言葉だ。
「あ、あの、柚木さん。助けてくれてありがとう。おかげで、なんとか雲川さんを取り返せたし、谷崎が勝手にフロアに入るのも防げたよ。だから、ありがとう。樋口も、柚木さんを連れて来てくれてありがとう。最初は驚いたけど、結果的には凄く助かったと思う……」
柚木が乱入してきた当初の出来事――『谷崎を煽り散らす』などという自殺行為を思い出し、金崎は何とも言えない表情を浮かべた。
ジャンボパフェを食べていた柚木は、一度食べる手を止めて、咀嚼しながら口を開いた。
「いえいえ、困った時はお互い様ですから、気にしないで下さい」
そう言って、柚木は左手でサムズアップしてみせた。口を開きながら喋ったためか、口内のパフェだったモノが見えてしまい、金崎と樋口はちょっとだけ引いた。
ごくんと飲み込んだ後、柚木は右手でスプーンを掴み、今度はこびりついていたクリームを舐めた。再度、金崎と樋口は僅かに引いた。
(柚木って、雲川さんを抱きかかえた状態でさえ、俺よりも足が速いしスタミナもあった。ってことは、かなり運動能力が高いよな……それにたぶん頭も良い。凄いリーダーなんだと思うけど……何て言うか……あんまり上品な感じでは無い……? あ、いや、こういうのって家庭の事情とかもあるし、あんまり気にするのは良くないか……)
金崎の少し引いた態度を見て、柚木は、にやりと笑みを浮かべた。
「まあ、どうしても気になるようでしたら、うちのチームと当たる時に、勝ち譲ってくれるだけでいいですよ。正直、鷲島君とガチバトルはしたくないんで」
なんとなしに言われた言葉であったが、これは金崎には困る要望であった。
「いや、ごめん……それはちょっと……たぶん鷲島は納得しないだろうし……その、ごめん……」
金崎の申し訳なさそうな態度を見て、柚木は気にすることなく、再びパフェを口へと運んだ。
「ああ、そんなに申し訳なさそうにしなくて大丈夫ですよ。冗談ですから。それより、食べなくていいんですか? 今日は特別に、柚木さんの奢りですよ」
そして再度、咀嚼しながら話した。樋口は、露骨に視線を柚木の口から逸らした。一方で、雲川は、ジャンボパフェを頼まなかった過去の自分を悔やんだ。
「え、あ、いや、そうだったの? いや、でも、お代出してもらうのは悪いから、俺たちは自分の分は自分で払うよ」
金崎は少し慌てつつも断りの言葉を入れた。それを聞いて、雲川はわずかにビクリとした。ジャンボパフェを頼まなくて良かったかもしれないと思い直したのだ。
「いえ? 普通に、ここ入りたいって言ったのは柚木さんですし。逃走計画も柚木さんが決めてるので、費用は出しますよ。それに、この中でリーダーは柚木さんだけ……ああ、いえ、……まあ、柚木さんは押しも押されもしないBランク最高のリーダーですから。このくらいのZP消費は、負担でも何でもありません。あ、ちなみに、頭脳面ならAランクも含め全リーダー最強ですね。私の右に出る者はいません」
柚木は、最初はごく自然と答え、途中でふと雲川がリーダーであったことを素で忘れていたことに内心で赤面し、最後にはそれを隠すように、少し尊大に振る舞ってみせた。
最終的に金崎も折れ、会計は柚木が持つことになった。金崎と樋口は感謝し、雲川は感謝の言葉を口にしつつも、再度、ジャンボパフェを頼まなかった過去の自分を悔やんだ。
会計の話が一段落すると、再び柚木が端末を手にした。
「それじゃあ、話も一段落しましたし、タイミングも良い感じなので、ちょっと柚木さんは兵器と交渉しますね。一応、静かにしてもらえると、ありがたいです」
そう言うと、柚木はある人物に通話をかけた。