「……生きてたんだな」
「定義が違う、あの時、あの場所で、
俺はこの世界から消えた。それをこの世界での死と
仮定するのなら、俺は死んだと言える。
事実、此処にいる俺は俺ではない。
あの場所で寝ている筈の俺の意識が肉体を持つ、
何者かだ」
「なら、生きてるじゃないか」
「そうだな」
軍服を改造しただろう服に身を包み、
泳ぐ目をゆっくりと此方に向ける。
「どうした、元気がないな」
「これが普通なんだよ」
ダガーを持つ手が震えている。
ゼファーが何をしたいのか大切な弟の事だ。
理解ができる、そして不思議とこうして対面した瞬間。
決着というのがどうでもいいとすら思えてくる。
「…野菜は、食べているのか」
「言われるまでもねぇ」
「そうか………恋人は……いや、聞きたくない」
「……何しに来たんだよ、今更……今更なにを!」
ダガーが震えている。
ゼファーは、2度も兄を殺したくないのだ。
家族を手に掛けるなどしたくない、
それが例え英雄だとしても。
「…お前が保護した……名前は何だったか」
「ミリィの事か」
「……あぁ、そうだったな。
支援金を送れて居ないのは申し訳なく感じている」
「……本当に何をしに」
「閣下と我が友ハーヴェス中将の再臨だ。
今のアドラーには、あの2人が必要なのだ」
「また……増やす気か、破綻者共を!」
「破綻者…破綻者だと?!我々はより良き未来の為に、
俺達のような社会の業を良しとしない!
人が、人ととして生きられるアドラーを目指した!
それを砕いた意様が言うか!」
「?!」
「…アドラーのスラム改革。私が始めに手を付けた事だ。
何のためにあの人を…家族を俺が殺したと思う!
何のために犠牲にしたと?!お前も理解しているだろう!
破綻者なのは俺達だ!壊れているのは俺達だ!
ヴァルゼライド閣下はそんな俺に光をくれた。
愛する人を殺され、殺した俺に光をくれた!
あの人は、凡人でも成せることを示したのだ!
そして、俺は成すべき所まで来ていた!
孤児だけでなく、スラム住人の矯正徴用。
確かに一部から見れば矯正徴用とは強権に見えるだろう。
しかし、軍という最上級の場所にて兵士としての生き方
だけでなく、工兵や後方での活動や学びを与え、
社会復帰も成功した!アドラーは我々の活動で変わる。
その筈だったのだ!
それを、貴様が……貴様の仲間が破壊した!」
「違う、それは確かにいいように見える。
でも、結局は自由を」
「自由とは社会により作られた中での自由だ!
何のための法、何のための秩序!秩序無き自由は
破綻への片道切符に等しい!判るだろ、お前なら!
スラムには秩序は無かった、俺はそこに秩序を与える。
裏社会という物を全て消し、光のもとで生きる事ができる。
それがなんという幸福か!そして、人間はその幸福を
矜持する権利がある!ゼファー、この話に乗れ!
ヴァルゼライド閣下、ギルベルト中将と話してみろ。
それが今、アドラーに必要な事なのだ!
各国はそれぞれに星辰体感応奏者を擁している!
アドラーのアドバンテージは少なくなっている!
だが、閣下、中将、チトセ。そして、お前とヴェンデッタ。
俺を殺したお前が」
その時、ゼファーのダガーが振るわれた。
そこに迷いが無い、そこにあるのは確かな決意。
「彼奴を…ヴェティを利用するのか」
「……何を」
「姉さんを、また……利用するのか!お前は」
「……姉さん……そうか………
くくっ……クハハハハハッ……
まさかとは思ったが、あのおんな。ヴェンデッタは
マイナ・コールレインのコピーだったか!」
「お前」
「いやはや……何処か姉を感じると思ったが、
コピーだったか、あぁ……ならばそうだな。
今度こそ、引導を渡そう。
俺の最期の闇に、俺をあのスラムに縛るその闇に!」
「兄貴!」
「………俺の罪は姉にお前を捧げてしまったこと。
俺自身も当時はそれが最善だと思ってしまったこと!
だが、その行為が俺の闇の始まりだった!
それが、俺の忘れられない暗い過去の終わりに等しい!
ヴェンデッタを殺す!
ヴェンデッタを殺し、俺の過去にする!
俺の思い出に…蓋をするために!!!」
「ふざけんな!そんな事はさせない!
彼奴は……ヴェティだ!」
世界に闇と光が溢れ出す。
全てを飲み込む深淵と深淵に呑まれようと、
逆に光で照らし出そうとする絶滅光が。
「創生せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星
輝く御身の尊さを、己はついぞ知り得ない。尊き者の破滅を祈る傲岸不遜な畜生王
人肉を喰らえ。我欲に穢れろ。どうしようもなく切に切に、神の零落を願うのだ
絢爛たる輝きなど、一切滅びてしまえばいいと
苦しみ嘆けと顎門が吐くは万の呪詛、喰らい尽くすは億の希望。
死に絶えろ、死に絶えろ、すべて残らず塵(ごみ)と化せ
我が身は既に邪悪な狼、牙が乾いて今も疼く
怨みの叫びよ、天に轟け。虚しく闇へ吼えるのだ
Metalnova Silverio Cry
超新星───狂い哭け、罪深き銀の人狼よ
「……俺にそれは通じない。
俺に油断もなければ、俺に」
「あぁ、アンタは俺が小細工すると思ったな。
そうだ、とっくにやってる」
胸から大量の血が溢れた。
斬り裂かれた胸など簡単に治療できる。
だが、あり得ない。すべてに警戒していたのだ。
見落とすはずがない。
「そう、アンタは全方位に警戒して、
俺という一点だけを見るのを止めていた。
俺は真正面からアンタを斬ったんだよ」
「ふっ……面白い、だが話して良かったのか?
俺に通じなく成るぞ」
「必要ない……今度こそ殺す!来いよ、英雄!」
「貴様の復讐譚も終わっているだろうに、
無駄な事をする者だ」
創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星
例え堕ちようとその光を喪わず、絶えず輝き続けよう。
闇夜を照らし、全てを拾い、掬う英雄の姿を今、刮目せよ。
汝、光を夢見る者なら渇望せよ。
汝、闇を生きる者達ならば救いを求めよ。
汝、悪に生きるものなら断罪を受け入れよ。
群衆よ、神をも降し、悪魔も屠ろう。今、英雄は此処にある。
我は今、正義也!
超新星 ーー輝ける正義の天秤は今、傾いた
Metalnova shine Libras leaning
「ちっ…本気を出してきたな……」
「貴様の闇と、俺の光。どちらが正しいか、
どちらが正義か、そんな事は決まっている!
ヴァルゼライド閣下こそが正義!そして、そこに付き従う
我等の行動こそ、正義なのだ!アドラーを衰退ではなく!
発展へと導くこと、それが正義と言わずして何になる!」
「その正義で何人の人間が泣く!戦争をし、戦いをし!
敵を殺して、仲間も殺して…いったい何人の人間が」
「お前か言えたことか?ゼファー!
お前も俺も同じ穴の狢だ!時に泥水啜り、光を求めた!
何が悪い!何がおかしい!俺はもう二度と、俺を作らない!
そのために!ヴァルゼライド閣下、ハーヴェス中将、俺、
そして、数多の将帥達。アドラーの発展の先に、国民の平和、
笑顔、希望がある。その希望をお前は消し去ろうとする!」
「なら!ヴェンデッタを殺すのは!必要なんだろ!
英雄の目的の為に…」
「ヴァルゼライド閣下を呼び覚まし、
再び必要となれば思いを押し留め生かそう。
だが、所詮マイナ・コールレインのコピー!
………コピーの………」
ゼファーのダガーとメルビンの剣が鍔迫り合いをし合う。
普段のメルビンなら、それこそあの時のメルビンなら、
この様にゼファー単体と互角になる事は本来なら絶対に無い。
なぜなら、メルビンは英雄だから。
英雄には、絶対的な勝利はない。常に逆境が付き纏う。
だが、その逆境は訪れない。
それどころか、メルビンは常に殺そうとしている。
殺そうとしているのだ。
「……判ってんだろ、無意味だって!
自分が……自分が今、何をしているか!」
「黙れ!」
「…アンタはいつも憧れてた!
皆を助けてくれるのかヒーローに!
誰かの為に戦えるヒーローに!
でも、アンタはなれないんだよ!
誰かの為に、必死になって……彼奴は……
英雄ヴァルゼライドは見ず知らずの誰かだ!
でも、アンタは……兄貴はそれを心の底からできやしない。
あの時も、確かに俺を殺そうとしてた…でも、
一撃で死ぬ事は無かった!アンタは家族思いなんだよ!
姉さんを……姉さんが壊れのを自分のせいだと思ってんのか!」
「黙れ!!!!」
激しい光が大地と空を抉り、ゼファーを突き刺す。
光の魔人、深淵すらも光で包む絶対的な強者にして魔星。
しかし、その心は既に英雄ではなかった。
「知った口を……知った口を!!!!!」
「おい……冗談じゃねぇぞ」
そこにあるのは正義ではなく、激しい怒りと哀しみ。
そして、遥かなる暴走だった。
「がは………」
ゼファーの肉体が弾き飛ばされる。
死ぬ寸前の一撃をダガーで何とか防いだが、
刃は既にボロボロ、勝ち筋は消えている。
「………くそ」
絶体絶命のピンチ、
そう主人公がピンチに陥ると常に何処からともなく
ヒーローが駆け付ける。
天を割いた一筋の光、アドラーの危機には必ずや、
この男が駆け付ける。
「……これも俺が生み出した罪か」
「アンタに助けられるとはな」
それは一瞬にして、呑まれようとする光を、
圧倒的な力でねじ伏せ斬り裂いた。
痛み、嘆き、絶望、そんなあまねく負の因子を
悉く屠らんとする圧倒的な煌めき。
邪悪どころか己の敵の全てを滅するその光
――天に轟く雷霆が如き、その姿。
ゼファーがかつて、目を逸らした。
辛い時、悲しい時、苦しい時、何処からともなく現れ、
助けてくれる無敵のヒーロー。
「……アンタが出てくるとはな」
「俺の名は……ケラウノス、悪の敵だ」
メルビン〘暴走〙
かつて帝都を襲った彼奴等になる寸前。
だからこそ、彼は現れた。
こうなる原因は彼にあると感じてしまったから。
数多の命が喪われようとしているから。
ゼファー
現状、最低愛悪の気分になっている。
殺したはずの男が2人も現れた。
しかもそれだけではない、帝都にその光は確実に届いている。
牡羊座の人
帝都に見えた2つの絶滅光で誰が現れたかを理解し、
仕事を投げ出し愛に向かおうとしていた。
しかし、天秤座の人に止められる。
天秤座の人
自分の元部下が復活し、暴走したのも感じ討伐に赴こうとした
矢先、感じたくない力と絶滅光をみてしまい、牡羊座の人を
鎮圧に向かった。下手に動かれては、現場にいる大切な男の
方も危険になる。
あの時に、殺しておけばと後悔し始めた。
救世主の人と灰の人と仲間達。
理解できない、ついこの前古都で終わらせてきたばかりなのに。
審判者の作戦か?やっぱり、英雄は死んでなかったのか。
急遽、天秤座の人から連絡が来て天を仰いだ。
願わくば、帝都に着く前に無職の人が何とかしてくれると………