ホロライブ・オルタナティブ【リアー・タイムズ】トキノソラを翔ける少女 作:小畑 お爺ちゃん
そのまま、「じゃあ、治療しようか!」と言う彼女・・・
トキノソラによって天使との戦闘でボロボロにされた身体の治療をしてもらった
この世界には神秘がある
超能力、魔法、魔術、霊能力、言い方は様々だ
一般人には手の届かない神秘
それが目の前で行使されていく
トキノソラと名乗った少女はまるで時間でも戻すかの様に、俺の怪我を一瞬で癒して見せた
おかげで全身打撲でうめき声しか上げられなかった俺は動けるようになる
その腕前は仲間の中で治療、回復を担当するユメをも凌駕する程で
怪我の跡すら残らずに綺麗に治療されていた
動ける様になった俺は立ち上がり周囲を見渡す
周りは相変わらずの血の海だ
しかし、殺された人間の遺体は1つも無い
あるのは、持ち主を無くした遺留品ばかり
東京消滅のあの日から変化のあった事の1つ
人間を含めたあらゆる動植物は死後一定時間の経過で消滅する
それは先程の天使と同じ様に、光に溶ける様に消滅するのだ
これはあの光の柱以降の変化で、光の柱以前に死亡したモノは残っている
消えてしまったモノが何処に行ったのか
知る者は誰も居ない
誰かの車の鍵を足下から拾う
「すみません、生き残る為に使わせて貰います・・・」
精一杯の思いを込めて呟く
顔を上げて天井を見上げる
視線の先には大穴が空き、太陽の光が降り注いでいる
この場所は既にシェルターとしての機能を有していない
これ以上、ここに留まるのは下策だと即座に判断する
「おーい!将君っ、これ~必要だよね~」
そう叫ぶトキノソラさん
いつの間にかシェルターの奥の部屋へと行っていたらしい
その手元にはガソリン燃料缶とモバイルバッテリーがあった
「ありがとうございます、トキノさん。助かりました」
「むっ!」
そう、感謝を伝えたのだがトキノソラさんは何か気に入らなかったのか?
あからさまに不機嫌になる
その表情はまさにお手本の様な膨れっ面というやつだった
不安になり思わず聞いてしまう
「???、俺っ、何か気に触る事でも言いましたか?」
「ソラ、トキノ・・・ソラ!」
?????
名前、である
彼女の
間違いなくトキノさんとお呼びしているはずだが?
「トキノ、ソラさん。ですよね?」
「呼び捨てっ!ソラって呼び捨てにして欲しいな!」
あぁ、なるほど。呼び捨て・・・
呼び捨て?
「なん、いや、えっと・・・・・・。俺とトキノさんは出会ったばっかりの初対面ですよね?、いきなり呼び捨ては・・・」
「違いますー」
「え?」
何が違うと言うのだろうか?
実際、彼女とは初対面だ
確かに俺は人の顔を覚えることが苦手だ
しかし、これ程の美人は俺の周囲には居なかった
合っていれば間違いなく覚えていると断言出来るほどに彼女は美しいのだから
「将君とは初対面じゃありません!」
「???」
「確かにココに居る将君と会うのは初めてになります。けど私の方はキミと既に会ってるんだっ!」
余計にわからない
会うのは初めてになる
なのに、既に会ってる?
疑問に思っているとトキノソラさんはクルリと、ひと回転しながら少し下がる
ふわりと、スカートが風で揺らめいた
その綺麗な顔を綻ばせる
そして、真っ直ぐにコチラを見ながら喋りだす
「改めて自己紹介するね!私の名前はトキノソラっ、遥かな未来の君から、ここに居る君の事を導いてやって欲しいと頼まれてやって来た、未来の現役JKバーチャルアイドル!」
「は、はい?」
「気軽にソラって呼び捨てにしてね!将君っ!私の大切なパートナーさん!」
最後は華やぐ様な凄く良い笑顔だった
その笑顔に僅かな間、思考が停止する
・・・・・・
危ないっ!!!
危うく、頷く所だったぞ!?
そして、ちょっと待て!!この子、ツッコミ所が満載だぞ!?
「トキノさん?少し良いかな?」
「ソラですっ!」
「えっと、質問をーー」
「ソラです!」
「あの」
「ソラ!です!」
そこ、そんなに拘る所なのか!?
絶対に譲りませんっ、とばかりにコチラを一生懸命に見つめてくる彼女に僅かに気圧される
「っ、」
「ソラ!」
言葉を発しようとした瞬間に被せられた・・・
あーーーーー、
これは、無理だな・・・
受け入れるしか無いと、諦めた瞬間だった
コクコクと頷く
「ソラ・・・、さん」
「むーーーー、呼び捨てにしてくださいと言いましたよね?」
あ・・・、さん付けも駄目なのか・・・
呼び捨てにしろと・・・
「ソラっ」
「〜〜〜〜っ、はいっ!」
満面の笑みで答えてくれるソラさん
本当に嬉しそうだ
そんなに、呼び捨てが嬉しいのだろうか・・・?
いや、それよりも・・・
「質問、しても良いかな?ソラ」
「あ、その前に」
質問をしようとしたら止められる
その前に、なんだろうか?
「将君っ、もっと気軽にいつも通りに喋っていいよ!その喋り方だと違和感と言うか・・・、親しい人同士の会話の時みたいに、ぶっきらぼうに喋って、ね?」
「あーーーーー、なるほど・・・」
彼女が言う、俺を知っている。とは本当なのかもしれない
と、少し思う
自身でも解っているのだが、地が出ると雑なのだ
その時の喋り方を知っている、となれば
相当に親しいはずだ
「了解、了解だ、そう喋らせてもらう。」
「うん!」
彼女は嫌な顔1つせずに俺の喋りに頷いた
「それで、何かな?将君っ」
「そう、質問だった。今までのソラの対応で俺のことを知ってるってのは納得出来る・・・。けど、君が未来から来てるって言うのはどうやって証明出来る?」
「あーーー、それね!」
彼女、ソラは
うん、うん、と首を縦に振りながら頷く
そして、俺の顔に向かってビシリと指さして言い放つ
「将君の能力で!」
「俺の能力・・・」
「そう!将君の魔眼!時見ノ魔眼で証明出来るよ。」
時見ノ魔眼、その名を聞いた瞬間に一瞬だけドキリとした
それを隠す様に平静を装いながら思考する
そう、確かに俺には人とは違う能力がある
『時見ノ魔眼』
魔眼に魔力を通すことによって発動出来る、俺だけの特殊能力
【視界内の対象と自己の暫定未来の事象を観測出来る】
というもので・・・
《見た未来を自分の外に向けて発信すると確定事象として成立出来る》
つまり《見た未来を喋れば現実のものとして確定する事が出来る》
これだけ聞けば非常に有用な能力に見える
見えるだけだ・・・
その実態は非常に厄介で、面倒で、惨忍だ
まず、観測の範囲が狭い
未来における自己の視界を今の自分が見るだけとなる、しかも視界は未来の自分なのでこちらで視野を変えることが出来ない
次に、時間の指定が出来ない
例えば今から十分後の未来が見たくても、見ることが出来ない
タイミングはランダムなのか法則性があるのかすら不明なのだ
それは数秒先かもしれないし
数時間先の未来かもしれないし
下手をしたら数年、数十年先の未来という事もあるのだ
共通しているのはただ、これから未来で起こる事という事だけが確定している
そして、強制発動もある
睡眠時や集中力が低下した時、魔眼は自動的に俺から魔力を吸い上げ、未来の事象をランダムに観測する
見たくもない未来を見せられる事も少なくない
最後に、《基本的に未来変更は不可能に近い》
変更出来た未来もあったが・・・・・・
それには途轍もない労力を要した
他者に伝えたり、紙に書いたりした時点で観測した未来は現実のものとして確定される
これは、記憶観測によって誰かに見られた場合にもだ
つまり、未来変更には
『誰にも見た事象を知られる事なく、自身のみで観測された未来を変更する必要がある』
という事だ
これが、どれ程に大変か・・・
経過を変えても結末まで変えられた事はほぼ無い
それ故に、俺はこの魔眼が苦手だ
確かに有用な能力ではあるが
見た未来を変えられないのでは意味が無いのだ
だから、基本的に未来視には頼らないし
本当に親しい人にしか、この能力と魔眼の話はしていない
血の繋がった家族にすら黙っていた程の力なのだから
それを知っている、この少女は確かに自身に近しい間柄の人間なのかもしれない
「時見ノ魔眼の詳細は知ってるのか?」
「うん、知ってるよっ」
「なら、やめといた方が良い」
「大丈夫、大丈夫〜。ほらほら、私を見てっ!」
軽く言ってくれる
本当に知っているのか不安になる
観測した未来は変更出来ないんだぞ?
そんな不安が伝わったのだろうか?
ソラはふっ、と落ち着くと俺を見つめてくる
そして・・・
「大丈夫、信じて・・・。将君」
真っ直ぐに言ってくる。澄んだ青い瞳が俺を見る
その表情はとても真剣で・・・
とても俺を騙そう、だとか考えいる様には見えなかった
それで、信じてみよう
と思った
「わかった、信じるぞ」
そう言いながら、俺は魔眼に魔力を通す
それと同時に魔眼封じの意味合いを持つメガネを外した
俺と、彼女の未来を見る為に
視界が煌めく
チカチカと目眩がして・・・
俺は、《未来を見ることが出来なかった》
「・・・は?」
自身の口から、思わず疑問の声が漏れた
今まで、こんな事は無かった
それこそ、俺の知る限り、最上位の相手をしてもこの魔眼は使えたのだから
「やっぱり、見えなかった?」
対して、彼女はこの結末を最初から知っていたかのように聞いてくる
どういう事だろうか?
「将君の魔眼は現在の世界から予想出来る未来を見るモノなんだよ」
そこまで言われて納得する
「ソラは俺の観測出来る事象の外側からの来訪者、だから未来から来たことを証明出来る・・・と」
「うん、だいたい合ってるよ!詳しく説明すると面倒な説明になっちゃうからしないけどね」
「なるほど・・・」
とりあえず納得する
これは彼女を信頼しても良いだろう
状況を冷静に判断しようと務める
まず、自己紹介せずとも俺の名前を知っている
そして、性格や能力も
少なくとも、あの変化した天使を瞬殺出来る彼女が俺の敵であるなら、出会った時点で何もできずに殺さているはずだから
「わかった。これからよろしく頼む」
「うんっ!」
「それで、これからどうするのか?なんだが・・・
まずは先行している仲間を追い掛けたいと思う」
「賛成〜!道中、時間もあるだろうし・・・。そこで私の話を聞いてもらえれば嬉しいな!」
「そうだな、そうしよう」
方針の決まった俺たちは歩き出す
ソラの持ってきてくれたガソリン燃料缶はズッシリと重く中身が充分に入っていることを感じさせた
誰も居なくなったシェルターは寒々しいくらいに静かで・・・
そこにボソリとソラの独り言だけが溶けて消えていった
「お休み、人見さん・・・。次こそお幸せに・・・」
ぽつりと残された赤縁メガネ
それに、ソラだけが気が付いていた
俺は、そのどちらにも気付かなかった
外に出た俺達は車のキーから車種を調べようとした
すると、ソラはチラリと鍵を見ると
「こっちだよ、将君!」
と言いながら軽快に歩き出す
そして、一台の白い車に駆け寄る
それはワゴン車と呼ばれる車種で、最大10人乗りの中型車だった
拾った鍵を持ちながらドアに手を掛けるとピピッと電子音と共にロックが解除される
ドアを開け、運転席に座る
エンジンスイッチを押し込むとピーと鳴りながらディスプレイに明かりが入る
すぐさま燃料計に目をやる
残りは3分の2程度を差している
「なんとか、なりそうだな・・・」
「そうだね!さっ、出発〜〜!」
そう言いながらソラは助手席側に遠慮無く乗車してくる
それを見て僅かにクスリと笑いながら、明るい旅路になりそうだと予感していた
《トキノソラ》ときのそら
遥かな未来から来たと自称する少女
どうやら《上島将》を良く知っているらしい
飛び抜けた身体能力、魔法とも取れる治癒能力、そして魔銃の弾丸すら寄せ付けぬ防御力、を有している
腰には2本の剣を帯びていて・・・
一つは長剣、その切れ味は天使を軽く両断出来る程
一つは短剣、用途が不明であり。彼女はまだこの剣を抜いていない
ニコニコと花が咲く様な笑顔を振りまく一方、何処か変わった雰囲気を纏っており、一部では頑ななまでの頑固さを有している
本作のメインヒロイン