ホロライブ・オルタナティブ【リアー・タイムズ】トキノソラを翔ける少女 作:小畑 お爺ちゃん
まるで、世界が静止したかのような静けさの中で少女はブロンズの長髪をくるりと流すようにしながら振り返ってきた
その青い瞳と目が合う
我を忘れてその少女に見惚れていた
「君が私のパートナーさん?」
その日、俺は【運命】に出会った
その儚げで、美しい少女はこちらに微笑むと
「良かった」
とボソリと口にする
何が起きているのか理解出来ていない俺を余所に、彼女は天使へと視線を移す
天使は突然の乱入者に困惑と共に苛立ちを隠せていないのか、顔を顰めている
そしてその苛立ちをぶつけるかのように目の前の少女に向かって声を荒らげた
「なんだ、お前!!どっから現れがったっ!?いや、それより俺様の崇高な任務の邪魔をしてんじゃねぇよ!!!」
そう言いながら天使は少女に向かって魔銃を撃ち放つ
危ない!! と声を掛けようしたが体から空気が漏れるような音しか出なかった
彼女に向かって進む弾丸を、俺は見ている事しか出来ない
少女は慌てる事も無く、その場に佇む
うち放たれた弾丸は少女に当たることなく、甲高い音と共に少女の目前で消滅した
「・・・・・・ハァ?」
状況を飲み込めない天使は疑問の声を上げる
むろん、俺も何が起こっているのかわからない
そんな中で少女は天使を顔色一つ変えずに見据えながら言い放つ
「貴方が、私の
まるで自身の方が格上だぞ、とでも言わんばかりに自信満々だ
それと同時に彼女は天使への興味を無くしたのか・・・
コチラを見て軽く微笑んできた
一方の天使はと言うと・・・
言われた内容が即座に理解出来なかったのか、呆気に取られていたが、その内容が理解出来たのと同時に顔を怒りによって酷く歪めながら赤くなる
わなわなと震えながら天使は少女を凄まじい形相で睨み向ける
「この俺を、俺様をコケにするのか、ガキぃ・・・。許さねぇ。ゼッテェに許さねぇ! 殺す!殺してやるよおぉぉぉ!!!」
そう言いながら天使は魔銃を放り捨てる
懐から取り出したペン状の棒を両手で握る
すると白く純白の光を発しながらソレが機械音と共に音声ガイドを開始する
『
「俺様はディルだ!!」
『
『
天使の持つモノが凄まじい光を放つ
それは天使の頭の上で収束し輪を形成する
翼は純白の光を纏い、今まで地に足を着けていたにも関わらず。今は空を浮遊している
物理法則も魔術特性も、全てを無視した超常の力を目にしている
俺は目の前で起こっている出来事に驚きを隠せない
瞳を大きく開きながら口を開けてしまっていた
「ふはは、ふははははは!!力が溢れてくる!殺してやる、殺してやぜ!女あぁぁぁ!!」
天使の周りの空気が陽炎のように揺らめいている
今までとは比べ物にならない程に濃密な魔力によって空間が歪んでいるのだと解ってしまう
俺は冷静さを欠き、冷や汗が止まらない
心臓がバクバクと早鐘を打っている
目の前に居るコイツは、正真正銘の【化け物】だと
対して少女は冷静だった
目の前で起こっている出来事の全てを認識しながら
俺に向けていた視線とは打って変わって冷ややかな視線を天使へ向けた
そして全て見終わった後に一つ、ボソリと口にする
「じゃあ、敵だね。」
え? と思うか思わないかの刹那の時間だった
天使が凄まじい速度で少女に向かって飛行する
まるでロケットかと思う程の速度
その手には収束された光が剣の形となって収まっている
天使はその光の剣を、右横に構えながら少女に向かって横薙ぎに斬りかかる
少女はいつの間にか、腰から抜いた蒼い剣を正眼に構えると上段から切り下げを行い、横薙ぎを振り払う
剣は地面に着くか着かないかというところで一瞬停止する
そして、そのまま返す刃により右上方に剣を流れるように切り上げた
天使は剣を振り払われた驚きによって対処が咄嗟の間遅れた
切り上げられた剣は天使の左肩に浅くない切り傷を付けた
それに顔を苦痛に歪めながら振り払われた剣を肩口に回して振り被るように剣を振る
少女は剣を振り上げた姿勢のまま足を半歩前へ出す
そして、剣先を僅かに落とし右から左に掛けての横薙ぎに繋げる
再び衝突した両者の剣は蒼い剣が光の剣諸共に天使を切るという結末を迎えた
天使から血は出ない
血の代わりに光が周囲へと撒き散らされる
まさに全てが一呼吸の内だった
あれ程に圧倒的だった天使の魔力は霧散し
天使も徐々に溶ける様に光になって消滅していく
ただの人間の動体視力では、見る事も叶わなかっただろう一瞬の攻防
俺が特別な瞳
魔眼を有しているからこそ見えた戦闘
それがこの少女も普通ではない事を物語っていた
その少女が息を吐きながら
「ふー、なんとかなって良かったー」
今、まさに凄まじい速度の攻防を制した者の言葉とは思えない程にゆったりと、ほっとした様に言う
「あ、そうだ!」
とクルリとコチラに向き直る
ギクリと体が固まる
化け物を圧倒する少女が俺に何か用でもあるのだろうか?
「
美しい少女が確認するように首を傾げながら俺に向かって聞いて来る
心臓が凄まじい速さで鼓動を打っている
「あぁ、そうだけど・・・、君は?」
「良かった〜!私の名前はトキノソラ!よろしくねっ将君!」
少女は安心したかのように頷くと、満面の笑みで自己紹介をしてくれる
動悸が収まらない
これは、天使を瞬殺した少女に対する恐怖か?
それとも、美しい少女を前にしての緊張か?
判断の着かないまま、俺はコチラに差しだされた手を握り返していた
《上島将》カミシマ マサル
平凡な魔術師 家柄は古く代々魔術を扱う家系
しかし将自身に飛び抜けた才能は無かった
魔術を扱う為の魔力量は平均より少ない
家柄故に知識量に関しては豊富
魔術師で言えば器用貧乏である
呪いの様な魔眼を有している為、普段からメガネを掛けている
本作の主人公