(??side)
一人の少女が途方もない平原を歩いていた。その少女は薄いシャツのみでボロボロな服装、さらに手足には手錠らしきものがついていた。
少女は奴隷だった。子ども狩りにより、楽園の塔というものを建たせるために働かせ心身が摩耗していた。
なぜ少女がここにいるのかと言うと、彼女は一人の少年の手により解放されたのだ。自分一人だけが自由になったのだ。
少女はうれしくなかった。代わりにあったのは後悔と罪悪感のみだ。
そしてとうとう少女は倒れた。疲れた。飢えた。もう立てない……。
目がぼやけていき、意識が混濁する中でバサッバサッと鳥が飛行している音がした。
ハゲ鷹のような死体を食べる掃除屋のような動物が自分を狙っているのだろう。
だがそれもいいか。
彼女は既に諦めていた。もう生きることに。
翼の音が消え、誰かが近づいているのが見えた。その者は自分と三つも違う男の子だった。
男の子には背中からドラゴンの翼を生やしていた。それを折り畳み、倒れた自分に話しかけるために膝を下げた。
「お前、なんで倒れてるんだ?」
「…………わたしの勝手、だ。放っておいてくれ」
「やだ。死にそうなヤツを放っておいたら親父に怒られる」
リュックからパンと牛乳を取りだし、少女を仰向けにした。普段の彼女ならば飛び付きたくなるようなことだが、今の少女は衰弱しており、弱々しかった。
少年はパンを千切り、それを少女の口に突っ込んだ。モグモグと口を動かせる辺り、まだそれくらいの力があるようだ。
「めんどくさいな。よし、気でなんとかしよ」
(気……?)
少年は目を瞑り集中し始めた。するとポウと暖かい色をしたエネルギーが少女に渡っていき、彼女に活力を与えた。
(暖かい……これは、魔法……なのか?)
この少年は魔導士なのかと少女は考えていると、少年は気を送るのをやめた。
少女の手足は動けるようになっていたのでもう必要ないからだ。
少年はパンを差し出し、牛乳を差し出した。少女は思わずパンにかぶり付き、牛乳をガブ飲みしてしまった。
「おースゲー。腹減ってたの?」
「ふぅ……そうだ。お前のおかげで助かった。ありがとう」
「別にいいよ。女の子の面白いところ見れたから」
「それは……忘れてくれ」
少女は恥ずかしそうにうつむき、少年は無表情のままだった。少女は今気づいたがこの少年の目が空っぽのように見えた。
空虚で。
虚しくて。
何にもない。
少年には何もないように感じてしまった。
「お前はなぜここにいる?」
「フェアリーテイルとか言うギルドにオヤジが手紙を持って行けって言われたから」
「フェアリーテイルだと!? 知ってるのか!」
少女はフェアリーテイルのマスター、マカロフを訪ねるために各地を放浪していたのだ。その町、マグノリアという場所を知ってる少年に食いつくのも無理もない。
「どこなのか教えろ! なんでもするから!」
「んじゃ、じっとしてろ」
「わかった! ………………あれ?」
少年は翼を広げ少女をホールドした。そして跳躍し、飛行し始めたのだ。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
「うるせーな。落ちたら死ぬぞ」
「いやだって空だぞ!? なんで翼があるの!?」
「ドラゴン、だから?」
「なんで疑問系!?」
「うっせーな。じたばたしてるとスカイダイビングさせるぞ。頭をザクロのようにするぞ」
「なにこいつ怖いんだけど!」
そんなことを気にせず少年は飛び続け、そしてマグノリアという町に着いた。道中、少女が騒がしかったが慣れてきたのか楽しそうに笑っていた。
それを見ていた少年は笑えるじゃん、と少し笑った。
マグノリアに着き、『フェアリーテイル』という文字で描かれた看板を確認してからそこへ入った。
すると少年に突貫してくる少女がいた。銀髪で活発そうな少女だ。
「くらえやボケぇぇぇぇぇ!」
乱暴な口ぶりで放たれた飛び蹴りを少年は真っ正面から受けた。銀髪の少女は笑みを浮かべたが、すぐに何かに気づいた。
気づいた頃には既に遅く、少女の背後になんと蹴られた少年が彼女の腕を掴みジャイアントスイングして投げ捨てた。
少年は少女の蹴りに耐え、そして分身が少女を投げ捨てるという戦略だったのだ。
ドンガラガッシャーンと木でできた椅子や丸テーブルを破壊し、少年は「よしっ」と邪魔者が消えたとガッツポーズをとった。
「テメーイッセー。よくもやってくれたな、あん?」
「黙れミラジェーン。お前の毎度の襲撃にこちらもウンザリしているんだ。今度はまともにあいさつしてこい」
「うっせぇ! テメーを倒すまでぜってーやめねー!」
「…………はぁ。もう疲れた。マカロフのじいちゃん、いるなら出てきてくれない?」
「無視すんなゴルぁぁぁぁぁ!」
またもや飛び付いてきたミラジェーンという少女。少年は『わー、逃げろー』というふうな感じに手をあげて逃げていた。子どものじゃれあいなのだが、レベルが暴力的なのはこれ如何に。
少女はポカーンとしていると自分と同じくらいの背丈のじいさんが現れた。
「やれやれ……ミラジェーンとイッセーのじゃれあいには毎度困ったことじゃ」
「あの、毎日なのこれ?」
「あの子がここにくる度にのぅ。まあミラジェーンもイッセーという遊び相手がいるから結構満足しておるぞ。……イッセー本人は疲れる相手と言っていたがのう」
「は、はははは……」
少女は苦笑しているとじいさんが彼女が何者か聞いてきた。
少年はそれに耳を傾けようとしたがミラジェーンのせいで聞くことができなかった。まあどうでもいいか、と思い、ミラジェーンの背後に分身を回らせたが今度は蹴りで煙にされた。
「毎度同じ手にひっかかるなよ!」
「あっそ。じゃ、新必殺技」
少年は手に気を込め、それをミラジェーンの白いワンピースに触れた。彼女は少年を投げ飛ばし、受け身をとったところで少年に向かってきた。
「ドレスブレイク」
その瞬間、ミラジェーンのワンピースが弾けとんだ。それを知覚したときミラジェーンは顔を真っ赤にして蹲った。
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
「うしっ。成功。これでいつか武器も破壊できるように――――痛い……」
「お姉ちゃんに何してんのよ!」
銀髪のショートヘアーの少女が少年を叩いた。少年は地味に痛そうにしていた。
「痛い、リサーナ」
「お姉ちゃんをあんなふうにしたからよ! 女の子を裸にさせるなんてサイテーよ!」
「えぇー……何そのダルいルール。もうヤになるわー」
「言い訳無用! はい、謝る」
ちぇーと少年はミラジェーンに近づいて涙目な彼女に行った。
「あ、少しおっぱい大きくなった?」
「ッッ~~~!」
「何言ってるのよこのスケベ!」
少年はリサーナの魔法、
なお、少女のトラウマが再発していたのだが、今の衝撃で吹き飛んだことは言うまでもない。
「イッセーのバカ! スケベ、変態!」
「うるさい……読書の邪魔」
「ムキィ~! なんですってぇぇぇぇぇ!?」
「ね、姉ちゃん落ち着いて!」
「止めないでエルフマン! この変態を殴らなきゃ気が済まない!」
少年は本を読んだりしてじいさんが来るのを待った。そんな様子を少女はじっと見ていた。
そんなときにマカロフが出てきて少年に手紙を渡した。少年は確認すると一礼してからフェアリーテイルから出ていこうしていた。
「ま、待って!」
「何?」
「お前はフェアリーテイルの一員じゃないのか?」
「違う。オレは単なる遣い。親父はそうだけど、ギルドに入るつもりはない」
「そんな……」
少女が寂しそうにしたので少年は仕方なく言った。
「名前」
「え?」
「お前の名前」
「え、エルザだ」
「オレは一誠。兵藤一誠。苗字が兵藤で名前が一誠だ」
「イッセー……わかった! わたしは忘れないぞ!」
「好きにしろ。もう帰る」
一誠は翼を広げて飛び上がった。その姿をエルザは紅い髪を揺らしながらじっと見つめるのだった。
☆☆☆
あれから何年か経った。エルザは立派な大人の女性となり、凛々しく美しい女性となった。『アカネリゾート』に遊びに来た仲間、ナツ、グレイ、ルーシィ、ハッピーと共にバカンスを満喫していた。
あの頃の少年はある日を境に来なくなった。五年前くらいに彼は異世界に旅立ったそうだとマカロフは言っていた。
「お前は今日もどこかの空を飛んでるのか? イッセー」
彼女は微笑を浮かべ、ナツ達と一緒に砂浜を駆け走るのだった。
「突撃ぃぃぃぃぃ!」
「「きゃあぁぁぁぁぁ!!」」
ザッパァァァァァンと誰かが海面にダイブした。プカプカと浮かぶ二人の少女は白目を向き、口を開けていた。
エルザは何事かと顔を向くと、そこには彼女が会いたかった少年の姿があった。
その少年は息を吸い込み言った。
「海賊王に、オレはなるッ!」
「「カッケー!!」」
ナツとハッピーは一誠のポーズに憧れていたに対して、エルザの幼き日のせっかくの思い出がガラガラと崩れ去った……。
彼女は変わってしまった彼を見て思う。
――――どうしてああなった……?
ドレスブレイク:原作通りの女性キラー。もし彼がこのままだったのなら、武器破壊へと進化したのだがノエルの原因で破れない洋服や鎧はなくなった。
海賊王にオレはなる!:ネタ。されどかっこいい
ミラジェーンとその兄妹:原作とは違いエルザより前に入ってる。作者的には原作ではエルザが先かミラジェーンが先だったのかはわからないのでミラジェーンを先にした
小さな一誠:まだ兵藤家の家族になったばかりの一誠。目が死んでたらしい