光の奴隷のダンジョン攻略   作:影後

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閑話休題 
アストレアとリブラス

それはメルビンがアストレア・ファミリアの2人から誘われた
ダンジョンアタックに向かった後、
食事でもどうかとアストレア・ファミリアのホームまで
連れて行かれた時、アストレアはメルビンを観た瞬間、
泡を吹いて倒れたのだ。

「…俺は何かしたか?」

「アストレア様?!起きて!!!」

「なんで?!こんな事なかったのに!」 

メルビンが急いで回復させるとアストレアは意識を取り戻し、
メルビンの首元を掴んで揺らす。

「一体、貴方は何になった?!」

「うごぉ…」

敵対心や悪意は感じない、アストレアは只管に
焦っているのだ。

「アストレア様?!どうして」

「なんで私の天秤の気配がお前から感じるんだ!」

そう、アストレアの天秤は神器であり人間では無い。
いくら神にも等しい力を持っていようと、
メルビン・コールレインは『一人の人間』のはずだ。
人間のはずなのだ。

「それは、俺が正義であり、正義と悪を揺らす
断罪の天秤だからだ」

メルビンの姿が変化する。
白ではない、それはまさに光としか言いようのない装束。
アドラーの軍服の筈が何処か光を反射し輝く姿。
短い黒髪の筈だが、光輝いて見える髪。

「話が主、女神アストレアよ。
俺はメルビン・コールレインであり、
メルビン・コールレインを超えた者。
絶滅光を宿し、正義の女神に仕えし物の一側面。
アルテミス-No.ν天秤。よろしく頼む」

「………」

アストレアは完全に白目をむいて気絶した。



新たなる時代へ

「脇が甘いぞ!」

 

「くっ…ますます腕が上がりましたな。

隊長、我々最先鋭の攻撃を受けてもさばき切りますか…」

 

「本当ッ、イカれてますよ!」

 

「なんで背後からの攻撃も防げるんだ?!」

 

「全方位だと避けられる、接近戦は返される。

難攻不落!いやぁ…副長、どう攻略しましょうか。

あの砦」

 

「俺を砦と呼ぶか、ならば俺の3倍の戦力を持ってこい。

無論、大軍ではなく少数先鋭。3人までが望ましいな」

 

「オラリオで隊長と全力で戦えるの、

フリュネ団長と副長ぐらいでしょ。

他はもう居ませんって」

 

「だが、皆成長しているさ。

冒険者と自称する者達よりもな。

変わらず、我が警備隊と

イシュタル、ガネーシャ、アストレア、ヘルメス、

ヘファイストス、デメテル、ミアハとは良き関係を

築けている」

 

特に関係深いガネーシャ、アストレア、イシュタル、

中でもガネーシャとアストレアファミリアには

メルビンを師と仰ぎ英雄を志す者達が在籍している。

無論、メルビン等の破綻者ではなく英雄。

強さと功績を讃えられるだけのちっぽけな物ではない、

弱きを助け強きを挫く、消して死なず、決して折れない。

光の奴隷ではない、絶滅光に焼かれはしていないのだ。

 

「そう言えば、『戦力を放出せず溜め込んでいる』と

一部ファミリアから苦言が」

 

「知ったことか。

我々は正義の為、アドラーの為に戦う」

 

「無論です」

 

他ファミリアからすれば、メルビン達は成り上がりだ。

しかもオラリオを荒らした愉快犯とも言える。

だがアドラーからすれば今の生活を守る為、

武器を取る覚悟もある。

ましてや、アドラーに住む義務として

ダンジョンアタックがある。

戦えなくては意味がない、走れなくては意味がない。

メルビンの指導のもとで皆がレベル3という実力者。

逆に警備隊は最低レベル3、幹部級ともなれば4から5は

当たり前、副長たるゲールマンは隻腕でありながら、

既に6にまで上がっている。

無論、ヘラが居ないためメルビンはレベル8から

上がりようがない。

ヘラ・ファミリアだった警備隊メンバーは

既にガネーシャやイシュタルに改宗済みだが、

メルビンは最後までヘラ以外を母とするつもりは無い。

 

「レベル8から上がれると思いますけど……

ヘラ様居ないんですよね」

 

「ふん…そもそも、神の力で強くなるというのが間違いだ。

俺はヘラに言った。力とは、経験とは…全て己で培う物。

だから最初否定した、だがレベルも己を強くするための

ドーピング、まぁ星辰光に遥かに劣るものだが、

強くなるためならば、何でも使え。

戦いとは、勝利する事を言うのだから」

 

メルビン・コールレインは何処まで行っても英雄だ。

だが、過去を過去として生きることができるようになった。

ヴァルゼライドにはならない、ヴァルゼライドにはなれない。

だから、己が英雄として在り方を示すのだ。

 

 

イシュタル・ファミリアにてメルビンは

団長フリュネ・ジャミールと茶を飲み交わしていた。

巫山戯た事に軍事帝国アドラーの軍服を身に纏い、

壁にはクリストファー・ヴァルゼライドの絵画。

まるでメルビンに見せつけるかのようにある。

 

「……ふぅ、」

 

「なんだ、呼びつけて」

 

「アレ、欲しいかい?」

 

「そんなことの為だけに呼んだのか?」

 

フリュネは豪快に笑いながらも、真面目なトーンで話す。

 

「真面目な話さ、此奴は旅の商人が持ってた。

アンタ、何したんだ。世界が繋がってる証拠だ。

アタシは死んでから此方に来た。アンタもそうだろ。

アタシは転生という形だが、アンタは転移、

その違いはあれどアッチの世界のものは無いはずだった。

なのに、スキルじゃない力。星辰光なんて物を使える奴、

そして、この絵画だ。全部アンタが何かしてからだ」

 

それは確実だと言える目をしていた。

メルビン以外に理由が思いつかないのだから。

 

「俺は……意識だけ、魔星としてアドラーに帰還した。

そこで、俺はリブラスとなった」

 

「……だいたい予想ついたわ。

アンタの弟だけじゃなくて、閣下ともやりあったね。

いや、違うか。アンタのことだ、閣下を呼んだんだろ」

 

「お前は閣下が亡くなったのは知らないと思ったが…」

 

「なにそれ、どうせ生きてんでしょ。

兎に角、詳しくは聞かないよ。魔星になったこともね。

でも、一つ言わせてもらうわ。

これ以上、アッチとコッチを繋ぐのは止めた方が良い。

まぁ、星辰光を発現する奴なんて、隊長に脳を焼かれたか、

隊長を止めようとした奴か、ライバルぐらいだし」

 

「そう言うお前はどうなんだ、フリュネ。」

 

「アタシは……ほら、フリュネだからね。

私の出来ることをして、それ以上は望まないよ。

それに、ウチの神様は結構気に入ってんだ。

アンタみたいに神をただのシステムにするなんて…

そんなだいそれた事考えてないよ」

 

「……今はそこまでではないさ。

アストレアも、我が母も……」

 

「我が母ね……随分とヘラに入れ込むねぇ……

じゃあゼウスが父親に」

 

「次に会うことがあれば今度こそ、奴を血祭りに上げよう」

 

「……もうやだ」

 

「……それだけじゃだろう」

 

「まぁね、アンタが暴れてからオラリオの近郊は完璧に

崩れちまったんだ。

ゼウス、ヘラの二大巨塔が倒れ、そこに入り込もうとした

ロキ、フレイヤはたった一人に倒された挙げ句、

多数のファミリアにおいても大勢の冒険者が死んだ。

アンタに殺された。だが、治安維持にガネーシャ、

アストレア、アタシら、警備隊が参戦し犯罪者は軒並み

逮捕、処刑。ギルドの方はアンタが抑えたね。

まぁ、解放したみたいだけど」

 

「一時の邪魔をされなければどうという事はない。

そもそも、我々警備隊はギルドと友好を気付くつもりはない。

個人の勝手だ。素材の売却ルートは既に完成して居る。

売って買う、それができている。

農産系ファミリアにも人がいる。

第一、オラリオの門が必要なくなっている。

此方の門も完成した」

 

「まじかい、通りで荷車が多いわけだ。

兎に角、アンタはギルドに泥を塗った。

オラリオの勢力図も書き換えた。しかも闇討ちも効かない。

なんとも恐ろしいよ」

 

フリュネはそう言うが、既に警備隊と関係深いファミリア、

その中でもイシュタル・ファミリアは一蓮托生に近い。

警備隊のメンバーと結婚した団員も居る。

そして、フリュネ自身もかつての隊長たるメルビンに対する

忠義とは違うが、仲間意識は捨てていない。

 

「まぁ、なるようになるさね。

あんたは母親探して、いい加減に結婚しなよ。

アンタの過去は知ってるし、理解もしてる。

今も狙われる立場だ、アンタは」

 

「ならば」

 

「でも、時代を繋ぐ。未来へ繋ぐのは人間の使命さ。

子を成し、育てる。分かってるだろ?アンタは父親になれる。

孤児の教育もしてるし子供の相手も慣れっこだろ」

 

「……わからんさ」

 

戦い続ければ、また捨てられる。

その苦しみは、未だに残っている。

いや、理解している。捨てられたわけじゃない。

護りたいと、自分の欲望をただぶつけ、

鳥籠の中で妻を管理していた。

そのせいで、離れていってしまったのだから。

 

「同じ失敗はしないだろ、アンタも」

 

「……わからん。それに、俺に意見できる女性が、

貴様か女神しかいない時点で察しろ」

 

「流石にアストレアと結婚はねぇ……」

 

「無理だろ、リブラス。アストレアの天秤だ。俺は。

所有物と同じ様な存在だと気付いた瞬間、

アストレアは泡を吹いて倒れた。大変だった」

 

フリュネはその姿を容易く想像できた。

 

「まったく……」

 

その日、フリュネはメルビンに付き合う形で酒場に向かう。

その姿を誰かに見られたのだろうか。

メルビンとフリュネが関係を持っているという噂が流れたが、

フリュネもメルビンもただ騒ぎ立てる事はせず、

下らないと吐き捨てた為、多く広がることはなかった。

 

 

 

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