オレは火遁の印を組み、火を吐き出す。ヴァーリはそれを回避するが、影分身を出したことに気づき、半減を仕掛けてきた。
影分身は半減により維持できなくなったのか、煙りとなって消えた。
「気を半減され続ければ消されるのか」
「そしてその分だけの力を得た」
オーラの砲撃でオレを牽制するヴァーリ。オレは倍加をしながら次の術をしかける準備に入る。
「仙法・超大玉螺旋丸!」
倍加で譲渡した仙術螺旋丸。威力は普通の仙術よりも強力になり、回転と威力は段違いだ。それを半減するヴァーリだが、半減しきれず同じくオーラで纏った拳で相殺を試みた。
しかしヴァーリの籠手は破壊され、再び地面に叩きつけられた。
「ぐ、ぅ……」
「とどめだ。『ドラゴンブラスター』!」
オーラの砲撃でとどめをさそうとした。しかしその砲撃は大きな気で出来た天狗が邪魔してきた。
「ッ、シズクか!」
「危ないわね。本気で女の子を消す?」
「は? 女だろうが子どもだろうが関係ねーだろ。敵はぶっ殺せというのがうちのスタンスなんだよ」
「ホント容赦ないわね貴方……」
ヴァーリは不服そうにシズクを見ていた。まあタイマンでやりたいみたいたが完全に実力不足だからな。
シズクはヴァーリを助けたのは無理もない。それくらいオレはアイツより差があるのだ。
「……なんのつもりだシズク」
「ヴァーリ、助けたことは謝るけど出し惜しみは無しにした方がいいわよ。彼は本気で貴方という障害を排除する気よ」
「……そうか。どうやらおれは彼のことをまだ甘く見ていたみたいだな」
ヴァーリは腕をまわして状態を確認し、傷の具合を確認していた。まだ動けるが手のダメージは大きいはずだ。
「まだやるつもりか?」
「当たり前だ。こう見えておれはルシファーの血族だ。悪魔の最強の一角として負けは許されない」
ルシファーという言葉にサーゼクスさん達悪魔勢やミカエルさん達天使勢が目を丸くしていた。ルシファーという名前になんの意味があるんだ?
「当たり前です。ルシファーの血族……つまり旧魔王のルシファーということですよ」
「マジでかフリードさんや。てか、いついたの?」
「今さっき。あなたのお父さんがこれを、と」
フリードさんが渡してきたのは小さな豆である。あ、これ親父が見つけた仙豆というチート回復アイテムだ。
どういうつもりか知らないが、オレは仕舞い、ヴァーリを見据える。
八枚の悪魔の羽根を仕舞い、再びオレに向けて言った。
「兵藤一誠、君に謝らなければならない。どうやら出し惜しみし過ぎたようだ。
――――ここからだ本番だ」
ヴァーリの気が変わった。これは黒い感じがする。まさか……。
「我、目覚めるは 」
その詠唱は危険。
「覇の理に全てを奪われし二天龍なり 」
その詠唱は覇の入り口。
「無限を妬み、夢幻を想う 」
その詠唱は孤独の証。
「我、白き龍の覇道を極め 」
『『『『汝を無垢の極限へと誘おう』』』』
白龍皇の姿が変化した。ドラゴンに近い鎧がよりドラゴンのようになり、オーラも先ほどと違い強くなっている。
「ヤベ……今度はあっちが強い」
『くっ、覇龍になるための時間が足りない……!』
そう。オレも『覇龍』になるためには三十分というカウントダウンが必要になる。そのため、準備無しでオレはこれから始まるヴァーリの猛攻を耐えなければならない。
「いくぞ赤龍帝」
ヴァーリが一瞬消え、オレは身体をまわして手をクロスした。そのときヴァーリの拳がクロスした腕をとらえた。
ビキビキ!
手に震動が伝わり、激痛がはしる。それから今度はオレは地面に叩きつけられた。
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost !』
『Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide !』
倍加すれば半減され、力が強化できない。『覇龍』は短期決戦用の強化モード。
ヴァーリはこれからことを考えずになりやがったな……!
「このISSEIがこうも容易く」
「まだまだいくぞ。『ハーフイレイサー』」
直感に従い。オレはヴァーリから放たれた四角の魔力の塊から回避。その魔力は正四角体になり、その空間だけ消滅させた!?
グラウンドが四角の穴が空き、オレはその威力にビックリした。
「極限の半減の力……」
『そのようだ。あれを受ければ相棒の生命力お構い無しに死ぬぞ』
ドライグの言う通り、あれを受けたらさすがのオレもヤバい。オレは翼を広げ、ヴァーリから距離をとった。
しかし『覇龍』のヴァーリはどんどんと同じように使ってきた。それによって校舎が半分になってしまった。
ってオイこら。
「学校を巻き込むなよ!」
「安心しろ。事後処理は悪魔がしてくれる!」
「うわ、コイツお構い無しだ!」
だが、このまま逃げていてもじり貧だ。
そしてそのときオレは背後にいる者達に気づいた。その先にいるのは――――桃亞と一期。
ヴァーリはそれには気づかず同じように四角の魔力を放ってきた。
くそっ、避けられねぇ!
オレは影分身を出して背後にいる一期達の腕を掴み、投げ捨てた。それから倍加を何度もして防御力を強化した。
刹那、オレは白い視界に包まれた。
意識が混濁し、身体が激痛がはしる。立つことが維持できなくなり、倒れた。
視界は狭く、ドライグの呼び掛けが何度も聞こえた。
「呆気ないな兵藤一誠。君の力はその程度かい」
「うる、せー……オレは、まだ立てる」
歯を食い縛り、痛みを堪えて立ち上がる。『覇龍』までのカウントダウンが絶望的な長さだった。
あと二十分以上をこんな攻撃に耐えなきゃならないのだ。
ヴァーリもまた血を僅かに流していた。『覇龍』の代償があるようだ。あれは強力な分、生命力を消費する。
「お前、しぬぞ……」
「構わない。君という最強を倒せばそれでいい」
……あっそ。なら、なおさら負けるわけにはいかない。
なんでか知らないけど、このままコイツを死なせちゃ駄目だと思った。戦いしか興味がないとか、赤と白の宿命のためとか、悲しすぎる。
ノエル的には言えば人生がつまらない。
だからオレは先ほど破壊した籠手の宝玉を手に広い握った。
「なあ、ドライグ。このままじゃオレ死ぬよな……」
『相棒、まさか……』
「ああ、そうさ。これを吸収するわ。そしたらちったぁマシになるだろ」
『赤と白は相反する力なんだぞ!? それを取り入れたらどうなるか相棒は知ってるのか!?』
「知ってるよ。だからやる。やって強くならなきゃならない」
白龍皇の力を取り入れればおそらく拒絶反応で身体がかなり苦痛に蝕むだろうな。
でもオレはやる。やってやるんだ。
狂ってる? ああ狂ってるさ。
不可能? 勝手に決めるな。
オレは知ってる――――絶望的な状況を何度も打破してきた男の名前を。
オレは知ってる――――不可能を可能にしてきた天才を。
オレは知ってる――――大切な人を守るために狂気の力を使ってきた王様を。
今からオレがすることは誰もしたことのない前人未踏の行い。神様が死んでるからこそ、できることだがやればただでは済まない。
それでも、
「ほんの僅かな可能性にかけるのが勝利の条件だろ」
オレは赤の籠手に白の宝玉を埋め込んだ。そして痛みと苦痛の連鎖が始まる。
身体が悲鳴をあげ、鼓動が破裂しそうなくらい早くなる。
痛みで何度も意識が混濁し、視界が何度もブラックアウトしそうだ。
それでもオレは負けるわけにはいかなかった。
一期のために、桃亞のために、大切な人達のためにとか、考えてない。なぜかヴァーリのためにとか考えていた。
なぜ、どうして、なんでと心の中で自問自答をした。
『てか、それ恋じゃないのかしら?』
『知ってるのかエルシャ!』
『いや女の子だし、イッセーくん男の子だからそれが妥当かな……って』
『むむ、このベルザード。マッスルのためだと思ってたぞ! マッスルマッスルゥゥゥゥゥ!』
『いい加減あんたは筋肉から卒業しなさい!』
はは……相変わらずの先輩達だ。だが、筋肉は除外として恋ってのは悪くない。
恋した女の子を死なせたくないってかっこいいじゃねーか。
(というわけだ。さっさと応えろよセイクリッド・ギアあァァァァァ!)
バチバチとなっていた紫電が収まり、左腕の籠手は白くなっていた。成功したのだ。
オレは左手に意識を深め、これがどういうものなのか感覚的にとらえる。
よし、力の使い方がわかる。
「待たせたな白龍皇」
「ああ。待ったかいがあったのかい?」
そりゃもちろん、
「当然だろーが!」
影分身を使ってオレはヴァーリに突貫した。
エルシャ:赤龍帝の先輩。頼れるお姉さんで常識人
ベルザード:赤龍帝の先輩。筋肉に汚染されたノエルの犠牲者。マッスルこそ至高なり!