ヒナ全肯定甘やかしbot   作:コットンサンダー

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ヒナ視点難しい


ヒナ視点①

空は赤く染まり、春の柔らかな風が頬を撫でる夕暮れ時、私は街を歩いていた。小さな頃から幾度となく通ってきた道。だけど、まさかこんな場所で運命の出会いをすることになるなんて、誰が予想できたのだろう。

 

遠くから聞こえてきた声に、私は反射的に足を止めた。声のする方向に目を向けると、不良生徒たちに囲まれた一人の少年の姿が見えた。

 

私は即座に声を上げた。

 

「ねぇ、あなた達ここで何をしているの?」

 

不良たちは私の姿を認めると、慌てて逃げ出した。彼らの背中を見送りながら、私は少年に近づいていく。

 

「あなた、不良生徒に絡まれていたけど大丈夫?見たところ銃も持っていないようだし、この辺りを1人で歩くなんて不用心ね」

 

少年は照れくさそうに頭を掻いた。その仕草が妙に愛らしく感じられて、私は思わず微笑んでしまった。

 

「いやー、ちょっと気分転換に散歩してたら絡まれちゃって。それはそうと助けてくれてありがとう!あのままだとマズいことになってたよ」

 

「私もたまたま通りかかっただけだから気にしないで。もう日も暮れるから早く帰った方がいい」

 

私がそう言うと、少年は困ったような表情を浮かべた。

 

「あのさ、俺の家がどこにあるか知らない?」

 

「……え?」

 

私は目を丸くした。まさか自分の家の場所が分からないなんて。

 

その後は彼に家の特徴や近くにあったものをできるだけ思い出してもらい、なんとか地図アプリで場所を突き止めることができた。

 

「あてもなく、銃と携帯すら持たずに手ぶらで散歩って……あなたには危機感というものがないの?」

 

「ハイ、おっしゃる通りデス……」

 

彼は申し訳なさそうに答えた。その不用心さに呆れつつも、不思議と腹は立たなかった。むしろ、その無防備さが妙に可愛らしく思えた。

 

「はぁ……まぁいいわ。なんとか家の場所は特定できたし。それにしても、この辺りの地理が分からないだけじゃなくて、自分の家の住所すら知らないってどういうこと?」

 

「えーと……あ、そうそう!最近引っ越したばかりなんだよ!今年ゲヘナ学園に入学するから、近い方がいいと思ってさ!」

 

驚いた。彼もゲヘナの新入生だったなんて。でも、入学前に知り合いができたのは良かったかもしれない。

 

「え……そうなの?私も今年からゲヘナの一年生よ。よろしく」

 

少年は驚いた表情を見せた後、嬉しそうに笑った。

 

「そうなんだ!こちらこそよろしくね!…あ、そういえばまだ自分の名前言ってなかったね。俺の名前は蒼井リン。気軽にリンって呼んでくれ」

 

「そういえばそうね。私は空崎ヒナ。呼び方は……リンが好きなように決めて」

 

「うーん……じゃあ『ヒナ』で!よろしくね、ヒナ。……いやぁ、学園での最初の友達がヒナみたいな可愛くて優しい子でよかったよ!学園生活が楽しみになった!」

 

「っ……うん、私も」

 

リンの言葉に、私は思わず顔を赤らめた。心臓が早鐘を打つのを感じる。こんな風に褒められるのは初めてだった。

 

家にたどり着くまでの間、私たちは様々な話をした。彼の話す一つ一つの言葉が、私の心に暖かさを運んでくる。

 

そうこうしているうちに、いつのまにか彼の家に着いてしまった。もう少し話していたかったけれど、仕方ない……

 

「ねぇ、ヒナ。もし良かったらなんだけど連絡先交換しない?せっかく知り合ったんだしさ。それに…ヒナと話すの楽しいし」

 

「…ぇ…う、うん。いいよ」

 

別れ際、彼は私に連絡先を聞いてきた。男の子と連絡先を交換したことなんてなかったから少し驚いてしまったけれど、すぐに承諾した。これから同級生になるのだから、それくらい当たり前のことなんだと必死に自分に言い聞かせながら。

 

でも本当は、もっと彼のことを知りたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンと知り合ってから入学式までの間、彼とはモモトークで話したり、一緒に買い物にまで行ったりした。最初はそんなつもりなんてなかったのに、彼の口車に乗せられてしまった自分が恥ずかしい。自分がこんなにガードの緩い子だったなんて……。

 

そして今日は待ちに待った入学式。これからリンと一緒に過ごせる日々が始まると思うと、なかなか悪くない気分。隣を歩くリンも、学園生活への期待に目を輝かせ、興奮が隠しきれない様子だ。ただ、大声で叫ぶのは目立つからやめてほしい。

 

「あはは、ごめんごめん。今日からヒナと学園生活送れると思うとついテンション上がっちゃってさ。……それにしても、ヒナ制服似合ってるね!やっぱ美人だと何着ても様になるな〜」

 

リンの言葉に、私の心臓は激しく鼓動を打つ。彼の目に映る自分を想像し、嬉しさと恥ずかしさが入り混じる。彼はいつもこうだ。隙あらば私のことを褒めようとしてくる。本気で言ってるのか、ただ揶揄ってるだけなのかは分からないけれど、言われるこっちの身にもなってほしい。

 

「〜〜〜っ!!……リンも似合ってる」

 

私の返事に、リンは嬉しそうに笑う。その笑顔を見ていると、不思議と温かい気持ちになる。自分でもどうしてなのかはよくわからないけれど。

 

「そうかな?ありがと!……あ、そういえばさ、ヒナはもうなんの部活に入るとか決めた?」

 

「……私は風紀委員会に入ろうかと思っているけれど」

 

風紀委員会。私はそこに入ることに決めていた。

 

「風紀委員会か〜、いいね!生徒のために身体を張って治安維持とか、なかなか出来ることじゃないよ!……うーん、俺も特に入りたい部活とか無いしやってみようかな、風紀委員」

 

まさかリンも風紀委員会に入ってくれるなんて!私は心の中で密かに喜んだ。……でも彼、確か身体が弱いって言っていたような……。彼が私と同じ委員会に入ろうとしてくれることは嬉しいが、彼を危険な目には遭わせたくない。私の中で相反する感情が渦巻く。

 

「ほ、本当?……でもこの前、身体がそんなに丈夫じゃないって……」

 

「どうせなら人の役に立つことやりたいし。それに……ヒナがいればきっと大丈夫。俺の勘がそう言ってる」

 

「……ふふっ、なにそれ」

 

私は微笑む。でも心の中では誓いを立てていた。リンを守る。できる限り一緒にいて、常に目を光らせておこう。彼は同じ委員会の同期なんだから、これくらい当然よね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風紀委員会に入った彼は、案の定多くのトラブルに見舞われていた。私も常に気にかけてはいたけれど、やっぱり四六時中一緒にいるなんてことは不可能で。任務中に連れ去られたり、怪我をすることなんて日常茶飯事だった。その都度私が助けに行ったり、怪我の手当をしていた。

 

「ごめんね、ヒナ。また迷惑かけちゃって」

 

そう言って申し訳なさそうに笑う彼を見るたびに、私の中で何かが熱を帯びていくのを感じる。

 

この人を守りたい。

 

これ以上傷付かないでほしい。

 

そんな気持ちが日に日に強くなっていった。……それに…こんなに頼ってくれてるんだから、リンもきっと私のことを必要としてくれているはずだ。

 

リンを助けてあげられるのは私だけ。

 

私だけがリンのそばにいればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていたのに。

 

 

 

 

 

「最近入ってきた後輩の子が可愛くてさ〜。ちょっとドジだけど素直でいい子なんだよな〜。つい甘やかしちゃう」

 

 

 

 

 

なんで。

 

 

 

 

 

「あ、あの!ヒナ先輩!……ヒナ先輩ってリン先輩とどういう関係なんですか?……もしかして、付き合ってたりします?……え?付き合ってはない?……そ、そうなんですか!」

 

 

 

 

 

なんであんな子に。

 

 

 

 

 

「ねえ、聞いた?リン、後輩の子庇って怪我したんだって」

 

「えぇ?リン、あんなに弱いのに?どうしてそんな無茶したんだか」

 

「さぁ?……あ、でもこの前噂で聞いたんだけどさ。その庇われた後輩、リンのこと好きらしいよ」

 

「うわー、それは庇われた子嬉しかっただろうな〜。……実はリンもその子のこと好きだったりして笑」

 

 

 

 

 

なんで?

なんでその子に構うの?

なんでその子に笑顔を振り撒くの?

なんでその子を褒めるの?

 

その子に向けた眼差しを、私に向けないで。

その子に見せた表情を、私に見せないで。

その子を撫でた手で、私の頭を撫でないで。

 

ねぇ、リン。

 

どうして私だけを見てくれないの?

 

 

 

 

 

「リン先輩!今日も一緒に巡回しましょう!」

 

その後輩の言葉に、リンは優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

その瞬間、私の中で何かが切れた。

 

 

 

 

 

だめだ。リンは私のもの。誰にも渡さない。

 

 

 

 

 

この日、私はリンを守るための計画を立て始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日から半年が経過した。私の計画は着々と進んでいた。委員長になり、リンを守る立場を手に入れた。でも、まだ十分ではない。リンにたかる女の数は増え、リンは相変わらず危険な任務に就き、傷つき続けている。そのたびに私の心は引き裂かれる。

 

「ヒナああああああああああああああ助けてえええええええええええええ」

 

「はぁ……本当になんで風紀委員会に入ったのかしら」

 

私はため息をつきながらリンを助けに向かう。彼が危険な目に遭うたびに、私の中の何かが壊れていく。もう、こんな思いはさせたくない。

 

「うぅ、マジで痛ぇ……ありがとう、ヒナ。……あいつら次に会った時は絶対捕まえてやるからなァ!覚悟しておけよォ!」

 

「……」

 

リンの言葉に私は無言で頷く。彼が傷つくのを見るたびに、私の決意は強くなる。もうこんな思いはさせない。リンを守るために私は何でもする。

 

そして、ついに決断の時が来た。

 

「……ねぇ、リン」

 

「?……どうしたの、ヒナ?」

 

「……私、あなたにこれ以上前線に出てほしくないの。……代わりに、私の事務仕事を手伝って欲しいな……って」

 

やっと言えた。これで彼を守れる。私のそばに置ける。彼を独占できる。

 

「……分かった。これからはヒナの手伝いに専念することにするよ」

 

「〜〜〜っ!!ほ、本当!?……よかった、これでようやく……」

 

安堵の気持ちが込み上げてくる。これで全てが上手くいく。リンは私のそばにいて、誰も彼を傷つけることはできない。あの女たちから、リンを守ることができる。

 

でも、それも束の間だった。

 

プルルルル……プルルルル……

 

電話が鳴り、私は一時的に席を外す。戻ってくると、そこには予想外の光景が広がっていた。

 

リンの後輩が病室に入り、リンと話をしている。その光景を見た瞬間、私の心をどす黒い何かが支配していく。

 

「ねぇ、なにやってるの?」

 

私は冷たい声で言う。この女はいつもいつもリンに媚を売り、誑かそうとする。邪魔者は排除しなければ。

 

「リンは私の手伝いをするってもう決めたの。悪いけどさっさと帰ってくれる?」

 

「……それって本当にリン先輩が自分自身で決めたんですか!?委員長が誘導しただけじゃ」

 

この女は何を言ってるんだろう?リンが私のそばにいることを拒否するわけがない。だって、リンは私を必要としているんだから。

 

「うるさい。これ以上騒ぐならつまみ出すから」

 

後輩は不満そうな表情を浮かべながらも、渋々退室していく。

 

「〜〜〜っ!!……チッ……分かりました。それじゃリン先輩、また今度ご飯でも行きましょうね♪お大事に!」

 

その言葉に、私の中の嫉妬の炎が燃え上がる。貴女にリンの隣にいる資格なんてない。リンが必要としているのは私だけ。リンは私だけのもの。誰にも渡さない。

 

「………」

 

静寂が流れる。リンは困惑した表情を浮かべている。

 

「あ、あの〜……ヒ、ヒナ?一体どうしたの?」

 

リンの声に、私は我に返る。でも、私の決意は揺るがない。

 

「………。ねぇ、リン。金輪際あの子に近付かないでくれる?」

 

「う、うん。分かったよ。これから彼女とはできるだけ会わないようにする」

 

「……そう。なら許してあげる」

 

私は静かに微笑む。全てが思い通りになった。リンは私のもの。誰にも渡さない。

 

「……リンのそばに居るのは私だけでいい」

 

そう、私だけが彼のそばにいればいい。誰も私から彼を奪えない。これからは卒業までずっと、リンは私のそばにいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝日が差し込む窓辺で、私は今日も早くからデスクに向かっていた。昨日、リンを前線から引き離すことに成功し、今日からは私の手伝いをしてもらえる。この瞬間を、私はどれほど待ち望んでいたことか。

 

しばらくすると、遠くから誰かが喧嘩しているような声が聞こえた。はぁ……せっかくいい気分だったのに。

 

部屋を出て、喧騒の元へ向かう。廊下を歩いていると、どこからかリンの声が聞こえてきた。まさか、リンが誰かと喧嘩している?思わず足を止め、声の方へ耳を傾ける。

 

「アコ、お前は何も分かっちゃいない!」

 

「な、なんですか急に」

 

この声は……アコ?なんでこんなところに?それに、どうしてリンとアコが2人きりでいるの?私の心が不安で満たされていく。もっとよく聞こうと2人に近づいた。

 

「そもそも俺がヒナを愛でようが愛でまいが俺の自由だろ!?可愛いものを可愛がって何が悪いんだ!?」

 

突然聞こえてきたリンの褒め言葉に、私は歓喜する。それと同時に、なぜリンはこんなことをアコに向かって言っているのか疑問に感じた。

 

「な、なぁっ!…た、確かに委員長が可愛いのは事実ですが!……よ、よくもそんな聞いてるこっちが恥ずかしくなるような台詞を吐けますね……っ!」

 

「フッ、それはお前のヒナに対する愛が足りてないだけだ」

 

「い、今の台詞は聞き捨てなりませんね!委員長への愛なら、私の方がはるかに大きいですよ!」

 

二人のやり取りを聞いていると、もう我慢できなくなる。まさか、私への愛を競い合っていたなんて。嬉しいけど、恥ずかしい。そして、少し怖い。

 

「ふ、二人とも。それ以上はいいから…っ///」

 

私は顔を真っ赤にしながら、二人の前に姿を現す。リンとアコは驚いた表情を浮かべる。

 

「………」

 

「………」

 

「フンッ、き、今日はこれくらいにしといてやろう」

 

「そ、そうですね、委員長も来たことだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が過ぎ、仕事の終わりが近づく。

 

「リン、今日はここまででいいよ。あとは私とアコでやっておくから」

 

私はリンに優しく微笑みかける。これで今日のリンとの時間は終わり。名残惜しいけれど、明日もまた会える。その思いだけで心が満たされる。

 

「え、そう?じゃあお先に失礼しようかな。今日も一日お疲れ様、ヒナ」

 

「…うん。リンもお疲れ様」

 

「ちょ、ちょっと!私には何も無いんですか!?」

 

「ヘッ、誰がお前になんか挨拶するかよ、バーカ。………またな」

 

……でも、やっぱりリンとアコの距離が少し近いような気がする。アコはあの女たちとは違っていい子だ。だけれど、2人が話しているのを見るとどうしてもモヤモヤする。

 

「はぁ……でも、やっぱり悪い人じゃないんですよね……好みの子を見つけたら誰彼構わず甘やかす悪癖さえ無くなれば……」

 

「………」

 

……アコは何を言っているんだろう?リンはあの女たちに慈悲を与えてあげていただけだ。リンの好みはあんな女じゃなくて私だ。それ以外あり得ない。

 

「……あ、そういえば委員長」

 

「どうしてリンを委員長の手伝いにしたんですか?彼、前線の後輩たちにも慕われてますし、わざわざ呼び戻さなくてもよかっ」

 

アコの質問に、私の苛立ちが増す。慕われていた?“たかられていた”の間違いだろう。

 

「アコ。私が直接言っておくから、もうリンには構わなくていいよ」

 

私は冷静を装いながら言う。アコは確かにいい子だ。だけれど、リンについて何もわかっていない。リンを守るべきなのは私だ。

 

「…え?い、いやでも委員長も迷惑なんじゃ」

 

「私は大丈夫だから。心配しなくていい」

 

アコが慌てて部屋を出ていった後、私はじっと扉を見つめる。アコは大切な仲間だ。でも、リンのことになると譲れない。これで全て上手くいく。リンは私のそばにいる。もう誰にも奪われることはないはずだ。

 

私は静かに立ち上がり、窓の外を見つめる。そこには、帰宅するリンの姿が見えた。

 

 

 

 

 

「だからリン、これからもずっと私のそばにいてね。私だけを見ていてね。そうすれば……私はあなたの望むどんな『可愛い』にだってなってあげるから」

 

 

 

 

 




ヤンデレ度合い加速させすぎて、次のヒナ視点書く時めちゃくちゃ大変になりそう(自業自得)
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