学園チームバトルもの。才能と努力と計画と乱数で勝利を目指す   作:集団戦大好きマン

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★登場人物紹介

谷崎(たにざき)ミホ】
 Aランク1位、匂坂チームの蹂躙担当。自他ともに認める匂坂の側近。高魔力かつ、非常に高い戦闘技能の持ち主。戦闘適性順位5位。
 鷹一からは「試合で、対等な状況で戦って、1対1でも鷹一が負ける可能性がある生徒」と評された。水渕からは究極のゴリラかつ危険人物と評された。
 威圧感がある人物であり、身長以上に背が高く見えるが、そこまで背は高くない。
 匂坂を崇拝しており、彼女に奉仕したいという強い想いゆえか、メイド服を着ている。メイド服を着ると、本来の可愛らしい容貌が露見してしまうが、本人は気づいていない。
 主の命令を果たすため、Bランクマンションに突撃し、何か色々な人と戦っている。なお、もう雲川の奪還は不可能の模様。


【ビクター・マスタング】
 Bランク16位、滝本チーム所属の大エース。戦闘適性順位4位。非常に高い戦闘力の持ち主かつ高魔力。
 鷹一からは「対等な状況で戦って、1対1でも鷹一が負ける可能性がある生徒」と評された。
 魔力識別技能に長け、目視していない対象であっても魔力パターンから個人を識別可能という珍しい技能の持ち主。ただし、魔力隠蔽を行う相手などは識別できないことが多い。「外界の認識を魔力に頼りすぎている」と鷹一に評された。
 自称フェミニストだが、特定の身体特徴を持つ女性ばかりに入れ込み、かつ女性の外面を重視しているため、周囲からは「ただの女好き」だと認識されている。なお、マスタングが、滝本チームに所属した理由の9割は滝本の外見。
 基本的に男相手にはあまり興味はないが、一方で戦闘は好きな方なので、ある程度の強さを持つ男子生徒のことは記憶している。同ランクの強者としては、鷲島と佐々木に興味があり、また喧嘩できるという意味で水渕のことも内心では気に入っている。
 美人三人(水原・竹中・七夜)とのデートという特大の餌に釣られて谷崎に挑む。なおマスタングにとっては、谷崎もかなり好みの相手である。


大町百合(おおまちゆり)
 Bランク18位大町チームのリーダー。
 女子生徒とは思えぬほどの筋肉隆々の体格と、いかつく狂暴な顔に、低く野太い声の持ち主。
 試合では、その巨体と安定性を活かした、対シールドライフルという大型の武器を用いる。試合でも強いが、それ以上に現実世界での殴り合いに強い。
 入学後は、鷹一を勧誘しようとしたが失敗した。実は鷹一に苦手意識を抱かれている。
 柚木からチームメイトである城守の窮地を聞き、如月に止められるもそれを無視してエントランスに突撃した。なお如月はしょうがないので、四本と一緒に作戦を組んで大町の後に続いた。
 


超人たちの戦い方

 

 

 Bランクマンションのエントランスにて。

 

 既に立っている者は二人だけであった。

 

 一人は谷崎ミホ。匂坂チームに所属する戦闘適性順位五位の怪物。この恐ろしい怪物は未だに傷一つ付いていなかった。大町チームの面々は優れた生徒たちであったが、誰一人として、彼女に傷をつけることは終ぞ叶わなかったのだ。

 そして、大町チームの四人、大町・城守・四本・如月は皆、地面に伏せていた。死屍累々であった。

 しかし、それでも彼らは懸命に戦った。第三試合では青井を討ち取った大町チームの連携は、ついに谷崎が握っていた雲川の小型端末の破壊に成功したのだ。エントランスに倒れる大町の近くに、小型端末の慣れ果てと破壊されたウニの軍艦のストラップが転がっていた。

 なお、この『ウニの軍艦のストラップ』は雲川にとって、とても大切な思い出のストラップであった。後に、この件で、雲川が咽び泣くことになるのだが、それは、また別の話である。

 倒れ伏す大町チームであったが、彼らは幸運にも、倒れ伏すだけで済んでいた。本来であれば谷崎から恐ろしい追撃――『懲罰』と呼ばれる一方的で残忍な暴力行為に晒されるはずであったが、それはまだ執行されていなかった。

 

 理由は、谷崎の前に立っている一人の男だ。

 この男――突如現れたビクター・マスタングが、谷崎による『懲罰』を止めたからだ。

 

 彼は、まるで図ったようなタイミングで現れると、その場で谷崎に宣戦布告し、ひたすら、谷崎の行動を妨害したのだ。

 谷崎は苛立ちつつもマスタングの処理を行おうとするが、それは失敗した。

 

 なぜならマスタングの戦い方が、谷崎には予想外で、困惑させるものだったからだ。

 未だ、谷崎は試合ではマスタングと戦っていない。しかし、それでもマスタングの戦い方は知っていた。なぜなら、マスタングは谷崎と似たような戦い方をするのだ。

 

――重量級魔力による火力で優位を取り、そして戦闘エリアを高機動で移動する。高機動・高火力・高耐久、それが谷崎とマスタングの共通点であった。

 

 ゆえに現実でも似た戦い方になると谷崎は思っていた。重量級の殴り合いを想定したのだ。

 

 しかし、想定は狂った。

 

 マスタングが試合では見せない程、機敏に動き回るのだ。ただただ、ひたすら谷崎の拳を回避する。あまりにも機敏な動き。終始、谷崎は翻弄された。

 本来であれば、谷崎もまた素早く機敏な生徒である。しかし、マスタングはその上を行くのだ。明らかに試合の時とは違う動き。

 谷崎は二重の意味で苛立った。一つは猿ごときに苦戦する自身への苛立ち、そしてもう一つは目の前の猿の動きを見て、零アリシアという因縁の相手を思い出し、さらに苛立った。第三試合で『匂坂の見ているところで、格下に敗北してしまった』という谷崎の大きな傷が開きそうになっていた。

 

「ミホ。さっきから全然当たってないヨ。もう止めにしないかナ。こんな不毛なことじゃなくテ、もっと建設的なこと、たとえば、ボクとデートしないかイ? ボクたち、似てるところがあるし、相性良いと思うヨ」

 

「黙りなさい。発情期の猿が」

 

 その言葉と共に、谷崎の高速高威力の拳が振るわれるが、マスタングはそれをギリギリで回避した。もし相手が大町や城守であれば回避できず、そして、確実に骨まで砕く一撃。それが避けられたのだ。

 これまで、ただの一度も当たらぬ攻撃。もし、周囲にギャラリーがいれば、マスタングの方に分があると思っただろう。しかし、実情は違った。

 徐々にだが、谷崎の早さがマスタングに追いついてきたのだ。そして、マスタングもそのことに気付いていた。

 

(思ったよりも慣れるのが早いネ……あと三回くらいで避けられなくなりそうだナ。どうすル? こっちからも攻めるカ? いや、そろそろ時間のはずダ。変に動いて、キッカと確執を作るのは、誰かの手のひらの上で踊らされているみたいで嫌だナ)

 

 内心で焦りを感じつつも、それは一切表には出さず、むしろ余裕のある強気の笑みを浮かべた。

 そんなマスタングに対して、谷崎は再度怒りを覚えるが、次の瞬間、顔を青くした。

 

――なぜなら、端末の呼び出し音が鳴ったからだ。そして、その呼び出し音は、谷崎の小型端末のものであり、また、この音で登録した相手はただ一人であったからだ。

 

 顔を青くしながら、谷崎は、マスタングと大きく距離を取った。そして、相手を待たせないように僅か2コールで通話に出た。

 

「匂坂様……! 申し訳ございません……! 頂いた使命、達成できませんでした。烏に兎を奪われました。申し訳ございません……!」

 

『いえいえ、いいのですよ、谷崎さん。事情は聞いています。色々と大変だったようですね。紫苑さんのことは、気にしないで下さい。それよりむしろ私は谷崎さんに感謝しているのですよ? 思った以上に良い結果になりました。やはり谷崎さんに任せて正解でした』

 

 真剣に心の底から謝罪する谷崎に対して、匂坂はゆとりのある穏やかな声音で言葉を返した。主の柔らかな声を聞き、谷崎は複雑な気持ちになった。

 

「お慈悲に感謝いたします。匂坂様」

 

『フフッ、相変わらず真面目ですね。そういうところも好きですよ。ただ、すみません。ちょっと鷲島君と交渉がありまして……私としては、交渉結果自体は満足なのですが……もしかして、谷崎さんはまだ戦闘中ですか?』

 

「はい。大猩々たちは倒しましたが、今は猿と戦闘中です。ですが、ご安心ください。必ずや、この猿には懲罰を加えます」

 

 谷崎の報告に対して、匂坂は少しだけ感心したように息を吐いた。主の珍しい息遣いから、谷崎は主が重要なことを言うと考え、耳を立てた。

 

『……マスタング君が参戦してましたか。となると、柚木さんと反町さんだけでは無さそうですね。裏で乾さんあたりが絡んでいそうです』

 

「乾と反町にも懲罰を与えますか?」

 

 主の言葉に即座に谷崎が反応した。

 

『いえ。それには及びません。それよりも、谷崎さん、私としては、大変心苦しいのですが、マスタング君との戦い、いえ、大町さんとの戦いも含め、一旦矛を収めてくれませんか? 鷲島君と約束をしてしまいまして、谷崎さんの戦いを止めてもらうように言って欲しいと言われたのです。勿論、鷲島君は外部の人間、チームメイトである谷崎さんを私は優先しますが……どうでしょうか……? 一度、戦いを止めてもらえますか?』

 

 匂坂のお願い。とても柔らかで穏やかな声であった。

 谷崎の回答は当然ただ一つであった。

 

「畏まりました。直ちに戦闘行為を中止いたします」

 

『ありがとうございます。それでは戻って来てくださいね。もし、マスタング君が追撃してくるようなら教えてください。私が粉砕します』

 

「いえ、ご安心ください。これ以上、匂坂様のお手を煩わせるようなことはいたしません」

 

『フフッ、困った時はいつでも言って下さいね』

 

 そう言って、匂坂は通話を切った。

 

「話は終わったかナ?」

 

 谷崎の通話中も、攻撃することなく待っていたマスタングが声をかけた。

 

「ええ、終わりました。喜びなさい、猿。あなたを調教するのは、また次の機会になりました。匂坂様のお慈悲に感謝しながら、地に伏せなさい」

 

 それだけ告げると、怪物――谷崎ミホはBランクマンションを後にした。

 あとに残されたマスタングは、倒れ伏す大町チームを見て、『一応、医療施設へ運ぶくらいはするか』とだけ考えた。

 

 

 

 

 喫茶店に駆け込んだ鷹一は、チームメイトたちの無事な姿を確認し、安堵した。

 そして、彼は柚木・樋口両名に感謝を伝えた後、詳しい事情を四人から聞いた。

 事情を聞き終えた鷹一は、脳内の関わりたくないリストに、谷崎ミホを新たに書き加えた。

 

 それから、再度、柚木と樋口に感謝を告げた後、鷹一は念のため一人でBランクマンションのエントランスへと向かったが、そこには谷崎や他の生徒の姿はなく、作業用のロボットが破壊された床などの修繕活動を行っていた。

 安全を確認した鷹一は、まず金崎と雲川を喫茶店から、雲川チームが占有する最上階フロアへと護送した。そして、二人には、安全のため、今日一日は最上階フロアで過ごしもらうように説得した。それに伴い、夕食は鷹一が二人の分を用意することになった。

 

 最低限の安全を確保した鷹一は、少し悩んだ後、自分の端末から大町の連絡先を見た。

 四月のチーム結成試練の際、鷹一は大町から勧誘を受けており、その際、連絡先を交換していたのだ。

 鷹一は、少し及び腰になりつつも大町に通話をかけた。

 数コールして、大町が出た。

 

『鷲島か?』

 

 力強く、野太い声が鷹一の耳に響いた。鷹一は苦手意識を抑えながら、口を開いた。

 

「ああ、そうだ。大町、無事か? 話は金崎たちから聞いた。お前たちのチームが助けてくれたと聞いている。ありがとう、二人を助けてくれて。それとすまない、手傷を負ったとも聞いている」

 

『多少、ダメージを負ったが問題ない。それと、谷崎の件なら気にするな。大したことじゃない。いや、むしろ、金崎と雲川には『よくやった』と伝えておいてくれ。一度、谷崎とは戦ってみたかったんだ』

 

 力強く、凶暴さを含んだ大町の声に、鷹一は僅かに引いた。

 

 鷹一は、前から大町が苦手だったのだ。大町の在り方、考え方が、どうも鷹一とは肌が合わないのだ。

 

「そうか……それは……そうだな、気を遣ってくれて助かる。金崎たちにも伝えておく。それと、傷の方は本当に大丈夫か? 必要ならこちらで何か補償をするが……」

 

『気など遣っていない。傷も大丈夫だ。数日もすれば完治するだろう。補償は必要ない。私も、城守もやりたくてやったことだからな』

 

「お前ほどの生徒が数日の怪我か……やはり補償が必要なようにも思える。あと、金崎が如月からZPの補償をするように言われていたが、こちらに関しては大町はどのくらい把握している? 大町チームに対して補償するならば、それも含めて考えたいのだが」

 

『如月が、か? 聞いていないな。分かった。今度、如月に聞いておこう。ただ、あまり気にするな。私としては、今回の結果は、むしろ良い経験だったと思っている。谷崎の強さやこの学園の深さに触れられたし、自分の中での停滞を一つ壊すことができた気がする。ただ、お前がどうしても補償の話をしたいなら――ああ、いや、待ってくれ、今、大事な奴と大事な話してるんだ、おいおい、待て待て……すまない鷲島、看護師が煩くてな。一度切る。また今度話そう。補償を要求するつもりではないが、それとは別にお前に頼みたいことがある。そのことを話したい。そろそろ看護師が激怒しそうだ。切るぞ』

 

 一方的に言うと、大町は通話を切断した。

 

 鷹一は、大町の闘争本能には最後まで共感できなかったが、一方で、寛大な大町の生き様やチームメイトをまとめる手腕には、Bランクのリーダーとして敬意を払った。同時に補償で済ませられなかった自分の交渉力を恥じた。鷹一はできれば今回の件はZP()で解決したかったのだ。

 なぜなら、鷹一は、以前、大町からある頼み事をされて、それを断っていたのだ。そして、大町の最後の言葉が、以前と同じ内容の頼み事だと鷹一は察してしまったのだ。それは、鷹一としては受けたくない頼み事であった――特に、今回、金崎を助けてくれた以上、猶更、大町の頼み事を受けるわけにはいかなかったのだ。

 

 悩みつつも鷹一は時間を確認した。

 昨日約束した、『飛山との高級スパ巡り』まで1時間を切っていた。

 

(こんな事件の後に、高級スパで遊ぶのは少し違う気もするが……昨日飛山と約束したし、それを違えるのは……だが、今、この複雑なパワーバランスの中、飛山と距離を詰めるのは危険か……? いや、匂坂チームとの対立路線が深まっている以上、飛山との関係悪化は避けたい。飛山チームとの関係を持つことは、孤立気味の零チームとの接点にもなる。やはり、飛山との関係は保つ必要がある)

 

 そこまで、考えて、鷹一は、飛山との関係を保った場合での、Aランクの勢力図を再考察する。

 

(梶田との同盟、飛山との友好関係、疑似的な零との接点、安重と蓮との距離感を保ちつつ……舞島はおそらく性質的に、敵対関係にはならない。星川は匂坂の同盟先、故に、敵寄り。高光・中とは繋がりはほぼ無いが……いや、中は蓮の同盟相手。蓮経由で手を回せないこともないか……? となると、現状読めないのは高光だけ。敵は同時には作りたくない。飛山との関係を上手くすれば、敵になりうるのは、現状では匂坂・星川・高光だけ、か。何とかなりそうか……? いや、正直、匂坂・谷崎の二人だけで、学園の半数以上を敵に回すより危険だと思うが…………金崎が戦端を切らなければ……いや、過ぎた事は言うべきではないし、むしろ状況を考えると、金崎は、勇気を出してチームのためを思っていた。責めるなどできないな。それよりも、紫苑の予定を予め金崎に伝えておくべきだったか。次は気を付けよう)

 

 鷹一は、各チームとの関係を考察した後、匂坂と谷崎について嫌々考えつつも、最後には自分の改善点について考えた。

 そして、一通り、これからのチームのことと、飛山について考えた後、約束の時間に遅れないように、Aランク専用高級スパへと向かうのであった。

 

 




★おまけ★

★零アリシアのここがスゴイ!
①個人戦闘適性順位7位の猛者。
②チーム戦でもAランク5位の上位陣。
③野心・常識・良心のバランスが比較的良い方で、リーダーとしての適性がある。
④リーダーとしてチームをしっかりと纏めており、全チームの中でも安定性がかなり高いチーム。
⑤高魔力で、鷲島の倍以上の魔力の持ち主。チームメイトも高魔力が多く、総魔力量でもかなり上位のチーム。
⑥あと忘れそうだが、容姿が良い。美少女。
⑦マスタング討伐経験あり。
⑧谷崎を一騎討ちで撃破したことがある!


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