翌日、オレはグレモリーさんに呼ばれ部室まで来ていた。付き添いには桃亞もいた。今日もお胸様が揺れて素晴らしい。
「どうしたの?」
「桃亞の胸を揉みたい」
「いいよ?」
「おっしゃあ! 言質とったからいただき――――ブッ!?」
「桃亞の付き添いに参加してよかった」
おのれ、愛莉め。またしても拳でこのISSEIの邪魔をするか。しかも薙刀がモノホンに見えるのですが。
「本物だ。これからはビシビシこれでいくからな」
「なんと。それではオレが死んでしまうじゃあーりませーんか!」
「この程度じゃ死なないだろイッセーは」
「ボクちんよわっちい男の子なんですぜ。それはさすがに」
「お前は強いだから問題ない!」
声を張り上げ、愛莉は怒鳴った。なんかいつもの愛莉らしくないというか、ストレスがたまってるような。
桃亞もそれには予想外でオロオロしていた。愛莉はハッと気づき顔を俯かせた。
「すまない……二人共」
「どしたの愛莉? いつものような呆れた感じじゃないぞ?」
「なんでもない……放っておいてくれ」
「……なんかあっただろ。言えよ。オレ達、ダチだろ」
「そうだよ。悩み苦しむことはないんだよ」
桃亞が愛莉の手をギュッと握ると彼女は振り払った。
「私は悩んでない。苦しんでもない。放っておいてくれ。イッセーや桃亞が気にすることじゃない」
「でも……」
桃亞は追求しようとしたがオレはそれを止めた。愛莉は何かを秘めている。それが分かればいいが、彼女はオレ達に話すことにジレンマを感じている。
これ以上何を言ったかって愛莉は意固地になって話すことはない。
「……いいよ。お前が話さないのならそれでいい。でもいつかは話せ。でないと、その苦しみは永遠だぞ」
もはやオレには陽気な感じではなく真面目な顔になっていた。いったい愛莉に何があったのかわからない。けれどいつかきっと話してくれると思い、オレはグレモリーさんのところに足を進めた。
まあ、後になって思うんだ。
――――あのときしっかり聞いとけばよかったって。
グレモリーさんに案内されたのは二階の部屋だ。三階にあるのが部室で二階には何かを封印している部屋のようだ。『keep out』って書かれたテープで扉が閉められている。……なんか殺人事件が起きた後の現場みたいだな。
「リーアたんは殺っちゃったの?」
「桃亞さん、その呼び名はやめてください! というか誰も殺してないわよ!」
「でもこれってよく殺人現場が起きたときにあるテープだよね。ドラマでよく見たよ」
「これはあの子を封印するためにある魔法でできたテープです。朱乃!」
「はいですわ」
姫島さんが手に魔力を込めるとテープが光となっていった。桃亞とグレモリーさんはあの晩に仲良くなったらしく、ああやって名前で呼び合える関係らしい。オレが知らない間に仲良くなるなんて、ちょっぴりグレモリーさんに嫉妬しちゃったよ。
まあそれはさておき、グレモリーさんがノックした。
「ギャスパー、開けるわよ」
『開けないでくださいですゥゥゥゥゥ!』
…………何やら中にいるのは美少女っぽい。声からしてそうに違いない。しかしオレの股間センサーが反応しない辺り、おそらく女の子じゃないのは明白。グレモリーさんは何度も呼びかけるが、その子が開けてくれない。
「しゃーねえ。無理矢理こじ開けるか」
「オイ、お前。何をするんだ!」
「物理的に開けるつもりだけど」
「そんなこと許されるか! お前は引っ込んでろ!」
正道が前に出ようとしたとき、さっきの言葉にイラッ☆ときたのでヤツの頭をつかんで扉を破壊するために使った。とりあえずガンガン顔面で扉を破壊しようとする。
「ぶげらぁ!?」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ(棒読み)」
「い、いっせーくゥゥゥゥゥんっ!?」
木場きゅんがやめさせようとしたとき、扉が破壊され、目の前にあったのは棺桶だった。
「よかったな正道。お前の墓だ」
「何してんの兵藤くん!」
「何って扉を開けるために」
「だからっていっせーくんに何してんの! ボコボコじゃないか!」
「いやなんかムカついたからやった。反省や後悔もしてない。心が軽い。もう何も怖くない」
サムアップで返すと子猫ちゃんにボディブローやられた。やり過ぎた制裁のつもりらしいがあんまり痛くない。子猫ちゃんは拳を痛そうにしていたが気にしないことにした。
「で、グレモリーさん。この棺桶はなんですか?」
「二人目の僧侶の寝床よ」
「なんと。それは予想外。吸血鬼なの僧侶が」
「…………その通りよ」
グレモリーさんは僧侶のことを話してくれた。コイツは変異の駒というもので転生し、デイライト・ウォーカーというヴァンパイアのハーフらしい。しかし極度の人見知りで臆病。おまけに厄介な力を持つらしい。
ふむ、どうやらグレモリーさんの話によれば厄介払いするつもりはなかったが力量不足だったから封印したってところだろう。
まあ未熟な若者だから仕方ないわけだが、力を持つものを転生させるときには注意してもらいたいものだ。
ソイツがいつか主に牙を向けるのが、はぐれ悪魔というなれの果てだから。
「ギャスパー、今日からあなたもここから出てみんなと仲良くするのよ」
『いやですゥゥゥゥゥ! 僕はずっとここにいるのですゥゥゥゥゥ!』
「もう、いい加減にしなさい!」
癪に思ったグレモリーさんは棺桶の蓋を開けた。そこから現れたのは金髪で守ってあげたくなるようなオーラを醸し出す少女――――なのか?
なんか股間センサーが反応しないや。こんなかわいい子なのに、オレはなんとも感じてない。
「紹介するわアーシア、いっせー。この子が私の僧侶の駒、ギャスパー・ヴラディ。ここに封印されてた吸血鬼のハーフよ」
「ぎゃ、ギャスパーですぅ」
うーむ、この子が封印されてた吸血鬼のハーフ? なーんかピンッと来ないので気を感じ始めた。
ゾッ!
オレは思わずその場から退いてしまった。なんだ今の感じは。ヤツは中に何を飼っている?
「イッセーさん?」
「あ、ワリィ。ちょっとな」
オレはアーシアを安心させるためにニコリと笑ったが心の中ではドライグに聞いていた。
(なんだあの膨大な気……いや気配は。まるで大きな雲を見た気分だぞ)
『相棒、ヤツは俺でも知らないものを飼ってる。ただのハーフヴァンパイアじゃないぞ』
(わかってる。警戒するのはやめないさ)
心の中でそう呟くとオレの視界が止まり始めた。グレモリーさんが強引にギャスパーの手を引こうとしたときだ。
ギャスパーはそれから逃れ、壁の隅に移動しようとしたが襟首をヒョイッと掴みあげる。
「なんだ? 『
「な、なんで止まってないのですかぁ!?」
「それはオレが『適応』したからだ。前に時間停止を受けたことがあるんだよ」
ほむらさんとの戦いでオレの身体は時間操作に適応した。つまり効く、効かないのも自由自在ということである。しばらくすると時間停止は解除され、オレは言った。
「お前かわいい顔してとんでもない力があるな。え? 美少女さんよ」
「兵藤くん、彼は男の子だよ」
「マジで? 男の娘ってか。しかしなんで女の子の格好してるの?」
「かわいいからですぅ!」
力強く主張された。
「あ、察した。コイツ女装が好きな変態なんだな」
「変態じゃないですぅ!」
「安心しろ。外にはお前を超えた変態共がいる。筋肉、ロリショタ、百合、ドMなどなどの変態達がな」
「ひぃぃぃぃぃ、外は魔境なのですか!?」
「大丈夫。お前ならヤツらを超えられる。目指せ、変態マスターへ!」
「絶対にヤですぅぅぅぅぅ!」
ギャスパーは比較的まともな男の子のようだ。あれ、まともなのかなこれ……。
マヒしてるのかもう。
グレモリーさんはギャスパーの臆病な性格を治そうとオレに鍛えてほしいとお願いした。しかし困ったことにオレに性格を鍛えるというのは難しい。理由はオレが勇気というものを知らないからだ。
恐怖に立ち向かう。
恐怖を支配する。
恐怖に打ち勝つ。
これらに勇気というものが存在する。
しかし困ったことにオレが恐怖をあんまり感じたことがない。恐怖を感じるのは弱者など自分が劣っていると思える者達のみだ。
自惚れではないがオレは強い。強いゆえに弱者の恐怖がわからないのだ。
なので、だ。
「クロスロードに相談してみるミソ」
「オイ、なんで俺もなんだよ。いやこういうかわいい子と一緒に修行できるのはいいけどよ」
「だが男だ」
「嘘ォォォォォ!? こいつ男なの!? どっからどう見ても女の子じゃん!」
「さっき男子トイレ入ってたぞ。んで、アレがちゃんとあったから」
「なんて、こった……」
がく然とするクロスロード。確かかわいい子と修行しないかと誘って食いついたみたいだが、まさかこうも単純とは思わなかった。コイツ、実は松田と元浜のエロが抜けたバージョンではないだろうか。
「さてゼノヴィア、やーておしまい」
「あらほらさっさー。はあァァァァァ!」
ゼノヴィアの切り札、『デュランダル』を振り回される。それに逃げるのがギャスパーとクロスロードだ。
「ちょ、それ危ないヤツ! 危ないヤツ!」
「ひぃぃぃぃぃ!」
「逃げるな! 立ち向かえ! 健全な魂とは健全な肉体と健全な精神にある。つまり勇気とは健全な魂にあるのだ!」
「んなもん言ったってそれ危ないじゃん! 当たればスパッといけるヤツじゃん!」
「大丈夫! そのときは墓を立ててやる!」
「それ死ぬってことだよね!?」
ゼノヴィアのスパルタトレーニングが終わり、次は子猫ちゃんのトレーニングだ。
「ギャーくん、これさえ耐えればあなたは強くなれる」
「ひぃぃぃぃぃニンニクはらめぇぇぇぇぇ!」
「なんからめぇってエロいな。なあ、クロスロード」
「いやあれ搭城の嫌がらせじゃね?」
なんか楽しんでる子猫ちゃんを尻目にクロスロードの傷を気で治療する。まさかホントに斬るとは思わなかった。アイツの前世はおそらく人斬り抜刀斎だろう。
「オイオイ、何やってんだお前ら」
「あ。アザゼル」
「あ、アザゼル!?」
クロスロードがバッと立ち上がり、ゼノヴィアは剣を構え、ギャスパーは木の陰に隠れる。
「よー、アザゼル。何しに来たの?」
「ちょっと聖魔剣使いのセイクリッド・ギアを見せてもらおうと思ってな。いないのか?」
「グレモリーさんの付き添いでな。まあ会談のときに話したらいいさ」
「そうするわ。ありがとさん」
気軽に会釈しているとクロスロードが食って掛かってきた。
「お前、堕天使の総督と知り合いなのかよ!?」
「まあな。親父のダチってところだ。だからそんな敵意を見せるな。お前らじゃ、レベルが違いすぎる」
クロスロードは何か言いたげそうだが、口を塞いだ。オレの言葉を理解したからこそ、ヤツは黙るしかなかった。
「相変わらず手厳しいなお前さんは」
「そんなことよりお前はいつまでそこにいるつもりだ。聖魔剣の木場がいないのがわかったら用がないんじゃないのか?」
「ああ、それもそうだがお前ら悪魔くん達にアドバイスをな。まず金髪くん」
「はは、はいですぅ!」
「お前は自信をつけろ。そうすればセイクリッド・ギアも応じてくれる。次に邪龍の少年。お前のセイクリッド・ギアでその金髪くんの力を吸えば、力をコントロールできるくらいに抑えられるはずだ」
「……このセイクリッド・ギアが、そんな力を」
的確なアドバイスだ。まあセイクリッド・ギアに関してアザゼルに右に出るものはいない。
「それとイッセー。お前の『覇龍』。機会があったら見せてくれ」
「機会があればな」
そう言ってアザゼルは歩き去った。ゼノヴィアは嘆息を吐いて言った。
「で、どうする?」
「決まってるだろゼノヴィア。アザゼルの言った通りにした方が効率的だ。やるぞ」
「で、でもよぉ」
「クロスロード、アザゼルはセイクリッド・ギアに関して裏切らない。ヤツはセイクリッド・ギアの可能性を教えるのが生き甲斐みたいなもんだ。一応、信用しろ」
クロスロードをしぶしぶながら納得し、オレはアザゼルの言った通りにギャスパーを鍛えるトレーニングを始めた。
愛莉さんのコンプレックス。これは解消されますよー(ゲス顔)
なお、オリ主(笑)さんのオチはいつだってこんな感じです。