もしも綾小路清隆が◯◯の前で撃たれたら   作:せご曇(せごどん)

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綾小路の計画は具体的に分かっている。
3年生の時点で思い描く構図。
このまま彼の望む通りに進ませてしまっては、面白くない。
なら、それを乱すにはどうすればいいのか、既に答えは出ている。
邪魔をしたい。
困る顔が見たい。
自らの計算の及ばぬ領域もあることを突きつけたい。
感情を引き出し、その上で彼を壊したい。愛したい。

「残念ですね。あなたの計画は、夏の無人島試験の時から狂い始めているんです」

(2年生編9.5巻 P177より引用)




もしも綾小路清隆が坂柳有栖の前で撃たれたら③

 

オレたちが外出の許可を貰ったのは今日一日だけだ。ホワイトルーム生であるオレが、外に長居する訳にはいかないからな。

 

神室の自宅を後にしたオレたちは、車に乗り込んだ。

 

エンジンがかかり、前へと進んでいく。その時、坂柳の顔を見た。目元は赤くなっており、泣きじゃくっていた痕がはっきりと見て取れる。

 

坂柳のこれまでを知っている訳じゃないが、プライドの高い坂柳のことなので、涙を流すことなど無かったと考える。

 

その坂柳が、恥も外聞も捨てて、オレの前だとしても声をあげて泣いた。これは大きな進歩だ。

 

自分を偽らない。それが、今の坂柳にとっては極めて重要な学びだ。

 

「……………………私は」

 

坂柳が、車内で初めて口を開いた。

 

「私は、傲慢でした」

 

坂柳は、前を見たまま続ける。

 

「天才である私が、才能の無い人と友達になることなど無いと、ずっと思っていました。小学校でも、中学校でも、私は初めから周囲の人たちを見下し、ずっと孤高であると考えてきました」

 

先日も言っていたことだな。

 

「ですが………」

 

坂柳の目に、涙が浮かんだ。

 

「私は………知らず知らずのうちに、真澄さんのことを………友達だと思うようになっていました………それを、それをずっと否定して、私には友達はいないと……………凡人とは違うのだと、意地を張って……………」

 

坂柳の身体が震える。まだ出し切れていない想いが、溢れ出ていく。

 

「もっと………真澄さんとお話したかった…………まだ……まだ、真澄さんと過ごしていたかった……………」

 

これが、坂柳が隠していた本心。

 

いなくなって、失って初めて気付けたこと。これまでの坂柳なら馬鹿馬鹿しいと一蹴した、純粋な気持ち。

 

「人間は一人では生きていけない………こんな身体ですから、誰よりもそれを知っていたはずです………なのに私は、周りに本当の意味では………目を向けていなかった…………自分のために周りが動くのを、当然だと思っていました…………」

 

人間を単なる駒としか見ていなかった、か。

 

そこはオレと変わらないが、少なくとも誰かのために涙を流せるほどの情があるのならば、初めから決めてかかるべきではない。

 

「自分が憎いです………もっと素直に、真澄さんとの時間を過ごせば良かった…………目線の違いなど……関係の無いことだったのに……っ………」

 

オレは坂柳の懺悔を黙って聞き続けた。

 

別に、彼女の在り方が全て間違いだとは思わない。上に立つ者として、ドライに人間を判断する能力は間違い無く求められる。逆に一之瀬なんかは、それが無いから今年は伸び悩んでいた訳だしな。

 

だが、坂柳はそれが行き過ぎていた所がある。完全に一人で生きていける程に強い訳ではないのに、周囲に目を向けることをしてこなかった。これまでの葛城の話やクラスメイトたちの様子からも、完全にAクラスを私物化していたのだろう。

 

まだ龍園の方がクラスメイトに目を向けている。決して甘やかしはしないが、失態を演じた際には自主退学をしようとするなど、率いているからには自らの行動に筋を通そうという意気込みは感じられる。

 

「私は……こんなにも………弱かったのですね…………」

 

どうやら、オレの目論見は成功したらしい。

 

独り善がりな傲慢さを一度破壊し、周囲への関心を高めてもらう。

 

駒だと思っていた相手も血の通った一人の人間であり、感情がある。それとどう向き合うかを、今後は学んでいくことだろう。

 

未知の分野ではあるだろうが、坂柳は賢い。未熟さを自覚したら、周りにも助けを求めるはずだ。

 

リーダーとして、次のステージへと進むための下準備が整った。

 

オレはそのまま、坂柳が泣き止むのを待った。言葉は不要だ。今は、濁った感情を洗い流した方が良い。

 

しばらくして、坂柳の嗚咽が聞こえなくなった。

 

「…………綾小路くん」

 

「何だ」

 

細々とした声で、坂柳はオレに語りかけてきた。

 

「あなたは………私を置いて行かないで下さいね…………」

 

「…………………………………」

 

置いていくな、か。

 

どう返すのが、正解なんだろうな。こういう時、オレは力を発揮出来ない。

 

オレもまだまだ、学ぶべき点は多そうだ。

 

 

 

 

 

寮に帰還した後、流石に一人にはしておけないので、オレは今夜一晩を坂柳の側で過ごすことにした。

 

今の坂柳は弱りきっている。以前なら、仮にここまで弱っても気丈に振る舞い続けようとしたのだろうが、今の坂柳はかつての自分から変わろうとしている。その第一歩として、まずは人に頼ることを覚えてもらう。

 

ちなみに、いかがわしい行為は一切していない。あくまでも、坂柳のベッドの側で寝ただけだ。

 

恐らくそう言っても誰も信じないのだろうが。

 

朝、部屋から出る所を誰も見ないだろう時間帯に、彼女の部屋を後にした。

 

いかに敵対クラスのリーダーといえども、それ以前にオレたちは男と女。一晩を同じ部屋で過ごすというのは客観的には全く歓迎出来ない。

 

それこそ、クラスの違いを抜きにして男女の仲になっているカップルなどいくつもあるのだから、あらぬ誤解は避けなければならない。恵にでもバレたら、何を言われるか分かったものでもないしな。

 

オレは早朝に自室へと帰還し、朝食の準備を開始した。

 

だが、その日の夜。インターホンが鳴ったのだ。夕食の準備を終え、これから食事を始めようというその時に、誰かがオレの部屋を訪ねてきた。

 

誰だろうかと思ったら、その相手は坂柳だった。

 

『あの………綾小路くん…………………』

 

元気の無い坂柳の声が、インターホン越しに耳に入ってきた。

 

「どうした」

 

何か緊急事態なのか。そう思い、オレは坂柳の言葉に耳を傾ける。

 

『その…………少しの間で良いので、側にいさせて下さい…………』

 

「ん…………」

 

オレと一緒に…………。

 

まだ心が弱ったままなのか。………いや、おかしな話ではないか。親しい人間の死など、坂柳には初めてのようだからな。

 

いかに坂柳といえど、初の経験に戸惑いを覚えているのかもしれない。これがただの退学であれば、落ち込みはするかもしれないが何とか立ち直ったのだろう。だが、死亡ではまるで話が違う。

 

卒業してからもう一度会える退学と、もう一生会うことの出来ない死亡では、心に与える傷の深さが全く異なる。

 

ここで変に心が折れてしまっては意味が無い。オレの思い描く未来は、坂柳が立ち直ったその先にあるものだ。もし知らぬ間に龍園あたりに攻撃でもされたら面倒なことになる。

 

これまで助けを求めてはこなかったクラスメイトたちに胸の内を打ち明けるのも、もう少し心に余裕を取り戻せてからの話になるだろう。

 

リーダーとして倒れてしまわないように、今は坂柳の力になった方が良い。そもそもの原因はオレにある訳だしな。

 

オレは玄関の扉を開け、坂柳を部屋に入れることにした。

 

「申し訳ありません…………」

 

「良い。オレがあの時助けられなかったせいでもある」

 

2年生寮は死人が出たこともあり、明るいムードではない。

 

しばらくは恵もオレをそっとしておく方針のようなので、色々と都合がついて助かる。

 

オレは坂柳に今作った夕食をご馳走し、オレの分は新しく作ることにした。

 

これから数日間は、坂柳がオレの部屋を訪れる機会も増えるかもしれないな。年末と年明けも、この調子が続くこともあり得る。

 

一応、ケジメは取らせてもらおう。

 

「あまり他人に料理を振る舞う機会は無いんだが、味の方はどうだ。忌憚のない意見を聞かせてほしい」

 

「………美味しいです。とても、温かくて………………」

 

なるほど。

 

恵には何度も出しているが、同じような意見を聞けている。オレの料理の腕は上達していっているらしい。これもホワイトルームでは学ぶ機会に乏しかったので、まだ腕を磨き続けたい。

 

その後、オレは就寝時刻の手前まで坂柳の側で過ごした。

 

流石に昨日のように一晩を過ごすのはまずいので、一旦は坂柳には帰ってもらうことにした。

 

 

 

 

 

綾小路くんのお部屋から自室に戻り、既に就寝の準備は終えました。

 

情けない話です。

 

自分の問題を、自分で解決することさえ出来ないなんて。

 

綾小路くんの言う通り、人間は一人では生きていけません。心が弱りきった時に、側に誰もいないことが、これ程辛いとは思いませんでした。弱者の気持ちなど考えたこともない私が、まさに今弱者の立場に陥っています。

 

その結果、綾小路くんにまで頼ることに。

 

もう、以前の私が遠く離れていってしまっているようです。

 

そして─────私は彼と過ごしている内に、胸の内で膨らんでいっているものを感じました。

 

あの時、雪の降る夜の中、綾小路くんに伝えようと思っていたこの気持ち。それが、少しずつ大きくなり始めている。

 

弱っている時に、側にいてくれる。ただそれだけのことのはずなのに、こうも気持ちが乱されるなんて。綾小路くんがただの優しさでそうしている訳ではないと知っているはずなのに、胸が高鳴ってしまう自分がいます。

 

私も、女だということなのでしょうか────────。

 

 

 

 

 

 

 

私の綾小路くんへの想いは日に日に強まっていきました。

 

真澄さんの顔を思い出すたびに胸が強く痛んで、泣きそうになります。その度に綾小路くんの顔を思い浮かべて、気持ちを和らげています。

 

こんなことでしか、今は気持ちを落ち着けられません。

 

分かっています。それが、適切ではないことは。彼が何をしたいのかを理解している今、彼に頼る現状は好ましくありません。

 

しかし…………そうしなければ、耐えられない自分がいます。

 

クラスメイトの皆さんに頼ることも考えました。助けてほしい、側にいてほしい、そう告げようとも思ったのです。

 

ですが、その時に過去の私の振る舞いが思い起こされました。

 

以前までの私は、他人の気持ちなど省みることも無く、ただ私のやりたいことだけをやってきました。綾小路くんに連なる形で体育祭を勝手に休んだことも、協力型総合筆記試験で堀北さんたちに敗北したことも、良く思わない方々はいたはずです。

 

こんな時に、一人の人間として私を見てくれている人が、一体どれ程いるのでしょうか。

 

皆さんが求めているのはAクラスを導く坂柳有栖であって、一人のクラスメイトである坂柳有栖ではない。私生活で私と共に過ごす方がいないのが、それを明示しています。

 

真澄さんのように、1年生の時に脅しによって派閥に引き入れた方は何人もいます。彼らが、私を愉快に思っているでしょうか。………思っていないはずです。

 

私は………拒絶されることを恐れていました。

 

情けない。

 

私は、本当に何も見ようとはしていなかったのですね。

 

そして、今では毎日綾小路くんに縋っています。彼と何かしらの関わりを持たないと、私は自分を保てないほどに弱ってしまいました。

 

今の私で、学年末試験を戦い抜けるのでしょうか………?龍園くんとの勝負に、勝てるのでしょうか………?

 

いずれ、綾小路くんに認めてもらうことも…………。

 

ああ…………真澄さん……………………。

 

 

 

 

あと数日で3学期になるある日。

 

私は綾小路くんのお部屋にお邪魔していました。

 

また、彼の側にいたいと思ったからです。…………一人では、あの辛さに耐えられないから。

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

お互いに、何も話すことはありません。談笑をする心の余裕は、今の私には無い。

 

ただ、彼の側にいたいだけなのだから…………。

 

「坂柳」

 

「………はい」

 

「このままオレとの時間を過ごすのが難しいことは、分かっているな?」

 

「…………………………」

 

分かっています。分かっていますよ。

 

あなたには、あなたの計画がある。私がこうして側に居続ければ、あなたは自由に動けなくなる。

 

利用しているだけとはいえ、あなたには軽井沢さんという恋人が──────。

 

「…………? どうした」

 

私と綾小路くんの距離が近付いていきます。

 

私の足が、気付けば綾小路くんの方へと動いていたのです。

 

そして────────。

 

「ん……………」

 

私は───────彼の唇を奪っていました。

 

「……………!?」

 

自分が何をしたのかに気付けず、私は後ろへ下がろうとしました。

 

しかし、その速さに足が追いつけずに、その場で尻もちをつきました。鈍い痛みが、お尻に伝わってきます。

 

「坂柳…………………………」

 

「あ………こ、これは……ですね…………」

 

綾小路くんの視線が、私に釘付けになっていました。

 

言い訳の言葉を並べようと頭を全力で回転させます。しかし、何も言葉が見つかりません。

 

「…………今日はもう帰ってくれ」

 

「あ………そ、その………」

 

「このままここにいても、お前のためにはならない。一度気持ちを落ち着かせた方が良い」

 

「……………………」

 

このお部屋は元々綾小路くんのお部屋。

 

私を拒めば、これ以上長居することは出来ません。

 

綾小路くんのあの視線。間違い無く、良くは思われていないはずです。

 

この気持ちが暴走して、自分でも制御が効かなくなってしまった。理性で押さえつけられない程に、弱ってしまったと言うのですか…………?

 

「そ……その………本当に、申し訳ありませんでした………」

 

「気にするな。ただ……オレにばかり頼るのはもう止した方が良い。周囲にも目を向けるんだ」

 

「……………………………」

 

そう………したいのですが…………。

 

……………………………………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

既に冬休みは終わり、新しい学期が始まった。だが、坂柳はどういう訳か、まだオレに助けを求める。チャット、電話、場合によっては部屋を訪れてくる。

 

まさか接吻をしてくるとは思わなかった。

 

────────────まずいな。

 

人の死を軽く見過ぎたか。

 

ホワイトルームでは、親しい人間の死の悲しみから立ち直るまでの時間については教えられなかった。

 

知る必要の無い情報だからな。それで揺れ動くような感情は求められてはいなかった。そもそも、親しい人間など生まれない環境が築かれていた。

 

だから、気になってインターネットで調べた。親密な人間が死んだ場合、立ち直るのにはどれ程の時間を要するのか。人によって差異はあるのだろうが、一般的な話を調べてみると、驚愕の事実が明らかになる。

 

最低でも数ヶ月。

 

死者の生前にああすれば、こうすればといった自責の念に駆られたり、孤独感を覚えることになるらしい。

 

そのまま、今の坂柳の状態だ。

 

仮にこれが退学だったとすれば、既に立ち直る頃だっただろう。オレは過去にある生徒と親しい者が退学した例────長谷部波瑠加と天沢一夏の感情のサンプルをもとに、坂柳ならば神室の死をぼちぼち乗り越える頃だろうと考えていた。

 

だが……………。

 

初めての死の悲しみは、予想を遥かに超えたダメージを坂柳に与えていた。

 

オレは人の死と退学はまるで違うと頭では考えていながら、実際には大して違わないものとして認識していたようだ。

 

人に頼ることを覚えたのは良いが、その対象が現状オレしかいないというのは歪でしかない。接吻までしてきたことからも、オレへの意識の偏りは相当なものと見て取れる。

 

数ヶ月、オレが坂柳のケアをしてやるのは難しい。他の3クラスが坂柳の復活を待ってくれるはずもない。

 

そして、もう一つの誤算がある。

 

それは、「坂柳有栖がぼっちである」という点だ。

 

神室が死んだというのに、チャットでも電話でも、坂柳には慰めの言葉が全く掛かっていなかった。

 

どうやらクラスメイトたちには、神室もまた自分たちと同じ「駒」でしかなく、坂柳が死を悼むことは無いと思われていたようだ。実際の彼女の気持ちがどうだったかは関係無く、客観的にはそう見えていたらしい。

 

それ自体は、あの時ケヤキモールで考察していた。これまで周囲を見下して生きてきたので、友達と呼べる人間がいないと、本人も語っていた。

 

だが、まさかここまでとはな。あまりAクラスの事情に詳しくなかったことが災いした。

 

その排他的な態度は恐らく周囲に伝わっていた。高嶺の花………というよりは、坂柳有栖というキャラクターには近寄りがたさがあった。特別試験で結果を残しているのでクラスメイトたちは彼女に従ってはいるが、心から従っていた訳じゃない。

 

現に、初めは葛城と派閥争いをしていたことからも、彼女の思想と異なる思想を持つ生徒は多数存在したのだ。それでは勝てないと悟ったから彼女に従うようにはなったが、それは人間的に好いてのことではない。

 

むしろ人格的に考えるのならば、言っては悪いが坂柳には魅力が無い。

 

神室が万引きの証拠という弱みを握られていたことや、葛城に対してクラスメイトの退学を脅しに学年末試験での活躍を約束させたことなどから、弱みを握ることで駒にしたクラスメイトは他にも存在するだろう。

 

神室は嫌がってはいなかったが、他の者は不快に思っていたのではないか。

 

1年生の時の一之瀬に対する陰湿な攻撃も、クラスメイトたちが心から望んで行っていたかと問われると疑問が残る。傍から見ても分かる一之瀬という善人を傷つける噂を流すことに、何の罪悪感も覚えなかったのか。答えは違うだろう。

 

はっきり言えば、これまでの坂柳有栖は「嫌な女」だ。

 

傲慢で、陰湿で、攻撃的。友達にしたいと思える要素は見当たらない。

 

特別試験での失態により求心力を失ったが、戸塚弥彦という最後まで側にいてくれる人間がいた葛城の方が人格においては魅力的だろう。葛城に従わなくなったクラスメイトも、葛城の人格そのものを嫌っていた訳ではないと思われる。彼女の恐怖政治により渋々離れていった者もいたのではないか。

 

坂柳本人の人徳で人を従わせた訳ではない。

 

人間的な隙を全く見せてこなかったことで、本当に辛い時に側にいてくれる者も逆にいなくなった訳か。

 

一方で─────オレはかなりの人間から慰めの言葉を掛けられている。

 

同じクラスからは、堀北、須藤、洋介………いや、ほぼ全員から掛けられた。既に絶交した元綾小路グループのメンバーや、櫛田ですらメッセージを送ってきたのが意外だった。

 

他のクラスだと一之瀬クラスの一之瀬や神崎、渡辺などからメッセージが送られた。龍園クラスだと石崎やひよりからメッセージが来た。

 

今日だって、登校するとまず神室の件に触れられたぐらいだ。命がけで救出に向かったオレを称賛する声も少なくない。

 

何というか、その、オレは結構大事にされているのか。正直、驚いた。冷酷な対応をクラスメイトに取ったこともあるというのに、こうも想われているなんてな。

 

人間の感情とは、まだまだ分からないものだ。

 

さて、今後の坂柳についてだが。

 

──────────困った。

 

死という問題がデリケートである以上、突き放せば本気で心が折れてしまう可能性もある。だがこれ以上くっつかれるとオレも動きづらくなる。一応、恵という彼女がいる訳だしな。

 

かと言って、クラスメイトたちに彼女を慰められる者がいるのか。一之瀬クラスと違って、善人の集いではないだろう。Aクラスの生徒とオレは接点があまり無いので、坂柳を頼める人間が誰か、よく分からない。下手な慰めは逆効果になる。

 

これで坂柳が潰れれば、オレの計画は崩れる。その場合は不本意だが別の構想を練る必要性が生じるな。

 

これは………神室を死なせたオレへの罰か。これが、「自業自得」というものか。

 

場合によっては、神室の死は無駄になるかもしれない。その時はその時で仕方無いが、自分で可能性の芽を摘んでしまうことになるのは、何とも口惜しいな。

 

今後、他の可能性の芽に対しては、慎重な対応を心掛けるとする。失敗は成功のもとだ。今回の失敗を乗り越え、その先を見据えなければならない。

 

坂柳については、もう少し様子を見る。その結果、オレが彼女を『介錯』するかどうかを決める。

 

さて、後少しで「生存と脱落の特別試験」が始まる。オレは堀北を呼び、彼女に新しい視点を与えることにした。

 

 

 





奇しくも坂柳の望みは叶った。

次は誰の前で撃たれて欲しい?

  • 天沢一夏
  • 軽井沢恵
  • 龍園翔
  • 長谷部波瑠加
  • その他
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