古来よりいる神に使える天使達を束ね、戦争で悪魔や堕天使達に引けのとらぬ戦いを見せてくれたそうだ。
そんな燭天使のガブリエルさんとサーゼクスさん、グレモリー卿はただならぬ雰囲気で向かい合っていた。
その内容とは――――
「うちの桃亞ちゃんの方がかわいいわぁ!」
「いやリーアたんがかわいい! あなたのような乳くさい娘よりうちの妹の方がかわいいに決まってる!」
「ふんっだぁ。こっちにはイッちゃんという許嫁がいるもんねぇ! そっちはミルたんって言う女の子にほの字じゃなぁい」
「いずれイッセーくんは我々悪魔が手にいれる。頭が桃色なオバサン天使がでしゃばるじゃない!」
「あぁー言ったねぇ! もう怒っちゃうよぉ!」
「かかってきなさい!」
争う馬鹿二人。リビングで争う親バカとシスコンを尻目にグレモリー卿としゃべる黒髪金色の瞳の青年――――五木雷斗さんに視線を向ける。
「やれやれ……ノエルに汚染されたヤツがこんなことになるなんてな」
「ど、どういうことなのかね?」
「気づいてるだろ。あの淫乱天使が堕天してないのは俺が踏んでる変態の仕業だ。彼女の天使である理をねじ曲げやがったってわけよ」
「そんなことが可能なのかね!?」
「できちゃうのがこの変態なんだよ。オラ、変態。もっと反省しろ。お前のせいであの天使の生きざまが変わっちまっただろ」
雷斗さんに踏まれてるグルグル巻きにされたエメラルドヘアーの女性――――ノエルが荒い息をしながら言った。
……興奮してるのか?
「だって、はぁはぁ……ガブちゃんが情事のことを知らずに生きていたもの……はぁはぁ。そんな人生つまらないじゃん! たった一人を愛せない人生なんて女性として悲しいじゃん!」
確かに天使はどちらかと言えば個人ではなく、万人に向ける愛が正しい。神の作り出したシステムでそうなったとは言え、たった一人に向ける愛――――独占欲や嫉妬などで堕天になる可能性がある。
ノエルさんの言ってることは間違いとは言えない。
ガブリエルさんは天使として職務と個人的な愛に苦悩したときに、救いの手をさし伸ばしたのはノエルだ。彼女がガブリエルさんの天使としての構造をねじ曲げ、堕天しないまま、桃亞のお父さんと結婚したらしい。
「だからガブちゃんの悩みをなんとかしようと私は彼女のあり方をねじ曲げた。反省も後悔もしてないよ」
「そうか……あなたはホントにすばらしい人のようだ」
グルグル巻きにされて踏まれたノエルにグレモリー卿は感心していた。
オレの場合は、あんまり感動できない。たぶんノエルの今の姿のせいだと思う。だってグルグル巻きで興奮してるもん。
そんな中で雷斗さんは冷めた目でノエルを見ていた。理由は簡単だ――――″いつもの″ことだからだ。
「……ちなみにノエル。ガブリエルが愛そうと思った男性はどんなの人なの?」
「小さな男の子だよ」
「背徳的だろそれ! そりゃ堕天的な内容だわ!」
「大丈夫! 年齢が二十歳過ぎてるから合法ショタだったからね!」
「大丈夫じゃねぇよ!」
まさかのオネショタ。そういえばガブリエルの旦那さんって写真で見たけど小さかったな。今さらだけどガブリエルさんの趣味があんなのだとは知らなかったけど。
「それから子どもができるまでいろいろちょうき――――教育したら、ああなったよ。うん私ってさすがだよね。雷斗、次回から愛の伝導者と呼んで!」
「変態の伝導者だろうが! てか、お前はもう黙れ!」
「あん、その罵倒サイコー! もっと罵って!」
「誰か助けてホント!」
雷斗さんがお腹を抑えている。グレモリー卿は彼を見てオロオロするばかりである。
ノエルの本性は究極の変態だしな……。さすがオレの師匠。苦労人をどんどん追い詰める。
「変態の汚染をナメるなよん!」
「ふんっ!」
「みゃん!」
雷斗さんがノエルを踏みつけると艶やかな声を出した。親バカとシスコンはまだ争い、苦労人と変態の攻防――――もとい言い争い。そして黄昏るグレモリー卿にお茶を差し出す親父。
つまり……だ。
「なんですかこのカオス」
「なつかしい空気じゃ」
え、お袋。これがなつかしいってどゆこと?
食事を済ませた親父達は駄弁っていた。
自分達の過去の戦いや事件、そしてノエルの変態行動を。それにはサーゼクスさんやグレモリー卿は苦笑したのも無理もない。
事件でだいたい悪いのがノエルである。
「驚いたわ。まさか桃亞のお母様が燭天使だったとは……」
「そんなにスゴいの桃亞のお母さん」
「ええ、天界一の美女と呼ばれてるお方なのよ」
だが、グレモリーさん。ガブリエルさんの残念美女っぷりを見ているので全然信じられないッス。普段がああなのでその噂が全然信じられないよ。
「ホント改めて思うと、普通の天使から逸脱した存在ね。そうしたノエルって言う女性も凄まじいわ……」
「そこがノエルのスゴいところさ。あの人は望めば生死もねじ曲げちゃうしな」
「……それはもはや神の所業よ」
「監視とか考えない方がいいよ。疲れるし、変態が感染するから。あの人と関わる人大半が変態化して残りは病んでるから」
「御愁傷……」
名もなき犠牲者に冥福を祈った。グレモリーさんもわかってくれて何よりだ。
「というか劉崎さんは自分のお母様のことどう思ってるの? あんな変態で」
「面白いよー♪ あの人って結構お茶目だからかわいいよ♪」
「えぇー……」
「桃亞は天然なんだグレモリーさん。亡き父の遺伝子が人格で働いてくれて助かったよ」
桃亞の父はガブリエルさんが生んだ後の数年後に亡くなってる。元々病弱だったから長くはなかったらしい。写真から見た印象だと儚さのあるかわいらしい美少年だったな。
「まあ桃亞がまともでよかった。ガブリエルさんと同じだったらノーサンキューだった」
「ちょっとぉ、こんなオバサンじゃ駄目なのぉ?」
ガブリエルさんが豊満なお胸様でオレの後頭部を包み込む。おぉ……極楽じゃ~♪
「でへー……」
「むぅ、イッちゃんをとらないでよお母さん」
「うふふ、大丈夫よ。イッセーくんは桃亞ちゃんを攻略してから、手に入れるから!」
「どっかの外も中もピンクな魔法少女と同じこと言わないでください。てか、離してください」
「いやんっ。ち、力が抜けるぅ!?」
気でガブリエルさんの腰をくだけさせ、ソファーから立ち上がる。ガブリエルさんは立ち上がろうにも、気が乱れてるせいで立ち上がれない。
「うぅ……まさかこの後、わたしの身体をイジメるのぉ? エロ同人誌みたいにぃ! エロ同人誌みたいにぃ!?」
「? イッちゃん。えろどうじしってなぁに?」
「桃亞が知らなくていいものだ。てか、ラッセー達の教育に悪いから寝てろ」
「ぐ、ぬ……すご、いちからぁ……ガクッ」
オレは青筋を浮かべ、ガブリエルさんを締めてオトス。ガクリとしたガブリエルさんを米俵のように担ぎ上げ、今日泊まる部屋に運ぶ。寝言に、
「そんなぁ、イッセーくんダメよぉ。みんなの前でぇ……」
と、聞こえた。艶やかな一言だが、今のオレの心境は苦労人と同じである。
……もういっそこの人を物置に置いてやろうか。
リビングに戻るとサーゼクスさんとグレフィアさんの口から魂が出ていた。グレモリー卿は遠い目で子どもの頃の思い出に耽っていた。うん、予想通りだ。おそらくノエルさんのノリとギャグに疲れてああなったのだろう。
親父はお袋とイチャついてたが。
「あ、一誠。お前も三大勢力の話し合いに参加することになったぞ」
「マジでか。まあ別にいいが。てか、雷斗さんはどうするの?」
「ノエルが行きたい行きたいって喚いてたから行く。コイツほったらかしにしたら会談が大変なことになる」
指差す方向には恍惚な顔をしたノエルがみのむしになっていた。ホント何があったんだ……。
「ま、楽ませてもらうよ」
「そうだな。楽しんだもの勝ちだしな」
オレは笑みを浮かべると雷斗さんも笑みを浮かべた。
「ニィ、こすぷれってなーに?」
「ニィニィ、縛ってあげるのご褒美なの~?」
「「……………………」」
しばらくおまちください。
「にぎゃあァァァァァ浄化されるゥ。私が浄化されるゥゥゥゥゥ!」
ノエルを子どもの写真で浄化したことは言うまでもない。やはり元凶はあの人である。
変態の弱点:純粋な子どもの笑顔と眼差し
そして変態化の原因がだいたいノエルの仕業。ガブリエルさんはいろいろされちゃってああなったんだよ……。