ホロライブ・オルタナティブ【リアー・タイムズ】トキノソラを翔ける少女 作:小畑 お爺ちゃん
「ねぇ、ソラさん。聞いても良い?」
「何かな?舞ちゃん、私に答えられる事なら何でも」
「やった!ねぇ、未来のファッションってどうなってるの?」
「あー、それはねぇ。あんまり変わらなくて・・・」
今日は女のコ同士の楽しげな話題と声が車内に響く
翔も時折、話題に混じっている
普段、女性の服装や格好についての話題は聞かないので、新鮮な会話内容だ
どこそこには気付いて欲しい、とか
逆にこんな所には話題として触れてほしくない、とか
なるほど、覚えておこう
そう思いながら、軽く頷きつつ運転に注力する
それと、ソラ?
なんで話題の端々で俺の方をチラ見してくるの?
俺に何かに気付けと?
しかし、すまん
わからん
ソラの服装は昨日と変わらないし・・・
疑問に思っている所で、翔が話し掛けてきた
「ねぇ、上島先輩?」
「ん?なんだ?」
「行きは高速道路を使って名古屋、琵琶湖、京都で大阪って道順できたじゃん?」
「名古屋、岐阜、滋賀、で京都、大阪な」
「あ、ごめん」
「で、それがどうかしたのか?」
「帰りも同じルート通るの?」
「いや、変える」
「そうなの?」
「無駄だとは思うがまだシェルターの希望が残っている奈良を先ずは目指す。で最短で鈴鹿、四日市を経由して名古屋入りを目指す」
「なにか理由があるんですか?」
「まず、シェルターが見つかれば非戦闘員の安全を守れる。これは大事だからな」
「うん・・・」
翔は隣に座る舞をチラリと見た後に僅かに納得はいかないが・・・
といった頷きを返してきた
「それと、滋賀経由だと時間がかかりすぎるっていうのもある。名古屋から大阪までどれくらいかかったか覚えてるか?」
「確か、2日?」
「正確には3日だ・・・。夜半にグラムが無理に車を飛ばしたから2日で移動出来ただけで・・・な。」
「うん」
「その距離を同じように2日〜3日掛けて移動するのは下策だ」
そこまで会話した所でソラが会話に混ざってきた
「それに、今の琵琶湖周辺は危険地帯になってるから行かない方が良いよ」
「そうなのか?」
「うん、天界の保有する船が停泊するには水の上が1番だけど・・・。向こうに海は無いの、つまり海水が無い、で天界の船は対海水処理をしてない」
船・・・
東京消失の光の後に現れた、空飛ぶ船の事だろう
あれが何かは不明だが、とても空を飛べるとは思えない形状にも関わらず空をいく船
関わり合いにならない方が良いだろう事だけは予測が付く
「なるほど、停泊するには真水である必要があると・・・」
「短期間なら海水でもどうにでもなるみたいだけど・・・、長期間だと真水じゃないと駄目みたい」
「つまり、琵琶湖に奴らの船が停泊してると・・・」
「でも、自分達が通った3日前には・・・」
「来たんだろう、俺達の通過した後に」
「・・・・・・」
「ソラ、奈良、三重、経由の名古屋いりをどう見る?」
「うーん、と・・・。そのルートは私も初めてだからなんとも言えないかなぁ・・・」
「そうか・・・」
そこまで、会話した時だった
ここまで無言で話を聞いていた舞さんがボソリと告げた
「嘘っ・・・・・・」
「え!?」
翔は、それに驚いたように声を上げながら舞さんの方を見る
「ソラさん、今の・・・。最後の話は嘘だよね? だって今の会話だけトーンが少し落ちたし、目線が逃げてた。」
「・・・・・・・・・」
「なんで本当の事を言わないの?」
ソラが答えられない
つまり、この先にもナニかある
重ったるい空気と気分が腹に沈む
ここでソラが嘘を付く真意が読み取れず気分に靄が広がる
チラリとソラを見る
「あっ・・・」
その、悔しげな
悲しげな
ソラの顔を見て
俺の覚悟が決まった
「舞さん、俺から良いかな?」
「え?、あ、はい・・・」
「俺には特別な能力がある。未来の事象を観測出来る瞳だ・・・」
「ちょっ!?上島先輩!?」
「将くん!?」
2人が慌てたように止めに入るが、首を左右に振ってソレを止めさせる
まあ、恐らく二人共・・・
俺がこの話をするのが嫌いなのを知っているからな・・・
「未来を・・・」
「俺の能力は未来の事象を観測出来るがソレを誰かに喋ったり、伝えたりした時点その未来は確定で訪れる」
「え!?」
「これは例え話だ。もしもの話として・・・・・・。例えば、この道の先で車が交通事故に巻き込まれる未来を見てしまったとする」
「は、はい・・・」
「これを話せば、どうあってもこの先の道で交通事故に巻き込まれる。」
「あのっ!それなら、その道を通らなければ・・・」
「うん、それは可能だ。だけど問題はその後だ・・・」
「え?」
「例え、この道を通らなくても。いずれ何処かで交通事故には巻き込まれる」
「なんで、ですか?」
そこまで会話した所でソラが答えを示した
「
「あっ・・・」
「うん、どのような過程を辿っても至る結末は基本的には変わらない。これは逆に観測してしまったのなら基本的には変えようが無いとも言える」
「じゃあ、どうするですか!?」
半ば、パニックになったような舞さんの声が車内に響く
それに彼女を落ち着かせる意味合いも込めて、ゆっくりと答える
「未来を伝えない事。
そうすれば、その運命はまだ俺達には追い付いてこない
運命が追い付くまでの間に逃げ切るか、回避するか・・・
何にしても話せば終了、そこまでだ・・・。
だから、未来を伝えずに。未来を変更する必要があるんだ」
「あの、じゃあ、ソラさんは・・・?」
「うん、喋りたくても喋れない。伝えたくても伝えられないんだ・・・。未来を知る者として」
「・・・・・・・・・」
重苦しい沈黙が流れる
「でも、嘘を付いたのは事実なの・・・。ごめんね、舞ちゃん・・・」
「こちらこそ、ごめんなさい・・・」
先程までの楽しげな雰囲気は霧散して消えた
後に残ったのは重苦しい空気
そのまま、次の休憩まで重苦しい雰囲気を引きずっていた
1時間近い時間を掛けて淀川を横断する橋まで来るも、そこで大渋滞にハマった
橋を渡り切るのに30分を要してようやく抜けきると車は再びスムーズに流れ出す
そこで、ようやく俺からソラに声をかける事にした
「なぁ、ソラ・・・。今、大丈夫か?」
「うん、なにかな?」
「ソラは高速道を使った琵琶湖ルートは危ないと言った、言った時点で琵琶湖ルートは使えない事が確定した・・・。今からギリギリのラインを攻めた質問をするぞ」
「う、うん・・・」
「ソラは基本的にイエスかノーで答えてくれ。ソラの判断で答えられない。答えたくない時は無言で構わない。十秒無言だった時点で俺はその内容を聞くのを諦める。いいか?」
「わかった」
「まず、過去の俺達は京都、奈良を使わないルートを使ったことがあるか?」
「ある」
「和歌山の湾岸道路は?」
「ある」
「・・・・・・、安全か?」
「・・・・・・うん」
「なるほど、間に合わなくなるのか・・・」
「・・・・・・・・・」
十秒の沈黙・・・
この場合は恐らくほぼ肯定だろう
「じゃあ、日本海側のルートを使うのは論外だな」
「そう、だね・・・」
「逆に危険な道を絞る、甲賀」
「ダメッ!?あっ・・・」
「わかった。次は伊賀」
「・・・・・・・・・」
十秒の沈黙
その表情は優れない
「名張・・・」
「・・・・・・・・・」
再び、十秒の沈黙
「津市」
「だめ・・・」
「ありがとう。亀山、鈴鹿、四日市、危ないところはあるか?」
「無いよ、大丈夫・・・」
ウインカーを出す
路肩に車を止めてハザードランプを点灯させる
「翔、俺のボストンバッグのサイドポケットの中に折りたたみの日本地図がある。出してくれ」
「あ、うん」
地図を貰い、広げる
素早く聞いた内容通りに◯✕△をつけていく
◯だけで繋がる道は無い
「ソラ、307号線はどうだ?」
地図を見せながら聞いてみる
「・・・・・・・・・」
無言のまま地図を確認したソラは静かに首を横に振った
「ありがとう。これで最後の質問だ・・・。 ソラ、この問答、もしくは似たような問答を十回以上した事があるか?」
「うん」
「よしっ!無駄だ!出発しよう。当初の予定通りに伊賀を抜ける25号線の名阪国道バイパスを使う」
ハザードランプを消す
素早くウインカーを出して再出発した
後ろからグラムと湯芽原がついて来ているのも忘れずに確認する
「え!?なんでですか?」
「時間が勿体ない。ザックリと説明しよう。大阪から東京に向かえるルートは無数にある」
「はい、それこそ沢山・・・」
「無駄なんだ・・・、間に合わなくなる」
「え?」
「ソラは、空間が消滅していると言った。これまでは海洋だったり、海外だったり、人の少ない所だったんだろう」
それに後部座席の2人が肯いている
「時間をかけたら通れるルートそのものが消えるんだろう、安全ではあるが、辿り着けるとは限らない。俺達は、時間とも戦わなきゃならなくなった」
「なっ!?」
「10時間以内に名古屋に抜けられるルートは34、その内、今の問答で使えるルートは3つまで絞り込まれた」
「うそ、あの短時間で絞り込んだの?」
「その内2つはルートダブりがある上に、恐らく使えない」
「なんでですか?上島先輩」
「名古屋から大阪に向かうときに、事故の発生情報を見た。この時勢だと片付いているとは思えない・・・。つまり残るのは・・・」
「当初の予定通りの25号線だけ・・・?」
「あぁ」
気になるのは十秒の沈黙のあった伊賀を通過しなけりゃならない事だ
言いようのない不安がベッタリと貼り付いてくる
それを吹き飛ばすように車の速度を僅かに上げた
9月の中頃を過ぎましたが暑い日が続きますね・・・
作者は最近、熱中症でダウンしました(幸い、病院は回避できました)
皆様も体調にどうぞお気を付けて下さいませ