Selector Unlimited WIXOSS   作:-Y-

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3.その名は"天照"

「くそっ……なんなんだ、なんなんだあんたはっ!」

 

 戦場は崩壊し、私達は元の世界に戻る。(正確には現実世界の身体が意識を取り戻す)

 その瞬間、優が私を睨め付け言った。

 

「あなたもご存知、"アンリミテッド"。さっき言ったでしょう? とにかく、早く妹に会わせて」

 

「……後日、"リミテッドバトル"を行う会場を連絡するわ。――ふん、あんたなんかじゃ到底リーダーには勝てないだろうけど」

 

 優が吐き捨てるように言った。

 

「さあ、それはどうかな」

 

 私はその言葉になんの興味も見せず言った。そんな私の様子を見て腹立ったのか、ぶつぶつと何か呟きながらこの場を去っていった。

 

「由利……待ってて」

 

 私は真っ暗の夜空、そこに浮かぶ星を見上げながら呟いた。

 由利は、絶対に取り戻す――

 

 

 

 

***

 

 

 

「――へぇ、負けたんだ。君」

 

 とある部屋の一室。

 巨大なモニターの前で、テーブルに足を乗せ座る少女と、リミテッドの優、そしてスーツを着た男がいた。

 

「ご、ごめんなさいリーダー。でも、あいつのルリグ能力は分かりました。ゲーム開始時は無色だけど赤デッキのルリグでした」

 

 必死に頭を下げ、そして自分はただ敗北したわけではなく有用な情報を持っているんだ、ということを示す。

 

「そう、赤デッキなの」

 

「はい、なのでリーダーのルリグ能力で動きを止められるはずっ――」

 

「地下行き」

 

「……えっ?」

 

 優はリーダーと呼ばれる少女の言葉を聞き取れず、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「地下行き、と言ったの。ほら、早く行きなさい」

 

「ちょ……待ってください! もう一度やらせてください! 次は、次は絶対に――」

 

「敗北者には罰を。私の言ってることが分からないのかしら?」

 

「ひっ……」

 

 少女の冷たい視線が、優に突き刺さる。

 まるで悪魔にでも睨まれたかのように、優の身体が硬直した。

 

「連れてって」

 

「はっ」

 

 少女がスーツの男に命じると、優の腕を無理やり掴み部屋から追い出そうとする。

 

「待って! やだっ! あそこだけは、地下だけはっ――」

 

「さようなら……」

 

 優はスーツの男に連行され、部屋のドアは無情にも閉じられ優の言葉も聞こえなくなった。

 

「ふふ……早く会いたいわ。咲……」

 

 少女の中に、もう優という存在はない。

 咲を思い浮かべながらサディスティックな笑みをただ浮かべていた――。

 

 

 

 

***

 

 

 

 次の日。

 

 私はパソコンの前に向かい、"とあるサイト"にアクセスしていた。

 "アンリミテッド・ネットワーク"……私が所属するアンリミテッドが管理する情報共有サイトだった。

 IDとパスワードを入力し、ログインする。このサイトにはゲームを勝ち進めるために必要なノウハウやリミテッドに関する情報が掲載されている。

 

 私が次に戦うであろう相手は恐らくリミテッドのリーダーだろう。それを踏まえ、事前に情報を集めておこうと思ったのだ。

 基本的な情報ならば既に知っている。リミテッドのリーダー、"愛染姫子(あいぜんひめこ)"。

 国の中でもトップクラスの企業"愛染グループ"の社長、その娘がリーダーらしい。

 

 私の見解では、もうこの少女は"姫子であって姫子ではない"。

 既に夢限少女システムを利用した入れ替わりが発生していると思われる。サイト内の情報にもそれらしいことが書かれている。

 

 そもそもリミテッドとは、本来小規模の集団だった。

 その行動目的は、"好きな他人の身体を手に入れる"こと。だが今では単純にそういうわけではなくなっていた。

 

 勢力を増したリミテッドだが、今その大勢を支えているのは"大人達"だ。身も蓋もない言い方をすれば、"金"を目的とした集団になりつつあるということ。

 今の姫子のように、有名な企業の情報源となりうる人物の身体を乗っ取れば、それは社会や市場の状況を一転させかねない事態となってしまう。

 私利私欲の為に動いていた少女達は、私利私欲に溺れた大人によって支配されているのだ。

 

 私は姫子の情報を読み進めていく。

 過去の戦績、思考の偏り、デッキの傾向など――色々な情報が手に入った。

 

 その中でも最も注意しなければならないこと、最も危険とされているのがルリグの能力だ。

 太陽の巫女アマテラス――それが姫子の持つルリグの最終形態。太陽型自体もシンプルで強く、優との戦いでも苦戦させられたタイプ。だがそれ以上に厄介なのは"特殊能力"の方だった。

 その能力とは"ライフクロスが強力なバーストになる"というものだった。

 バーストとはライフクロスが削られた時に、それがバースト効果を持つカードだった場合に発動する特別な効果のことだ。

 40枚のデッキ内にあるバーストカードは一律20枚。その中でも強力なものがバーストに仕込まれるそうだ。いくらシャッフルしようともそうなってしまうことが確認されているため、イカサマではなくルリグ能力としか思えない、というのがアンリミテッド達の見解だった。

 

 太陽型ということは、色は白。その中でも強力なバーストカードと言えばまず思い浮かぶのがこちらの攻撃を全て止める"アークオーラ"。

 その他には防御と次ターンの攻勢をも兼ねるローメイル、場に出ても良し、バーストカードとしても優秀なアークゲインといったところだろうか。

 多色を織り交ぜているとなれば、ライフを増やす緑カード"修復"やシグニを貫いてライフを攻撃することが出来る"着植"など挙げていけば限がない。

 

 バーストを操作する"マーク"タイプのルリグとのバトル経験はあるが、これらが素でライフ内にあるとなると同じ戦術では勝てないだろう。

 

「こっちはこっちの戦い方を貫くしかない……か」

 

 構築に数十分を要し、ようやく対アマテラス用のデッキが完成した。その時だった。

 家のチャイムが鳴らされた。

 

 誰だろう……と、私が玄関に出るも、人影はない。

 いたずらか? そう思った矢先、ポストに入れられた一枚の手紙を発見した。

 

「明日、リミテッドバトルを執り行う――果たし状ってわけね」

 

 手紙には日時、場所、そしてリミテッド達が用意する"制限ルール"についても記載されていた。

 

「……少し練り直しが必要かもね」

 

 提示された制限ルール。それを生かすも殺すも、全ては戦略と事前のデッキ構築なのだ。

 来るときに向け、私はまたカードとにらみ合いを始めたのだった――。

 

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