一期達を先に帰らせ、オレは今、喫茶店にてドライグのライバルと相席していた。名前はヴァーリ。堕天使に所属している白龍皇だ。
オレはコーヒーを口に含み、優雅に過ごしてるように見えるが内心気が気ではなかった。なんのために、どうしてここにきたのかがわからないのだから警戒して当然だ。
「安心しなよ。別に今日は戦いにきたわけではない」
「……いずれ戦うのか?」
「そのつもりだ。それが赤と白の宿命だろ?」
「くだらない。そんなもん正月前夜で決着でもつけてろ」
『紅白歌合戦は我らとは関与はないぞ』
ヴァーリの内から聞こえる紳士なドラゴンはツッコんできた。ドライグとは違って荒々しさがなく、丁寧な口調だ。
『ナメるなよアルビオン。あの合戦はどれもハイレベルだぞ。倉りすの曲はすばらしい』
「ちなみにオレはビーンズ派」
「ふむ、正月のテレビはあまり見ない主義だが君が言うならすばらしいのだろう。アルビオン、これはぜひとも見なければ」
『ヴァーリ、それ私達となんの関係のない合戦だから。ドラゴンじゃなくて人間の合戦だから』
ヴァーリは天然で、アルビオンは苦労人的な感じがした。というかヴァーリはなんか隠してるな。勝負だけでないナニカを。
「それで会いに来ただけなの?」
「まあね。君がどれほど強いか観察してみたがおそらく世界レベルを超えてる」
「次元を超えてるだろ?」
「かもしれない。異常なくらいにね」
ヴァーリは紅茶を口に含めた。オレはヴァーリという女を観察してみてわかったことがある。
まずはヤツがしている手袋。腕まで隠してるお嬢様がするものだが、その中身はおそらく傷だらけ。身なりが悪くならないようなだろう。
次に足元。ロングスカートで隠れているが動きでただ者ではないことはわかるし、何より僅かに見えた右足は傷がたくさん。努力と戦いの結晶であろう。
以上を踏まえてヴァーリは戦闘に飢えてると思った。そして彼女が望むのは戦いだろう。
「いったいどれほどの力を求めたんだ?」
「両親を殺したヤツをぶちのめすほど」
「ふむ、あの二人は本当の両親ではないのか?」
「血の繋がりもない第三者から言えば他人だ。しかしそれがどうした。血の繋がりがなくとも家族とオレは断言できる」
「…………それは少し嫉妬するな。おれは幼い頃両親に虐待されてたからな」
少し目を険しくしたヴァーリを無視してオレは最後の一杯を口に含めて言った。
「ま、気にしてないだろお前」
「そうだな。それともう一つ。シズクが君に興味を持っているそうだ」
「ふーん、で?」
「おいおい。美少女に興味を持たれているんだぞ? うれしくないのか?」
「いやあんまり。だってオレが興味あるのは面白おかしい人生と攻略対象の美少女達だけだから」
ヴァーリはキョトンと目を丸くして、それから笑った。オレは気にせず沈黙を貫いた。
「ハハハ……なるほど。君が興味あるのは惚れた女のみってところだな。仮に惚れた女にフラれたらどうするつもりだい?」
「そのときはそのとき。アイツらが幸せを見つけたならオレはどっかに行くだけだ」
彼氏ができたらソイツにアイツらを守れる覚悟と力があるか問い、合格したらオレはもう関与しない。なんせ、オレは二人ぼっちだったのだから対して寂しくない。
「だが、アイツらに危害を与える存在が現れたらすぐに向かってソイツを滅ぼすだけだ。――――たとえ、どんなに血で汚れようと、拒絶されようとな」
覚悟は誰よりもある。
決意は誰よりもある。
そして力を誰よりも求める。
最凶の変態と並べるくらいに。
最強の英雄と並べるくらいに。
最高の戦士と並べるくらいに。
オレは誰よりも強くなりたい。
「それが君の渇望……というところか」
「覇道になるならそれも良し。それが闇に落ちようが関係ない。オレはそのつもりで今日まで生きている」
「くくく……なるほどシズクが欲しがるわけだ。――――強さを求める闇。君にはそれがある」
闇……か。無力だったからこそ生まれたのが今のオレ――――復讐を求めたオレだろう。
「ま、そのシズクってヤツに伝えてろ。
オレが欲しければ力で示せ。知を示せ。器を示せ……ってな」
「誰の言葉を借りたの?」
「三国一の種馬さんの」
オレはそう言って勘定を済ませて喫茶店から出た。
「ただいま~。悪い遅れ――――ムグッ!?」
「イッセーくんだぁ~♪」
大きな果実に埋められ、オレは息苦しくなった。柔らかくふわふわなオパーイに抱き締められ、天国と地獄を受けていた。
「あん、動かないのぉ」
「ぐるじぃ、でず。ガブリエルざん……」
「あ。ゴメンねぇ~」
ブロンドの美女。普通の服を着ているのに清楚な雰囲気があり、普通とは比べようがないくらいの神々しい美しさがあった。熾天使の一人、劉崎ガブリエル。桃亞の母だ。
「なんでガブリエルさんがここに?」
「それはぁ、桃亞ちゃんの授業参観で帰りが時間がかかるからここに泊まるのよぉ」
「そうなんですか。まあ、お袋と親父が許したのなら別にオレは気にしませんけど」
「許さなかったらどうしたの?」
「しばって叩いて放り出す」
「はぁ~ん、縛りプレイと放置プレイを奥さまにするのねぇ。やだぁ……興奮してきた」
たまにこの人が天使が疑いたくなった。天使はこんな欲望を持てば真っ白な翼が黒くなり堕天使になるはずなのだが、ガブリエルさんには一切その兆候はない。
その理由はとある変態が関わっているのだがそれは後々説明というわけで、とにかくガブリエルさんの思考回路の四割はM。残りは――――
「それにしてもぉ、桃亞ちゃんかわいいわぁ。ヤバいわぁ、襲いたくなっちゃう……ウェヒヒヒ♪」
「あの、実子に手を出すのは犯罪ですからやめてくださいね?」
「大丈夫ぅ、イッセーくんが桃亞ちゃんと結婚したらたくさんエッチィことするからぁ」
「桃亞を寝取る気満々じゃんそれ!?」
ガブリエルさんの背徳のオンパレードに戦慄が隠せない。この人、ある意味油断できない人である。
「安心してぇ。桃亞ちゃんの次はイッセーくんだからぁ」
「オレもロックオンですか!?」
「うん♪ あの人に出会ってからわたしの中の欲望が幼い頃のイッセーくんにも向かれてたわぁ。なつかしいわぁ♪」
「親友のオバサンから聞きたくなかった言葉だった!」
「あらぁ、こんなオバサン嫌なのぉ? 親子丼は嫌なのぉ?」
「天使がそんな言葉を使っちゃいけません!」
「最近の天使はエロくないと駄目なのよぉ♪」
「それは大きなお友だちの願望だから!」
もうやだ! オレがボケなのにこの人と遭遇したらツッコミになった……!
ソラさんも幼い頃はボケ役だったのに、今は立派な苦労人に…………オレもああなるのかな。
『相棒ぉ!?
(もう魔女になろうかな……エヒヒヒ)
『相棒ォォォォォ!?』
ズルズルとガブリエルさんに引っ張られリビングに入る。そこにはいたのはサーゼクスさん、グレモリー卿。そして――――
「死ねクソアマ!」
「あぁぁん! キタキタァァァァァ!」
――――雷斗さんに殴られる
あ、もうここもカオスだわ。
知ってるか……一誠以上の変態がいたんだぜ……。