ホロライブ・オルタナティブ【リアー・タイムズ】トキノソラを翔ける少女 作:小畑 お爺ちゃん
女性陣はソラが纏めてくれていた
夕飯の支度をする間に、自分達の寝床を整えておくつもりのようだ
休憩室にある二段ベッドのドコが良いか、なんて話をしながら彼女達はバックヤードへと姿を消した
俺は残ったメンバーである男2人に向き直り、必要な仕事を頼む事にした
「湯芽原、すまん。簡易で良いからエントランスに結界の構築を頼むわ。何時、天使やベルの強襲を受けるとも限らないからな・・・。八雲は魔力を供給してやってくれ」
「ッース」
「わかった」
2人を見送った後、グラムと翔が戻ってきた
「どうだった?」
「上島先輩、ダメでした」
「電力が来てない上に、予備の発電機も死んでますね」
その報告に僅かに落胆する
しかし、直ぐに気持ちを切り替える
「そうか・・・、明日以降に持ち越しだな。何処かで一息は入れたいものだ」
「ですね」
その後に、2人に部屋わりを伝えた
そして、夕飯の支度をこれからすることも
「じゃあ、キッチンでも見てみようか」
そう言いながら、厨房に入る
冷蔵庫の中身は電力の停止によってその中身がほぼ全滅していた
蛇口から水も出ない
唯一、ガスはボンベからの供給からなのだろう
大型のコンロはライターからの火を近付けると着火し勢いよく火を上げた
しかし、包丁は抵抗の際に持ち出されたのだろう
一本も残っていなかった
「流石に、上のバリケードの所から持ってくるのは無しだな・・・」
「え?持ってくれば良いんじゃないですか?」
「嫌だよ!?被害者の包丁で作る料理とか縁起でもない!?」
グラハムが惚け、のりがツッコミを入れる
いつも通りの光景を眺めながら使えそうな物を探す
グラハムは半分程、本気で言ってるだろうが・・・
俺は出来る事なら遠慮したい・・・
そう思う反面で、最悪そうしようと俺も頭の片隅で思考する
残っている物を見回して結論に至る
結局、こうなったか・・・
「翔ー、備蓄の所から水を1ケース持って来てくれ」
「あっ、はーい」
「で、どうするんですか?上島先輩?」
「今夜は麺だな・・・」
そう言いながら腐らなかった食材を並べていく
「あー、なる程」
グラハムは察したらしく素早く大型の寸胴をガスコンロに設置していた
「さて、9人分の飯の支度を始めるか」
そう、2人で気合を入れて取り組む事にした
40分後
備蓄倉庫のど真ん中に用意したテーブルには、大盛りの2種類のパスタが並べられていた
「ツナ缶と刻み海苔を醤油で味付けした和風パスタ・・・と」
「ミート缶とケチャップで作ったスパゲティだ」
後は、各員にコンソメと乾燥ワカメで作ったスープを出しておく
「おかわり自由とする、足りなきゃ材料はあるしまだ作るぞ・・・では、いただきます、と」
「うわーい!美味しそうぉ〜」
そう言いながら真っ先に飛び付くのはラムさん
驚いた、という表情で和風パスタに向かったのは彼方さん
「想像以上にまとも・・・」
それに追従する舞さん
男子連中はもはや慣れたもので、個人で好きな方を自身の皿にトングでよそい食べ出している
そんな中で、ソラが近付いて来て静かな声で聞いてくる
「ね、将くん・・・」
「なんだ?」
ボソボソと周りに聞こえないように聞き返す
なにか、大事な事だろうかと、僅かに緊張するが・・・
「カルボナーラって作れなかった?」
「カルボナーラ?」
思わぬ、リクエストに気が抜けた
「なんだ、好きなのか?」
「う、うん・・・」
遠慮がちに、僅かに赤くなって答えるソラ
「すまん、卵が全滅してた・・・。卵が手に入ったら1度作ろうか」
「うんっ!楽しみにしてるねっ!」
嬉しそうに答えるソラを見て、乾燥パスタを備蓄から持っていく事を決心したのだった
そんな、こんなで
ゆったりとした夕食の時間を過ごした
グラムはラムさんに絡まれながらも満更でもないという感じで会話をしている
翔と舞さんは何やら、宝石談義に花を咲かせているようだ
絡まれたら厄介なので放置しておく
問題があるとすれば彼方さんという少女だろう
1人、隅の方で静かに食事を取っているが・・・
八雲が気になるが近付けない
いや、近付く勇気が無いといった感じで遠巻きに眺めているのだ
それ、傍から見たらかなり不審な動きだからな?八雲
ソラは俺の隣でソレを見て、苦笑を漏らしている
結局、八雲は最後まで動くことが出来ずに終った
食事が終ると、確認してきた状況を伝えた
「このホテル、電力が来てないらしい。で・・・」
そう言いながらグラムを見て、報告を促す
一瞬、俺だけにわかるように嫌そうな顔をした後に報告を始めた
「地下の発電機も死んでた。結果、風呂は無い」
凄まじく簡潔に説明したな・・・
まあ、要点は押さえてる
「という事だ、女性陣には辛いだろうが我慢してくれ・・・」
それぞれが肯いているのを見てから明日の事を話し出す
「明日の夜には名古屋まで移動したい、って事で朝は7時に出発する。6時には朝食にするのでそのつもりで」
湯芽原と八雲、ラムさんが嫌そうな顔をする
翔は深刻な表情を浮かべた
起きろよ?
起きなきゃ叩き起すからな?
こっちはその為に5時前には起きるんだからよ・・・
他のメンバーは平然としているので大丈夫だろう
グラムは見なかった事にする
「では、解散っ 自由行動とする! しっかりと休んどけよー」
そう言いながら洗い物を持って厨房へと戻る
するとソラが付いてきた
「ん?何か言いたいことがあるのか?」
「あ、そうじゃなくてね・・・」
疑問に思っていると、ソラが隣に立つ
「私、火がダメでね・・・。お料理はお手伝い出来ないから片付けだけでも手伝おうと思って・・・ね?」
「あぁ」
なるほど、と納得する
「じゃあ、手伝いを頼めるか?」
「うん!もちろんだよ!」
俺達は2人でキッチンペーパーを濡らして皿を磨いていく
水道が流れないので、これが精一杯なのだ
お互いに無言だったが、居心地は悪くなかった
時折、合う視線に・・・
僅かな恥ずかしさを感じながら
食器の立てるカチャカチャとした音がしていた
「これで、おしまいっ!」
ソラが最後のお皿を戸棚へと戻す
「この後は、どうするの?」
「明日の朝食の仕込みだな」
「やる事あるねぇ〜。ねぇ、火は使う?」
「いや、使わないよ」
「手伝う事はある?」
「んー、いや。一人でも出来る作業だから、ソラは休んでくれて良いよ」
「じゃあ、見てて良い?」
「構わないよ」
壁際へと下がったソラは、近くに放置されていたパイプ椅子へと腰を下ろした
何が面白いのかはわからないが・・・ 言葉の通り、俺の作業を見ているつもりらしい
背中にソラの視線を感じながら明日の朝食を仕込む
腐らない食材の代表格
お米をペットボトルの水ですすぐ
水が勿体ないので、2度ほどで切り上げ。しっかりと浸るように水を張る
そして、乾燥昆布を取り出し
水を注いだ寸胴に入れて、戻しておく
最後に、少し萎びたように見える大根を取り出す
手持ちの万能ツールからナイフを引き出し、カットしていく
縦に、横に、再び縦に
俗に言うところのイチョウ切りの形にした大根を別の鍋へと入れる
ココに、水、顆粒出汁の素と醤油を入れる
そして、ソラへと向き直る
「明日の仕込みは終わったぞ・・・」
「そっか!良かった。ねっ!将くんっ」
「ん?なんだ?」
「今日も1日、ご苦労様でしたっ!頑張ったね!」
「あっ・・・」
そのソラの一言で、なにか胸の内が軽くなったような気がした
おそらく、知らず知らずの内に気負い過ぎていたのだろう
「ありがとう、ソラ。ソラもお疲れ様、良く休んでくれよ」
「うんっ!」
単純な会話内容
深い意味など一切ない会話
それが、なんだか少し幸せだった
誰もが寝静まった夜更け
ソラの姿はホテルの外にあった
電力の供給が止まった事で、人工の明かりが一切無くなった街並み
その頭上には満天の星空が広がっていた
それを彼女は一瞬だけ見上げると、ぽそぽそと独り言を喋りだす
「ここまでは、殆ど今までと変化は無いかぁ・・・。やっぱりあの2回だけがイレギュラーだったんだろうなぁ・・・」
そう呟きながら2台の車とバイクへと近付く
「今は、今出来る事を全力で・・・・・・だよね。将くん」
その呟きと共に彼女の姿は車の影へと消えた
何かの奇跡が行使されたようだが・・・
魔力の痕跡は何一つ残されてはいなかった
ソラは誰にもバレる事無く、彼女の仕事をやりきったのだった
《トキノソラの好きなモノ、苦手なモノ》
今回出てきた好きなモノはカルボナーラ
逆に苦手なモノは火となっております
コチラ、実際のときのそらさんもそれぞ好きなモノと苦手なモノなのだとか
今作のソラちゃん、ベルさん以外の敵なしと言えくらい強いのに・・・
その辺の好みは変わっていないんですね